50話 Kentauros VS ケンタウルス
いよいよ最下層に向かい出発する。
地下6階から地下7階(最下層)に繋がる通路を進む。警戒しながら地下7層の
入り口まで降りたが、罠もなくモンスターにも遭遇することなく入り口に着いた。
俺は右腕をマシンガンアームにして、左腕をシールドアームに変えフロアーの中
に進んだ。
いつものように”パッ”と天井が明るくなり目の前に現れたのは……。フロアー
中心部には直径50mの大きな円形の台があり、その円形の台から12時の方向に
まっすぐ一本の幅10m弱の道が伸びており、ついで9時の方向、8時の方向、7
時の方向、6時の方向、5時の方向、そして3時の方向にそれぞれ道が伸びている。
ニールさんのお父さん達の記録では6本だったはずだが、記録違いか?どうかは
わからないが後で確認すると、12時の方向に伸びている道は途中で崩落しており
使えない状態だと分かる。
通路からの入り口はこの円形の台から見て10時から11時の方向に面しており
、その反対の1時から2時の方向の壁にある扉が今回のゴールとなる。なぜなら、
今回は守護者と戦うのが目的でないと言うか、守護者は倒せないのだ。
今回の勝利条件は、ニールさんとミオンを1時から2時の方向の壁にある扉の中
にある部屋に送り込むことが条件となる。
俺がフロアーに入って間もなく、直径50mもある円形の台の中心部分に”モヤ
モヤモヤ”とまるで幻影のように守護者が現れた。
俺達の前に現れた守護者の姿と言うのが……ケンタウルスの若い青年って感じの
姿で、髪は茶色でロン毛、口髭を蓄え、当然下半身は馬(栗毛の馬)。
守護者は俺を睨みつけ、右手を大きく上に上げたかと思うと、何処からともなく
赤い光線が俺を襲った。
俺はすぐさま左腕からバリアーを発生させ、それを防いだ。そしてすぐさま守護
者に向け右腕のマシンガンアームから鋼弾を放った。
”バリバリバリ”
しかし、俺の放った鋼弾は守護者の体をすり抜けると反対側の壁に着弾する。
(やはり……ホログラム)
俺は心の中で呟いた。
≪名称 ケンタウルスの砦守護者≫
≪戦闘力 10000≫
≪防御力 ― ≫
≪スピード ∞ ≫
≪特技 ビームによる攻撃≫
×1
俺は皆がいる通路側入り口の方に振り返り、ミオンと目を合わせ頷くと、ミオン
も俺の目を見て頷いた。
ミオンは皆に目配せすると、クレアさんが、ブレイブタンクの前に進み盾を構え
る。そして、盾を構えたクレアさんにニールさんが【障壁】の魔法を掛ける。
その間にゲキがユニコーンを馬車から離す。
準備が整ったようだ。
俺はその間、守護者からの赤い光線の攻撃をひたすらバリアーで防いでいた。
(光線を受けるたびに圧力を感じるので、これはレーザーではなく表示通り何かの
ビームによる攻撃ってことが分かる。)
突然ユニコーンが通路からフロアーに侵入すると同時に、ブレイブタンクが肩の
軽マシンガンを発砲”バリバリバリ”と言う銃声が当たりに響き渡り、突然飛び出
したユニコーンを追撃しようとしていた守護者が、ユニコーンの追撃を諦め、ブレ
イブタンクに向けて赤いビームを発射した。
”ビシュン”と赤いビームがブレイブタンクを襲うが、ニールさんの【障壁】と
クレアさんの盾の二重の防備がかろうじてビームを弾く。
”ビシッ”と言うビームを跳ね返す振動が、盾から伝わり、それに耐えるように
クレアさんの盾を持つ手に力が入る。
「今だ!こいユニコーン!聖獣合体だ!」
とUnicornに大声で俺が叫ぶ。
≪Charge up Kentauros≫
俺は自分の意思とは関係なく、Unicornに向かって走りだし、
Unicornも俺の方に向かって走って来て、俺とUnicornがお互い迫る
中、俺はジャンプする。Unicornは空中にジャンプした俺目掛け額の角を飛
ばす。
Unicornの角はみるみるでかくなり、ランスへと変わる。俺はそれを受け取
ると、空中で体をひねり向きを変えそのままUnicornの方に落下していく。
Unicornと落下する俺が交錯する寸善、Unicornの頭が胴体に収納さ
れ、俺の下半身が首のなくなったUnicornの胴体と合体する。
「完成!Kentauros!」
そして俺がケンタウルスの姿で守護者に対峙すると……守護者の動きが止まる。
それを見たミオンとニールさんが通路から飛び出し反対側の壁にある入り口へと
向かう。
しかし、それを見ても守護者は動かない。
初めは急いで、全力疾走していたミオンとニールさんも、俺と守護者の様子を見
ていて走るのをやめ、歩きだす。
ニールさんとミオンが入り口の扉の前に着くと、ミオンの影からアイーシャさん
が”にゅ~”と出てきて入り口の扉の前に立つと、右手の人指し指の爪を”ピーン
”と伸ばし、鍵穴に突っ込み”カチャカチャ”と動かすと”ガチャ”っと音がして
「開きましたにゃ」
そうアイーシャさんがミオンとニールさんに声を掛け、入り口の扉を開けようとし
た時、
≪それには及びませんご主人様。≫
と、どこからともなく声がした。
「「「えっ」」」
その声を聞いて固まるアイーシャさんとミオンにニールさん。
俺も”えっ”って心で思ったが、油断なくケンタウルスに対して身構えていると、
≪よくぞお帰り下さいました。≫
声に合わせてケンタウルスの口が動いているようなので”彼”がしゃべっているの
かな?
そんなふうに考えていると、
≪これでわたくしの役目は終わりました。≫
とケンタウルスが言ったような気がする。そして、ケンタウルスは頭を下げたかと
思うと、”スー”と消えて行った。
本来、俺達の作戦では、ミオン達がコントロールルームに潜入し、ここの防御シ
ステムを解除するハズだったが、何か拍子抜けって感じで……
(まぁいいか終わったんだから)
俺の側に転がっていた偵察球を拾い上げそう心に思う俺であった。
◇◇◇◇◇
ソフィーと俺が連絡をとり、時田さんに報告をすると、予てよりの手はずどおり
、トレーラーの側にニールさんが描いた魔法円に移動してもらう。
≪準備できましたセイア様≫
そのソフィー頭に響く声を聞き、俺はニールさんに合図を送る。
「Transition!!」
ニールさんが【転移】魔法を発動させる。
”ドスン”と大きい音を響かせ俺達がいる地下7階層の直径50mもある円形の
台の中心部分にソフィーと時田さんを乗せたトレーラーが現れた。
しばらくして、時田さんとソフィーがトレーラーから降りてきて、
「「皆様お疲れさまでした。」」
2人して俺達に頭を下げ、俺達の元に駆け寄って来た。
「時田ご苦労!~Missラグナヴェールご苦労様。」
「おつかれ~時田さんソフィー」
軽快に2人に手を上げながら、声を掛けるシノブとミオン。
ソフィーは俺を見付けると、駆け寄って来て、
「ご無事で何よりですセイア様……エネルギー補給を……」
と言うので、俺は変身を解いた。
「Release」
ソフィーは俺が変身を解いたの確認すると、俺に抱きついてきて……キスをして
来た……濃厚な奴を……。
俺は、抱きつくだけだと思っていたが、突然のソフィーのキスに驚き、目を見開
いたまま……素直にソフィーを受け入れる。
(確かに、抱きつくだけよりも、こうして濃厚なキスをした方がエネルギーの回復
スピードは速い……んだけどね。)
しばらく、皆に見られながら……もとい、身守られながらキスを続てた。
俺の頭に青白い光がチョロチョロ出始めたころソフィーと俺はお互の体から手を
離した。うっとりとした目で俺を見つめるソフィー。俺達が離れたのを見てミオン
が大声で言った。
「はい、それじゃ~晩御飯の用意しましょうか」
そのミオンの声にソフィーはビクつき正気にもどる。
「いえ、白鳥様夕食の用意はすでに出来て居ります。」
と時田さんがミオンに向かって言うとミオンは、
「えっ、……もう済んだの……さっすが時田さん」
と、なれられしく時田さんの胸を思いっきり叩く。
胸を思いきり叩かれ少し体をそらしながら時田さんは、
「うっ……ゲホゲホ、いえ、姫様にもお手伝い頂きましたので」
せき込みながらミオンに言う。
「えっ、ソフィーっ料理出来るの~?」
と聞くミオンに、俺は思わず口を挟む。
「うん、ソフィーと2人の時、夕食作ってもらった。」
俺がそう言うと、ソフィーは照れくさそうに
「いえ、料理と呼べるほどの物は……ただ、時田さんのご指示通り
お手伝いしただけですし。」
と言うソフィーに、ゲキが口を挟んだ。
「どっかの誰かさんとは”違う”ってことだな。」
とミオンを見降ろし、そう言うと、ミオンがゲキの方に”キ”っと目を吊り上げ睨
む。
「何だってゲキ!」
と言うや否や、張り手をゲキにお見舞いする……が、それをするりとかわすゲキ。
勢い余ってミオンがくるりと回る。
「んも―――――――腹立つ!」
怒るミオンをしり目に、ゲキが、
「あ~腹減った、メイトリックス、テーブルを出そうか」
それを聞いたシノブが
「Of course」
2人はマジックボックス小を馬車から取り出し、蓋の突起を触り、ホログラムメニューから
大きな机を出して持ってきた。
これは、地下5階で休憩中にケンタウルスの上級幹部の部屋から持ってきたものだった。
机を運ぶシノブとゲキに俺は
「それどうするつもり?」
と聞くとシノブが答えた。
「ここはもう安全地帯になったんだから、どうせなら狭いトレーラーで食べるより
ここで食べた方が食事をより楽しめるのではないかMr.オオワシ。」
「ああ、確かに……でも椅子は?」
と聞く俺にゲキが答える。
「それなら、ほれ」
と机を一旦置き、マジックボックス小の所に戻って、木箱を出してきて、
「これで代用出来るだろう」
と木箱を見せながら俺に言う。
「でも……少しテーブルの高さが高いのでは?」
とクレアさんが口を挟むとシノブが、地面に置いたテーブルの高さを見て
「確かに、Missリードの言うとおりだ。」
「なら、これで切ろう」
とゲキが言いながらマジックボックス小から、のこぎりを出して来た。
シノブとゲキは机の足を”ギコギコ”と切り出した。その間にクレア
さん、エドナさん、アイーシャさんがマジックボックス小から木箱をだし、
俺、時田さん、ソフィー、ニールさんと……さっきまで膨れていたミオン
が手伝って、トレーラーの食堂から料理を運び出し、足を切って低くなっ
たテーブルの上に次々と並べて行く。
「豪華ですね、時田さん。」
料理を並べながら言う俺に
「豪華……と言うほどではありませんが、皆さん今回はかなり頑張って
おられたようなので、少し量を多く致しました。」
とニッコリ笑う時田さん。
テーブルには、大皿にてんこ盛りの唐揚げ、海老フライ、ハンバーグ、トンカツ
太いフランクフルト、サラダ……メインは……カレーライス。
「おおーーー」
「It’s Great!」
テーブルに並ぶ料理を見て一際、目を輝かせて見つめるシノブとゲキ。
(おいおい、2人共……ヨダレ、よだれが出てるよ。)
ホログラムと戦っても勝てませんからねぇ~なんちゃって。




