58話 地下道
シノブの誕生会を終え、俺達は再び異世界のケンタウロスの砦に戻ってきた。
ここを俺たちの基地として利用するためだ。
ここを、俺たちの基地に改造するためには、人手がいる。
しかし、かといって俺達の世界から大量に人を移送するわけにもいかず……。
そこで、ソフィーの父エドモンド=ラグナヴェールが俺達のために農作業用オー
トマトンを大量に貸し出してくれることになった。もちろんそのままでは使えない
がオートマトンに内蔵されてる魔法円をニールさんが書き換え使用することに。
俺達の世界風に言うとプログラムの書き換えみたいなものかな。
本来はアルブ王国から禁止されているが、先の王との謁見の時にニールさんに許可
されていたらしい。
今回、それを受け取りにイーシャイナ王国へ向かうことになる。ここの地下通路
を使って。
イーシャイナ王国から貸し出されるオートマトンは100体なので、それを運ぶト
ラックっていうかトレーラーを別に用意した。俺達の使ってるトレーラーと同じく
電動式ではあるが、幅、長さが少し短い……と言ってもアメリカで使われているコ
ンボイタイプのトレーラーなのでかなりデカイけど。
◇◇◇◇◇
「では、出発します。」
と時田さんが言ったので食堂兼作戦室にいた皆が頷くと、それを見た時田さんは一
人運転席に向かった。
ウイーンとモーターのうねる音がして電車のような加速感を味わいながら、トレ
ーラーはトンネル(地下通路)へと入っていく、その後ろを無人の荷物用トレーラ
ーが続いた。
ちなみにこの荷物用トレーラーは自動運転と追尾装置がついており、安全に俺達
のトレーラーの跡をついてこれるという訳。
俺達のトレーラーがトンネル(地下道)に入るや否や、砦の他のフロアの天井と
同じように天井事態が”パッ”と明るくなる。おかげでトレーラーはヘッドライト
を点灯することなく地下道を進むことができる。
しばらくして、運転席から時田さんが俺達のいる食堂兼作戦室に戻ってきた。
「では、お願いいたします。」
と時田さんがミオンに頭を下げると、ミオンはそれを聞いて、
「OK」
と言いながら運転席に向かった。
このトレーラーも当然、荷物用トレーラー同様、自動運転装置がついている。
今まで使っていなかったのは、道なき道を進まなけらばならず、しかも、この世界
では、GPSが使えないので使用していなかったが、地下通路はGPSが使えない
ものの、整備された道……通路なので、ここなら使えるという訳。
ただ、とは言え、不測の事態が起こらないとは限らないので、時田さんからレク
チャーを受けた俺達現代人(俺、ゲキ、ミオン)ともともと運転のできる時田さん
とシノブの5人で交代で運転席に座ることになっている。
今はミオンの番ってわけだが、正直運転席に座ってもすることはない。すべて自
動だから、ただ、充電をするときには手動でこのトレーラーを止めなけらばならな
いって言ってもプレーキペダルを踏み、完全に停止したらハンドブレーキを掛ける
だけ……なんだけどね。
◇◇◇◇◇
することがないので、俺は食堂兼作戦室の大型モニターを”ぼー”と見ていた。
天井は金属のような板状で継ぎ目がなく光っていて通路全体を明るく照らしており
、横の壁は岩をそのままくり抜いた感じの壁で、道の部分は現代世界アスファルト
やこの世界の石畳でもなく……どちらかと言うとコンクリートかな?色的に……で
も、継ぎ目が一切ないのでトレーラーはほとんど揺れない。おかげで時速100K
mのスピードで現在移動中である。
そして、時折、10マイル(約16km)ごとに広場にでる。たぶん、ここはケン
タウロス達が休憩をとる場所なのだろう……広さはかなり大きく、地方都市の市民
球場ぐらいはあるかな……目算だけど。
ケンタウロス砦からイーシャイナ王国近くの地下道出口まで、約1000kmこの
ままのスピードで行けば、単純に10時間だが、このトレーラーの航続距離は残念
ながら600kmしかない、途中一度は充電しなければならず、一回の充電には最
低5時間はかかる。今回は、この安全な通路中2回充電することになっている。
トンネル(地下道)を出ても、イーシャイナ王国に着くためには、しばらくはその
まま草原を走ることになるからだ。
◇◇◇◇◇
朝7時に出発して今はお昼の12時。今は俺が運転席に座っている番。
そろそろ充電をしなけらばならない。と思っていたら、ちょうど例の広場に差し掛
かったので、トレーラー停車させた。
「充電をかねてお昼にしよう~」
俺がそう無線で皆にいた。そして運転席を離れ、皆の居る食堂兼作戦室に向かう。
「おつかれ~」
「お疲れさまでした大鷲様」
「お疲れ様ですセイア様」
ミオン、時田さん、ソフィーに声を掛けられて、食堂の席に着こうとしたらソフィ
ーが駆け寄ってきて、
「エネルギー補給をセイア様」
と言ってきたので、
「いやいや、俺、変身してないから魔力補給はしなくていいよソフィー」
と言い返すと、少し残念そうな顔をして、自分の元の席に着いた。
しばらくして、時田さんが出来立ての料理を各人の前に置いていく。
「「「「「「「「「いただきま~す」」」」」」」」」
皆で、手を合わせてお昼をいただく、今日のお昼ご飯は……。
『タコライス (Taco-Rice) 』
確か……メキシコの郷土料理、タコスの具である挽肉・チーズ・レタス・トマト
を米飯の上に載せた沖縄料理。辛みをつけたサルサソースを乗せて食べるやつ。
(サルサの辛さが食欲をそそる)
って俺が食べながらそう思っていたら、例の大食い2人組みはもう2杯目のおか
わりをしている。
◇◇◇◇◇
お昼ご飯を食べた後、俺はトレーラーの外に出て変換器を2台出し、それぞれ2
台のトレーラーにつないで、変身する。そして、両腕をエレクトリーアームに変え
、右手を俺達が乗るトレーラーにつないだ変換器に、左手を荷物用のトレーラーに
つないだ変換器に突っ込むと電気を流し始めた。
俺が充電している間、ゲキ、クレアさん、エドナさん、アイーシャさんもトレー
ラーの外の広場に出てきて、模擬戦を始めた。
その傍らには、時田さんとシノブに拳銃の射ち方を教わるミオンがいる。
前々からミオンが丸腰では、あまりにも危険だろうという話になり、ミオンに射
撃訓練をすることになったようだ。
拳銃を持つにあたって、ミオンが選んだ拳銃は……【ワルサーP38】。そうあ
の国民的アニメの大泥棒さんが使っていた拳銃をチョイスしたみたいだ。
ちなみに、その大泥棒さんのアニメは、うちのとうさんだけでなく、かあさんも
大好きなアニメだ。
【ワルサーP38】
ドイツの銃器メーカーであるカール・ワルサー社が開発した軍用自動式拳銃で、第
二次世界大戦中にはドイツ陸軍に制式採用されている。 弾薬は、9x19mmパ
ラベラム弾を使用し、装弾数は単列マガジンによる8+1発。
さっきから、何発も撃っているが、ほんの2~3m先からでも的を射抜けないで
いる。
(ミオン、お前射撃の素質ないんじゃねーの)
ソフィーとニールさんはトレーラーの中で、受け取るオートマトンの書き換え用
魔法円を制作中だ。
◇◇◇◇◇
5時間後、充電が終了し、変圧器を片付け、変身を解いた。
すると、ソフィーは待ってましたとばかりに俺に駆け寄り、熱い抱擁を交わし、そ
して熱いkissを交わした。
kissを終えるといつものようにソフィーは目がトロ~ンとして、しばらく放心状態。
(なんか、ソフィーこれ癖になってないか?)
その後、トレーラーを発進させ、皆で夕食をトレーラーの中で食べる。
夕食は、『ポークチャップ』
この”チャップ”て実は『ポークチョップ』がなまってチャップになったんだそ
うだ。俺達日本人には洋食屋さんのメニューの定番として認識していたが、アメリ
カの料理だそうで、時田さんのは、豚の骨付きあばら肉をソテーした後、甘辛いデ
ミソースで煮込んでいてすごくおいしい~。付け合わせのほうれん草と別に、ポテ
トサラダを作ってくれていた。
◇◇◇◇◇
夜の11時、そろそろこの地下道の終点に近づいてきたので、その手前の広場に
トレーラーを止め二回目の充電作業をする。ここからまた、5時間充電作業をする。
俺以外のメンバーは交代で一人ずつ見張りをすることになっていて、他のメンバ
ーは就寝してもらっている。
朝6時充電作業が完了し、トレーラーの中で、ここで定番になっているシリアル
の朝ごはんを済ませ、俺達のトレーラーの運転席には、時田さんが、そして後ろの
荷物用トレーラーの運転席にはシノブが乗り込み。トレーラーを発進させた。
そろそろ、トンネル(地下通路)の出口が近いため、自動運転から手動に切り替
えての発進となった。
走り出して30分もしないうちに目の前に大きな壁が見えてきたので、運転する
時田さんはスピードを緩めた。当然後ろを走るトレーラーのシノブもスピードを緩
めた。
すると、壁の手前の天井部分に見えるランプが、赤から青色に変わったかと思う
と、前方の大岩が二つに割れ、外の日差しが入ってくる。トレーラーが出口を出る
とその二つに割れた岩が元の一枚の岩に戻った。
運転する時田さんとシノブは、トンネルの出口を出たところで、それぞれのトレ
ーラーを停車せさる。
俺、ニールさん、時田さん、シノブがトレーラーから降りて、その大岩に近寄り
その岩を丹念に調べるとい大岩の左角に……ケンタウロス砦の地下4階の入り口と
同じ30×30cmの正方形の中に5cm角のタイル状の物がはまっていて真ん中
が開いている。
試しに俺が地下4階の入り口と同じ配列で並べなおしてみると”ズズズズッ”と
重そうな音を立て、大岩が二つに分かれて、今さっき俺達が出てきたトンネル出口
が見えた。
(なるほど……)
地下道を出て草原を走る(時速40km~60km)こと2時間。
目の前に大きい?と言うか長いというか、まるで万里の長城のような
壁が見えてきた。
いよいよ、目的のソフィーの故郷、イーシャーナ王国に着いたようだ。




