59話 エドモンド=ラグナヴェール登場
高さおよそ20mはあろうか、それが延々とここから見える水平線の向こうまで
続いているように見える。
(いったいどこまで続いているのやら……)
そう思って、ニールさんに尋ねてみると、この万里の長城のような城壁はこの
南北に伸びていて、大陸内陸の国境線沿いに何千キロと伸びているそうだ。
ただ、南北の海沿いと東側の海に面したところには、設置されたいない。
この城壁は人を阻むものではなく、あくまで、魔物用なのだそうで、海沿いに
ないのは、海に住む魔物たちは殆ど、水中生活に適していて、上陸して人や町を
襲うことがないからだそうだ。
俺達のトレーラーはその城壁にある大きな門の前で停車した。
トレーラーが停車すると、ニールさんだけが降りて、その大きな門の前に立ち
、門の右の脇にある縦60cm、横30cmの黒板のような板に向け杖を振り、
空中に文字のようなものを書く。
ニールさんが空中に杖で書いた文字は光りながらその黒板に吸い込まれていくと
、静かに大きな門が内側に開いた。
ニールさんの後を追い、俺たちの乗るトレーラーと後方の荷物用トレーラーもゆ
っくりと門の中に入った。
門の中に入ると、待ち構えていた数人の騎士達とニールさんが何やら話したかと
思うと、ニールさんは再びトレーラーに乗り込み、先導する騎士達の後をついて行
くように運転する時田さんに指示した。
騎士達に先導され、のどかな小麦畑が続く景色の中を2台のトレーラーが進んで
行く……。時折、農作業をしている人達が、騎士達に先導され、見慣れない2台の
トレーラーを作業の手を止め見とれていた。
騎士達に先導されて歩くようなスピードで、進むこと1時間、のどかな小麦畑の
景色から次第に、中世のヨーロッパ風の建物がチラホラ見えだし、やがて、風景が
大きなお屋敷が立ち並ぶようになったころ、街の中心部に堀に囲まれたまるで、某
アトラクションのシンボルのようなお城が見えてきた。 お城全体は白い大理石で
、城にある4つの塔の屋根は鮮やかな青。まさにファンタジーって感じのお城だ。
お城の正面に着くと、城の跳ね橋が降りてきて、それを渡る。トレーラーは大丈
夫だろうか、結構重いから……と俺の思いをよそに先導する騎士に続き、2台のト
レーラは無事城の中に入った。
城に入ってそのまま城の中庭まで進み、そこでトレーラーを止め俺達はトレーラ
ーから降りた。
時田さんはここで、騎士達の従士達にオートマトンの積み込み作業を指示するた
め、ここに残ることになった。
また、クレアさん、エドナさん、アイーシャさんも積み込み作業を手伝うためこ
こに残るそうだ。
実は、今回俺達はお忍びでこのイーシャイナ王国に来てるため、謁見の間で王と
対面するのではなく、この城の王族専用プレイベートエリアに招かれている。
ニールさんや、俺達異世界人(この世界の人達にしたら)はいいが、ソフィーの護
衛といえど、平騎士の身分では立ち入れないそうだ。
俺達はトレーラーを降りて、上級騎士さんの案内で今から、王族のプライベート
エリアに向かおうとした時、例の問題児がまだトレーラの中に残っているのに気付
く、案内役の上級騎士さんに少し待ってもらうようお願いして、
「あ~ん、またミオンだ、あいつ何してるんだろう」
と俺が少しイラつき言うと、
「また、例の病気がでたんじゃないか」
とゲキが言う。
「だろうな……」
俺とゲキが半ばあきれるように話していると、トレーラーから元気よく飛び出した
ミオンが、
「おっまたせ~」
と悪びれることなく言う。
「お・おまっ……」
っと俺がトレーラーから出てきたミオンを一目見て絶句していると、
「えへえへ~やっぱ王様に会うんだからね~失礼のない恰好をしないとね」
と満面の笑顔で言うミオン。
今回、王と会うとは言え、王族以外人目につくことはないので、普段着でいいと
、ニールさんから言われていたので、俺はいつものロンティーに半袖のワッペンシ
ャツを羽織り、ジーパン。シノブは緑の半袖のポロシャツに白いパンツ、ゲキはグ
レーの着流しの着物、そしてソフィーはロングスカートのカラードレスっていうか
所謂お姫様ドレス。
まぁ、お姫様であるソフィーは例外として、皆、普段着を着ているというのに…
…ミオンが着ているとか着替えた服装は……なんと、アイドルグループJKB58
(ジェイケイビーフィフティーエイト)の衣装。スカートがかなり短い。
(まぁ、こいつに何を言っても無駄か……)
◇◇◇◇◇
上級騎士さんの案内で、王族のプライベートエリアにある所謂、応接室に通され
る。広さは30畳くらいはあろうか、そこに置かれた調度品といい、テーブルやソ
ファーなんかもかなり高そうだ。
王と王妃が現れるまでしばしの時間ソファーに座って待っていた。
しばらくして、応接室の扉が勢いよく”ガバッ”と開いたかと思うと、突然身長
180cmで少しガタイの良い中年の男の人が入ってきた。そしてその後ろをには
ソフィー似の女性が立っていた。
「すまんすまん、待たせたな」
そう俺達に声を掛け、俺達がソフアーから立ち上がろうとするのを右手で制し、
そのまま座っているようしぐさで示すが……。
ソファーに座りなおす俺達の中、その中年の男性の視線が一点に釘づけとなった。
その視線の先を目で追った、王の横に居た女性が、
「あ・な・た!」
その女性の声に”はっと”して我に返った中年の男性が、
「いや~つい・この世界ではあまり見ないのでな……」
と頭を掻きながら、隣の女性に謝るしぐさをする中年の男性。
中年の男性が見とれていたのは、JKB58の格好をしたミオン……のミニスカ
ートから見える太もも(生足)であった。
ちなみに、後で聞いたら、この世界では騎士やTreasure Hunter
(冒険家)のような戦闘に従事する女性以外は、ロングスカートを履き、足を人前
で見せないのが、普通なのだとか……。
(髪はソフィーと同じブルーでオールバックにして、後ろの髪の毛をポニーテール
に結んでいる。髪の色がソフィーと同じなので、たぶん彼が王なのだろう。と言う
ことは、後ろの銀髪のソフィーに似た女性は王妃ってか、ソフィーのお母さんって
ことだよな。)
と俺が心で思っていたら
「お父様~」
「おお、無事だったか心配したぞ」
「ご心配かけて申し訳ございません……勇者様に助けていただいて、難を逃れるこ
とができました。」
ソフィーは、そう王に言うと王はソフィーの手を取り、黙ってうんうんと頷いた。
そんな王に対し、ニールさんがにこやかに笑いながら
「エドモンド公、お互い自己紹介いたしませんか?」
と言うと、王は
「おーそうであったな」
と言ってソフィーから手を離し、俺達に向き直ってから言った。
「私は、エドモンド=ラグナヴェールこのイーシャイナ王国の王を務めておる。」
王の言葉を聞いて隣の婦人が続いて言った。
「わたくしは、エドモンドの妻のカリーナです。」
そう言って少し会釈するしぐさを見せた。
王と王妃が自分の席に着くのを待って、まず俺が口火を切った。
「セイア・オオワシです。王様」
そう言って立ち上がって王に対して臣下の礼を取ろうとしたら、
「いや、ここは身内しかおらぬ。そのような真似はせんでくれセイア殿」
「そうですよセイア様……いえ、勇者様」
王と王妃は俺ににこやかに言う。
俺の自己紹介の後、ミオンが続いた。
「私はセイアの幼馴染のミオン・シラトリです。王様」
そう言って王と王妃の方を向き立ち上がって、足をクロスさせアルブ王国
でもした……スカートをつまんで、少し膝をまげる。
一瞬、王と王妃が固まる。そして王妃がミオンに言った。
「ミオン様、先ほど王が申しました通り、こちらの形式でご挨拶いただかなくても
、結構ですよ」
そう言いながら、顔が引きつってる。そして今だミオンにロックオン状態の王の
手の甲を”ぎゅーっと”強くつまんだ。
「い!いたい!」
そう言いながらミオンから目を離し、王妃の顔を見た王は顔を引きつらせた。
「あ・な・た・……」
「はい、ごめんなさい」
小声ではあるが、王が王妃に睨まれ、少し小さくなってるように見える。
(たぶん、アルブ王国の時と同じで……王と王妃に見えたんだろうな……
ミオンのパンツ)
そう俺が心で呟いていると、
空気が読めたのか、読まなかったのか、シノブが自己紹介する。
「Mynameis Sinobu Meitliks.」
そう言うシノブに王は引きつり笑顔で会釈をして答える。
シノブに続いて、ゲキが
「お初にお目にかかる私は下峠 激……」
とそこまで話したとき、ミオンに着物の袖を引っ張られ、
「あっ、ゲキ・シモトウゲです。」
と慌てて言い直した。
◇◇◇◇◇
夕方、王様とのお食事会、時田さんも合流し、9人つまり、王に王妃にソフィー
のラグナヴェールファミリーに、俺、ゲキ、ミオン、シノブ、ニールさんに時田さ
ん……残念ながらクレアさんエドナさんアイーシャさんはやはり、同席できない。
夕食のメニューは、所謂フランス料理のフルコース風の料理だった。
ソフィーの父エドモンドさんは、顔に似合わず結構気さくな人っていうか、おしゃべ
り好きな人みたいだ、自分の話に夢中になりすぎて、身振り手振りを加えて話す。時
折テーブルマナーを無視して、ナイフやホフォークを振り回して喋るので、妻のカリ
ーナさんにそのたびに叱られてる。
(まるで、うちの とうさんそっくりだ)
アルブ王国の時と違い、俺達とラグナヴェール家(王家)だけの食事なので結構
気が楽に食事ができた。当然、ソフィーに出会ってからのことや俺達の世界の話も
聞かれたが……。それ以上に王の若かりし頃の武勇伝を永遠聞
かされた。妻のカリーナさんが止めなければ一晩中でも話ているんだろうなこの人。
何とか夜10時には解放され、俺達は各自用意された部屋で休むことができた。
俺達に用意された部屋が変に豪華で大きい……まるでホテルのスイートルームの
ような大きさ。
(俺は泊まったことないけどね)
ソフィーの両親登場でした。
『説明』
・某アトラクションのシンボルのようなお城=デ○ズニーランド
・アイドルグループJKB58(ジェイケイビーフィフティーエイト)=A○B48
【お知らせ】
7月は4日(月)からのUPになります、時間も朝7時です。
ただ、7月からは毎日更新が……正直きついっす。
なので、月、水、金の週3回のUPになります。
↑ごめんなさい、間に合わなくなりました何とか7月8日ごろUPできるよう
頑張ります。




