65話 電風の丘ダンジョン1 (背中の感触)
「「電風の丘ダンジョン~!!」」
と驚きながらミオンと俺はお互い顔を見合わせ言った。
俺達はすぐさま近くの岩陰に隠れて俺は変身した。
両腕を横に開き、それから、両耳の側まで弧を描くように上に上げ、
「☆ブレイヴ☆」
両腕を前に下ろして両手をクロスさせると、
「☆スパーク☆」
(早くこの設定変えてほしい……)
俺は変身後、頭の中のこの異世界のデーターから、『電風の丘ダンジョン』のデ
ーターを見る。
「なるほど、ここは恐らく……『電風の丘ダンジョン』地下4階層。」
「やっぱり~」
俺の呟きにミオンがそう答えた。
現在の状況を考えてみた、戦闘態勢を取る間なくここに飛ばされたので、誰も無
線は装備していなかった。だから、他のメンバーの位置が今の俺には把握できない。
ただ、幸いソフィーと念話ができ、彼女の位置は把握できてる。俺のセンサーの
反応は、ここの一つ上の地下3階層にいるようだ。
また、彼女の話だとシノブとアイーシャさんとマクシムス将軍と一緒に居るとの
ことなので、ひとまずソフィーの身の安全は保たれるってことだ。
後は、ゲキやクレアさんにエドナさん、それにソフィーのお兄さんのフェリクス
王子の行方だが……せめて王子がゲキ達と一緒にいてくれればいいのだが……。
そう俺が考えていたらソフィーから念話が入った。
≪セイア様……セイア様≫
≪どうしたソフィー≫
≪今、お兄様と連絡が取れました≫
≪で、王子は……≫
≪はい、お兄様はゲキ様やクレア、エドナと一緒だそうです。≫
≪そうか、それは良かった不幸中の幸いと言うべきだな≫
≪はい、ただ、お兄様が言うには、自分達が今どこに居るのか、わからない
そうです≫
≪そうか、わかった……それじゃソフィー、フェリクス王子から今見える景色や出
現する魔物が何か聞いておいてくれ≫
≪かしこまりましたセイア様≫
「ソフィーなんだって……」
と念話を終えた俺にミオンが聞いてくる。
「ああ、王子とゲキ、クレアさん、エドナさん4人が今一緒に居るようだ……ただ
、自分たちがこの電風の丘ダンジョンのどこにいるかわからないそうだ」
「そう、とりあえず連絡が取れるし、だれも孤立してないってことは一先ず安心し
ていいよね」
「ああ、一先ずだがな」
とミオンと会話を交わしていると、ソフィーから念力が入り王子が今居る場所の景
色と今現在発見した魔物の名前を教えてもらった。
「おそらく、王子やゲキ達は、この下の5階層に居る」
俺はソフィーから聞いた王子の状況から、頭の中のデーターと照らし合わせてそう
呟いた。
そして、そのことを念話でソフィーに送り王子に伝えてもらった。
「普通、ゲームだと階層が下がるたびにモンスターのレベルが上がるけど……こっ
ちのダンジョンってどうなの?セイア」
と尋ねるミオンに俺はこう答えた。
「同じだ、ただ、ゲームと違うのはセーブポイントやセーフティーゾーンがない。
そして、尚且つ、その階層の魔物の主……つまりボス部屋の奥に各層に通じる転
移門があるんだ。」
それを聞いて、ミオンが俺にこう言った。
「なら、とりあえず各人そのボス部屋の奥の転移門にたどり着ければ外に出れる
ってこと?」
そう聞くミオンに
「いや、そこには各階層から下の階層に進むことしかできない」
と答えるとミオンが
「へぇ、じゃ一方通行ってこと?」
と言うので俺が頷くと、
「外に出るには?」
と聞くので俺は
「外に出るには、最下層つまり地下6階層のボス部屋の奥の転移門にたどり着けな
ければならない。で、この世界の人でそこまでたどり着いた人は誰もいないってこ
とだ」
そう答えるとミオンは、
「だから封印したってこと?……でもさ、それじゃ、なんでここの記録が残ってる
の?」
と疑問を投げかけるミオンに俺が答えた。
「それは、何百年か前の偉人……の伝記に記されて居たんだそうだ」
俺の言葉に”ふんふん”と頷くミオン。
「そして、その人がこのダンジョンを含めて4つのダンジョンを封印したってこと
だ。」
俺がここまで話すとミオンが
「なら、私達もその偉人みたいに伝記になるかな?」
そういうミオンになんで?って顔を俺がすると、
「だって、ここのダンジョン私達が攻略するからよ」
と胸を張り言うミオン。
(まぁ、確かに攻略しないと出れないんだけどね)
◇◇◇◇◇
無数のワイバーンが空に舞っている中、ここでシノブ達を待つのは得策ではない
と判断した俺は、GUY BRAVEのセンサーを使って安全な場所がないか、探
っては見たが……しいて言えば、この岩だらけの世界に点在する小さな森のような
所位か……。
そこで俺はUnicornを呼び出し、ケンタウロス形態に合体し、ミオンを背
に乗せて一番近い小さな森に向かった。
あまり移動速度が遅いと、ワイバーンに狙われる……が、かといって早すぎると
ミオンが振り落とされてしまう。
ミオンには俺の背中にしっかり捕まるよう言って、おおよそ時速100km位の
速度で移動した。
あまりにもミオンが、俺にがっしりとしがみ付くので、ミオンの……その……胸
が俺の背中に当たり、GUY BRAVEであるはずの俺が、なぜか背中に全神経を
集中させ、ミオンのその、大きな胸の感触が……伝わり何とも言い難い複雑な気持
ちになる。
(幾ら、子供のころから知っていて、ミオンに女を感じていなかったとは言え、こ
の状態だと、ミオンに女を感じてしまうよな……やはり俺も所詮、思春期の男だと
言うことか)
そんなことを思いながら、ミオンを背負ったまま小さな森に入った。
熱帯のジャングルのような森の中、背の高い草をかき分け木や蔦を避けて、進ん
でいると、突然ミオンが大きな声で叫ぶ。
「キャ―――――――!」
俺は、体を捻り、後ろのミオンを見て言った。
「どうしたミオン」
「あれ……あ・れ」
とミオンが指差す方を見ると、朽ちて地面に倒れた巨木の上に……。
体長2メートルのムカデ?ヤスデが体を起こし立っている。
俺は頭の中のデーターと照合する。
≪アルトロプレウラ≫
大ヤスデ
落ち葉や草などを主食にする草食系の巨大節足動物。
人を襲うことはない。地球の炭紀で栄えたアースロプレウラに酷似。
但し、ワイバーンが好んで主食としているので、アルトロプレウラ
を見たら、ワイバーンが襲ってくると考えた方がよい。
「はぁ・ん?ワイバーンの主食?ってやばいじゃん!」
思わずそう口にした俺。
「ワイバーンがなに?」
そう聞くミオンに俺が、ヤスデを指差し、
「こいつ、ワイバーンの餌らしい……」
「えっ、やばいじゃんセイア!」
ミオンとそんな会話をしていたら、上空から甲高い声がした。
その声に俺とミオンが空を見上げると、1匹のワイバーンがまさに俺達の方に
急降下してくるのが目に入った。
「やばい!」
そう叫んだ俺は、すかさず左手のマシンガンアームをワイバーンに向け鋼弾を連射
する。
”バリバリバリ”
しかし、俺の放った鋼弾は、ワイバーンの硬い表皮に阻まれ、致命傷は与えられ
ないが、痛みはあるのか途中で急降下を諦め飛び去って行った。
「ふ~う、何とか追い払ったか」
そう俺がため息交じりで言った。
ワイバーンを撃退し、少し気持ちが緩んだのか、俺の背中に……ミオンの柔らか
い胸の感触が再び蘇る。見るとミオンは恐怖のあまり、俺の背中に顔を押し当て、
”ぎゅっ”としがみ付いていた。
「ミオン……ミオン!」
俺の声にミオンがそっと俺の背中から顔を離し、あたりを”キョロキョロ”と見渡
す。
「えっ、もう云った?」
「ああ、もう云ったよ」
そうミオンに笑顔で俺が言うと、ミオンは”ギュッ”としがみ付いていた手を離
し言った。
森の中でも危険だとわかり、俺は再びセンサーで何処か安全地帯がないか探る。
すると、ここに来た時に見えた岩でできた3つの山の真ん中の山の中腹に大きな
洞窟があるのがわかった。
(取りあえず、そこに向かうとしよう)
そう思った俺は、ミオンにそのことを告げ、森を抜けることにした。
草木をかき分け、やっとの思いで森を抜けると、その岩山の中腹の洞窟に向け走
った。
スピードは先ほどより早い時速120km位かな……なので、さっきより更にミ
オンが俺に”ギュッ”と抱き付くので……またあのミオンの……オッパイの感触が
より俺の背中に伝わってくる。
(喜ぶべきか、悲しむべきか……これがミオンでなく、ソフィーならどんなに幸せ
か……)
そんな、ことを思いながらひた走る俺であった。
※この後、その洞窟で更なるピンチを迎えるとは、その時の俺には分からなかっ
た。
次回の更新は7月22日(金)は無理っぽいす。
23日(土)か24日(日)になりそうです。
ごめんなさい。




