48話 駄々を捏ねるミオン
もっとじっくり調査したかったが、先を急ぐのでこの地下4階の捜索は打ち切っ
て先を目指す。
回収した”マジックボックス”は早速、馬車の荷物をすべて入れたみた。お陰で
、馬車の中には”宝箱”……改めマジックボックス一個だけになってしまった。
まぁ、なら馬車は要らないだろうって思うが、何があるか分からないのでそのま
まユニコーンに引かせる。 それになんてたって、ここの通路広いから馬車が邪魔
にならない。
地下4階から通路を降り、地下5階へ向かう途中、またもやニールさんが、
「セイア殿、そろそろ」
そうニールさん言われ、俺は立ち止まる。
皆に、ここに居るようにと告げ、俺は1人ゆっくり通路の床を見ながら、歩いた。
しばらく歩いていると通路の床の材質が変わる部分を見付け立ち止まる。明らか
に材質が違う……今までは大理石っぽい床がここから金属の床に変わっていた。
俺が後ろの仲間に手を上げると、ゲキとシノブが馬車の中(正確にはマジックボ
ックスの中)から縦横30Cmのゴム製のパッドを30枚運んできたそれを2人か
ら受取り、俺はその金属の床に足を踏み入れる。
すると足を金属の床につけた途端、”ガチャ”と言う音がして……全身に高圧電
流が流れた。
しかし、多少視界にノイズが入るものの 俺ことGUY BRAVEには殆ど影
響がないようだ、俺は手に持っているゴム製のパッド(実は絶縁シート)を少し間
隔を開けて配置しながら5階の入り口を目指す。
高圧電流にさらされること10分、俺は絶縁シートを並び終え、入り口に到着し
た俺は、すぐさま振り返ると、右腕をワイアーアームに変えて、後方の皆の所に打
ち出した。
”ボシュ””シュルシュルシュル~”俺が打ち出した右腕は、仲間の居る場所へ
と飛んで行く。
そして、俺が絶縁シートを並べている間に、ゲキとシノブが床に打ちつけた杭を
俺の右腕が掴んだ。
腕のワイヤーをピンと張り、皆にOKの合図を送る。シノブとゲキにアイーシャ
さんは、俺のワイヤーに手を掛けることなく、ポンポンと1段飛ばしで絶縁シート
を渡って来る。残るクレアさんは盾を背中につけ慎重に渡り、同じくエドナさんも
弓を背に背負いクレアさん同様慎重にワイヤーを掴みながら渡っていた。そしてニ
ールさんは同じくワイヤーを掴みながらではあるが渡りきった……問題はミオン。
ワイヤーを掴みながら時折バランスを崩しそうになる……。
「やっぱ無理!」
途中で駄々をこねるミオン。まだ、半分の距離がある。
「ふぅっ」
俺はため息を付くと、左腕をワーヤーアームに変えて……ミオン目掛けて打ち出
し、ミオンの首根っこを掴むと上に釣り上げ、猛スピードで腕のワイヤーを巻き上
げた。
”シュルシュルシュル~”
ミオンは何が起こったのか理解できず目を丸くしながら、足をバタバタさせてい
たが地面に着くとそこにへたり込んだ。
しばらくは、白目をむいて呆然としていたが、やがて気が付き、俺の方にやって
来て
「なっ!なにっ……何するのよ!あっぶっないじゃないの!!!!」
俺にキャンキャン言うミオンの襟首をゲキは黙って掴み、俺の前から引きずって行
った。
「ちょっ、ちょっ……ゲキ何するのよ~!おいこら、離せこのやろう!」
手足をバタバタさせ今度はゲキに文句を言うミオン。
残るはブレイブタンクとユニコーン。ブレイブタンクは一応、対電撃処理はされ
ているそうだが……駄々を今だ捏ね続けるミオンに代わり、スマホ型操縦機でシノ
ブが操縦する。
カタカタと音を立てゆっくり進むブレイブタンク、金属の床に触れた途端、青白
い稲光がタンクを包みこむ。”バリバリバリ”と物凄い音が通路に木霊するが何事
もなく進むブレイブタンク。
ブレイブタンクも無事渡りきり、残りはユニコーンと馬車が残るのみとなった。
(正直ユニコーンは大丈夫なんだが、馬車は……殆ど木製とはいえ所々金属の部品
が付いているしな……一応、荷物って言うかマジックボックスは、すでに馬車から
降ろし、こちらに運んであるから馬車の中は空なんでけどね。)
って思っていたら馬車を引くユニコーンは急に反転し、この場から去って行った。
(おいおいユニコーン~何処行くの!)
って思っていたら、遠くから”パカラパカラ”と蹄の音と”ガラガラガラ”と馬車
の車輪の音がだんだん迫って来た。
猛スピードで馬車を引き走るユニコーン、そして例の電流の床の手前で大きくジ
ャンプした。
(えっ!ジャンプ!?)
って思っていたら、見事、馬車を引いた状態で数十メートルある電撃の床を飛び越
えた。
それを見ていた俺を含めた全員が、しばしアングリとしてユニコーンを見る。
駄々をこねていたミオンも動きが止まりアングリでしている。
ユニコーンは皆の視線を浴びているのが、分かっているのかいないのか、涼しい
顔をしている……って、あくまで俺の主観だけどね。
◇◇◇◇◇
そんなこんなで、入り口前、地下4階と同じように金属の扉で通れなくなってい
る。地下4階同様入り口の右の脇にパネル……ではなく窪みがあり、そこに正六面
体の物体が置いてある。
それをシノブが手にとり
「じゃ、タイムを計ってくれMissシラトリ。」
と言う。
そう、これは石で出来てはいるが、俺達の世界で言うところの"正六面体パズル
"違う点は石で出来てるってことと、色タイルがはられていると言うことくらいか。
手際良く色のタイルをそろえて行くシノブ……あっと言う間にすべての色をそろ
え、
「出来た、どうだった?Missシラトリ」
とドヤ顔で言うシノブ。ミオンは時計のストップウォッチのボタンを止めて、
「40秒06」
それを聞いてシノブは
「僕としたことが……少々腕が落ちたようだ」
と少し残念そうにする。
ちなみに、扉を開けるのにタイルをそろえる時間は関係ない。
揃った正六面体を元の位置に戻すシノブ。すると”ゴロゴロ”っと言う音立てな
がら、扉が左の方に吸い込まれて行く。
◇◇◇◇◇
地下5階ここは……さっきの4階と違い煉瓦作りで、かなり大きめの建物が1
0棟くらい並んでいる例のごとくこのフロアーに1歩俺が足を踏み入れた途端天
井が明るくなった。
ここはニールさんのお父さん達の見解では、恐らく上級騎士クラスの宿舎だっ
たのではって事だが……。
キョロキョロ辺りを見回しながら、俺達は先を急いだ……はずだった。その時何
か違和感が……。
(?何だろうやけに静か……ってか)
「あれ?ミオンがいない」
俺が振り返りそう言うとミオンの代わりにブレイブタンクの操作をしていたシノ
ブが、
「Missシラトリなら、これを頼むってそこの建物に入っていったが?」
そう言うシノブの言葉にゲキが、
「トイレじゃないか」
と俺に言って来たので、
(そう言えば皆、朝からトイレ行ってなかったな)
俺はそう思い皆に
「少し休もう、ここならトイレも使えるんじゃないかな」
そう言うと、
「そうですね、休憩を取りましょう」
とニールさんも賛同してくれた。
休憩に入る前に、一応、俺のセンサーとブレイブタンクのセンサー及びレーダー
で索敵を行い、このフロアーには敵が居ないことを確認しておいたけどね。
俺自身この体なんで、そんなことに気が付かず、みんなに悪いことしたな~っと
少し反省しながら休憩する仲間に変わり、俺が1人見張りに立つ。
◇◇◇◇◇
休憩もそろそろ終わろうかと考えていた時、建物からミオンが大きな箱……宝…
…もといマジックボックスを持ってきた幅1m、長さ1.2m高さ1.2mを引き
ずりながら出て来た。
「セイア~手伝って~」
箱を引きずりながら、言うミオンの元に俺は駆け寄り、箱をひょいっと持ち上たら
「ありがとう、もう一個あるんだ~取って来るからそれ馬車に積んどいて~」
「ああ、分かった」
俺はミオンにそう返事して、その大きな箱を馬車に積む。
後でニールさんに聞いたらこれはマジックボックス大、何と馬車10台分の荷物
が入るらしい。
(凄いな……でも取りまわしにくいけどね)
その後、ミオンが持ってきたもう一つの箱は幅50cm、長さ60cm、高さ
60cmマジックボックス中これは馬車5台分の荷物が入ると言うことだ。
◇◇◇◇◇
休憩が終わり皆そろって出発する。
ここのフロアーは結局、魔物もおらず入り口以外はトラップもなかった。
さあ、いよいよ残り2つだ。
ルー○ックキューブがあるとは……。




