43話 侵入ダンジョン
三階建てで壁には階段代わりのスロープがあり、これで一番上まで登れるみたい。
まぁ、物見台ってことなのだろう。
”バリブリン”もといドローンを偵察モードで発進させる。(今回ダンジョン内
偵察なのでソフトボール大の特殊爆弾は外してある。)
しかし、30分もしないうちにドローンが戻って来た。
「あれれ!もう戻って来た。」
とミオンが指揮所で呟く。
ドローンは4つあるプロペラの内、右前のプロペラが壊れているらしく、ふら
ふらと、ふらつきながらかろうじて飛行し、なんとかトレーラーの上部格納庫に
降り立った。
すぐさま、指揮所のミオンがドローンからデーターをトレーラーに転送するコマ
ンドを打つ。
ドローンが撮影した映像をミオンとソフィーは指揮所で見、それ以外のメンバー
は食堂の大型モニターで見ている。
ドローンがぽっかり空いた塔の入り口に入った。塔の中は3階まで吹き抜けになっていて、広さはちょっとした地方の野球場位の広さに見えた。その広い円形上の1時の方向付近に地下へ通じるスロープを発見したドローンはそのスロープを下り地下に潜って行く、通路の幅は俺達の世界に良くあるビルの地下駐車場に行くスロープのようで、幅は丁度車が一台づつ対面ですれ違えるくらいの幅のようだ。高さは……3m位あろうか、映像だけでは判断つかないけれど……。
ドローンがスロープにしたがって、反時計回りに進むこと数十m。地下室?の入
り口が見えて来た。
しかし、次の瞬間、地下入り口のスロープ天井部分にある監視カメラのようなも
のが動いたかと思うと、その下部にある銃口のような物から光が放たれた。
ドローンが、すぐさま回避行動を取るも4つあるプロペラの内、右前のプロペラ
に当たり、そのとたん、画面が揺れ始めた。
その映像を見ていたニールさんが唸った。
「こっ、これは、父達が言っていた光の矢!?」
その言葉を聞いてシノブが言った。
「光の矢?……って言うより、これはレーザーだよMr.ラーキン」
その言葉にニールさんがシノブに聞き返す。
「レーザー……とはそちらの世界の魔法……技術ですか?」
その言葉に、シノブではなく時田さんが言う。
「確かに私達の世界にもこれと似た物はありますが……ここまで小型で高出力なレ
ーザーはありませんねぇ……。」
「そうですか……」
とニールさんは時田さんの返答を聞きそう言った後、黙ってしまった。
俺達はそのまま続きの映像を見た。ドローンはふらつきながらも、地下室に侵入した。そこには、スロープからまっすぐ同じ幅で通路があり、その左右には部屋と言うには大きすぎる部屋(1つの部屋がだいたい俺達の学校の教室の倍はあろうか)が左右に2つづつあった。
しかし、これまでふらつきながらも飛行していたドローンが何を判断したのかわ
からないが、ここで、爆弾の代わりに取りつけていた偵察球(爆弾と同じソフトボ
ール大)を2つ投下し、地下室を離れて行く。そして先ほど攻撃してきたレーザー
発射装置の前を通るが、今度は何も反応しなくて、ドローンはそのまま地上へと上
がって行った。
ちなみに、この偵察球は、大きさがソフトボール大で、中にカメラや各種センサ
ーが搭載されており、しかも内臓モーターにより自走(自分で転がって移動)出来
る代物。
「やはり……外部からの侵入者にしか反応しない訳ですな。」
と時田さんが言った。それを聞いてゲキが、
「それは、ここが元ケンタスロスの砦だったと考えれば普通だが。」
と言う。そしてしばらくの沈黙の後、シノブが言った。
「しかし、困ったな……地下だと電波が届かないから偵察球のデーター回収が出来ないな……。」
それを聞いた時田さんが言った。
「本来、ドローンがその偵察球のデーターを回収する予定でしたから……」
と困った表情で言った。それを聞いた俺が、
「なら、俺がその偵察球を回収すれば良いんじゃないかな。」
と言うと、ゲキが、
「いや、いくらお前が勇者でも単独で行かせる訳にはいかん!」
と強めに俺に言う。それに対して俺が反論する。
「そうは言うが、俺なら、いやGUY BRAVEなら、レーダーやセンサーだけ
でなく、魔力も検知出来る……確かニールさんがドローンと偵察球にも魔水晶を埋
め込んであったはず……ですよねニールさん?」
と俺が言うと、ニールさんに皆の視線が集まる……とニールさん
「確かにそれはそうですが、未知のダンジョンに1人で行くのは……」
と言葉を濁しながら言った。それを聞いて俺が更にニールさんに言う。
「でも、確か俺の頭の中ってか、GUY BRAVEのデーターファイルに以前ニ
ールさんやソフィーのお父さん達が、ここを訪れた際の記録が入っていたはず、
だから、未知と言う訳でもないですよニールさん。」
それを聞いてニールさんは黙って俯いてしまった。他の皆も俯き黙る中、そのや
り取りを黙って指揮所で聞いていたミオンが、
「じゃあ、皆で行こう!」
と言った。それを聞いた一同が顔を上げる。俺はその言葉に反論する。
「おいおい、ミオンなにも皆で行くことはない、それに高々偵察球を回収するだけ
だし……回収したら俺は直ぐ戻って来るんだし……。」
しかし、ミオンは言った。
「中に入って戻って来るより、そのまま最下層まで行った方が効率よくない?、
皆で中に入って偵察球のデーターをセイアが回収しながら進めばいいじゃん。」
の言葉に俺も、
「確かに効率は良いかもしれないが……。」
と言うとそこにシノブが口をはさんだ。
「Missシラトリの言うとおりだ、Mr.オオワシ。」
と言うシノブに俺が?を浮かべると、
「確かにMr.オオワシは僕達より戦闘能力や防御能力が高いのは認めるが、とは
言えまだ、君自身GUY BRAVEのすべての能力を使いこなせてる訳ではない
……それに、僕達の今の状況ではあまり時間を掛けない方が得策だと思うよ。」
と言うシノブ。そこに時田さんが補足するように、
「そうですね、おぼっちゃまの言うとおり、下手に時間を掛け、大鷲様のいない間
にオブリヴィオンが襲ってこないとも限りませんし、食糧弾薬などの補給の事を考
えれば、ここは、白鳥様の言うとおりだと思いますよ。」
と俺を諭すように言った。それを聞いて俺が、
「しかし、今度は逆に皆でダンジョンに入ってしまったら、空のトレーラーがオブ
リヴィオンや他の魔物に襲われるってこともあるのでは?」
と言い返すと、今度はニールさんが言った。
「そうですね、流石に全員では…と思いますが…。」
と少し考えてから、
「そうですね、姫と時田さんがこのトレーラーに残って頂いて……。」
と言いかけたら、ソフィーが指揮所から、
「でも、それではセイア様のエネルギーが!」
と強く主張したが、
「いえ、万が一の時、私がテレポート【転移魔法】でここにセイア殿をお連れ出来
ますし、何より、姫がここに居てくだされば強固な【障壁】を張ることが出来るで
はないですか。」
とソフィーを諭すようにニールさんが言った。それを聞いたシノブが、
「よし、じゃ、時田もここに残ってMissラグナヴェールを守ってくれ!」
と言うと、時田さんはニッコリ笑って、
「かしこまりました。」
と頭を下げた。それを聞いて指揮所のミオンが言った。
「じゃ、そう言うことで、時田さんとソフィー意外の皆はダンジョンに入る用意し
て!」
と声高らかに言った。
◇◇◇◇◇
30分くらいして、めいめいがダンジョンに入る用意が整った。ここのダンジョ
ンは通路が広いため、ブレイブタンクを出すことにして、ついでに、弾薬と食糧な
どを運ぶため俺がUnicornを出して、昨日使ったグレムリン達の小型の荷馬
車を引っ張らせる手はずになっている。
皆の用意が出来たのを確認し、俺は、すぐさま変身。両腕を横に開き、それから
、両耳の側まで弧を描くように上に上げ、
「☆ブレイヴ☆」
と、叫んび、両腕を前に下ろして両手をクロスさせると、
「☆スパーク☆」
と叫んだ。と同時に、両手が光かった瞬間、変身した…。
(…これが終わったら変身のやりかた。元に戻してもらおう。)
変身後すぐさまUnicornを呼び出し、Unicornをグレムリンの小型
馬車に繋ぎ、ゲキとシノブが手早く荷物を積み込んで行った。荷物の積み込みが終
わったのを確認し、ミオンが高らかに言う。
「出発~!!」
ミオンの言葉に皆が整列して、ダンジョンの入り口に向かう俺達にソフィーが手
を振り、
「みなさん、ご武運をお祈りしてます。」
と言う横で、時田さんは深々と頭を下げ、
「行ってらっしゃいませ。」
と言う時田さんやソフィーに俺やミオンは手を振る、クレアさん、エドナさん、ア
イーシャさん、それにゲキは黙って軽く会釈し、シノブは2人に向かって、
「行ってくるよ。」
と笑顔で声を掛けていた。
ダンジョンの入り口を前に俺達はフォーメーションを組んだ。先頭は左からクレ
アさん、俺にゲキ。2列目はエドナさんニールさん、シノブ。3列目はアイーシャさ
ん、ユニコーン、ミオン。そして最後尾にブレイブタンクが後ろ向きで進む。
3列目の真ん中にユニコーンが居るのは戦闘の為ではなく、グレムリンが使って
いた小型の馬車を引かせるため。ここに食糧やら予備の武器弾薬を積んでいる。ブ
レイブタンクが後ろ向きに進むのは、後方からの魔物の警戒のため、ブレイブタン
クは、俺GUY BRAVEと同じくレーダーやセンサーで魔物を警戒できるためだ。
こんな陣形が組めるのもひとえにこのダンジョン内の通路が広いため。
「IT’S PartyTIME!!」
とお気楽に言うシノブの言葉とはうらはらに俺達は緊張しながらもダンジョン内に
入った。
ダンジョン内は何が出てくるやら




