72話 電風の丘ダンジョン8(ワイバーンVSスティンガー)
--ソフィー視点『電風の丘ダンジョン』地下3階層転移門前---
「そろそろ、参ろうか」
そう言ってマクシムス将軍が立ち上がられました。
「えっ、まだ十分に回復が……」
そう心配するわたくしに”ニカ”と笑われ、わたくしに向かいおっしゃいました。
「いや、一刻も早く合流せねばなりますまい……勇者殿は兎も角、王子が心配です
し、私には”これ”もございますので……」
そうおっしゃって、腰の剣帯にひっかけてあるグレープフルーツ台の鉄球に無数の
棘が付いていて、それを鎖に繋いだ……フレイル型モーニングスターと呼ばれる武
器に触れられるマクシムス将軍。それににシノブ様も同意の頷きをされます。
ちなみにこれは、グリフォン(グリフィン)を倒して得られた武器です。
名前を”疾風のグラン・クラッシャー”と言うそうで、鎖部分が自在に伸びること
と鉄球の大きさが自在に変えられるそうです。
わたくしは、セイア様に念話で今から転移門を通って、4階層に向かうことをお
伝えしました。するとセイア様はわたくし達が4階層に到着と同時にご自分のセン
サーでわたくし達を捉え、すぐさま向かうとおっしゃっていました。
セイア様からのお言葉をシノブ様、マクシムス将軍やアイーシャに伝え、全員で
転移門の魔法円の中に入りました。
眩い光に包まれ、下から心地よい風が吹いたかと思うと、次の瞬間、周りの景色
が一変いたしました。あたりを見回すと、わたくし達は少し高台で、足元はごつご
つとした赤茶けた岩だらけの処に居るようでした。そしてそこから見える風景は、
雲一つない抜けるような青空が広がり、岩場に所々小さな森のような緑の地帯が点
在し、遠くには岩でできた山が3つ見えました。
「ここが、4階層なのか?」
そうシノブ様が呟きました。
◇◇◇◇◇
ソフィーからの念話の後、俺のセンサーにソフィーの反応があった。
俺はすぐさま、ミオンをサンダーバードの巣に残し、ケンタウロス形態でそのまま
飛び出した。
亜音速までスピードを上げ、途中持っていたランスを捨て、走る俺。
このUnicornの角が変形したランスは、捨ててもまた生えてくるのを最近知
った。(サンダーバードと戦った後で)
そして、右腕をマシンガンアームに変え、左腕をエレクトリーアームに変えなが
ら走る俺。
すると、俺の進行方向の上空で大きな爆発が目に入った。
(あれは、たぶんシノブだろう……急がねば)
◇◇◇◇◇
----ソフィー視点『電風の丘ダンジョン』地下4階層-----
「「「クエー!」」」
数体のワイバーンと言う魔物が、わたくし達を見つけ私たちの上空で集まって
来て円を描くように飛んでいます。
「見つかったようだな」
空を睨みつけマクシムス将軍がおっしゃいました。
その言葉を聞いて、マジックボックス小から、グリフォン(グリフィン)の翼を
破壊したあの兵器を2つ取り出し、着けていた指だし手袋を外し、分厚い革の手袋
に付け替えているシノブ様が同じく上空を見上げました。
「Missアイーシャ、Missラグナヴェールを頼む」
「はいですにゃ」
シノブ様に言われ、返事を返したアイーシャは、わたくしの手を取り、マクシムス
将軍の影の方に近寄りました。わたくしはアイーシャがどうするのかと思っていま
すと、アイーシャは呪文を唱えだしたかと思うとわたくし共々マクシムス将軍の影
の中へと入っていきました。
このアイーシャの行動は、周りに隠れる場所がないという条件下の元、わたくし
を守るために、取った行動でした。
ただ、影魔法で影に隠れられる時間は10分しかありません。
恐らくシノブ様は、その10分の間にセイア様が駆けつけてくれると信じてのこと
でしょう。
◇◇◇◇◇
----シノブ視点『電風の丘ダンジョン』地下4階層-----
Missアイーシャの影魔法でMissラグナヴェールをジェネラルマクシムス
の影に隠してもらった後、FIM-92 Stinger2つを左右にそれぞれ強
引にもって、上空に居るワイバーン2体に照準を合した。
「Shoot!」
発射された2本のミサイルが2体のワイバーンめがけて飛んでいく。
”ボッシュ””ボッシュ””シュパー””シュパー”
2本のミサイルは真っすぐにワイバーンに向かって飛んでいき、1本のミサイルは
見事ワイバーンを捉え爆発し、ミサイルの当たったワイバーンは肉を飛び散らせ落
ちて行ったが、もう1本のミサイルはワイバーンの吐くブレス(超音波)により、
ワイバーンに届く前に破壊されてしまった。
「Shit!」
思わずそう叫んでしまった僕は、すかさずスティンガーの再装填作業に入った。
その間僕の前にジェネラルマクシムスが立ち、例のボーナスアイテムを腰の剣
帯から取り出すと、チェーンの根元についている留め金を手に装着し、それを頭
上で振り回しだした。
ミサイルの再発射はミサイルのコンテナとBCUを発射機本体に交換するだけで
完了するが、使用後のBCUは発電の化学反応でかなり高温になっているので、交
換の際は耐熱手袋をはめて行うんだが、熱のせいで少々手間取っていると。
先ほどブレスを吐いたワイバーンが僕たち目掛けて降下した。
「クエー!」
降下するワイバーンに対し、振り回していたフレイル型モーニングスターの鉄球部
をその降下して迫ってくるワイバーンに向かって投擲する。
「行け~!グラン・クラッシャー!」
ジェネラルマクシムスの叫びと共に飛んで行く鉄球は、見る見る大きくなり、ソフ
トボール台の鉄球が、子供時代に僕が見たサーカスの玉乗りの玉くらいの大きさに
なり、 しかも、銃から放たれる弾丸の速度位の速さで飛んで行った。
飛んでくる鉄球に対してワイバーンはブレスを吐くが、そのブレスを物ともせず
、ワイバーンに向かうとそのままブレスを吐き続けるワイバーンの口に飛び込み食
い破る。
「ふん!」
とジェネラルマクシムスが声を上げ、ワイバーンの頭部を食い破った鉄球を引き戻
すと、鉄球とつながるチェーン(鎖)が自動で見る見る短くなり、鉄球も元のソフ
トボール台に戻りジェネラルマクシムスの手元に戻って来た。
それに見とれていた僕は、思わずこう叫んだ。
「It’s a Miracle!」
そう叫んで喜んだのもつかの間、上空に居たワイバーンが数体から数十体に増えていた。
これは、倒された仲間の敵討ちに集まったのか、それとも、ここに餌があるから集まって来たのか……おそらく後者のほうだろう。
僕は、すぐさま再装填を済ませたスティンガー2つを強引に左右に構え、発射した。
「Shoot!」
”ボっシュ””ボっシュ””シュパー””シュパー”
2つのミサイルは轟音と煙を吐きながら、2体のワイバーンに向かい命中する。
”バーン”、”バーン”
大きな爆発音と共に2つの火柱が上がり、2体のワイバーンの体が四散した。
「おお、さすがはシノブ殿……私も負けてられんな」
僕が2体のワイバーを仕留めたのを見た、ジェネラルマクシムスがそう言いながら
、”疾風のグラン・クラッシャー”を1体のワイバーンに向けて投擲した。
飛んで行く鉄球は、見る見る大きくなり、鉄球についている鎖もどんどん伸びて
行く、速度は相変わらず弾丸のようだ。
”シュー””バキーン”
大きくサーカスの玉乗りが使う玉のようになった鉄球は、ワイバーンの顔に命中し
、鉄球が命中したワイバーンの顔は跡形もなく吹っ飛んだ。
その間、僕はステンガーの再装填作業を続けながら考えていた、スティンガーの
ミサイルは後2本しかない。そして、この間もジェネラルマクシムスはワイバーン
の頭を次々と砕き倒してはいるが……額から汗が吹き出し、かなり辛そうだ。
3階層のボーナスアイテムである”疾風のグラン・クラッシャー”はそれ自体は
、使い手の魔力を使うことはない。自身の魔力を持っており、起動時間は1時間で
はあるが、5時間そのままで置いておくと、再び使用できると言う物だが……。
ただ、鉄球が飛ぶ速度は銃の弾丸のように早いのと、鉄球が大きく変化する為、
かなりの質量となる。並みの体力では使えない代物。
ジェネラルマクシムスの人並み外れた体力と、また、彼の特異体質である自身の
魔力を力に変換できる彼だからこそ使いこなせるのだと思う。
しかし、3階層でのグリフォン(グリフィン)との戦闘で、そのほとんどの魔力
と力を使い果たし、回復したとは言え、完全ではない体力と魔力で、今現在ワイバ
ーンとの戦闘を続けているが、やはり3階層での無理が祟ったのか、徐々に彼に疲
れの色が見えてきていた。
(このままではジリ貧か……)
そう心に思った時だった。
”ボシュ””ボシュ””ボシュ””ボシュ””ボシュ””ボシュ”
と音がしたかと思うと上空のワイバーン6体が次々と爆音をあげると同時に、火
だるまになって墜落していくのが僕の目に入った。
「Oh!Mr.オオワシ!」
荒野を疾走するケンタウロス。そうMr.オオワシが助けに来てくれたのだった。
「悪り~シノブ、待たせたな!」
マクシムス将軍が使う”疾風のグラン・クラッシャー”の形状は所謂、ガ○ダムハンマーですが、
名前の由来は超電磁ロボ コ○バトラーVの”グランダッシャー”をもじってつけました。
ですが攻撃方法は全く違います。単なる語呂合わせです。(笑)




