262話 ソアラ散る!
『!?』
俺は状況が呑み込めず、膜の内側を叩きながら、
『ねぇ~ちゃん!駄目だ!ダメだってば!』
『元にもどしてよねぇ~ちゃん!!』
ひたすら、喚き散らす。
俺が、ギガ・ブレイブから離れたことにより、すでにギガ・ブレイブの姿
が消え、そこには、素のソアラねぇ~ちゃんが居る。
いや、本来、この距離(数百メートル)からでは、肉眼では見えるはずは
ないのだが、”見える”と、言うよりそこにねぇ~ちゃんの存在を感じてい
ただけかもしれない。
≪セイア、元気でねw≫
『ねぇ~ちゃん……』
≪短い間だったけど、あんたが大きくなった姿を見れて、
私うれしかった……≫
『ねぇ……ちゃん』
≪とうさん、かあさんによろしく言っといてねぇ≫
『……』
≪あっ、それと、ミオンちゃん、ソフィーちゃん、シュイちゃん
みんないい子だから、男としてちゃんと責任取りなさいよ~≫
『責任って……』
≪……3人のうち誰かと結婚しなさい!≫
『け・結婚って!』
≪3人共、あんたのために命がけで戦ったんだから……ねぇ≫
『……そんなの決めれないよぉ~』
≪……だろうね≫
『……』
≪なら、あんた、こっちの世界に住んだらw≫
『こっちの世界に……』
≪こっちの世界なら3人一緒にお嫁さんにできるしぃ~w≫
”イヒ”
と言いながら、いたずらっぽく笑うソアラねぇ~ちゃん。
そして、こう続ける。
≪……それにぃ~この世界にセイアが居たら……
もしかしたら、私の生まれ変わりと会えるかもよぉ~w≫
『えっ!』
驚く俺。
『!?それ、どう言うこと』
『どう言うことだよ、ねぇ~ちゃん!』
≪……≫
俺は、驚きねぇ~ちゃんに聞き返すも、返事がない。
いつの間にか俺は”ギラン”甲板の上に居て、俺の周り
を覆う、シャボン玉のような透明の膜は、消えてなくなっ
ていた。
◇
------(ギル(暗黒の龍)頭上)(第三者視点)------☆
≪聖霊力マキシマム!≫
ソアラは、両手を頭上に広げ叫ぶと、
ソアラの頭上に巨大な光の玉ができる……っと、同時に彼女の姿が
消えてなくなった。
ソアラが作った大きな光の玉は、ギル(暗黒の龍)の方に向かう。
危険を察したのか、ギル(暗黒の龍)が自身に迫る光の玉から
逃れようとするも……。
”ギャオ~ン”
光の玉は、ギル(暗黒の龍)を捉え包み込んだ。
≪今よ!ジェームズ≫
ソアラの合図を聞いた轟雷号のキャプテンシートに座るジェームズが、
≪対消滅弾発射!≫
と叫ぶと、射撃手のヴァンスも同じく、
≪対消滅弾発射!≫
と言いながら、トリガーを引いた。
”ボシュ”
”シュルシュルシュル”
轟雷号の艦首のドリル状の部分が、光に包まれたギル(暗黒の龍)に
向かって、飛んでいく。
と同時に、轟雷号のキャプテンシートに座るジェームズが言う。
『全艦、急速離脱!』
の掛け声とともに、”ギラン”と轟雷号は、その場を離れる。
\\\ボッカァ~ン!///
大爆発とともに、大きなきのこ雲ができる。
その大爆発は、ギル(暗黒の龍)と言うより、島ごと吹っ飛ば
したのだった。
◇
------(オブリヴィオン島からの帰路)轟雷号船内☆
俺は、自分の使命が終わったと言う安堵感……と言うより、
姉をなくした喪失感に見舞われ、轟雷号内の自室
に閉じこもっていた。
ソフィーやシュイだけでなく、幼馴染のゲキも俺にかける言葉が、
見当たらないのか、誰も俺に声をかける者がいなかった……
あの、いつも俺にズケズケものを言うミオンでさえ。
行と違って、ソアラねぇ~ちゃんが、いなくなったため、轟雷号と
ギランは、通常航行で、ブレイブ基地を目指している。
おそらく、ブレイブ基地に到着するには、後数時間はかかるだろ
う。
その間俺は、食事もとらず、唯、ただ、自室でベットの上で天井
を”ボー”と見上げたまま過ごした。
(結局、俺は何だったんだろう……)
ただ、ただ、それだけを自問自答して……。
◇
数時間後、轟雷号と”ギラン”はブレイブ基地へと帰還した。
「セイア!着いたよ~w」
ミオンの明るい声に促され、轟雷号の自室を出、艦をみんなと共に降りた。
そこには、櫻ばーちゃんにりゅーじーちゃん……
そこには2人の他に、この異世界に来たことがない2人が居た。
「「お帰りセイア!」」
声をそろえて出迎えるその2人は、
「あれ、なんでジョー叔父さんに甚平叔父さんが、
ここにいるの!?」
思わず2人に問いかける俺に、なんだか言いにくそうに
「いや……その、兄貴達もここに来てるだよ」
とジョー叔父さんが言う。
「へぇっ、兄貴って……」
と俺が聞き返すタイミングで、ジョー叔父さんと甚平叔父さんの
後ろから現れたのは……。
「セイア!」
「セイア!」
「えっ!……とうさん、かあさん……何で!?」
突然、現れた我が両親の姿に動揺する俺。
「なぁ~んでって、セイア……あなた母親をなめてはいけませんよw」
「えっ!どう言うこと、かあさん」
「どう言うことって、時々、あなたが変だったのよ」
「俺が変!?……」
「そう、なんか我が息子であって息子でないような気がしててね」
「息子でないような……ってどう言うこと」
俺の質問に少し考えてから、かあさんが言う。
「……う~ん、言葉では説明できないけど……
母親の感!……かしらねぇ」
(俺の身代わりのプロキシ オートマトンのことだろか……
でも、あれは俺を完璧にコピーしてははず……だけど)
と俺が心でそう呟いたタイミングで、
「痛てててっ!」
とうさんが、横に立つジョー叔父の耳をつかんでこう言った。
「あんまり、かあさんが言うもんだから、こいつを問い詰め
たんだよ。」
「えっ、いつ……!?」
「ああ、あのクリスマスパーティーの後だ」
「えっ、じゃぁ~お正月の時は……」
と驚き聞き返す俺に両親は声をそろえて言う。
「「知ってたw」」
と笑顔で言う2人。
「じゃ~ソアラねぇ~ちゃんのことも!」
と俺が聞き返すと、
急に2人は、怪訝そうな顔になり、
「ソアラのことは……もう言わない約束だろうセイア!」
って、悲しそうな顔で言うとうさん。
「いや、こっちの(異世界)で、ねぇ~ちゃんが生きてて
……生きてて…でも……」
俺は言いながら、涙が急に溢れて何も言えなくなった。
そんな俺を抱きしめ、背中をポンポンと叩いてくれるかあさん。
そこに突然!
「わたしがどうしたのセイア!」
って、ねぇ~ちゃんの声が聞えた。
「へぇっ!」
その声に驚き、声のするほうに俺が振り向くと、そこには小さな
6歳のころの、ねぇ~ちゃんが立っていた。
「ねぇ~ちゃん!!」
驚く俺に
「恥ずかしながら、戻ってまいりました」
って照れながら、敬礼するソアラねぇ~ちゃんが立っていた。
と同時にとうさん、かあさんが笑顔になり、頭をかきながら
「いや~ソアラにお前を脅かせって言われててな~芝居して
たんだよ~」
と、とうさんが言った。
俺は、その言葉に固まった。
ねぇ~ちゃんの説明によると、全聖霊力を使い光の玉を作った時点で
、消えかけて居たらしいんだけど、轟雷号の対消滅弾がさく裂し、
ギル(暗黒の龍)共々島が吹っ飛んだ瞬間、ソアラねぇ~ちゃんの体に
残ったほんのわずかな聖霊のエネルギーに、大量の魔力が集まったそう
だ。
そして、それを使い再び自分の体を再構築させたらしい。
で、
あまりに膨大な魔力が集まったので、自身の体を人間サイズにできた
ってことらしい。
そんでもって、自分が死んだと思い込んでいる俺を驚かせたくなって、
一足先に、転移魔法で、ブレイブ基地に帰って来たところで、とうさん
と、かあさんに遭遇。
ねぇ~ちゃんとの再会に両親が喜び、この異世界での俺の活躍を説明。
ねぇ~ちゃんから聞いた両親は、一応納得してくれたって言うこと
だった。
で、
俺をさらに驚かせるために、ねぇ~ちゃんがこの世界に居たこと
と、蘇ったことは、俺には内緒にしようと言い出して、
とうさんとかあさんの先ほどのお芝居になったわけだが……。
(とうさんって不器用で芝居下手だったと思っていたが……案外
……ってか、ソアラねぇ~ちゃんに言われ娘かわいさってことかもな)
「じゃ、みんなそろったことだし、粉物パーティーと
行こうかの~」
明るくりゅーじーちゃんに、
みんな笑顔で、
「「「「「はいw」」」」」」
と返事をするのだった。
◇
これで、俺の勇者としての役目は終わったが、この後1年を
かけて、この世界の国々に招待され歓迎の宴に招かれ続けるこ
とになる。
それから、俺とミオンは高校を卒業して、同じ大学に進学。
ゲキは、櫻ばーちゃん共々っていうか、家ごと
この異世界に移住し、『撃心流』道場を開いた。
もちろん、道場には騎士を辞めたクレアさんエドナさんも師範代
として参加している。
シノブは高校卒業後、アメリカの大学に進学。
また、ソルジャーとしての武者修行と称して、各国々を転戦してい
る……もちろんそこにはアイシャさんも同行してるよ。
後、ローゼは甚平叔父さんのところでバイク屋の手伝いをしてる。
あっ、そうそうソアラねぇ~ちゃんは……神になりました。
って言っても、この世界を救った生き聖霊として、各地にねぇ~
ちゃんを崇拝する人々が現れたので、ブレイブ基地にソアラ神殿
を建て、そこで各地からの巡礼者に祝福の言葉を贈るのが、ねぇ
~ちゃんの仕事になったって感じかな。
そんなこんので、その巡礼者を受け入れるためにソフィーとシュイ
は、ブレイブ基地を拡張して、都市にするため異世界に残ってもら
っている。
時々俺とミオンが遊びに行くけどね。
まあ、そのあたりの話は、また今度ね。
「完」
長い間、お待たせして申し訳ありませんでした。
これでやっと完結致しました。
今回のことを踏まえ、次回作は、なるべく途切れないように頑張ります。
読者の皆様には、長きにわたりお付き合いいただきありがとうございました。




