67話 電風の丘ダンジョン3(ビリビリビリ~)
-----ソフィー視点『電風の丘ダンジョン』地下3階層---
≪ソフィー……ソフィー無事か?≫
わたくしの頭の中で声がいたしました。
その声に”はっ”として目覚めた私はあたりを見渡しました。
わたくしの側には、アイーシャがおり、少し離れた所で何やらお話をしているマ
クシムス将軍とシノブ様が居られました。
気が付いたわたくしにアイーシャが声を掛けてきました。
「姫様、大丈夫ですかにゃ」
その言葉に私は黙って頷きました。
「ここは、どこでしょう……アイーシャ」
とわたくしがアイーシャに尋ねましたが、アイーシャは小首を傾げ、
「わかりませんにゃ」
と答えます。
「そう……」
そうアイーシャに言うとわたくしは、改めて周りの景色を見てみました。
わたくしたちが居る場所は薄暗い森……と言っても普通の木が生い茂っている
森でありません。木の代わりによく湿地帯に生えている……そう、確かゼンマイ
と言う植物に似た巨大なそれが生い茂って森のようになっているところに居るよ
うです。
その時、再びわたくしの脳裏に声がしました。
≪ソフィー……ソフィー?≫
(聞き覚えがある声……そうですこれはセイア様からの念話です。)
≪あ!セイア様ご無事で!≫
わたくしも念話で答えました。
≪ソフィー良かった無事か?≫
≪はい、セイア様の方こそ……≫
≪ああ、こっちは無事だ、今俺はミオンと居るがソフィーは誰と居るんだ?≫
≪はい、シノブ様とアイーシャとマクシムス様と4人です。≫
≪そうか、ゲキ達は?≫
≪わかりません……それにお兄様も……≫
そのわたくしの言葉にしばらくセイア様は考えておられ、
≪ソフィーあのさ、ニールさんと前に連絡とったみたいに魔動機でフェリクスさん
と連絡取れないか?≫
とおっしゃるのでわたくしは、
≪ああ!はい、やってみます≫
とセイア様に答えました。
わたくしは、すぐさまニール様の時のように、胸のネックレス(通信用魔動機)
で連絡を試みました。
≪お兄様……お兄様……≫
◇◇◇◇◇
セイア様に言われた通り、お兄様と連絡取りますと、幸いお兄様とはすぐ連絡
が取れ、お兄様はゲキ様とクレア、エドナと一緒に居ることが分かりました。
そのことをセイア様にお伝えすると、周りに見える景色や、出現する魔物などを
教えてほしいと言われましたので、お兄様にそのままお伝えし、お兄様から教え
ていただいたことをセイア様に報告いたしました。
セイア様のお話だと、理由は分かりませんが、ここは、電風の丘ダンジョンの
中で、わたくし達は今そのダンジョンの地下3階層に居り、セイア様達はその1つ
下の地下4階層に居られ、さらにお兄様やゲキ様達はその下の5階層に居るとの
事でした。
「と言うことでございます。」
わたくしは、セイア様やお兄様からのお話を、シノブ様やマクシムス将軍、それに
アイーシャにお話しいたしました。
「「なるほど……」」
シノブ様とマクシムス将軍は唸るようにおっしゃいました。
「……Mr.オオワシと合流を急いだほうがいいと思うよ僕は」
とシノブ様がおっしゃいました。それにマクシムス将軍が
「そうだな、では、私が先陣を切ろう」
とシノブ様の意見に同意なされご自分が先陣を切るべく先に歩こうとすると、それ
を手で制し、
「Wait!ジェネラルマクシムス」
とおっしゃいました。
「ジェネラルマクシムスあなたは騎士だ、ならMissラグナヴェールの側にいて
MissラグナヴェールをMissアイーシャと守っていただきたい。」
とマクシムス将軍におっしゃいました。将軍は腑に落ちないという顔をされました
が、シノブ様はそんな将軍にこうおっしゃられました。
「僕が使う銃と言う武器は弓矢より強力で飛距離もある……しかも連射もできる強
力な武器だが、近寄られると取り回しにくく、不意に接近された敵に対処しにくい
……それに僕には貴方のように鎧を装備していないので防御力はジェネラルマクシ
ムスの方が上だからジェネラルマクシムスには、Missラグナヴェールの側で守
っていただきたいのだ」
その言葉を聞いて納得したのか、マクシムス将軍は頷きこうおっしゃいました。
「うむ、シノブ殿の考えも一理あるな……分かり申した。」
そして、シノブ様を先頭に、アイーシャ、マクシムス将軍に最後尾がわたくしと
いう順番で、大きなゼンマイの森を進みました。
◇◇◇◇◇
大きなゼンマイの森を抜けると、葦が生い茂る場所へと出てきました。
そこはゼンマイの森より明るく、ダンジョン内(地下)と言うのに昼間
の地上のように青空が広がっていました。
その時、わたくしたちの右手の葦の林から、無数の物体が一斉にわたくし達めが
けて飛んでくるではありませんか。
「Oops!」
「きゃ――――!」
「にゃ―――!」
驚く、シノブ様にわたくしとアイーシャ。思わずその飛翔体を避けるようにシノ
ブ様にわたくしとアイーシャは体をのけぞらせました。
それを見て笑いながら、マクシムス将軍はおっしゃいました。
「はっははぁ~、これはジャイアントポッパーだ、人には害はない」
「ジャイアントポッパー?……確かに体長30cmあるように見えるが」
将軍の言葉にシノブ様がその飛翔体に目を凝らせてそうおっしゃいました。
「でもなんで、急に一斉に飛び立ったんだい?」
そう疑問を投げかけるシノブ様に、両手を天に向け、”さぁ?”と言わんばかりの
ジェスチャーで、
「天敵にでも追われたのかもな」
とおどけておっしゃいました。
「天敵?……あんなに大きなバッタにそんなものがいるのかい?」
とシノブ様がおっしゃったその時です。
”シャキーン”
という音と共にわたくしたちの右側の葦が一瞬にして刈り取られました。
「「なに!」」
「にゃにゃ?」
驚く、シノブ様にマクシムス将軍、そしてアイーシャ。わたくしはあまりの恐怖に
声が出せませんでした。
刈り取られた葦から出てきたのは、身長2mあろうかというマンティス……セイア
様達の世界の言葉で言うカマキリが現れました。
「こいつが、さっきのバッタの天敵!?」
そう叫ぶと、シノブ様はすぐさまカマキリの方に向き銃を構えると発砲されました。
”タタッタタタ”
巨大なカマキリめがけ銃を連射されるシノブ様。
マクシムス将軍は、それを見てすぐさま、わたくしを庇いながらシノブ様の後方
に下がられました。そして、その前にすぐさまアイーシャが入り”吹き矢”と言う
武器を構えます。
巨大カマキリは両腕の大きな鎌を素早く振り、シノブ様の放った銃弾を弾きまし
た。
「なんと!」
それを見て目を丸くして驚くシノブ様。
アイーシャはすぐさま吹き矢に矢を込め、風魔法を唱えてから吹き矢を吹きました。
”シュー”
シノブ様の放つ銃弾のような速さで、吹き矢の矢が巨大カマキリに向かって飛んで
いきました。アイーシャが放った矢は巨大カマキリの右目に当たり、カマキリの右
目がつぶれます。
”グシャ”
右目をつぶされた巨大カマキリは、痛みのせいか、両手の鎌を出鱈目に振りながら
暴れまわります。
シノブ様はその間冷静に銃の下部にグラネードと呼ばれる弾を装填されると、暴れるカマキリの鎌の動きを注意深く観察され、
「It’s now or never.!」
とおっしゃって、グレネード弾を発射されました。
”ブッシュー”
白煙を上げながら、グレネード弾は巨大カマキリの顔に命中しました。
”ドカーン”
と爆音と共にカマキリの顔は吹っ飛びました。顔が吹っ飛んでもしばらく両手の鎌
を振り回していたカマキリですが、やがて力尽きたのかその場に倒れてしまいまし
た。
「おお!お見事!」
シノブ様の戦闘をわたくしの側で見ていたマクシムス将軍は、そう大きな声でおっ
しゃいました。
◇◇◇◇◇
巨大カマキリを倒し、葦の生い茂る場所を抜けますと、足元が段々とぬかるんで
まいりました。
わたくしは、セイア様の世界に行ってから、普段着はスカート丈の長いワンピー
スを着ており、今も薄緑色の半袖のワンピースを着ておりましたが、スカートの汚
れをきにして歩いておりますので、足元が抜かるんで居るのも相まって、少々歩き
にくくなってまいりました。
なので、皆様から度々遅れるようになってまいりました。
わたくし達の世界の靴と違い、セイア様達の世界の靴……ス・スニーカーと言う
靴は布で出来ていて、靴底がゴムと言うもので出来ているとうもので、軽くて歩き
やすいのですが、このぬかるんでいる地面ではそーもいかないようです。
それにわたくしはスカート丈が長いので歩きにくいのです。
はじめはスカートの裾を手で持って歩いていたのですが、抜かるんだ場所を歩く
ので、次第にシノブ様達が歩くペースについて行けなくなってきました。
唯でさえ、戦闘が出来ないわたくしは皆様にご迷惑をおかけしているというのに。
そこで、アイーシャに声を掛けます。
「アイーシャ!……ちょっと」
「姫様、なんですかにゃ?」
そういうアイーシャに耳打ちをし、彼女から短剣を借りました。
そして……
”ビリビリビリ~”
自分のスカートをアイーシャに借りた短剣で切り裂き、短くいたしました。
シノブ様はじめ、マクシムス将軍は、一瞬わたくしの行為に目を丸くされました
が、すぐにわたくしの行為の意とをわかっていただいたみたいで、気づかないふり
をしてくれました。
スカートの丈を短くしたので、歩くペースが上がり皆様にご迷惑をかけることな
く歩くことができるようになりました。 ただ、少々スカートの丈を短く切りすぎ
たようで、その……スカートの中が見えそーなのが気になりますが……。
そんなことを思いながら歩いておりますと、私たちが進む方向に沼が見えてまい
りました。
「What’s this!?」
「なんじゃこれ!」
明日健康診断でバリューム飲まなきゃいけない……
憂鬱だな。




