25話 「では、お見せいたしましょう~」
ミオンの
「あ~~~!お城が見えてきたぁ~綺麗ぇ~ね。」
の声に、俺、ニールさん、ソフィーが一斉に馬車の窓へと視線を移すと、そこには、透き通る湖面に浮かぶまるで、おとぎ話に出て来るようなお城が見えた。
湖と言っても、ここからだと海のようにも見える大きな湖の真ん中に浮かぶ白い外壁のお城。その光景の美しさに、俺はしばし見とれてしまっていた。
俺が景色に見とれていると、馬車の先頭を行くクレアさんとエドナさんが停止したらしく、馬車がゆっくりと止まった。
馬車が停車した位置は丁度城の正面。
しかし、湖の上に浮かぶ城へは道もなければ橋も架かっていない……と思っていたら、”ズ、ズズ~”と地響きを上げながら、白い大理石で出来たような道が湖中から、出現した。
「「すげー!」」
「す・ごいです~」
俺とミオンがハモりながら言い、ソフィーも驚きの声を上げるが、ニールさんは平然としてる。先頭のクレアさんとエドナさんがその白い大理石の道を静々と進んでいく、俺達の馬車もその後に続き、道を渡って言った。
城の城壁にある門を潜り、城の前庭のようなところで俺達は馬車を降りた。クレアさん、エドナさん、アイーシャさんも城の従者に馬を預け、クレアさんエドナさんを先頭に、大使のジョセフさん、ニールさん、ソフィー、俺、ミオン、シノブ、ゲキ、時田さんと続き、アイーシャさんが列の最後尾で、城の中へと進んで行く。
そして、城の中にある20畳位の部屋に案内された。
ここは、王と謁見する俺達の控室と言うことらしい。
◇◇◇◇◇
しばらくして、城の従者と思われる人が俺達を呼びに来たので、その人達に続いて、控室をでた。クレアさん、エドナさん、アイーシャさんは部屋でお留守番。
城の従者に案内された所は、学校の体育館ほどありそうな大きな広間。
ここが謁見の間ということなのだろうか……
正面に4段位の階段状になった一番上に、豪華な椅子に座る、豪華な服を着た、見た目60歳の男の人と俺達から見て、向かって左には同じく豪華な椅子に座る女性の姿が見えた。その一段下に2人の男の人が立ち、その一段下は3人……とお雛まつりの祭壇のように並んでいる。
(一番上に居るのが王と王妃なんだろう)
俺は思いながら部屋の丁度中央辺りの深紅の絨毯が敷いてある所まで進んだ時、大使のジョセフさんの合図で男性陣(ジョセフさん、俺、シノブ、時田さん)は、頭を垂れて両膝をつき右手を胸の前の付けるポーズを取って控え、ゲキだけは、床に正座して両手を付いて頭を下げる……
(まぁ、良いんだけどね……ゲキ)
そして、女性陣は、両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げて、腰を曲げて頭を深々と下げ、膝もより深く曲げる控えたのだが……
ミオンはミニスカートだったので、軽くスカートを持ち上げた時……たぶん……見えたろうな……ミオンの……パンツ。
一瞬、王や王妃、並びに臣下の人達の動きが固まったような気がする。
「オッホン!……よう参った。」
と何故か咳払いの後、王様は言った。
(絶対見えてたでしょ……王様)
「ごきげん麗しゅうございます国王陛下。この度、陛下の思し召しにより、我がイーシャイナ王国第4皇女ソフィー=ラグナヴェール姫と姫が予知された、勇者様並びに勇者様のお仲間をお連れ致しました。」
と、ジョセフさんがアルブ王国国王ウイリアム・フォスターに言った。
「うん、大儀であった。」
と国王がジョセフさんに言うと、
「はっ、はは」
と、かしこまるジョセフさん。
「陛下、ご無沙汰しております。」
とソフィーがウイリアム王に言う。
「うん、久しいのソフィー……して例の勇者は……」
とウイリアム王が言いかけた時、ジョセフさんが俺に目配せした。それを見た俺は、頭を下げ両膝を付いたまま、2、3歩前に進むと、
「わたくしでございます陛下。」
と声を掛ける。
「ほう、そちが……あの勇者……か」
と俺を見て意外に思ったのか、キョトンとした顔で尋ねて来た。そこで俺は、ウイリアム王に向かって顔を上げ立ちあがりこう言った。
「では、お見せいたしましょう~」
と言う俺の言葉に、他の仲間たちが俺から更に数歩離れる。それを見ていた城の騎士達が、慌てて俺に駆け寄ろうとするが、王の玉座の一段下居る大臣らしき中年のエルフが、
「うろたえるな!」
と、俺に近寄ろうとする騎士達を一喝する。俺は、騎士達を一喝した中年エルフに一礼してから、
「GUY BRAVE!!」
と叫ぶと全身が光に包まれ、光が消えると……GUY BRAVEの姿になった俺が現れる。
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
それを見た、王や王妃並びに雛段の面々に加え、先ほど俺に駆け寄ろうとした騎士達も驚きの声を上げる。ウイリアム王は、座っていた玉座から席を立ち、俺の方に駆け寄ろうとすると、先ほど、騎士達を一喝した中年のエルフの反対側に立っていた別の中年のハーフエルフが、
「陛下!……あぶのうございます。」
と右手でウイリアム王を制止しようとするが、
「よい」
と、王は一言言うと、制止しようとする中年のハーフエルフは頭を下げ、引きさがる。
王は俺の所まで、駆け寄るとGUY BRAVEである俺をジロジロ見たり、俺の腕を触ってみたり……
「ほう、これがあの勇者……」
と言いながら1人頷いている。
その王に対し、先ほど騎士達を一喝した中年エルフが、
「陛下!」
とウイリアム王に目配せしながら言うと、
「うん」
とウイリアム王もそのエルフに頷くと、
「すまんが勇者殿、少々試したいことがあるのでな、別の場所へ
ご足労願えんか?」
と尋ねて来たので俺は、黙って頷く。
それを見て、ウイリアム王は場内の騎士の1人に目配せすると、騎士の1人が俺に近寄って来て、
「勇者様、どうぞこちらへ。」
俺をどこかへ案内するようだ。俺はその騎士の後に付いていき、謁見の間を出た。
◇◇◇◇◇
騎士の1人に案内されたのは、城の中にある闘技場のようだ。
現代の地方の陸上競技場のような大きさで、トラックと言うか、フィールドを囲むように観客席が階段状に並んでいる。
俺の正面の少し高い位置に、玉座のような椅子が2つあり、ウイリアム王と王妃が座り、その周りに先ほどの中年エルフをはじめ他のエルフの幹部と思わしき、人達が座っている。
その下の段にジョセフさんやニールさん、それにソフィー、ミオン、シノブ、ゲキ、時田さんら、俺の仲間に加えクレアさん、エドナさん、アイーシャさんも観客席に座っている。 また、別の場所には、20名くらいの騎士と思われる人もいるようだ。
「頑張って下さい。」
と両手で祈るように言うソフィー。
「Mr.オオワシ!我らのGUY BRAVEの力、存分に示してやりたまえ。」
とシノブが言うと、
「遠慮しなくていいから、セイア!ぶっつぶせ~!!」
と大声を張り上げるミオン。
時田さんとゲキは黙って俺を見て頷く。俺はみんな黙ってに頷き返し反対側を向いた。そこには、等身大と思われる木人形が6体並んでいた。
その木人形の後頭部に、城の従者らしき人達が何かを入れているようだ。
これは、Proxy Automaton (プロキシ オートマトン)身代人形・・・今、俺達の世界で俺達の身代わりで居るオートマトンの原理の応用で、Possession Automatonと言い、騎士達の訓練用に魔物を再現させ、訓練する物だそうで、本物の能力の80%出せるそうだ。
俺くらいの身長だった6体の人形が、次々巨大化し魔物の姿に代わって行く。
(あら、大きさまで変わるのね……)
と俺は思いながらも、攻撃に備え構えを取る。
「右2体が、ミノタウロスです。その隣2体がオーガー、そして一番大きなのはビックシーザスです。セイア殿!」
と、ニールさんが観客席から俺に叫ぶ。それに頷き、魔物達を見ると、
≪Species Name Minotaur≫
≪Combat Power2,000/2,000≫
≪Death≫×2
≪Species Name Ogre≫
≪Combat Power1,200/1,200≫
≪Death≫×2
≪Species Name Big Scissors≫
≪Combat Power1,600/1,600≫
≪Death≫×2
(ほう……8割の力の再現でもそこそこ強そうだが……)
と頭の中の戦闘データを見て思う俺。魔物達の内、ミノタウロスとオーガーは、壁に立て掛けてある武器をそれぞれ握ると、俺に突進してきた。
(ミノがラブリュスと言う両刃の斧で、オーガーは金棒……か)
ミノタウロスとオーガー達との距離は、おおよそ100mと言ったことろ。俺に迫って来るミノタウロスとオーガーを睨みながら俺は落ち着いて、
「Wマシンガンアーム!!」
と叫び、両腕をマシンガンアームに変化させると、ミノタウロスとオーガーに向け鋼弾を叩きこむ。
”バリバリバリ”轟音と共に鋼弾が次々にミノタウロスとオーガー突き刺さる。ポゼッション オートマトンだからか?鳴き声ひとつあげずに崩れ去り、
≪Species Name ????≫
≪Combat Power 0/2,0000≫
≪Death≫×2
≪Species Name ????≫
≪Combat Power 0/1,2000≫
≪Death≫×2
見ると、木人形が穴だらけで倒れている。
(たぶん≪Combat Power 0/2,0000≫の方がミノタウロスで、≪Combat Power 0/1,2000≫の方がオーガーだろうな……)
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
闘技場に人々の、どよめきが起こる。
(残るは、あのビックシーザス……と言われる大きな蟹。)
俺は、その2匹の大蟹に向け、ミノタウロスとオーガーと同じように鋼弾を叩きこむ……が、確実に大蟹の甲羅に穴があいてはいるが、少し嫌がるそぶりはするもののそのまま俺の方に迫って来る。
(くっそー!浅いか……)
俺が叩きこんだ鋼弾は、ビックシーザスの体には貫通してないようだ。
「仕方ない、一気に片付けるか」
右手をワイヤーアームに変え、Unicornを呼び出す。
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
闘技場の人々が再び、どよめく。
「聖獣合体だ!こいUnicorn!」
とUnicornに言うと、
≪Charge up Kentauros≫
頭の中のカーソルを選択する。ここからの合体シークエンスは、いつものように自動で行われる。
俺は自分の意思とは関係なく、Unicornに向かって走りだし、Unicornも俺の方に向かって走って来て、俺とUnicornがお互い迫る中、俺はジャンプする。Unicornは空中にジャンプした俺目掛け額の角を飛ばす。
Unicornの角はみるみるでかくなり、ランスへと変わる。俺はそれを受け取ると、空中で体をひねり、向きを変えそのまま、Unicornの方に落下していく。Unicornと落下する俺が交錯する寸善、Unicornの頭が胴体に収納され、俺の下半身が首のなくなったUnicornの胴体と合体する。
「完成!Kentauros!」
と、またもや俺の意思に反し、自動的にこの恥ずかしいセリフを叫んでいた。
それを、にこやかに観客席で見守るシノブ。
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
三度、闘技場の人々がどよめく。




