26話 アルブ国王との昼食会
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
三度、闘技場の人々がどよめく中、俺は右の方のビックシーザス(大蟹)に、ランスを握っている右手を飛ばしながら、左の方のビックシーザス(大蟹)に左手のマシンガンアームを向け鋼弾を放つ。
それを、右の方のビックシーザス(大蟹)は、自分の大きなハサミで飛んできたランスを弾き、左の方のビックシーザス(大蟹)は同じく大きなハサミで俺の放った鋼弾をはじき返す。
そして、右の方のビックシーザス(大蟹)が口から泡を俺に吹きかけて来た。俺はすかさず、回避したのだが、俺の後ろ脚と言うかKentaurosの後ろ脚にビックシーザス(大蟹)の泡が付着したかと思うと、みるみる泡が石化して行き俺の後ろ脚が動かなくなる。
「しまった!」
≪Abnormal state≫
≪Mineralization Back leg≫
「なに、後ろ脚が石化!!やばい、やばい」
少し、ウロタエル俺。
(奴らの弱点は……)
焦りながら俺が思った時、≪Weak point Mouth≫と、頭の中に表示が出た。
(弱点……口)
レベルが上がったからか、理由はわからないが、弱点と言うなら、弱点なんだろ
う……と思い、ミサイルの照準を2体のビックシーザス(大蟹)の口に合わせ、
「ミサイル発射!!」
Kentaurosの背中(Unicornの背中、丁度馬の鞍を載せるあたり)の両サイドがスライドして、左右それぞれ3つづつ空いた穴が露わになり、”ボシュ!ボシュ!”と音を上げ、煙をまきちらしながら、6つの穴から次々とミサイルが、上空に目掛け発射されて行く。上空に上がったミサイルは向きを変え、俺がロックオンしたビックシーザス(大蟹)2体の口に3つづつ向かって行った。
”ドッカーン”
ミサイルが、2体のビックシーザス(大蟹)の口に当たると、大爆発を起こし体がバラバラになった。
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
またもや、闘技場の人々がどよめきが起こる。そして、誰ともなく拍手がパラパラと起こり始め、やがて闘技場すべての人々から歓声と大きな拍手が沸き起こった。
≪Species Name ????≫
≪Combat Power 0/1,600≫
≪Death≫×2
2体のビックシーザス(大蟹)が死んだからか、後ろ脚の石化はいつの間にか消えてなくなっていた。
「Release!」
俺は変身を解き、闘技場の観客席のウイリアム王のほうに近づき、頭を垂れて両膝をつき右手を胸の前の付けるポーズを取って控え、
「どうでしたか?ご納得いただきましたか?」
ウイリアム王に声を掛けると、
「うむ、疑ったワレが悪かった……許せ」
のたまうウイリアム王。
(まぁ、王様ってこんなもんだろうね……)
闘技場の観客席の尊敬の視線を感じながら、闘技場のフィールドから、みんなの居る観客席へと俺が戻ると、ほっとしたような目つきのソフィーが、俺に駆け寄り俺に抱きついて来た。
「エネルギー補給を♪」
ソフィーに言われ、少し照れながら俺もソフィーの体に腕を回す。俺の体にズンズンと魔力が入って来るのが分かる。
ふと、周りをみると、ミオンが何故か観客席の人達に胸をはり、”えっへん”って感じで手を振っている。
(いやいや、お前は関係ないだろう……)
と思っていたら、シノブも同じように手を振っていた。
(お前らな……)
そんな中、大使のジョセフさん、ニールさん、そして時田さんが、
「感服いたしまた勇者殿!」
「お見事でしたよセイア殿」
「お見事です。大鷲様」
俺に声を掛けてくれた。ゲキは、俺と視線が合うと黙って頷いてくれた。
また、クレアさん、エドナさん、アイーシャさんは、驚き過ぎたのか、ただただ、目を丸くして呆然と俺を見つめていた。
◇◇◇◇◇
闘技場での戦闘を終え、俺達は城の中に戻り、【光球の間】と言われる部屋に案内される。
先ほどの謁見の間の半分ぐらいの広さだろうか、部屋の真ん中には、20人くらい座れそうな大きく長いテーブルがドンとあり、俺達の正面……つまり所謂お誕生日席に王が座っていた。
その向かって左の席に王妃が座り、王妃の右隣に先ほど謁見の間で騎士達を一喝した中年のエルフが座り、その隣が謁見の間で俺に近づこうとしたウイリアム王を止めようとしたエルフが座っていて、その隣……つまり、俺から見て、左側にアルブ王国の重鎮達が並んで座っていた。
俺達は城の従者に案内され、テーブルの右側に、俺、ソフィー、ニールさん、ミオン、シノブ、ゲキ、時田さん、大使のジョセフさんに、クレアさん、エドナさん、アイーシャさんと座る。
本来、ソフィーの護衛のクレアさん、エドナさん、アイーシャさん達3人はここには同席できないが、ソフィーがウイリアム王にお願いして特別に同席を許された。
それ故、クレアさん、エドナさん、アイーシャさんは、かなり緊張しているようだ。
俺達が席に付くと、一斉に食事が運ばれてくる。シャンピニオンのスープ……いろんなきのこが入っていたので、たぶん、きのこスープってことかな?で、前菜の鳥肉ぽいものと根菜……チデークニーと言う黄色いニンジンのようなものにシンリメイと言う物は赤い大根かな?大根ぽい食感だし……
時田さんに聞いたら、鶏肉はおそらく鴨のロースで、黄色い人参は沖縄の島ニンジンで、俺が大根と思ったものはおそらく、紅芯大根と言う中国の大根に似ているらしい。これに掛ってる甘酸っぱいドレッシングは、俺達の世界で言うフランボワーズドレッシングと同じらしい……時田さんによると……
パンは焼き立てのクルミパン……たぶん。そして、ルブゥフのステーキ……これは牛肉のステーキらしい。これには、トゥベルソースと言うソースが掛かっている。このトゥベルソースは……時田さん曰く、おそらくトリフらしい。俺はトリフを食べたことないから良く分からない。
ただ、この世界で初めて食べる牛肉……少し硬いようだ……俺にはね。
でも、シノブはこの堅い肉が入たく気に入ったようだが……ゲキは相変わらず無言で食べている。
そして、食後のデザートと紅茶を頂く、デザートはショコラトルケーキ。こちらの世界で言うガトーショコラ。
これは、時田さんでなくミオンが俺に教えてくれた。
◇◇◇◇◇
食事中、アルブ王国の人達が自己紹介してくれたんだけど、……沢山で覚えきれない。 ただ、王妃はキャサリンさんで種族はエルフ、ウイリアム王との間にエドワードさんと言う1人息子がいるそうで、ニールさんとエドワードさんは、魔法学校での学友らしい。
今は、例のオブリヴィオン……つまりは魔王軍との戦いに兵を率いて出かけているそうだ。
その横の謁見の間で、騎士達を一喝した中年のエルフは、”何と!”ニールさんのお父さん、アルブ王国魔法大臣兼宰相。種族はエルフ。宰相とは、俺らの世界の総理大臣……とは少し感じが違うらしが、要は他の大臣をまとめ王に進言できる立場の人だとか……うん~難しいことわかんない。
ソフィーの父イーシャイナ王国エドモンド=ラグナヴェール現国王とその昔、Treasure Hunter(探検・冒険家)を行っていたと言う人物だった。
ちなみに、この世界のTreasure Hunter(探検・冒険家)ってのは、俺らの世界のゲーム設定で良くある”冒険者”見たいな感じの仕事のようだ。
そして、謁見の間で、俺に近づこうとしたウイリアム王を止めようとしたエルフは、アーデル・ヴァルトさん。アルブ王国の宮廷大臣、種族はハーフエルフ。
このアルブ王国の組織は、俺達が思う中世の王権制度とは違い、王を頂点に王を補佐する、宰相そして、宮廷内を取り仕切る宮廷大臣が居てこれらは爵位が侯爵。以下、内務、魔法、財務、法務、農工務、商務、外務、軍務大臣となり、爵位は伯爵以下の爵位となるそうだ。
ニールさんのお父さんのティムさんは、宰相と魔法大臣を兼務している。って位は覚えたが、ティムさんアーデルさん以下の大臣の名前は覚えていない……。
確か、内務大臣と財務大臣と商務大臣がハーフエルフで、法務大臣と外務大臣がエルフだったか、それに農工務大臣と軍務大臣がダークエルフってことは見ればわかるんだけど……。
だって、エルフの場合、肌の色で種族はすぐわかるけど……みんな美形だが、同じ顔に見えるし、いっぺんに言われても覚えきれないよ。
後で、時田さんに聞いてメモしよう~っと。
◇◇◇◇◇
堅苦しい食事会も終わり、今俺たちは行きと同じ馬車に乗り、イーシャイナ王国の大使館へと戻った。
王達との食事のあと、ニールさんだけは、ニールさんの父であるアルブ王国魔法大臣兼宰相のティムさんに話があると呼び止められ、そのまま城に残っている。
◇◇◇◇◇
結局、ニールさんは、その日の夕食の後、俺達が居るイーシャイナ王国大使館に
戻ってきた。
俺達はみんなでニールさんの話を聞くために、大使館の客間に集まる。ニールさんは、みんなが集まったの確認して、テーブルの上にこの世界の地図を広げた。その地図を見ると、地図中央に丸いデカデカとした大陸があり周りは海になっている。
大陸中央にはエポニム海と言う内海が大陸の直径の2/3位の長さで、大陸に横たわっていて、一見、この大陸は東の方が繋がっているように見えるが、厳密には細長い海峡により2つに分かれている。この丸い大陸の北側を北ドワナ大陸と言い、大陸西側には、ソフィーの故郷のイーシャーナ王国があり、北ドワナ中央の北部には今俺達が居るアルブ王国が、そして東の端にはカカ帝国やその属国の島国のナ国がある。
また、北大陸の中央より少し東側のエポニム海沿いには4つのポリス都市の連合体のデスロ同盟国があり、その対岸側も南ドワナ大陸に大きな森の中にあるテーブルマウンテンには、獣人、鳥人系のデンスアーラ共和国。そして、デンスアーラ共和国の南の山脈地帯には、ドワーフ系の王国のウクラハンバ王国。南ドワナ大陸の北側中央にあるアトラール砂漠の西にはリーザードマンと呼ばれる爬虫類系人類のベラトーラ首長国があると言うことだ。
地図を指先ながら、この世界の国々の説明をするニールさんの話に、
(この世界って国の数8つしかないのか……少なすぎるよな)
と俺は思うのであった。




