242話 えっ、なんで俺まで怒られるの?
”ガミガミガミガミ”
(んっ……ゲキか?……何言ってんだろう)
俺は、目を開け起き上がる。
どうやら、俺は、轟雷号の食堂の奥にある、ブリーフィングルーム
のソファーに、寝かされていたみたいだ。
そう、俺は腰に巻いたタオルを剥がれ、恥ずかしさもあまり、頭に
血が上り倒れたようだ。
「ミオン、今、暗黒龍魔王軍団との戦いの最中なんだぞ!その戦いに
おいて、一番重要な戦力であるセイアになってことをするんだ!」
「だって……」
ミオン、ソフィー、シュイは俺の目の前で正座させられ、ゲキに説教
されているところの様だ。
「ミオンはともかく、ソフィーさん、シュイさん2人は仮にもお姫
様だろう……」
「いくら、ミオンにたぶらかされたと言え、少々やりすぎではないの
かな?」
「「はい……」」
ゲキに言われ、しょんぼり言うソフィーとシュイ。
「前からそうだったが、ミオン何故セイアにちょっかい掛けるんだ!」
「……って」
小声で言うミオン。
「んっ……聞こえない」
ゲキにそう言われ、
「だって、困った顔のセイアって……かわいいんだもんw」
と顔を赤らめ言うミオンに、同じく顔を赤らめ同調するソフィーとシュイ。
その時、ミオン達と俺は目が合う。
「あっ、セイアw」
「「セイア様w」」
ミオン達の声に反応したゲキが、俺の方に振り返り、
「おっ、セイア気が付いたか」
と言うので、
「ああ、」
と答えた俺にゲキが一言言い放つ。
「お前も、お前だ、一度、倭国で見られてるんだから、気絶することはないだろ
う」
(えっ、なんで俺まで怒られるの?)
と思い、固まっている俺にゲキが再び言い放った。
「お前達も、いっそのこと、俺やクレア、エドナのように裸の付き合いをしろ!」
その言葉に、俺を初め、ミオン、ソフィー、シュイが一斉に目を見開き固ま
った。
(……、いつから?何時から3人はそういうお付き合いになったの?)
そう心で叫ぶ俺だった。
◇◇◇◇◇
この日の夕食は”ギラン”の巨神器格納庫内に、長テーブルを並べ全員で
そろって食べた。
因みにメニューは”カレーライス”。
俺達が食事中は、アントマン達が代わりに警戒についてくれている。
いざ、って時は、”ギラン”の中にある転送装置で移動できるし、ここ、
オブリヴィオン島は、ヘルゲイト付近と違い、少し魔力エネルギーの濃度が
低いので、レーダーや無線も回復してることもあり、みんなそろっての食事
となった。
食後、その場で今後について、みんなで話し合った。
轟雷号の対消滅弾は、威力はあるが、使いどころが難しい。
それに、元は魔力なため、敵のアンチマジックシールドに阻まれてしまう。
また、次いで戦闘力で力を発揮するはずの”ギガ・ブレイブ(俺)”も同じで、
ただ、俺の場合はソアラねぇーちゃんの力を借りた”聖霊力ビーム”があり、
その威力は絶大だが……回数制限があるため、これまた、使いどころが難しい。
そこで、万が一のことを考えソアラねぇーちゃんは、俺達の世界の兵器をシノ
ブ達に依頼したってことだけど。
正直、ねぇーちゃんも、敵がここまで魔力攻撃に対して防御をしてくるとは、
思ってなかったらしいけどね。
そこで、当初の作戦を変更して、シノブ達が用意してくれた現代兵器を中心に
作戦を考える……ところまで決め、今日の話し合いは終わった。
◇◇◇◇◇
話し合いの後、”ギラン”の中にある転送装置で、俺達全員は、轟雷号に戻り、
各人の部屋で休むこととなった。
って言っても、ワールドディフェンス社の面々は半舷休息。
交代で休むらしいが、俺達はその必要がないって言われた。
まぁ、とは言え、暗黒龍魔王軍団が攻めてきたら、たたき起こされるんだろう
けどね。
轟雷号内にある部屋と言っても、1人あたりのスペースは、カプセルホテル並み。
以前30名が就寝できるように通路の左右の壁に埋め込まれているものだが、
ワールドディフェンス社のメンバーが、加わったことで、40名まで収容で
きるよう改造されている。
ミオン、ソフィー、シュイ……その他のメンバーに、
「おやすみ~」
って声を掛け、自分に割り当てられた部屋に潜り込み、部屋のドア代わりのシャッ
ターを閉め、寝床に就いた。
(いつ、敵が攻めてくるかもしれない状況で、果たしてぐっすり寝れるのか?)
って思ていたが……。
起床の時間まで、寝てたようだ……ぐっすりと。
◇◇◇◇◇
------(暗黒島(暗黒龍魔王軍団本拠地))第三者視点---☆
謁見の間のような部屋で、
「各自、魔獣を2体ずつ出せ」
「「「「「はっ」」」」」
暗黒龍魔王ゲーグの命に、各魔将軍達が頭を下げ返事する。
「指揮は、ラブロ(戦海魔獣将軍)お前が執れ!」
「はっ」
その暗黒龍魔王ゲーグの言葉に、異議を唱える恐魔虫将軍マンサ。
「お待ちくだされゲーグ様」
「なんじゃ、マンサ」
「ラブロは、先の戦いでその戦力のほとんどを失った……言わば、
敗戦の将、そんな奴に、今回の奇襲作戦、務まるとは到底思えま
せん!」
「なっ、何を!」
マンサの言葉に、激昂するラブロ。
「まぁ、待て」
激昂するラブロを諫める闘魔人将軍ジオ。
「しかし!……っ」
なおも、何か言おうとしたラブロに闘魔人将軍ジオが続けて言う。
「マンサの言うのは、正しい!」
「えっ!」
ジオの言葉に驚くラブロだったが、それを見て、暗黒龍魔王ゲーグ
が、静かに言う。
「マンサの言い分は、わしも最もだとは思うが……」
「ならば!」
ゲーグの言葉に、今度はマンサが、身を乗り出し言う。
それを目で、威圧したゲーグが、マンサに向け言う。
「しかしだ、奴らに気取られずに、奇襲をかけるためには、あれで
なければ出来ん!」
「そして、あれを操れるのは……」
そこまでのゲーグの言葉を聞き、マンサが答える。
「ラブロ……」
「そう言うことだ、マンサ……わかったか」
「はい」
「なら、さっそく御主も支度せー!」
「はっ!」
◇◇◇◇◇
起床後、転送装置で夕食と同じく、”ギラン”の巨神器格納庫内に、長テーブルを
並べ全員でそろって食べる。
メニューは、コーヒー(異世界組は紅茶)に厚切りトースト、ゆで卵、サラ
ダ……って、
(喫茶店のモーニングじゃねぇ?)
って思いながらも、黙っていただいた。
例によって、約2名の(ゲキとシノブ)は、それに巨大ハンバーガーを付けて
いたが……。
食事中、1体のアントマンが慌てて、巨神器格納庫内に入って来て、ソンブル翁
の耳元で何やら話していた。
「なっ、それは本当か!」
食事中にもかかわらず、急に立ち上がり言うソンブル翁。
そのソンブル翁の言葉に黙って頷く、アントマン。
「どうしたMr.ソンブル」
慌てるソンブル翁に、声を掛けるジェームズさん。
慌てて格納庫を出ようとしているソンブル翁は、足を止め、ジェームズさん
の方に振り向き言った。
「奴らが攻めてきた」
その言葉を聞いて、俺達全員、食事もそこそこに、ソンブル翁と共に、”ギラン”
のブリッヂへと向かうのだった。
◇◇◇◇◇
「おかしいですね……レーダーには、何の反応もありませんよ」
”ギラン”ブリッヂで、レーダー手の席のアントマンと入れ替わり、操作した
マーカーさんが言う。
「まぁ、レーダーには映らんじゃろなぁ」
マーカーさんの言葉を聞いたソンブル翁が言う。
「映らないってどういうこと……おじいちゃん」
ソンブル翁の言葉に、ミオンが聞き返すと、
「奴らは海底から、こちらに向かっておるからのう」
と平然と言い返すソンブル翁。
「?海底から……」
「確かに、海底から来られては、レーダーには映りませんが……」
ミオンの疑問に、かぶせるように言うマーカーさん。
「では、どうやって感知したんだMr.ソンブル?」
とジェームズさんの問いに、にやりと笑い、ソンブル翁の側にいるびしょ濡れ
のアントマンの肩に手を置き言う。
「なんでアントマンがびしょ濡れなの?」
「ああ、それはじゃな……」
と言いながら、USBケーブルのようなケーブルの先端を、びしょ濡れのアン
トマンの首筋に刺すソンブル翁。
「これを見れば一目瞭然じゃよ」
そう言って、アントマンに刺したケーブルの反対側の先端を通信装置横の装置
に刺す。
すると、”ギラン”ブリッヂのメインモニターに映像が浮かんだ。
「「「「「Wow!」」」」」
「何これ!?」
「「「「……」」」」」
驚き、声を上げる、ジェームズさん、シノブを初めとするワールド社の面々……
と、ミオンに、絶句する俺や他のメンバー達。
そこに映し出されたのは、全長350mの大きなウミガメ。
万が一を考え、ソンブル翁が、暗黒龍魔王島付近の上空にワスプマンを偵察に出
す際、一緒に数体のアントマンを運ばせ、その海域の海底にアントマンを配置し、
監視していた……ってことらしい。
(Good Job!ソンブル翁)
”ピッ”
≪名称アスピドケロン≫
≪体長 350m≫
≪体重 15,000t≫
≪レベル不明≫
≪戦闘力 0≫
≪防御力 1,000,000≫
≪スピード 4,000≫
≪EP 500,000≫
≪特徴 攻撃力0、魔獣運搬用≫
すると、映像を見た俺達全員の頭にこれが浮かんだ。
「魔獣運搬用……って」
思わず頭に浮かんだデーターを見て、俺が呟くと、
「そっ、こいつデカいけど戦闘力はないの」
と、俺の肩に乗っているソアラねぇーちゃんが胸をはり言う。
「攻撃力はないのか……」
と呟くシノブに、ジェームズさんが、
「しかし、こいつに戦闘力はなくとも、運搬用ってことは……。
って言いかけると、すかさず、ソアラねーちゃんが、
「そうね、12~13体は積み込めるかしら」
「えっ、そんなに!」
驚くミオンに、
「うん、そうだよw」
ってあっけらからんと答えるソアラねぇーちゃんだった。
「兎に角、迎撃態勢を……」
と言う時田さんの言葉に、黙って頷き、
「総員、第一種戦闘配備!」
と叫ぶジェームズさんだった。
これから、戦闘が続きます。




