5話 Unicorn
ソフィーの裸体を見た時、奇しくも彼女の3サイズを知ってしまった俺。
(ってか、今名前と年齢出てなかった?……それにCカップ!?キャシャな体の割には、胸あるんだね……いや、いかん、ふざけた設定……いや……シノブGood job!♪)
と内心喜んでしまう……俺。
(イカン!いかん!)
俺は頭を左右に振って雑念を祓う。ソフィーの体に纏わりつくジェル状の物体をよく見る。
そのジェル状の物体は透き通っているので、纏わりつかれてる部分も見えちゃう。
(わぉ~!……イカン、いかん。)
俺は再び、頭を左右に振って雑念を祓う。ソフィーに纏わり付いているジェル状の物体をもう一度(今度は真面目に)見ると、
≪Combat Power200≫
≪Energy2,000/1,000≫
(名前は出ないのか……たぶん……奴だろうけど。)
そう思った時、頭に浮かんだ数値に違和感が……
≪Energy2,000/1,000≫
(?Energy……が保有数値超えてないか?……)
その時!!
「キュェ~」
って、叫んでソフィーの体に纏わり付いていた、ジェル状の物体は、”バフ”と音をあげ、爆発して地面に落ちた。
≪Combat Power0/200≫
≪Energy0/1,000≫
≪Death≫×1
ソフィーと俺は頭に?を浮かべていたが……
「気持ち悪かったです~」
って、ソフィーが俺にしがみついた……素っ裸で。俺の心臓は張り裂けんばかりに高鳴る。本来なら男にとって、夢のような状態……。
しかし、いかんせん今の俺は、GUY BRAVA。体がロボットってか、アンドロイド。彼女の温もりくらいは感じられるが……。
≪One’s Name Sophie-Lagunaveil≫
≪Age 16≫
≪Height1.58Meter≫
≪B 80≫
≪W 56≫
≪H 83≫
≪Cup C≫
≪Combat Power0≫
≪Energy∞≫
≪Body Temperature36.6℃≫
ってな具合に。
でも、目の前の裸体に目を奪われ、それどころではない。たぶん、生身の俺なら顔を真っ赤にして、鼻血ものだろう。
「ちょ……ちょ……ソフィー」
と恐る恐るソフィーに声をかける俺。
「?」
ソフィーは状況が分かってないのか、俺に裸のまま抱きついている。
「取りあえず……服……着ようか。」
と、ばつが悪そうに、ソフィーに声をかける俺。
「キャ!……とんだ祖相を。」
顔を真っ赤にして、俺に抱きついていた手を離し、後ろを向いてしゃがみこんで言うソフィー。
(いやいや……おしり見えてるよ……可愛いおしりだけど……)
俺は、ソフィーの側にあった着替えを渡し、後ろを向いた。慌てて、着替えながら……
「大変、お見苦しい物をお見せして申し訳ありません。」
俺に謝るソフィー。
(いやいや……福眼、福眼。)
「いや……綺麗だと……。」
俺の呟きに、ソフィーは顔を真っ赤にしながら、
「あ……ありがとう……ございます。」
少し照れながらお礼を言ってきた。
(むしろ、俺がお礼を言いたいぐらいだが……)
ソフィーの着替えが済んだので、念のため樽の中を確認したが、ジェル状の物体は、居ないようだ。その後、ソフィーに話を聞くと、やはりこれは”スライム”だと言う。他の生物の魔力を吸い取って、生きている魔物らしく、魔力を吸われるだけなので、襲われて死ぬことはないらしい。
たまに、人里離れた湖や池などに生息してるそうだ。そう言うところの水を使うときは、1度沸騰させてから使うのが、この世界の常識らしい。スライムは火に弱いと言うより、100℃に熱すれば死滅するらしい。
(確か68℃にしか熱してなかったよな……。)
「ごめん、ソフィー俺が水を沸騰させなかったのがいけなかった。」
ソフィーに頭を下げて謝ると、
「いえ、勇……セイア様はこの世界の事をお知りにならないのですからこれは、わたくしの失態です。申し訳ありませんでした。」
あべこべに謝られてしまった。
(謝る姿が可愛い♪)
「ところで……さっきのスライムは何故死んだのかな?」
と俺の疑問に、
「おそらく……わたくしの魔力が多かったのと、急激に体内に魔力が流れ込んだせいかと。」
「なるほど……」
俺は顎に手を当てて思い返してみる。
≪Combat Power200≫
≪Energy2,000/1,000≫
(まぁ、過充電みたいなものか……ソフィーの魔力量が多いって?)
と思いながら、ソフィーを検めて見てみる。
≪One’s Name Sophie-Lagunaveil≫
≪Age 16≫
≪Combat Power100≫
≪Energy∞≫
(やはり、俺が認識すれば、固有名詞が出るのかもね。
うん!?≪Energy∞≫???∞……ってこれ!無限大の記号だよな。)
と疑問が頭に浮かんだので、
「ソフィー……ソフィーの魔力って無限大なのか?」
俺が問いかけると……
「あーどうでしょう、人よりかなり多いらしいですが……そう言えば、魔力を測る魔道具で測りますと、いつも壊れてしまいます。」
右手の人差指を顎にあて、目線を上に向け言うソフィー。
(このしぐさも可愛い。……なるほど、計測不能なくらい多いって言うことだよな。)
と考えてると……
「ゆ……いえ、セイア様は魔力がお見えになるのですか?」
と聞いてくるソフィー。
「いや、見えるというか、例えばソフィーなら……≪Combat Power0≫、≪Energy∞≫とか、……さっき、ソフィーが、抱きついた時はそれに加えて、≪BodyTemperature36.6℃≫って見えた。」
(その他の内容は彼女に内緒だ。)
それを聞いて、ソフィーはまた顎に右手の人差指を当てて、考え込む。
「Combat Powerは……
”戦闘力”。”BodyTemperature”は体温?!Energyという言葉は、よくわかりませんが、この世界だと……やはり魔力がそれに当たる言葉かもしれませんね。」
(まあ、そう考えるのが妥当だろうな……。)
ソフィーの数値の話のついでに、自分のも見てみる。
≪One’s Name GUY BRAVE≫
≪Lv3≫
≪Combat Power 30,000≫
≪Energy10,000/10,000≫
(?なんかEnergyが元に戻ってる。)
俺が首をかしげてると、
「どうかなされました?」
不思議そうに聞いてくるソフィー。
「いや……≪Energy10,000/10,000≫ってEnergyが元に戻ってるんだよ。戦闘終了時には、≪Energy8,OOO/10,000≫だったのに。」
と俺が言うと。
「それは、自然なのではないでしょうか?」
「?自然回復ってことかい。」
と俺がソフィーに聞き返すと、コクコクと頷く。
「体力でも、休息をとれば元に戻るのと同じかと……」
上目づかいで、俺に言うソフィー。
「少々回復が早いように思うが……まぁ、そう言うことにしとこうか。」
と言いながら1人頷く。
◇◇◇◇◇
ここの湖にはスライムが居ることが分かったので、とっとと、ここから離れる準備をする。ソフィーとニールさんが、乗っていた王族専用の箱馬車は、人が四人くらいしか乗れないし、荷物が全く載せられないので、ここに置いて行くことにした。
幸いここから、アルブ王国までは馬車で1日半、程度らしい。 ただ、馬がないことと、今からだと、後数時間で夜を挟むことになるので、2回程度は夜営をすることになるだろうが……
それも馬が有ってのこと。ふと”馬……”で気付いた。
(確か俺、馬ってか、ユニコーンのデザインしていたような……)
そう心で思ったら、≪Support Machine≫の項目が頭に浮かぶ。
その項目を念じてみると、
≪Unicorn≫
≪Phoenix≫
≪Weiß Delphin≫
の3つの項目があり一番上のUNICORNは白。以外は、字がグレーで、どうやらオミットされているようだ。
試しに。
「Unicorn~!」
と、叫んでみると……突然、俺の近くに光の玉が現れたかと思うと、そこから、メカニック的なデザインの一角獣……Unicornが現れた。
(設定では、秘密基地から出撃するはず……だけど。)
それを見て、目を白黒させて驚くソフィー。本来、このUnicornとGUY BRAVE合体してKentauros形態になる。これは地上での戦闘においてGUY BRAVEの機動力UPを行うものである。
初めは合体しようかと思ったが、合体しなくても俺の考えが分かるみたいなので、荷馬車に繋ぎ、そのまま馬代わりに荷馬車を引っ張ってもらうことにした。
本来、2頭立ての荷馬車なので、Unicorn 一体で引っ張れるかな?って思っていたら、流石、機械仕掛けの馬ってか、Unicorn グイグイ荷馬車を引っ張って行く。
ソフィーの話によれば、通常の2頭立ての馬車のスピードよりも早いそうだ。早いと言っても、時速40~45km。とGUY BRAVEのセンサーが、俺に教えてくれる。
一応、俺は手綱を持って御者席に座ってるが、何もしなくても俺の考どおり動くので形だけである。ソフィーは、荷馬車のホロ内から、俺の座る御者席の後ろで地図を広げ、時折、進路を支持してくれている。
◇◇◇◇◇
出発して2時間弱くらいだろうか、日が傾き綺麗な夕焼けが草原を照らしている。
(何時だろう?)
と思った瞬間頭に≪PM06:39≫と頭に浮かぶ。
(便利と言えば便利な機能だな。)
さて、本来は、夜営することになるのだが……2人しかいない。
この辺は魔物が少ないとは言え、まったく魔物が出ない訳ではない。それに、またオブリヴィオンの連中が襲ってこないとも限らない。魔物と戦ってる最中にでも襲われたら、多勢に無勢。ソフィーを守りきれるかわからない。GUY BRAVEの視界は赤外線モードに切り替えられる。Unicornも、同じ能力があるようだ。
なら、このまま疾走すべきである。とは言え食事を取らなくてはならない。
今の俺には食事は要らないが、生身のソフィーはそう言う訳にはいかないだろう。
「ソフィー、そろそろ夕食の準備した方がいいかな?」
ソフィーに声を掛けると荷馬車のホロの中からひょいと顔だけを出し、周りを見渡して、地図を見直し、
「そうですね……この辺りは地図ですと、大した魔物は出ないようなので……
ここらあたりで、先に食事をすませておいた方がよろしいかと。」
ソフィーの言葉に俺が頷くと、同時に荷馬車が停止する。
(流石、GUY BRAVAの支援機だな。)
◇◇◇◇◇
俺が炭を積み火を熾している間に、ソフィーは乾燥野菜やベーコンを適当に切り、煮たった鍋に放り込み、そこに、オートミールを入れて、恐らくコンソメの顆粒のような物を入れ、塩、コショウを適当に降っている。
(簡易的な料理と言え、お姫様が料理をするなんて……。)
不思議に思いソフィーに尋ねてみた。
「ソフィーってお姫様だよね……慣れてるみたいだけど。」
と言う俺の疑問にソフィーは、
「あ……まぁ、はい、城の中ではすべて侍女がいたしますが。 ただ、この世界では戦争や魔物との戦いで、いつどうなるか分かりませんので、簡単なことくらいは、自分でもできるように……とお母様が。」
と微笑みながら言うソフィー。
完成したオートミールのスープを皿に盛り付け、硬いパンと共に俺に差し出して、
「お口にあうかどうか……。」
恐る恐る俺に差し出すソフィー。……おいしそうな臭いはする。
(嗅覚はあるみたいだ……)
しかし、……GUY BRAVEには食べるための口がない!
「いや、この姿だと食べれないんだよ。」
と申し訳なさそうに言う俺に、
「兜を外されたらいかがでしょう。」
にっこり笑いかけるソフィー。
俺は困りはてて、
「いや……取れないんだよ。」
「へっ?」
俺の”取れない”と言う言葉の意味が分からず、固まるソフィーであった。