56話 いっつ、しょう~たいむだ
ソフィーの部屋の片付けを俺も手伝っていたが、途中から部屋を追い出された
ので、その間に再びゲキに電話する。
「こっちは、ほぼOKだが、ゲキの方はどんな感じだ?」
と聞く俺に、ゲキはこう言った。
「う~ん、今アイーシャさんもエドナさんの方も仕上げに入ってる所だ」
「そうかわかった、出来次第、エドナさんをこっちに向かわせてくれ」
そうゲキに返事をし、電話を切った。
◇◇◇◇◇
「じゃ、私取りに帰るからその間セイアよろしくね」
ミオンは俺にそう言い、
「おじさん、おばさん、一旦私は帰ります……また来ますけどね。あっ……後で
もう一人女の子が来ますけどよろしくお願いしますね」
出て行った。そのミオンの言葉に、とうさんはニコニコして、
「えっ、また1人女の子が来るのか……今日は千客万来だ~」
そう言う、とうさんを かあさんは、呆れ顔で見ていた。
◇◇◇◇◇
しばらくして、俺、ソフィー、クレアさんにうちの とうさんと かあさんで
お茶を飲んでいる頃 うちの玄関のほうから声がした。
「エドナ・エリスと申します。セイア・オオハシ様は御在宅ですかぁ~」
その声を聞いて、俺が玄関に向かおうとすると……俺を追い抜いて、とうさん
が玄関に走って行った。
(おいおい、なんで とうさんが出るのよ~)
俺が玄関に着くと、すでにうちの とうさんがエドナさんを出迎えていた。
とうさんの出迎えに戸惑うエドナさん。そんな時に俺が玄関に現れたみたいで、
”ホッ”とした様子のエドナさん。手には大きな箱が……。
「あっ、セイアさん……この方は」
と聞くエドナさんに俺が
「ああ、俺の とうさんだよ」
と言うと、エドナさんは慌ててお辞儀をしようとして、持ってた大きな箱が手か
ら滑り落ちた。
「あっ!」
と言うエドナさんが言うも、俺は素早く滑り落ちた箱を両手でキャッチした。
「ふぅ、~セ―――――フ」
俺が間一髪、箱をキャッチしたのを見てエドナさんも”ふぅ~”って息をつい
た。
「その大きな箱……なんだ?セイア」
俺達が焦ったのを見て、とうさんが俺に聞いて来た。
「エドナさん特製の誕生日ケーキ」
「ほら、こないだミオンの誕生日にクッキーを焼いてくれたのエドナさんなんだ
よ とうさん」
俺がそう言うと、とうさんは目を見開きこう言った。
「おお、あのおいしいクッキーって、このべっぴんさんが焼いてくれたのか!」
そう言うとうさんにエドナさんが首を傾げ聞く、
「べっぴん……さん?」
俺は首を傾げ聞くエドナさんにこう答えた。
「べっぴんさんって……綺麗な人、美人だってことだよ」
そう言うと、エドナさんは頬に手を当て少し照れながら
「あ・ありがとうございますぅ~」
「照れる顔もいいねぇ~ホントべっぴんさんだ~まるでファンタジーに出て来る
エルフのようだ~」
と言う とうさんの言葉に少し”ギクッ”として
(まぁ、本当にエルフなんですけど……)
◇◇◇◇◇
ンドワン国大使館の裏庭で、汗を拭きながら庭のベンチに座り、時田さんから
水を受け取るシノブ。
「ふ~結局、時田を攻めきれなかったな~」
汗を拭きながら言うシノブに時田さんは言う。
「いえいえ、ぼっちゃまのパンチはガードの上からでも重うございました。」
と言いながら真っ赤になった両手の甲を見せた。 それを見て、シノブはニコニ
コっと笑って
「おぉ、そうか時田」
と喜ぶ。
その時、シノブが地面に脱ぎしてた上着のポケットに入っているスマホの着信音が鳴った。
「誰だろう?」
そう言って、シノブは手のグローブを外し、上着のポケットを探ってスマホを取り出し、
「Oh、Mr.シモトウゲどうしたんだい~」
◇◇◇◇◇
「うん、わかったそれじゃ」
俺はそう言ってゲキからの電話を切った。
ゲキの話だと、シノブがゲキの家に向かったことを聞き、俺たちもパーティー会
場にもっていく物の準備をすることにした。時田さんがシノブをゲキの家に送り届
けた帰り、俺の家に迎えに来るそうだ。
しばらくして、ミオンもシノブに渡すプレゼントをもって、俺の家に戻ってきた
ころ、時田さんの運転する黒塗りのセダンが俺の家の前に止まる。
「とうさん、かあさん、それじゃ~言ってきます。」
「おじさま、おばさま言ってまいります。」
「それでは失礼いたします。」
「お邪魔しました~」
「そんじゃ、おじさん、おばさん行ってきま~す。」
俺、ソフィー、クレアさん、エドナさんにミオンがそれぞれ俺の両親に挨拶する。
「「いってらしゃ~い」」
それをにこやかに見送る俺の とうさんと かあさん。
俺たちは、時田さんが運転する黒塗りのセダンに乗り込むとンドワン国大使館
に向かった。
◇◇◇◇◇
「ほ~うちのDaddyのコレクションルームに負けず劣らずのコレクションだね
ぇ~」
と感心しながら、ゲキの家の離れにある『撃心流の武器の展示室』に展示している
武器を眺めながらシノブが言う。
ちなみにゲキの家の敷地はちょっとしたお寺ぐらいの敷地の中に、普段生活する母屋
と道場、馬小屋に、ちょっとした林のような木々が立ち並ぶ庭がある。
そして、ここの離れは、『撃心流歴史資料館』として一般公開をしている部屋だ。
とはいえ、普段ここに訪れる人はほとんどいないが……。
「うちのは、メイトリックスの親父さんのコレクションと違い主に刀剣類だけだが
……」
そういいながら、ゲキはシノブとアイーシャさんを案内する。
ゲキに案内されながらいろいろな刀剣類を見ていたアイーシャさんが目を見開き
「これは何ですかにゃ~」
と質問する。
「あっ、ここら辺は、所謂忍者も使う武器類だ。例えば……。」
と言いながら一つ一つ手に取ってゲキが2人に説明する。
「これは手裏剣の一種で車剣、十字や卍型の物がある。それに手裏剣には車剣のほかに棒状の手裏剣
棒手裏剣がある……あっこっちが棒手裏剣だ。」
と手裏剣をシノブとアイーシャさんに手渡し説明するゲキ。
「ほー」
「にゃー」
2人はそう感心しながら手に渡された手裏剣を眺める。シノブは眺めながら、何かを思い出したのか
「あっ、Mr.シモトウゲ、うちのDaddyのコレクションルームあるニンジャ~の武器の一つに
え―――ほら、筒から針を飛ばすのあるのだが……。」
「うん……ああ、吹き矢かいメイトリックス。」
そう言うゲキに大きく頷き、
「そう!フキヤーだ。それってここにあるかい?」
「ああ、あるよちょっと待っていてくれ持ってくる。」
そう、ゲキはシノブに言うと手裏剣の展示物が飾ってある棚の下の引き出しから、吹き矢を取りだした。
「これだよ」
「ほう、黒く光沢があるね」
「ああ、漆でコーティングしてあるんだ。」
「何ですかにゃその筒状の棒にゃ……」
そう言いながら首をかしげるアイーシャさんに、ニコニコ笑いながらシノブが言う。
「Mr.シモトウゲ説明するより実際にMissアイーシャに見せてもらえないかい?」
そう言うシノブにゲキは頷き、吹き矢に小型の矢を込めると自分たちの居る場所の対角線上に
ある木の柱めがけて吹き矢を吹いた。
”シュッ”と音がして小型の矢は”ストーン”と突き刺さった。
「にゃ~にゃるほど……」
「吹き矢は、武器としての威力はあまりない……が、この矢の部分に毒や痺れ薬
を塗り、相手を仕留めるものなんだよ……しかも、殆ど音がしないため忍びには
持ってこいの武器だと言える。」
「すごいですにゃ~」
と感心するアイーシャさんの横からシノブが口を挟む。
「まさしくTheNinjyaって武器だろう~Missアイーシャ」
シノブの言葉にアイーシャさんも頷く。
「しかもだよ、Missアイーシャなら風系の魔法も使えるのだろう~」
と聞くシノブに再び頷くアイーシャさん。
「風系の魔法を使えば吹き矢自身の攻撃力が増し、下手するとハンドガン並の威
力になると思うのだよ僕は。」
「確かにな、メイトリックスの言うとおりだ、しかも影魔法を使えるアイーシャ
さんとの組み合わせは、ある意味、遠距離からのスナイパーに勝るかもしれんな」
そう言いながら、ゲキは吹き矢をアイーシャさん渡し、
「矢の方は、譲ると厄介なので渡せないがこれを使ってくれ」
と言うゲキの言葉にアイーシャさんは目を丸くして、
「いいのですかにゃ」
そう言うアイーシャさんにゲキは黙って頷く。
「ありがとうですにゃ」
「矢の方は僕のDaddyのコレクションルームにも有るからそれを使いたまえ
Missアイーシャ~」
笑顔で言うシノブにアイーシャさんはニッコリ笑顔でこう言った。
「大丈夫ですにゃ~これなら私でも作れますにゃ」
そう言うアイーシャさんにゲキが、
「それなら、俺の家にある刀を作る用の鉄を使うと良い、後で渡すよ」
言うゲキにアイーシャさんはニッコリ笑って頷いた。
◇◇◇◇◇
紋付袴にゲキが着換え、シノブとアイーシャさんと共に時田さんが運転する黒
塗りのセダンに乗りこむ。
皆が乗りこんだのを確認した時田さんは静かに車を走らせた。
しばらく、車が走っていると……
「あれ?時田Party会場と方向が違うぞ~」
「…………」
そう言うシノブに無言で運転する時田さん。
「時田~!」
後ろの席から運転する時田さんの肩を掴みゆすろうとするシノブの腕をゲキが掴
み黙って首を横に振り、
「メイトリックス、時田さんを信じろ」
そうゲキに言われ、少々不満げではあるが、後部座席にゆっくりと座り直すシノブ。
車はそれからもしばらく走り、ンドワン国大使館へと着いた。
「おいおい、結局、House(ンドワン国大使館)に帰って来てどうする時田」
そう呆れ気味に言うシノブをゲキが宥め、いつもの大使館の部屋の前へと進んだ。
そして、扉の前でシノブにゲキが言った。
「いっつ、しょう~たいむだ」
ゲキ君って意外とお金持ち?




