53話 100万ターラー
≪セイア様……セイア様……≫
俺とシノブが地下5階の丁度ミオンがトイレに行った付近の建物を捜索(捜索し
てる振り)をしている時、ソフィーから俺への通信が入る。
この通信は、他のメンバーには聞こえていない、もちろん今隣に居るシノブにも
聞こえない。
≪どう?そっちの話はもう済んだ?≫
と聞く俺にソフィーは、
≪はい、済みました。≫
と答え、それに対して、俺が
≪じゃ、こっちもそろそろ引き上げる準備をするよ≫
と言って通信を終わろうとするとソフィーが慌てて俺に言った。
≪あっあの~セイア様、先ほどは取り乱しまして、申し訳ございませんでした。≫
≪?……ああ、いいよ気にしなくて……≫
≪……でも……≫
≪まぁ、誤解が溶けたんならそれで良いよ≫
≪……しかし、……≫
≪?しかし……≫
≪いえ、ごめんなさい……≫
そう俺に言ってソフィーは黙りこんだ。
≪しかし、正直焦ったよ……俺の話に耳を貸してもらえなかったから≫
≪……ご・ごめんなさい≫
俺はソフィーの姿が見えている訳ではないが、なんだか、うな垂れているよう
な感じがした。
≪でもさ、ソフィー……≫
≪はい≫
≪俺とソフィーはソフィーの魔力で繋がってるんだろう……だからこのような通
信も出来るんだし……ソフィーがその気になれば俺の心を読み取ることができる
じゃないか≫
≪えっ、はい、でも、人の心を勝手に読み取るのは失礼ですし……なにより、セ
イア様の心を勝手に読み取ることは、わたくしはしたくないです。≫
≪なら、今度からちゃんと俺の話聞いてねぇ≫
≪はい、本当に申し訳ありません出した。≫
見えないけど、ソフィーが深々と俺に頭を下げてるように感じる。
≪じゃ、もう少ししたら、シノブを連れて帰るってみんなに伝えといて≫
と笑顔で俺が言うと、ソフィーが笑顔で
≪はい≫
と言っった様に感じた。
1人ニヤニヤする俺にシノブが
「Missラグナヴェールからかい?」
と俺に問いかける。
「ああ、……あっ、シノブ、ミオンによるとこっちの建物かその向かいの建物か
もって……時間短縮のため2手に別れて捜索しよう」
「Ok~Mr.オオワシ」
俺とシノブが2手に別れて捜索する。俺は手前の建物に入り、シノブはその向
かいの建物に入った。
(よしよし、計画通り)
そう心でほくそ笑み俺は変身を解く。
「Release」
ロンティーの上から羽織っているシャツのポケットから、ミオンのコンパクトを
取り出し、その辺に置こうとして、屈んだ時、何か光る物が目に着いた。
ダイニングテーブルの下当たり……。
(なんだろう?)
そう思いながら俺は、それを拾い上げ、手に取ると……
「これって……」
イーシャイナ王国の金貨より一回り大きな金貨。
(まぁ、ミオンのお土産にでもしようか)
◇◇◇◇◇
金貨とミオンのコンパクトを一旦、側にあったダイニングテーブルに置き、再
び変身すると俺は無線でシノブに連絡した。
「シノブ、聞こえるか」
「ああ、どうしたんだいMr.オオワシ」
「あったよ、ミオンのコンパクト」
「Reall?」
俺の言葉に驚いて言うシノブ。
「ああ、こっちの建物の2番目の部屋のダイニングテーブルの下に」
「そんなところに……Missシラトリはそんな所で何してたんだろうね?」
俺の答えに無邪気に聞くシノブ。
「さ~な……それと……もう一つ良い物を見付けた。」
そう俺が意味ありげに言うとシノブは
「良いもの?」
「見ればわかるよ」
そう俺が不敵な笑みを浮かべてシノブに言った。
◇◇◇◇◇
しばらくして、俺の居る部屋にシノブが入って来た。
「Mr.オオワシ、良いものって?」
そう言うシノブに俺はダイニングテーブルの上に置いてあるミオンのコンパクト
と、金貨を指さした。
シノブは俺が指さすダイニングテーブルに近付き、ミオンのコンパクトの横に置いてある
金貨を手に取ると、
「ほう、これは金貨のようだねMr.オオハシ」
そう言うシノブに俺は頷いた。
「それとミオンのコンパクトを預かってくれシノブ……俺はこの姿だから」
そう言う俺を見て、
「そうだね、その姿だとPocketないからね……OK、Mr.オオワシ」
そう言うとシノブは自分の迷彩服のポケットにミオンのコンパクトを金貨を仕舞った。
俺はそれを確認すると、
「じゃ、とっとと皆の所に帰ろう。」
そう言うと俺はシノブと共に部屋を出て、建物の外にでた。
俺は早速ユニコーンを呼び出すと、合体し、ケンタウロス体系になる。
「シノブ、乗って!」
とシノブに乗るように促す。
「Ok、じゃ」
シノブはそう言うと俺の背中?(馬の部分の)に跨った。
シノブが跨ったのを確認した俺は、
「行くぞ!」
とシノブに声を掛け走り出した。
「Yo-ho~!!」
シノブは楽しそうに言う。
◇◇◇◇◇
「Missシラトリ、これ」
とシノブがミオンにコンパクトを渡す。
「ありがとう、シノブ」
お礼を言うミオンにシノブは、
「いやいや、見付けたのはMr.オオワシだよ」
そう言うシノブの言葉にミオンは、
「そうなの、セイアありがとう」
と俺を見て形だけのお礼を言うミオン。
「……っと、それとこれは、Mr.オオワシからのお土産らしいよ~」
と含み笑いをしながら、例の金貨をミオンに渡すシノブ。
「これ……って金貨!?」
シノブから受取った金貨をマジマジと見て言うミオン。
「ニールさんに見てもらえば~」
そう言う俺の言葉を聞いて、ミオンはニールさんの方に駆け寄り、
「ニールさん、ニールさん……、これって金貨?」
ミオンに声を掛けられ振り返り、ミオンが差し出す金貨を受取、
マジマジと見るニールさん。
「ふん……これは確かに父達がここから持ち帰った金貨と同じ物だと思います」
そう言って、ミオンに金貨を返した。
金貨をニールさんから受取、再び金貨を見ながら
「どれくらいの価値があるんですか?」
とミオンはニールさんに尋ねる。
「そーですね……白金貨一枚ってとこですかねぇ」
と言うニールさんにミオンは少し残念そうに
「なぁんだ、金貨一枚なんだ……古いからもっと価値があると思っていた。」
と言うミオンに、目を剥いてクレアさんが口を挟む。
「いえいえ、ミオンさん、金貨一枚ではなくて、白金貨一枚……
つまり、金貨10枚……100万ターラーですよ!」
そう言うクレアさんに首を傾げ、
「100万タラーね……」
と素っ気なく言うミオンに時田さんが近付き、ミオンの耳元で言った。
「イーシャイナ王国の100万ターラーは日本円の100万円です。白鳥様。」
その言葉に、ミオンが叫んだ。
「ひゃっ……百万円!!!!!……これ一枚で~!!!」
◇◇◇◇◇
お昼ご飯を食べながら、今後の話をする。今日のお昼はオムライス。
ここを俺達が使いやすいように改造する間、俺達は一旦元の世界に戻ることに
なるんだけど、その間ここが誰もいなくなると言うのも何かと問題なので、ニー
ルさんと時田さんが、俺達の世界に戻り、シノブの護衛をしてる部隊から10名
ほど選抜して、こちらに連れて来る間、俺達はここで待機って話になったが、食
事をしながら俺達が話をしてるって言うのに、心ここにあらずのミオンちゃん、
打ち合わせもそこそこ、食事もそこそこに、臨戦態勢のミオン。
食事と打ち合わせが終わり、食事の後片付けもそこそこに鼻息荒く、俺とシノブ
に、
「よし、じゃ、捜しに行くよ~セイア、シノブ!」
そう言うミオンに俺が、
「ちょっと待て、まずは、ニールさんと時田さんを見送るのが先だろう~」
そう言うと、ミオンは小刻みに頭を振りながら……頷いてるんだろうなこれは。
◇◇◇◇◇
「では、皆様行ってまいります」
「行ってきます」
時田さんとニールさんがそう言いながら、魔法円の中心に立つ。
「Paralleltransfer【異世界転移】!!」
魔法円の周りに例のモヤモヤが現れ、ニールさんと時田さんを包みこみ……や
がて、2人の姿は見えなくなった。
「さぁ、そいじゃ~行くよセイア、シノブ~」
そのミオンの言葉に俺とシノブが頷くと、俺達はゲキの方に向き黙って頷いた。
それを見てゲキも俺達に頷く。
シノブとミオンはトレーラー後部のガレージから、電動オフロードバイクに跨り
俺の近くにバイクで降りて来ると、
「セイア!」
ミオンの呼びかけに俺も頷いて、変身する。
俺は両腕を横に開き、それから、両耳の側まで弧を描くように上に上げ、
「☆ブレイヴ☆」
と、叫んび、両腕を前に下ろして両手をクロスさせると、
「☆スパーク☆」
変身後、直ぐにユニコーンを呼び出し合体し、ケンタウロス体形になると、
「俺が先行する!」
そうミオンとシノブに告げると、俺は5階層に向け走り出した。
俺の後を、ミオンとシノブの電動オフロードバイクがついてくる。
5階層に向かう通路に、ケンタウロス”パカラパカラ”と言う蹄の音と、
電動バイクの”ウイーン”っと言うモーター音が響いていた。
やっとお宝らしいものが……ミオンちゃん張り切りすぎなければいいのですが……




