248話 えっ、私を踏み台にぃ~!!
------(オブリヴィオン島(クレアとロック・トータス戦)---☆
『この動きで、倒されることはないけど……』
クレア(ジャン)さんとロック・トータスは、ひたすら回り続ける。
(今、俺は手が離せない……が、せめて右腕1本だけでも、クレアさんの
救援に向かわせ……)
と、俺が思った時だった。
『ロッホ!』
と言う叫び声が聞こえ、クレア(ジャン)さんを追いかけ回る、ロック・
トータスの前足が地面にできた大きな穴に落ちる。
と、同時に、バランスを崩したロック・トータスは、前のめりに倒れ、
1回転し、穴の底に仰向けで落ちる。
\\\ドッス~ン///
『クレア~、内側の甲羅は、外側より硬くないはずよ~』
『ローゼ!どうしてここに?』
『忘れたの~私達はみんな聖霊リンクで、お互いのことが、分かるようにな
ってるってことを……』
『ああ、そうだったわねw』
『私は得物がないから……さぁ、とどめを刺してクレア』
『ああ、わかった』
ローゼ(ガフ)の言葉に、頷くクレア(ジャン)さん。
『ファイヤースピンシールド!』
クレア(ジャン)さんが、盾に魔力を込めて投げると、その盾は、端から刃を
出し回転ししかも炎を纏いながら、仰向けのロック・トータスの腹を真直ぐ縦
に切り裂くが……。
外側よりは強度がないとは言え、硬かったようで、ロック・トータスの体の
内部にまで、損傷を与えられてないようだった。
それを見た、クレア(ジャン)さんは、自身に戻ってきた盾を受け取ると、
すぐさま次の技を繰り出す。
『フレア・ブレード!!』
ファイヤーブレードの時より、さらに高温の炎が、クレア(ジャン)さんの
剣を包みこむ。
そして、仰向けでもがく、ロック・トータスへと縦に剣を振り下ろす。
『フレア・ダイナミック!!』
高温の炎は、炎の刃となり、ロック・トータスを真っ二つに切り裂いた。
『やったねwクレア』
そうローゼがクレア(ジャン)さんに声を掛けると、ある特撮ヒーローの
ような”キメ”のポーズをして言う。
『うん、ありがとうローゼ』
(おそらく……その決めポーズ……ミオンが教えたんだな)
◇◇◇◇◇
(さて、俺の方はどうすべきか……)
とクレアさん達がロック・トータスを倒したのを確認し、次の手を考えて
いると……。
突然!
”ビッシューン”
”ビッシューン”
どこからともなく、ビームが飛んできて、1発は、電龍に絡みつく海藻を焼き
切り、もう一発は、シーウッドギガントス(海藻巨人)の脳天を貫いた。
\\\バッシャ~ン///
そのまま、崩れ去るシーウッドギガントス。
シーウッドギガントスは、そのまま、倒れた浜辺で、虹色の泡となり消えて行った。
それを見て、カッパーが動いた。
自身の頭部の皿を4枚投げ、戦海魔獣将軍ラブロの周りに配置した。
が、
”ズキュン”
”ズキュン”
”パリ~ン”
”パリ~ン”
今度は、ビームでなく、砲弾が飛んできて、カッパーの皿を次々に割って行く。
”ズキュン”
”ズキュン”
”パリ~ン”
”パリ~ン”
《な・何ごとだ!》
慌てる戦海魔獣将軍ラブロ。
その時、俺の右手高台から姿を、現したのは……。
『真打登場!』
『騎兵隊の到着だ!』
ミオンの巨神器と、2台の戦車だった。
「ミオン!ジェームズさん」
俺は、思わずうれしそうな声で、そう叫ぶのだった。
◇◇◇◇◇
------(ギランブリッヂ内)第三者視点---☆
次々に戦果の報告が、映し出される”ギラン”のブリッヂで、その様子を黙
って見つめるソンブル翁.
そこに、後ろから何者かが近づき声を掛ける。
「翁、戦況はどうだ」
その声にソンブル翁は、振り向くと、
「アロガン、もうエネルギー補給は済んだのか?」
「ああ」
2人は、そのまま黙ってモニターを見つめる。
「我も出撃しようか」
とアロガンが口を開く。
「いや、もう少しで戦闘もおわろからの~」
「そうか……しかし……」
とアロガンが何か言おうとした時、先にソンブル翁が言う。
「これが、終われば追撃戦じゃ、その時まで待てアロガン」
「んっ?追撃戦……と言うことは、今回、暗黒龍魔王軍団は……」
「うむっ、一部の者による奇襲……じゃった様じゃ」
「そうか……」
と、モニターをソンブル翁と見ながら、少し寂しそうに言うアロガンだった。
◇◇◇◇◇
俺は、戦海魔獣将軍ラブロと対峙する。
俺の後ろは、ゲキが守る。
またもや、戦海魔獣将軍ラブロは、三俣の銛を俺の方に突き出し、例の水流を
放て来た。
と、同時に、俺の後ろの海からも水流が襲って来る。
俺は、構えた右手を広げ、アンチマジックシールドを張り、正面から来
る水流を防ぐ。
とほぼ同時に、ゲキが、
「撃心流気功旋風!」
竜巻を起こし、それを防いだ。
俺が、戦海魔獣将軍ラブロに反撃しようとした時、カッパーが、
ジェームズさん、ガレリアさんの2台の戦車に対し、尻子玉を投
げつけようとした。
(ヤバイ!)
俺は、咄嗟に、左腕を飛ばし、2台の戦車の前にシールドを張る。
\\\ドッカ~ン///\\\ドッカ~ン///\\\ドッカ~ン///
俺がシールドを張ったおかげで、2台の戦車は無傷だった。
『Excellent!(すばらしい)』
『Great!(すごい)』
ジェームズさん、ルズドさんが無線でそう叫ぶ。
と同時にすぐさま反撃するようだ。
『次弾装填!』
『次弾装填!』
これを聞き、俺は飛ばした左手のシールドを解除する。
『装填完了しました』
『装填完了しました』
それぞれの装填手の返事を待って、それぞれの射撃手である、ヴァンス
さんとガレリアさんに命令する。
『Fire!』
『Fire!』
”ズキュン”
”ズキュン”
が、
それを身軽にかわすカッパー。
なので、少々お手伝い。
俺は、ジェームズさん、ルズドさんの元へ向かわせた左手から、
4連装フリーザービーム砲を放つ。
”ピー”
”ピキピキピキ”
カッパーの足元の海面を凍らせ、奴の動きを止める。
海面が凍り、足が抜けなくなり、もがくカッパー。
足を無理やり抜こうとして、少しバランスを崩し、前のめりになった
その時だった。
”ズキュン”
”ズキュン”
\\\パァ~ン///
44口径120mm滑腔砲M256が、2発ともカッパーの頭の皿に当たり、
頭が破裂した。
《何っ!》
驚き、一瞬、カッパーの方を戦海魔獣将軍ラブロが見た、その瞬間。
俺は、頭部の角から電撃を戦海魔獣将軍ラブロに向け、放つ。
「サンダーボルト!」
”ビリビリビリ”
\\\ザッバーン///
しかし、かろうじて、自身の前に水の壁を造り、俺の電撃を防ぐ戦海魔
獣将軍ラブロ。
《なかなかやるな~》
「お前こそ」
お互いに、にやりと笑い言う。
◇◇◇◇◇
一方、ミオン(マークⅢ)と、電龍は、グシオス(トド)と戦っていた。
”ビッシューン”
”ビッシューン”
”ビリビリビリ”
ミオン(マークⅢ)の放つビームライフルのビームも、電龍が放つ電撃も
グシオス(トド)の厚い脂肪に吸収され、まったく効果はない。
"ゴー”
さらに、電龍が火炎を吐くが、それも通用しない。
そんな、ミオン(マークⅢ)と電龍に溶解液を吐くグシオス(トド)。
”プッシャー”
それを見た電龍は、咄嗟にミオン(マークⅢ)の前に出て、ミオン
(マークⅢ)を庇い、グシオス(トド)の溶解液を全身に浴びる。
『電ちゃん!』
ミオンが、その行動に驚き叫ぶ。
「へへ~ん、これくらいなら、大丈夫だよミオンっち」
「おいらは、毒には耐性あるからねぇ~」
とは言うものの、少し体からは蒸気のようなものが、うっすらと出ていた。
『とても大丈夫には見えないわよ……』
「あっ、まぁ、全然平気っ……でもないけど」
『もう、無茶しないの電ちゃん』
と心配するミオンに
”テヘテヘ”
と笑う電龍だったが、急に真顔になり、ミオン(マークⅢ)に言う。
「無茶ついでに、僕に考えがあるんだけどミオンっち」
『えっ、考えって何よ』
「それはねぇ……ごにょごにょ」
電龍は、内緒話のように声を潜めてミオン(マークⅢ)に言うが、
聖霊リンクで、繋がっている俺達には全部筒抜けだった。
(まぁ、下手に念話使って奴らに悟られるよりはいいけどさ)
『えっ、私を踏み台にぃ~!!』
驚き声をあげるミオン(マークⅢ)。
「こ・声が大きいよミオンっち!!」
『ああ、ごめん』
電龍に怒られ謝るミオン(マークⅢ)。
「じゃ、行くよミオンっち!」
『えぇっ』
頷くミオンを見て、電龍は、自身の体を30cmへと縮めた。
”デュゥーン”
そして、ミオン(マークⅢ)の肩の上にちょこんと乗る。
「奴に溶解液を吐かせてねw、ミオンっち」
『わかったw電ちゃん……やってみる』
そうミオンは電龍に言うと、自身の居た高台から、思い切りジャンプし、
グシオス(トド)の居る浜辺へと降りると、ホバー走行を生かし、
高速でグシオス(トド)に迫るのだった。
”ゴー”
高速で迫るミオンに、グシオス(トド)は、溶解液を吐く。
”プッシャー”
それを、華麗に避けるミオン(マークⅢ)。
再度、溶解液を吐くグシオス(トド)。
”プッシャー”
しかし、それもきれいにかわすミオン(マークⅢ)。
そして、3度目の溶解液の攻撃に入ろうと、口を大きくグシオス
(トド)が開けた時だった。
「今だ!」
電龍は、そう大きな声で叫ぶと、グシオス(トド)の開けた大きな口に
飛び込んだ。
”ンッ、ガ、ゴックン”
突然、自身の口に飛び込んだ、30cmの電龍に驚き、それを思わず、
飲み込んでしまうグシオス(トド)。
電龍は、グシオス(トド)の胃袋まで達すると、すかさず、自身の体を
巨大化する。
”デュゥーン”
”バキバキバキ”
\\\ボワァ~ン///
グシオス(トド)は、自身の体内で巨大化した電龍のために、体が破裂した。
と同時に、やがて、虹色の泡となり消えて行った。
◇◇◇◇◇
お互いに、にやりと笑い言う戦海魔獣将軍ラブロと、俺だったが、
グシオス(トド)の崩壊に、
《な・何っ!》
驚き、一瞬俺から目を離したのを見て、俺は自身の右腕を奴に向け飛ばした。
「ブースト・パンチ」
本来なら、腕を回転させながら、放つブーストスマッシャー・パンチなんだが、
ここはあえて、回転させず、右腕を飛ばした。
《うっ》
俺の飛ばした右腕は、戦海魔獣将軍ラブロの喉元を捕らえ、そのまま強引に
空高く運んで行く。
《何をする!》
右腕1本で,空高く運ばれ、驚愕する戦海魔獣将軍ラブロ。
持っていた銛を俺に向け、例の水流を俺に放とうとするが……出ない。
《しっ、しまった!》
その様子を見て、俺と俺の中に居るソアラねぇーちゃんとで同時に言う。
《「やっぱり」》
これは、どう言うことかと言うと、奴の水流攻撃を受けながら、ずっと俺の中で、
ソアラねぇーちゃんと話し合っていたのだった。
奴は、絶対海から陸上に上がろうとしなかった。
そして、銛から水流を撃つだけでなく、海からも撃てるが、決して、
陸上や空中からあの水流攻撃は来ないこと。
そして何より、奴がわざわざ戦海魔獣将軍と名乗っていること。
以上のとこから、ねぇーちゃんと相談した結果……こうなるのではって、考え
実行してみたら……そうなったって感じだ。
《「じゃ、とどめね」》
《「聖霊力ビーム!!」》
◇◇◇◇◇
------(某謎の空間)第三者視点---☆
《アビシオン、アビシオン》
《……なんだこの、俺を呼ぶ声は……》
《アビシオン、アビシオン》
《……んっ、その声はエンケラトス……いや、トリステスか!?》
《ああ、アビシオン》
《俺は……ああ、死んだのか》
《ああ、そうだアビシオン……やっとお前も魂の牢獄から解放されたのだ》
《魂の牢獄から解放された?》
《ああ、そうだ、これでやっと、本来行くべき輪廻の輪に行けるのだ》
《輪廻の輪?》
《ああ、死んだ魂が行き着くところ》
《行ってどうなる》
《そこで、魂は再びリセットされて……》
《リセットさて……生まれ変わるのか》
《そうだ、それが本来生き物の摂理さ》
そうトリステスに言われた瞬間、アビシオンの気持ちの中に、急に温かいものが流れ、
なんとも言えぬ幸福感に満たされていく。
《ああ、そうだな俺もお前と一緒に行こうw》
その言葉を口にした途端、2つの魂は、大いなる光に包まれるのだった。
『私を踏み台にぃ~!!』は、『俺を踏み台にぃ!』のセリフ的オマージュです(笑)




