37話 半舷休息!?
「では皆様、中をご案内いたします。」
と言う時田さんに案内され俺達はトレーラの中に入ることにした。
トレーラーの助手席部分(アメリカ車なので右側)にある入り口から入る。
入り口が狭いので俺を先頭に一列に並び入って行くと……助手席部分は取り払わ
れ、狭いが人1人通れるようになっていた。入り口に入って左に行くと、本来このトレーラーでは運転手の簡易ベットなどがある部分に、『指揮所』と呼ばれるコンピュータやモニターが左右にびっしりと並んでいて、左右それぞれ1人づつ座れるように成っており、トレーラーの後方に向かって、左側には砲や、ドローンなどを担当するミオンが座り、右側にはレーダーや【障壁】を張るためソフィーが座るとのことだ。
ソフィーの席には魔結晶があったし、ミオンの席にはゲーム用のジョイスティッ
クがあった。
そして、そこを出ると、左右に直径1mの円筒形の筒が2本ずつあった。
2つはトイレで、2つはシャワーとのこと、トイレは俺達が使ってる所謂シャワー
付トイレで、脱臭装置付らしい……
そして圧巻はこのシャワー施設、中に入ると天井と床部分からシャワーが一気に
出て、瞬時に泡を流せると言う代物で、円筒内部の床の外周部の溝から水を排水す
る。
シャワーもトイレも水は汚れや汚物をフィルターなどで処理、除菌して再び水を
再利用すると言うシステムになっている。
そこを過ぎると台所があり、冷蔵庫や、業務用のオーブンレンジ、HIクッキン
グヒータ、などがあり、天井と床は食糧などを収納出来るようになっている。
ただ、流し台はなく、その代わりに、食器洗浄機が設置してあった。
台所を抜けると、食堂兼、作戦室兼、寝室のスペース。床からダイニングテーブ
ルを出して設置すると食堂となり、また、天井に二本の柱に固定された50インチ
のモニターが、スイッチを押すと、モニターを固定していた柱が垂直に立ちあがり
、丁度俺達がテーブルに座って見やすい位置にモニターが降りて来る。指揮所から
ソフィーやミオンが送って来る映像を見ながら皆で会議する時に使う。
そして、テーブルを床に収納し、左右の壁にある、幅95cm長さ195cmの
板を倒すと薄いクッション付の簡易ベットとなる。これに専用の寝袋を固定して寝
るのだが、左右に6本づつあり合計12人分の寝室に変わる。
俺達は男女混合なので寝るときは、前後にカーテンを引いて寝るそうだ。
一応、プライバシー保護の観点でってことらしい……まぁ、この車で移動中はパ
ジャマに着替えて寝ることはないんだけどね、いつ戦闘になるか分からないからね。
そして、最後尾の部屋は、ガレージ兼、作業所。2台の電動オフロードバイクと
……なんじゃこりゃ!?見るとそれは、あの偉大なリアルロボットアニメ……『機
動神ガンボーイ』に出て来る……『ガンボーイタンク』そっくりの戦車型ロボット
……
大きさこそ、アニメとは違い、全高1.5m、幅70cm、奥ゆき80cmとか
なり小さい。
しかし、下半身は『ガンボーイタンク』のように履帯に成っていて、
見た目、小さな”ガンボーイタンク”って感じ。……違いと言えば右手がハサミ型
のマニュピレーターになっていることと、左手はミサイルではなく、4連装の回転
式のグレネードランチャーで、右肩の砲は、ショットガン、左肩には分隊支援火器
の軽機関銃を装備している。
頭部にはカメラと各種サンサーが組み込まれ、背中には、シノブが背負っている
ハードタイプのケースがあり、そこに予備の弾を入れてあるそうだ。
ちなみに、右肩のショットガンは通常使用の12ゲージではなく、それより大き
な10ゲージを使用し、弾数は5発。そして左の肩の軽機関銃は5.56x45m
m NATO弾を打ち出し、弾数は200発。ショットガン、も軽機関銃も弾切れ
の時は、手で交換しなければならないらしい。
「これは……」
と俺が唸るように呟くと、後ろから来た時田さんが、
「それは、白鳥様のリクエストで、地雷処理ロボットを改造したものです。名前は
……」
と少し考えていると、ミオンが横から口を出して来た。
「それの名前はねぇ……」
と少し溜めてから……
「ブレイヴ タンクよ♪」
と笑顔で言うミオンに俺は、呆れ顔で、
「まんまかよ!」
と突っ込む俺であった。
これをミオンがトレーラーの指揮所から操縦するが、弾の交換などは、シノブが
するそうだ。
◇◇◇◇◇
その日は、アルブ王国にあるイーシャイナ王国大使館に一泊し、翌日早朝出発し
た。朝、出発前に玄関に皆で集合……集合したんだけどね。
他の皆は、それぞれ戦闘の格好何だけど……ミオンが、イブンゲリオンのナスカ
の赤い戦闘服は……まぁ言いとしてソフィー……ソフィーまでもが……イブンゲリ
オンのレイアの白い戦闘服って……って呆れて見ていたら、ソフィーが俺に近寄り
「ミオン様に貸していただいたのです。……似合いませんか?」
と上目使いで聞いて来た。
俺は、思わず、
「……んなっことない、似合ってるよソフィー」
と答えると、嬉しそうに満面の笑みを浮かべ。
「よ~かった♪」
と喜ぶソフィー。
それをニヤニヤしながら俺を見るミオン。
……ってめーって思いながら、ミオンを一瞬睨んだが、何も言わなかった俺。
◇◇◇◇◇
「それでは、行ってきます。」
「行ってまいります、先生。」
と、俺とソフィーがジョセフさんに声を掛ける。
すると、涙目になりながら、
「ひっック……お気を付けて……」
と深々と頭を下げるジョセフさん。
見送るジョセフさん達に皆で手を振ってから、俺達は次々にトレーラーの右側(
助手席側)の入り口から乗りこんで行った。
時田さんが運転席に座り、それ以外はトレーラー中央の食堂兼寝室兼作戦室にテ
ーブルを出し、その周りに座り、大型モニターに写る俺達を見送るジョセフさん達
を見ていると、
「それでは出発いたします。」
運転席に座ってる時田さんが、耳につけた、よくある携帯電話用のワイヤレスハ
ンズフリーのマイク兼スピーカーで言う。
それを部屋のスピーカーで聞いた俺達はそれぞれ、
「うん分かった。」
「はあーい」
「お願いいたします。」
などと返事をする。
ちなみに、今の返事は、上からシノブ、ミオン、ソフィー。ニールさんとクレア
さんは黙って頷き、エドナさんは黙って微笑む。そして、アイーシャさんは……
「にゃ~」
と言った……!?
トレーラーが静かに動き出す、音はほとんどしない。しいて言えば、電車の発車
時の音のような、モーターがうねるような音はする。
◇◇◇◇◇
しばらくは、何事もなくトレーラーは進む。時刻は、10時を少し回ったところ
……出発が朝の6時だったので、そろそろ出発して4時間過ぎってところか……。
「そろそろ、持ち場に着いた方がいいんじゃないか?Missシラトリ、Miss
ラグナヴェール。」
と言われ、ミオンとソフィーがそれぞれ、
「あっ、そーね」
「かしこまりました。」
とシノブに返事をして、2人はトレーラーの指揮所に向かった。
そう、まもなく、俺とソフィーがゴブリンとワームに襲われた地点に差し掛かる
所だった。他のメンバー、シノブ、ゲキ、クレアさん、エドナさん、アイーシャさ
んは武器や防具の点検をしていて、ニールさんは、地図とにらめっこしている。
俺は……俺だけはすることがない。困った……けどすることがない……。
◇◇◇◇◇
しかし、俺とソフィーがゴブリンやワームに襲われた場所を通過しても何事もな
く、何か拍子抜けした感じだった。 ソフィーの話だと、現在、レーダー及び魔力
レーダー、それに地中レーダーいずれも、”魔物の反応はございません”とのこと
だ。
そんな時、
「みなさま、そろそろお昼に致しませんか?」
と部屋のスピーカーから時田さんの声がした。
「「了解!」」
と俺とシノブが言い、他のメンバーも頷く。
「それでは」
と言う時田さんの声と共にトレーラーは静かに停車した。
「では、半舷休息で食事を取ろうか」
「半舷休息!?ってなにそれ……」
と部屋のスピーカーからミオンの声がする。
シノブは、そのスピーカーに向かってこう言った。
「あれ、知らないかい?Missシラトリ……ほら、『機動神ガンボーイ』の宇宙
戦艦のCaptainや宇宙戦艦ムサシのカンチョウ~!?も言ってなかったかい
?」
と言うシノブに、部屋のスピーカーから、
「あっ、あぁ~言ってたかも~」
「Battleship!!で使われるのだが……つまり交代で食事を取ろうって
ことだよ」
「「な~んだ」」
と俺とゲキが言い。
ニールさん、クレアさん、エドナさん、アイーシャさん達は”なるほど”って顔
で頷いた。
「で、どう班分けするんだ。」
とゲキがシノブに聞くと、
「う~ん、そうだねぇ~……」
と顎に手を当て、少し、考えたシノブは、
「それなら、先に、Missシラトリ、Missリード、Missエリス、Mis
sアイーシャ、それに、Mr.ラーキンが食事をしてもらって、その後、僕達と交
代ってのはどうだろう~」
と言うシノブにゲキが、
「俺はかまわんが……」
と言いながら、チラっと俺を見たので、
「それで良いと俺も思う。」
と俺も同意する。
クレアさん、エドナさん、アイーシャさん達3騎士が”姫より先に食べるのは”
と言って来たが、部屋のスピーカーから、
「今は、みんなそれぞれお役目があるのです。それに従って下さいね。」
と言うソフィーの言葉を聞いて、納得してくれたようだ。
◇◇◇◇◇
俺と、ゲキ、シノブは辺りを警戒しようと、外に出た。トレーラーの前方をシノ
ブが、トレーラーの右側をゲキが、そしてトレーラーの左側を俺が……ってことで
、俺はGUY BRAVEに変身……しようとして……。
頭の中に浮かぶGUY BRAVEって所に意識を持って行き、カーソルを押す
と……俺の両腕が急に横に開き、それから、両耳の側まで弧を描くように上に上げ
「☆ブレイヴ☆」
と、叫んだかと思うとそれを前に下ろして両手をクロスさせると、
「☆スパーク☆」
と叫び、両手が光買った瞬間、変身した……。
(偉い間がある……ってか、これって……ミ……ラージュマンの変身ポーズじゃん
。)
俺はそう思いながらも、持ち場に付いた。
ミオンが食事前に、ドローンを偵察モードで飛ばして、辺りを警戒させているし
、ソフィーもレーダーと睨めっこ中。
今の所何もない……。
ちなみに、この日の昼食はスパゲティ ボロネーゼ。うちのとうさんに言わせれ
ば、ミートソースのスパゲティ。 なので、あっという間に交代の時間。
クレアさん、エドナさん、アイーシャさん達3騎士と、ニールさんが、トレーラ
ーの外に出てきた。
そしてクレアさんが、
「お先に頂きました。……交代しましょう。」
と言って来たので、俺、ゲキ、シノブは入れ替わりにトレーラーの中へと入り、食
事を取ることにした。
イブンゲリオン=○バンゲリオン
ナスカ=アスカ
レイア=レイ
機動神ガンボーイ=機○戦士ガ○ダム
ってことは当然ガンボーイタンク=ガ○タンクです。
宇宙戦艦ムサシ=宇宙戦艦ヤ○ト
ミラージュマン=ミ○ーマン




