49話 奇策、ゴーレム戦
地下5階から地下6階へ向かう通路の前である準備をする。馬車からユニコーン
を外し、馬車の中のマジックボックス小から、ユニコーン用の鞍と、ある物を出す。
ユニコーンに鞍を付け、ゲキとアイーシャさんが跨る。
「じゃ、ここでゲキとアイーシャさんは待機ね。」
そう言うミオンに2人は黙って頷いた。その2人に俺が、
「ユニコーンが走り出したら合図だから……急に走り出すから気を付けてね」
と言うと、ゲキとアイーシャさんは
「大丈夫ですにゃ」
「ああ、大丈夫だ!馬の動きに合わせるから問題ない」
そう言うゲキに俺は
(いや……”馬”じゃなくて正確にはユニコーン何だけど……まぁいいか)
そう思いながら、ゲキとアイーシャさんとユニコーンを残し、他のメンバーと出発
する。
◇◇◇◇◇
通路を地下6階目指し、しばらく降りて行く。ここの通路は天井が他の通路と比
べて高い。優に10mはあるかな。と……歩きながら考えていたら、見えてきまし
たデカイのが。
全身金属の鎧?……装甲に包まれた身長7mの一つ目の巨人。
まぁ、こっち風に言うとゴーレムってことだけど……。
俺達に気付いたのか、目が赤く光、巨体を揺らしながらこちらに向かってくる。
”ズシンズシン”と地響きをさせながら、迫る一つ目の巨人。この巨人には左腕
がない。
それは、ニールさんのお父さん達がここを訪れた際、戦闘で破壊したもの。
≪名称 アイアンゴーレム≫
≪戦闘力 4000≫
≪防御力 10000≫
≪スピード 50≫
≪特技 怪力≫
×1
この表示されているアイアンゴーレムって名前はニールさんのお父さん達の記録
にあった名前なので、たぶん厳密にはこの世界のアイアンゴーレムとは違うだろう
が……。
「Lightning !!」
「ライジングアロー!!」
ニールさんが杖を振り、エドナさんが弓を放つ。
”ピカー””シュッ””ビキビキ~”
そして、ブレイブタンクが腕のグレネード弾を放ち、シノブもフルオートで射撃。
当然、俺も両腕をマシンガンアーム変え、鋼弾を放つ。
”ボシュボシュ””タタタタタ””ダダダダダ”
電撃や稲妻の矢が命中するも、矢は弾かれた。 しかし、矢に付与した電撃は生
きており、ニールさんの電撃と混じり合い、ゴーレムの体が青い光に包まれて行っ
た。そこにグレネード弾やライフルの弾、それに俺の鋼弾が着弾する。
着弾したグラネードの爆発音とライフル弾や俺の鋼弾を”カンカンカン”と弾く
音が通路に鳴り響く。
ゴーレムは苦しそうにするので、多少は攻撃が効いているかもしれないが……ゴ
ーレムの装甲には傷一つ付いていない。
「なかなか、装甲が堅いようだねぇ」
とシノブが呟く。
「セイア!今よ。」
ミオンの声に俺は頷き、ユニコーンに合図を送る。
(頭の中で)
◇◇◇◇◇
ユニコーンに跨り、しばらく待機するゲキとアイーシャさん。
その時、急にユニコーンが首を振り、そして走り出した。ゲキは、すぐさま手綱
を掴む手に力を入れ前傾姿勢をとる。アイーシャさんも振り落とされまいと、ゲキ
の背中にしがみつく。
「アイーシャさん振り落とされるなよ!」
とゲキが後ろでしがみつくアイーシャさんに声をかける。
「はい、ですにゃw」
猛スピードで通路を走り抜けるユニコーン。あっという間に俺達の所に着く。
俺達は迫るゲキ達を見て、素早く通路端に退き、道を開ける。
ちなみに、ブレイブタンクは初めから通路端にミオンと共にいた。
俺達の目の前を物凄い勢いでユニコーンが駆け抜けると、同時にユニコーンがジ
ャンプする。そして、それに合わせて手綱を離したゲキもアイーシャさんを背負っ
たままジャンプした。
さらに、ゲキの背中からアイーシャさんがジャンプする。ジャンプしたアイーシ
ャさんはゴーレムの頭上高くまで飛んで行き、持っていたお椀型の装置をゴーレム
の頭に被せた。
そしてすぐさまゴーレムの肩を蹴りあげ空中で反転し、着地すると、ゴーレムか
ら離れ、俺達の所へ戻って来た。出迎えるミオンとシノブが2人にハイタッチをし
て出迎える。
「やったね♪」
「Good job♪」
そしてハイタッチを終えたゲキがシノブに真剣な顔で頷くと
「OK」
と言って、シノブが持っていた無線機のよな機械のスイッチをONにした。
するとゴーレームにつけた装置から、”グワン、グワン”と音がしたかと思うと
ゴーレムが頭を押さえ苦しみ出し、やがて目の赤い光が消え、動きが止まった。
「成功……なのか」
と聞くゲキにシノブがニコニコしながら頷いた。
これは、時田さんが用意してくれた強力な電磁波を出して、コンピュータの回路
を焼き切る装置らしい。ニールさんのお父さん達の記録を読んだ時田さんが、この
ゴーレムをロボットだろうと予想して用意したものだった。
「時田のカンが当たったってことだな。」
と動かなくなったゴーレムを見てシノブが呟いた。
◇◇◇◇◇
俺達は一旦、通路を戻りユニコーンを馬車につなぎ直し、地下6階の入り口を改
めて目指す。途中動かなくなったゴーレムを見つめながら。
≪名称 アイアンゴーレム≫
≪戦闘力 0/4000≫
≪防御力 0/10000≫
≪スピード 0/50≫
≪特技 怪力≫
≪状態 ☆赤 停止≫
地下6階の入り口には地下4階、5階のような扉はなくそのまま入れた。例のご
とく俺達がこのフロアーに足を踏み入れると同時に天井が”パッ”と明るくなり、
フロアーの中心にある建物がクッキリと見えた。
小型の……パルテノン神殿って感じの建物。
「神殿かな?」
「いや、確か議事堂のような物って書いてあったが……」
ミオンの問いかけに俺がそう答えると。
「入ってみれば分かるかも」
「そうだな」
ミオンにそう答え皆で神殿風の建物の中に入った。
◇◇◇◇◇
建物の中に入ると、雰囲気がガラっとかわり、よくテレビ中継でみる国会の部屋
のような作り……ってより、地方議会くらいか。
正面に一段高い席があり、周りは半円状の席が並ぶ。席と言っても椅子はなく、
また、机の位置も人間のに比べると高いし、机と机の間隔もかなり広い感じ。
「ここは議会と言うより……たぶん幹部達のブリーフィングルームだと思う。」
「ブリーフィングって?」
シノブにそう聞くミオン。
「そうだな~よく、空軍がするんだけど、報告や指令や作戦の確認また、その日の
天候など……要は、打ち合わせ……ミーティングって言った方がMissシラトリ
には分かりやすいかな」
そうシノブに説明され、
「ああ、ミーテングね、それなら分かる」
と答えるミオン。
「でも、普通、騎士の幹部会議では、円卓で行うものなのでは?」
とミオンとシノブの話を聞いていたクレアさんが言った。
「そうなのかい、この世界では?」
「えっ、円卓ってアーサー王みたいだねぇ」
シノブとミオンに聞かれ、
「あっ、はい……たぶん……」
と口ごもるクレアさん。
その様子に、少し噴き出しそうになりながらエドナさんが言う。
「まぁ、私達はペイペイですから、参加したことはないんですがねぇ~」
その答えにミオンが、
「そーなんだ~」
とマジマジとクレアさんを見て言う。
(いや、エドナさん……ペイペイって……この世界の言葉にもペイペイって言葉あ
るのかな……翻訳の妙なのかもしれないが……)
俺はそう思いながら話を黙って聞いていた。
◇◇◇◇◇
ここは、そんなに見る所もないなってことで、早めにここを出ることにした。地
下6階に到達したことを俺はソフィーに報告して、いよいよ最後のフロアーを目指
す。
いよいよ、ここの主と言うか守護者にご対面だ。
◇◇◇◇◇
----------トレーラー内指揮所-----------
「はい、はい、それは何よりですセイア様。……はい、お伝えしておきますねぇ、
では……」
俺と通信を通信を終え、ニコニコとしながら時田さんに俺からの方向をするソフ
ィー。
「セイア様のお話ですと、時田様の読み通りでした。とおっしゃっていました。こ
れから、最下層に向かうそうです。」
その言葉を聞いて、時田さんはニッコリ笑って、
「やはり、そうでしたか」
と嬉しそうに言う。
そして、
「いよいよ最下層ですか……では、わたくし達もそろそろ用意いたしましょうか」
と微笑みながらソフィーに言う時田さんに
「用意?……ですか……」
首を傾げるソフィーに、時田さんは笑顔でこう言った。
「夕食のしたくですよ。さぞ今日は皆さんお腹が空くと思いますのでね」
その言葉を聞いてソフィーもニッコリ時田さんに微笑む。
「はい、わたくしもお手伝いいたします~」
「はい、お願いいたします。」
そう2人で笑いあいながらトレーラーの指揮所を後に、台所に向かう時田さんと
ソフィーであった。
奇策!?っていうかありえない作戦だったかな(笑)
百式の肩を借りてジャンプするマーク2をやりたかったのです。




