31話 ミオンの誕生日
こちらの世界に戻って迎えた5月5日。今日はミオンの誕生日。毎年この日は、
うちでミオンの誕生会を祝うことになっている。理由は、ミオンの両親が仕事で忙
しく、一緒に祝えないからだ。
いつもミオンの両親は、誕生日プレゼントと、ミオンの誕生日を祝う両親のメッ
セージを納めたDVDが置いてあるだけ……だと、ため息まじりで言っていたミオ
ンの言葉を聞き、うちのとうさんが、『なら、うちの家でお祝いしよう~。』って
言いだして、はや6年、毎年、俺の家でミオンの誕生日を祝うことになった。
それを聞いた、ソフィーを初め、クレアさん、アイーシャさん、エドナさんは元
より、ニールさんやシノブまで、”参加したい”って言いだしてきた。ゲキはあま
りのる気ではないようだったが……。みんな俺の家に来ると言いだした。
俺は、それを丁寧にお断りした。……ってのも、ゲキやシノブは友達ってことで
良いとして、他のメンバーの事は、まだ両親には言っていなかったし、言うとして
も、『異世界で、仲良くなった友達です。』なんて言えないし……ね。
それじゃ、せめてプレゼントだけでも……ってことで、今みんなから預かったプ
レゼントを両手いっぱいに持って、家に帰る所だ。
◇◇◇◇◇
「ただいま~」
と言いながら、玄関を入って靴を脱ぎそのままキッチンを抜け、居間に向かった。
キッチンでは、かあさんがパーティーの料理を準備しているところだった。
「おかえり~、もうすぐしたら始められるわよ。」
と、かあさんが俺に声を掛ける。居間では、すでに、ミオンとようさんがくつろい
でいる。
「おかえり~セイア。」
「おっ、おかえり……ってすごい荷物だなセイア。」
荷物を抱える俺を見て言うとうさん。
「人気ものの、ミオンさんだからかな?」
と少々イヤミのつもりで答えたら。
「そーか、そーだろうな。ミオンちゃんほどの女性はめったにいないものなぁ~」
と、頷きながら言う父さんの横で、”えっへん”って感じで胸を張るミオン。そん
な2人を見て俺は……。
(確かに、こんな変なのは2人といないでしょうね。)
食事用のテーブル脇に置いた台にみんなのプレゼントを並べる。
・ソフィーからは、花をあしらった髪飾り。
・ニールさんからは指輪?。
・クレアさんからは刺繍の入ったハンカチ……これはミオンの顔かな?
・エドナさんからは、手作りで作ったクッキー。
・アイーシャさんからのは、手作りの木彫りのミオン人形。
・シノブのは……?シャルルのバック……?
・最後のはゲキのプレゼント…百合の花束。
・それと謎のDVD。
ソフィー髪飾りは、女の子らしくて可愛いプレゼントだ。ニールさんのは、後で
聞いたら、ソフィーも着けてる”身代わりの指輪”らしい。意外なのはクレアさん
の刺繍入りハンカチ、ミオンの顔がデフォルメされていて、なかなか可愛い。なん
でもクレアさんはイメージと違い、趣味が刺繍らしい。そしてエドナさんの手作り
クッキーは、クレアさんと同じくエドナさんの趣味がお菓子作りだということだ。
(出会って数日とは言え、仲間のこと……知らないことだらけだな。)
続いて、アイーシャさんの木彫りのミオン像はかなり精巧にできてる。アイーシ
ャさん曰く、猫人族は手先が器用で木工職人が多いそうだ、それにアイーシャさん
のお父さんもその木工職人だということだった。
(なるほど…。)
そして以外?と言うか意味がわからないのが、シノブのバック、なんでもうちの
かあさんによると、シャルルのバックだそうで、かなりの高級バックだそうだ。シ
ノブに聞いたら、『うちのDaddyがいつも沢山買って色んな女性に配ってたか
ら』ってことだが……それってさ、シノブのお父さんって……いまだに、お・さ・
か・んってことなのかもね。それを手本にしているシノブの将来に末恐ろしさを感
じる。
ただ、唯一理解できるっていうか想像できるのはゲキの百合の花束。確かに女性
に花を贈るって言うキャラではないけど、たぶんクレアさんかエドナさんに相談し
たのだろうことは、想像できるし、たぶん、あの花は激の家の庭に咲いていたやつ
だと思う。ゲキの名誉のために言っておくと、ゲキの所が飛びきり貧乏だから、家
の庭の花をプレゼントしたのではない。ゲキの家では”お小遣い”って考えがない
でけで、必要な物はゲキがおばあさんに言えば買ってくれるし、必要であれば、現
金を持つこともある。……今回はおばあさんに言えなかったのだろうね。
◇◇◇◇◇
所謂、”お誕生日”の歌を皆で歌った後、ミオンがケーキにつけたろうそくの火
を吹き消すと、とうさんの
「ミオンちゃんおめでとう~!」
って言葉を合図に、俺とかあさんがクラッカーを鳴らし、拍手した。ミオンは照れ
ながらも、笑顔で嬉しそうに笑っていた。
食事をしながら、とうさんがミオンに、
「これは、私からだよ。」
と言いながら、ミオンにプレゼントを渡した。
「わーい♪なんだろう?開けていい?」
と聞くミオンに笑顔で頷くとうさん。
”バリバリ”と勢い良く包み紙を剥がしすミオン。そして中身を見ると、
「わー♪、これ”ミラージュマン”のDVD~。おじさんありがとう~♪」
と喜ぶミオンを笑顔で見守るうちのとうさん。それを見て今度はかあさんが、
「はい、これは私から♪」
とミオンに手渡したのは・・・宇宙戦艦ムサシのヒロインが着ている戦艦の制服。
「わーい♪あいがとう~おばさん。」
とそれを見て喜ぶミオン。ミオンは早速その服を着るため、居間の奥にある来客用
の和室に走って行った。
◇◇◇◇◇
「じゃ~ん♪」
しばらくして、着替え終わったミオンがムサシのヒロインが着ている制服を俺達に
披露する。それを見てとうさんが言った。
「おおっ~なかなかキュートでセクシーだよミオンちゃん。」
「ありがとうおじさん。」
自分をほめるとうさんに礼を言うミオン。
「売ってるコスプレには負けるかもしれないけど、似合ってるわよミオンちゃん。」
と言うかあさんに、
「ううん、おばさん。おばさんの仕事は完ぺきです。」
と嬉しそうかあさんに言うミオン。
(確かに、キュートでセクシイーだよミオン……お前の体系に合わせレオタードの
ような生地で、かあさんが作ったんだし、お前のボディーラインがそのまま出てる
格好は普通の男ならヨダレものだろうな……。)
と思いながらも、ミオンの
「セイアどう?」
って言う言葉に俺は、
「ううん……すごく似合ってる♪」
と引きつり笑顔で言う俺。そんな俺にミオンが満面の笑みで、
「そ~お、ありがとう、セイア。」
と俺に礼を言って来た。
ちなみに、うちのかあさん、裁縫が得意と言うか、おばあちゃん(母方)が昔、
着物の仕立ての仕事をしていたらしく、子供のころから見ていたかあさんは、い
つの間にか見よう見まねで出来るようになったらしい……。
で、最後俺のプレゼントをミオンに渡した。
「たいしたものじゃないけど……」
と俺が渡したプレゼントは……『アルティメットマン』所謂、初代アルティメッ
トマンの防衛チームの科学特戦隊が連絡に使っていたバッチ型の無線機のレプリカ。
細部まで、再現されていて何とアンテナまで伸びるんだ。意外とやすかった。今の
俺の小遣いではこれが限界なもんで。
しかし、ミオンはそんなことお構いなしって感じで、
バッチを付けてアンテナを伸ばしたり縮めたりして、うちのとうさんとキャッキャ
言いながら遊んでる。しばらくすると、とうさんが俺にほしそうな目をして来たの
で、
「とうさんには、今度の誕生日に買うから……ね。」
って言ったら納得してくれたみたい。
◇◇◇◇◇
食事も終わり、お茶をしながらミオンのお誕生日ケーキとミオンがエドナさんか
らはもらった手作りクッキーを皆で頂いていた時、例の謎のDVDをミオンが見よ
うと言って来た。
ミオンに即され、俺はDVDをセットする。
ミオンがワクワクしながら見る。……何故かうちのとうさんもワクワクしてる。
俺は1人嫌な予感がしてる。
「「「「「「「Happy Birthdayミオンさん♪」」」」」」」
ソフィー、ニールさん、クレアさん、エドナさんアイーシャさん、シノブにゲキが
、皆勢ぞろいして画面に向かって声をそろえて言った。
そして1人1人ミオンにおめでとうを言う。
「お誕生日おめでとうございます、ミオン様~」
と可愛く挨拶するソフィー。
「ミオン殿、お誕生日おめでとう~」
とニールさん。
「ハンカチの刺繍は、ミオンさんの顔のつもりだったんですが……
わかっていただけたでしょうか……」
と少しあらたまった感じで言うクレアさん。
「私のクッキーはお口にあいましてぇ~?」
とニッコリ笑って言うエドナさん。
「私の木彫りの人形可愛いでしょ、ミオンにゃんをイメージしたにゃ。」
とアイーシャさん。
俺は、映像を見ながら汗が噴き出て来た……
(みんな…そのままの姿はちーと不味いんだけど……)
こちらの世界に来たら、ニールさんの魔法で、ニールさんやエドナさんやアイー
シャさんの耳……人間のように変えるって話だったが、まだ変える前の姿で写って
るんだ。それにアイーシャさんに至っては……尻尾が……丸見え。
俺は恐る恐る自分の両親の顔を伺う。とうさんと、かあさんは、何故か”ぽか~
ん”としている。
そして、ゲキとシノブが、それぞれおめでとうと声を掛ける。
「Happy Birthday Missシラトリ♪」
「お・お・誕生日……おめでとう……ミオン」
言いなれているシノブと違い、言いなれてないゲキが、たどたどしく言う。
そして、全員で、
「「「「「「「良い一年をお祈りしています。」」」」」」」
と言ってDVDは終わった。
それを見てニコニコのミオン。 しかし、うちの両親は固まったまま。
(ヤバイ、やばい……どうしよう。)
と俺が思っていると、かあさんが、
「ゲキ君とシノブ?君の言うことは分かるんだけど……他の人達の言葉が分からな
いわね~……あの人達は何処の人達?」
(ヤバイ、とうさんと、かあさんには、【思考転写】”テレパス”掛けてなかった!)
俺がひとり心で思いながら焦ってると。
ミオンが、すかさず言った。
「ンドワン国ってアフリカにある小さな国の人です。」
と笑顔で、かあさん答える。
「えっ、アフリカ……?って見るとヨーロッパ系の人が多いように思うけど?」
と、とうさんが言うと、
「元々、フランス領だったらしいですよ。おじさん。」
と涼しい顔で、とうさんに言うミオン。
「あーーなるほど。」
「ネットのサイトで知り合ったコスプレ仲間です。」
と言うミオンに両親はなんだか納得。そこにミオンがなにか思いついたのか、
いかにも企んでますって顔で、
「あっそーだ、あのーおじさんとおばさんにお願いがあるんです~」
と、うちの両親に言った。




