226話 セイアに思いっきり、”キス”して
「ミオン、あなた、巨大ロボットに乗ってみる気ある~」
その言葉を聞いたミオンが、目を輝かせ言う。
「あるある、ありますともw」
それを聞いたソアラねぇーちゃんは、
「ソンブル~、巨神器ってあと、何体出来るんだっけ?」
とソンブル翁に声を掛ける。
「巨神器か……ん――、そうじゃな3体ぐらいかな」
それを聞いたソアラねぇーちゃんが、
「じゃ、その内の1体をこの子の専用機にして」
と明るく言うと、それを聞いたソンブル翁が首を傾げ聞く。
「んっ、……どう言うことじゃな」
(本当、どう言うことだよ、ねぇーちゃん)
と俺も思う。
「だ・か・ら、ミオンの専用機よ」
と屈託のない笑顔で言い返す、ソアラねぇーちゃん。
それを聞いて俺は思わず我が姉に言う。
「だから、どういうこと?、ねぇーちゃん、ちゃんと説明してくれないと」
「あっ、そうね、悪い悪い」
(ホント、いつも説明が足りないんだから)
「要はさ、その3体の巨神器の1つを、ミオンが乗る”モビリティースーツ”にして
ってことよ……わかるよね」
それを聞いて余計混乱するソンブル翁。
「はて?その”モビリティースイーツ”がさっぱりわからん」
と腕組みをして言うソンブル翁に、目を輝かせたミオンが口を挟み、
「おじいさん、”モビリティースイーツ”じゃなくて、”モビリティースーツ”よ!」
と訂正する。
(たぶん、ソンブル翁は2人の言う”モビリティースーツ”が分からないと俺は思うぞ)
そう考えた俺が口を挟む。
「あーっ、つまり姉とミオンが言ってるのはですねぇー、人が乗り込み操縦する巨神器ってことです」
俺の説明に、ソンブル翁は、少し驚き言う。
「なんと!人が乗り込む巨神器じゃと」
「そうよw」
「そうですよw」
笑顔でそう答えるソアラねぇーちゃんとミオン。
それを聞いて、
「ん―――っ!」
って悩むソンブル翁。
そこで俺が再び口を挟んだ。
「あのさ、”モビリティースーツ”はアニメの世界なんだから実際、人が操縦する……」
と言いかけた時、ミオンが急に口を挟みだした。
「あるわよ、私、ゲームセンターの通信型の”ガンボーイ”ゲームで、けっこう私
、上位の成績だったんだから」
と自慢げに俺を見るミオン。
「ん―――っ、厳密には操縦はしないんだけどねぇ、ミオン」
とソアラねぇーちゃんが自慢げに胸を張るミオンにそう告げる。
「へっ、操縦しなくて……いいの?」
ねぇーちゃんの”操縦はしなくていいの”の言葉に、少し拍子抜けって感じで言うミ
オン。
「うん、だって、実際戦うのはブレイブロボそのものだからw」
そこまで聞いて俺は、ねぇーちゃん言いたいことが分かった。
「つまり、ねぇーちゃんが言いたいのはこうだろう……」
「元々、ブレイブロボは、基本動作は自動で行えるロボットだから、
どの敵を倒したらいいかとか、どの武器を使うとかを無線で命令すればいい
……ただ、今までロボの側で命令していたものを、ロボの体内からする……」
俺の答えを最後まで聞き、
「半分ピンポン!」
って言うソアラねぇーちゃん。
(なんだよ、ねぇーちゃん……半分って!)
と思い少しムッとする俺に、
「今回は無線ではなく脳波コントロールで行いまぁ~す」
とニタニタ笑いながら言うソアラねぇーちゃん。
(くっそ、どっちでも同じだろうよ)
◇◇◇◇◇
「ミオンw、好きな”モビリティースーツ”にシナw」
「うんw」
ソアラねぇーちゃんの言葉に、満面の笑みを浮かべるミオン。
「あっ、セイア~w」
「んっ?なぁ~に、ねぇーちゃん」
ねぇーちゃんの呼びかけに、不用意に俺が返事すると、
「ミオンの説明じゃ~、ソンブルが分かりにくいだろう
から、あんたが絵を描いたげて~」
”うん”とねぇーちゃんに返事をしようとしたら、俺の顔の真横に息荒く、
笑顔で興奮気味のミオン顔があった。
「あぁっ!」
と思わず、驚いた俺が叫ぶと、
「うわぁ!」
とミオンも自身の顔近くで驚く俺に驚いた。
(いやいや、お前が顔近づけて来たんだからね)
その時、シノブがポツリと言った。
「Pictureも良いけど、それなら”ガンプラ”で、
見せた方がいいのではないか?Mr.オオワシ」
「あっ、それもそうね」
とシノブの提案に、さっきまで俺にスリスリしていたミオンが、あっさり態度を
変え言う。
(本当、お前は現金な奴だミオン)
「では一度、俺達の世界に戻らないとならないのでは?」
とゲキが言ってきた。
「じゃ、ちゃっちゃと戻ろうよw」
とあっさり答えるミオン。
「いやいや、この切羽詰まった状況でそれはないんじゃないか?」
と俺が反論すると、
「いや、それぐらいの時間はあるよ……って言うより、いったん戻って
用意してもらいたいものもあるし……」
とねぇーちゃん言い出した。
「それは、どういうこと?ねぇーちゃん」
「時田~w、ちょっと相談があるんだけど~」
と聞き返す俺を無視して、ねぇーちゃんは、部屋の隅で片付け物を
している時田さんのところまで、飛んでいき、
「あっ、シノブもちょっと来て~」
とシノブを時田さんの居る場所まで呼び寄せる。
部屋の片隅で3人で何やら相談事をしているが……。
突然、時田さんと、シノブが叫ぶ。
「それは、ボス許可がないと!」
「Daddyに聞いてみないと!」
その2人驚く様子を見て俺は思う。
(また、ねぇーちゃん……よからんことを考えてそうだ)
◇◇◇◇◇
「どうしました姫」
大騒ぎの俺達をよそに、一人ぽつんと寂しそうにしているソフィー。
そんなソフィーに、ニールさんが声を掛けた。
「いえ、何でもありません」
と寂し気な顔で言うソフィー。
「そうですか、何か寂しげな表情に見受けられますが……」
と優しく言うニールさん。
「えっ、あっ……」
ニールさんの優し気な言葉に力なく答えるソフィー。
そんなソフィーの顔を覗き込み、
「もう、私はセイア殿のお役には立てない……そんな風に、
顔に描いていますよ姫」
「え―――っ」
ニールさんに自分の心の内を言い当たられ、動揺し、顔を押さえる
ソフィー。
「図星ですか姫w」
優しく笑顔で言うニールさんにソフィーは、
「いえ、そんなことはありません……」
と弱々しく答える。
「確かに、聖霊であられるセイア様の姉上様の力で、セイア殿は
以前よりまして、巨大な力を手に入れられましたが……」
ニールさんのその言葉に項垂れ、
「はい……」
と先ほどよりも増して、弱々しく頷くソフィー。
「そのお考え……間違ていますよw」
うなだれるソフィーに向かいにっこり笑いながら言うニールさん。
「えっ、それはどういうことですのニール様」
顔を上げ目に涙を潤ませながら、ニールさんの顔を見上げるソフィー。
「それはですね……」
ニールさんの答えを固唾をのんで、聞き入るソフィー。
「まず、一つに、セイア殿にソアラ様が合体した状態では”ギガ・ブレイブ”
にはなれますが、”ガイ・ブレイブ”にはなれません」
「えっ、そうなのですか」
ニールさんの言葉に驚き言うソフィーの言葉に黙って頷き、こう続ける。
「厳密には……”ガイ・ブレイブ”に変身できるのですが、ソアラ様の聖霊力
の力は強大過ぎて、”ガイ・ブレイブ”の体が3分と持たない……
と言うことです」
ニールさんの言葉に、頷くソフィー。
「ですから、今回の姫の救出作戦に置いて、セイア殿は変身できなかったのです
……と言うか、”ギガ・ブレイブ”では、ここ、オブリヴィオンの基地を破壊するこ
とは容易でも、姫を無事救出することが困難だったのです」
「……」
「つまり、いくら強大な力を手に入れられたとは言え、使いどころが難しいのです
よ……それに」
「それに?」
ニールさんの説明に、早く話の続きが聞きたいソフィーは催促するように言う。
「2つ目として、セイア殿にソアラ様が合体した状態の”ギガ・ブレイブ”は、
実はその維持が、3分……持って5分しか維持できないのですよ」
「え――っ、それはどういうことでしょう?」
「あまりに強力すぎる聖霊力のために、強靭な”ギガ・ブレイブ”体は持っても、
セイア殿の意識がそれ以上持たないのですよ」
「そうなんですか!……でも、それとわたくしが、セイア様お役に立つのとどう
繋がるのでしょうか?」
「それは……」
「それは……?」
「それは、ソフィーの魔力を、私の聖霊力のクッション材にするってことよ~
ソフィーw」
って、さっきまで時田さんと、シノブを話していたソアラねぇーちゃんが、
ソフィーと話すニールさんの元へ、そのアゲハチョウのような羽を一生懸命
羽ばたかせ飛びながら言う。
「はっ、はぁっ、はぁ」
行き絶え絶えの、ソアラねぇーちゃんにソフィーが尋ねる。
「わたくしの魔力をクッション材代わりに……とおっしゃいますのは?」
「はっ、はぁっ、はぁ」
行き絶え絶えのソアラねぇーちゃんが、ソフィーの言葉を”ちょっと待って”っ的に
手で遮る。
(なんで、全力なんだろう我が姉は……)
それを見た時田さんがコップに入った水を差し出すと、それを魔法で自分サイズに
縮めると、”ゴクゴク”って飲み干し、
「ふぅ~生き返ったw」
「あんがと、時田」
と言って、律義にもコップを元の大きさにして時田さんに返すソアラねぇーちゃん。
そして、まさに、答えが早く知りたい~って顔のソフィーに向かい説明する。
「聖霊力と魔力は違う質のエネルギーだけど、まったく違うかと言えば、
そうでもないのよ、現に私の体は魔力でできているの」
「えっ、そうなんですか」
驚くソフィーに
「うん、そうなのよ」
と頷き返すねぇーちゃん。
「でね、私の魂は聖霊力でできているの」
「つまり、聖霊力の魂を魔力の体が包んでいるってのが私なの」
ねぇーちゃんの話を”うんうん”って頷きながら聞くソフィーとニールさん。
「あの時は、ソフィが攫われ、セイアが死にかけてたから、緊急事態だったんで、
無理やり聖霊力を魔力に変換して使ったつもりだったんだけど……ちーと失敗してねw」
”えへ”って感じでぶりっ子しながら言うソアラねぇーちゃんに、
「だから……俺が気を失ってぶっ倒れたんだよなぁ~ねぇーちゃん!」
と俺がねぇーちゃんとソフィーの話に加わった。
「しかも、その後の頭の痛いの痛くないのって……」
って嫌味っぽく俺が言うと、
「それは、酔い止めの薬で治してあげたじゃないセイア~」
「でもさ~!」
ってなおも俺がねぇーちゃんに突っかかろうとしたのを、
「はいはい、そこまでよセイア」
ってミオンが止めに入り、
「ソフィー……だからね、ソフィーは今まで通り、セイアに思いっきり、”キス”
して、思いっきりセイアに魔力を注入して頂戴ねぇw」
とソフィーにウインクしながら言った。
そのミオンの言葉に、急に明るさが戻ったソフィーが、元気に大きな声で、
「はいw、ミオンさん♪」
と答えるのであった。
今回、所用ができたため、早めにUPさせていただきました。
これでこの章は終わりです。
次回、幕間4を挟んで最終章に突入します。




