229話 お年玉
クリスマスパーティーから8日経った。
今、この日本に居るのは、俺、ミオン、ソフィーにシュイの4人だけ。
シノブとアイーシャさんに、付き添いで時田さんの3人は、シノブとアイ
ーシャさんの戦闘機の訓練のため、ンドワン国へ旅たち、シノブの父である
ジェームズさんと、α(アルファー)チームは、兵器調達のために、本国に
戻った。
それに、クレアさん、ローゼは、巨神器の操縦訓練と今使っている武器を
フォトンプリンター(光子を使った3Dプリンター)で巨神器用に複製する
ため、異世界のオブリヴィオンのアジトに居る。
また、エドナさんは、彼女専用飛行アイテムのテスト飛行と、それを使っ
た戦術訓練のため同じく、オブリヴィオンのアジトに居る。
ゲキと、櫻ばーちゃんは、ゲキの”斬魔刀”と甲冑の”避来魔”
を使いこなせるよう、オブリヴィオンのアジトにあるダンジョン
【冥界のオベリスク】で、死霊の魔物相手に訓練中。
なので、4人だけっていう訳。
最も、ゲキと、櫻ばーちゃんのProxy Automaton
(身代わり)は、ゲキの自宅にいるし、表向き(特にうちのとうさん、かあさん
達)には、シノブと時田さんは、シノブの父であるジェームズさん達とアメリカ
に帰り、アイーシャさん、エドナさん、クレアさんにローゼ達は、故郷のンドワ
ン国でお正月を迎えるってことになってるけどね。
で、お正月も、親が返ってこないミオンと、そこに居候しているシュイが、
”かわいそう”ってうちの両親が言うので、昨日の大晦日から、2人はうちの
家に来て、泊まっている。
みんなで、ゲームをしたり、某国営放送の歌合戦を見ながら年越しそばを
食べたりして過ごし、ミオンとソフィーがソフィーの部屋で寝。
シュイが俺の部屋で寝た。
なので、俺は居間で布団を引いて寝る羽目に……。
まぁ、いいんだけどね、楽しかったから。
で、朝、みんなでお雑煮を食べて……。
ああ、そうそう。
このお雑煮なんだけど、うちは関西風のお雑煮なんだよ。
もともと、とうさんは関西出身だからね。
朝一番に水に昆布を入れ、だしをとっておき、1時間くらいたってから火
にかけ、沸騰する前に、昆布は引き上げる。
大根、ニンジン、さといもは丸く切って、だしをとっておいた鍋に豆腐以外の
材料を入れ、柔らかく煮。ある程度、柔らかくなれば、お味噌(白みそ)を溶
かし、豆腐、お餅を入れればば出来上がり。
餅はもちろん丸餅……まーーるく暮らせるようにってことらしい。
一同、食卓にそろったところで、
「じゃ、あけましておめでとうw」
と とうさんの挨拶に、俺達も挨拶をする。
「「「「おめでとうございますw」」」」
「じゃ、みんなにこれを」
と言いながら、 うちのとうさんが、一人ひとりにポチ袋を渡した。
「ありがとうwとうさん かあさん」
とお礼を言う俺。
「えっ、私達もいいの?おじさん、おばさん?」
と珍しく遠慮するミオンに、
「何言ってるんだい、ミオンちゃんはうちの子も同然じゃないか」
とにこやかに言う とうさん。
「ありがとう、おじさん、おばさんw」
とお礼を言いながら、 とうさんに抱き着き、ほっぺに”チュ”するミオン。
ミオンに”チュ”されて、でれでれの とうさんに……。
≪この!エロおやじ!≫
と念話で起こるソアラねーちゃん。
ただ……シュイとソフィーは、
「「……」」
無言というか、頭の中が?でいっぱいの様子。
そんな2人に かあさんが説明した。
「お年玉の語源は、正月に歳神を迎えるために供えられた鏡餅がお下がりとして
子供に与えられ、その餅が”御歳魂”と呼ばれたとする説があるの……それが
いつの間にかお金に変わったのよ」
「「……」」
それでも、シュイとソフィーは、このお年玉をどう扱っていいか、困った様子。
それを見かねたミオンが2人の耳元で言う。
「縁起物……ってか風趣だからねぇ、お礼言っとけばいいのよ」
それを聞いた、ソフィーとシュイが……。
「「ありがとうございます、おじ様、おば様」」
と2人声をそろえて、うちの とうさんと、かあさんにお礼を言ううと同時に、
うちの とうさんの右ほっぺにソフィーが、左ほっぺにシュイが……”チュ”
した。
(あ―――っ、ミオンの真似したのね2人は)
2人に”チュ”された、うちの とうさんは、しばらく放心状態なるのだった。
◇◇◇◇◇
先ほど、ミオン並びにソフィーとシュイに”チュ”され、未だデレデレの とう
さんに、それを睨みつける かあさん。
それに、見えないけど、”デレデレ”顔の とうさんを俺の肩の上から睨むソア
ラねーちゃん。
少々不穏な雰囲気の中、みんなで手を合わせ、お雑煮とお節をいただいた。
「「「「「「いただきます」」」」」」
お節を食べてながら、皆に、うちの とうさんが”おせち”の蘊蓄をのたまう。
「えー、このカズノコはねぇ~卵が多い=たくさんの子がでるから、子宝や子孫
繁栄を願う縁起物でね」
それを、みんなは黙ってふんふん聞いている。
「黒豆はね、この一年まめ(まじめ)に働き、まめ(健康)に暮らせるように
だし……昆布巻きはね、養老昆布=よろこぶで不老長寿とお祝いの縁起物なんだ
よ~」
それを、再びみんなは黙ってふんふん聞いていたんだが……その時ミオンが
「じゃあ、栗きんとんは?」
と唐突に聞く。
「え――っ、栗きんとん……くりきんとん……はね……」
と栗きんとんを繰り返し言いながら考え込んでしまう とうさん。
その時、考え込む とうさんに、 かあさんが助け舟を出す。
「栗きんとんの”きんとん”は金団って書くの、だから、金の団子、つまり、
金銀財宝を意味し、金運を呼ぶ縁起物なのよ」
それを聞いたソフィーとシュイが、栗きんとんをジーと見つめる。
そして、シュイが言う。
「これが金銀財宝?……食べれるのですか?」
その言葉を聞いてうちの とうさんと、 かあさんがきょとんとし、お互い顔を一瞬
見合わせ、 とうさんがシュイに説明する。
「いやいや、シュイちゃんこれは本物の金銀財宝ではないよ……んっ、これは栗っ
て食べ物なんだけど、色が金のようだから、それを食べることにより金運がUP
することを願うっていう日本人の風習なんだよ」
「風習……ですか」
と考え込むシュイにミオンが、フォローする。
「日本人ってね、読み替えっていうか……例えば、祝うに値する=”めでたい”って
言うので、鯛って魚を食べたりするように、ダジャレって言うか、言葉遊びって
感じかな、それが好きな民族なのよ」
それを聞いて、なるほどって感じで、シュイとソフィーが頷いていた。
「あら、ミオンちゃん詳しいじゃないの」
とシュイとソフィーに説明するミオンの言葉に、 かあさんが褒めると、
「えへへ、それほどです~w」
って照れながらも、嬉しそうに笑顔で答えるミオンだった。
◇◇◇◇◇
食事が終わり、今俺と とうさんは居間にいる。
奥の和室で、女性陣の着替えを待っているところ。
≪ソフィーが着る振袖って、本来私用の振袖だったんでしょ≫
と”隠遁”魔法を使い、俺の肩の上に居るであろうソアラねーぇちゃんが、念話で
俺に話しかけた。
≪うん、そうらしいよ、ねぇーちゃん≫
側に とうさんが居るので俺も念話で返す。
≪どんなんだろうw、たのしみぃ~≫
≪そだね≫
「セイア……どうした、ぼーとして」
ねーちゃんと念話話すため、1点を見つめている俺を不審そうにのぞき込み言う とうさん。
「うんっ、あっ、いや、3人ともどんな姿かな~って」
「ああ、そうか、そーだよなw、わくわくするな」
とうさんが、またもやニヤケながら言うと、和室の襖が”スー”と開き、
「お待たせしましたぁ~」
と かあさんが出てきた。
そして かあさんに続いて、ミオン、ソフィー、シュイが並んで出てきて、
「どうお?セイア、 おじさんw」
とミオンが言う。
ミオンが紫をベースの花柄、シュイが、赤ベースの花柄、ソフィーはピンク
ベースの花柄のいずれもあでやかな着物姿だ。
「「おお!!」」
と3人の振袖姿を見て、俺と とうさんは声を上げた。
≪ヘーけっこうかわいいじゃん、かあさんセンスいいわw≫
≪そうだねw≫
ミオンの振袖は自前で、ソフィーのは、気の早い大阪のばーちゃん(大鷲の祖母)
が、ソアラねーちゃんが生まれてすぐに用意した振袖生地……結局、ねぇーちゃんが
亡くなったので、振袖にはしてなかったんだけど、ソフィーがうちに来た時、お正
月にソフィーに来てもらおうと、 かあさんが、手縫いしたって代物。
で、
シュイの振袖はなかったんだけど、1人振袖がないのはかわいそうってことで、
かあさんが知り合いから譲ってもらった振袖を、シュイ用に手直ししたそうだ。
「んっ?セイアどうした」
またもや、ねーちゃんとの念話に気を取られていると、ぼーとしたように見えた
のか、とうさんが不思議そうに尋ねてきた。
「えっ、あっ、うん」
俺が気のない返事をすると、
「大方、3人の振袖姿に見とれてたんじゃなぁ~いw」
と、かあさんが”クスッ”て笑いながら俺に言う。
「そうか、見とれてたかw」
と とうさんも笑顔で言う。
そして、とうさんが特にソフィーの振袖姿を見てしみじみ言う。
「ソアラが生きていたら……こんな感じだったのかなぁ~」
その言葉に、
「そうねぇ~……」
と少し、”グッ”とくる涙をこらえるように
「でも、それは言わない約束……でしょ」
それを聞いた、とうさんが、かあさんの肩に手を置き、
「そうだった、すまんジュン」
(ん―――っ、見えないけど、側にいるん……だけど)
2人のやり取りに、そう心に思う俺だった。
豆ごはんは、関西なので、通常は、セイア達同じく白みそに丸餅のお雑煮なるんですが、
うちは、ちょっと変わっていて、父方の祖父母が岡山なので、”岡山”風と思いきや、
かなり山奥で、その地域独特の”お雑煮”なんです。
イリコやスルメでだしを取り醤油ベースの汁にゆり根、ブリ、ミツバの具が入っていて、
餅は丸餅なんですが、別に湯がき、お雑煮の具とお餅を食べ、残った汁に餅を湯がいた
所謂、”餅湯”を流し込みそれを飲み干すってな感じです。
もちろん、関西ですので、母方の実家では白みそに丸餅のお雑煮を食べます。




