22話 Proxy Automaton (プロキシ オートマトン)
まずはニールさんの説明を聞く。ニールさんによるとこの世界には8つの国しかない。
イーシャイナ王国 俺達の世界で言うヨーロッパ系人種。
デスロ同盟国 ポリス都市の連合これもヨーロッパ系。
カカ帝国 俺達の世界で言う東洋系人種。
ナ国 カカ帝国の属国で、東洋系人種。
デンスアーラ共和国 獣人系人種。狼・犬・虎・猫・鷲・梟。
アルブ王国 エルフ系人種。エルフ・ハーフエルフ・ダークエルフ。
ウクラハンバ王国 ドワーフ系人種。
ベラトーラ首長国 リザードマン系人種。(爬虫人類)
大昔の、人類(獣人や爬虫人類含む)同志の戦争や魔王や魔物との戦いで、多くの人が死んでいった。今のこの世界の人口は8カ国合わせても2億人居るか居ないからしい。
当然、労働力不足で、国の生産力は落ち込んだ。 特に、農業生産が落ち込み、一時は飢餓状態が蔓延したそうだ。この由々しき事態に、当時のアルブ王国国王が各国に呼びかけ、以前よりアルブ王国で研究開発していたオートマトン(自動人形)を各国に無償で供給した。
ちなみに、オートマトンAutomaton単数形のことで、自動人形とその他の作業用魔動機を含めた言い方はオートマタAutomataと呼んでいるとのこと。オートマトンは、従来のゴーレムの技術を改良し、ゴーレムのように巨大化、暴走化を防ぎ、安全で扱いやすいよう改良したもので、用途別に作成されていて、農業用、鉱山用などがあり、用途以外の使用は出来ないものの、ゴーレムのように暴走しないため、安全で使いやすく、瞬く間にこの世界に広がって行った。このオートマトンの普及により世界の国々は生産性が上がり、今のように豊かになったそうだ。 また、この世界の人々がエルフを尊敬するのはこのこと以来だそうだ。
そして、そのオートマトンを更に改良したのが、一般には出回ってないが、各国の王侯貴族が対暗殺者用に、使用するProxy Automaton (プロキシオートマトン)。
つまりは身代わり自動人形だそうで。通常、他のオートマトンのように起動前は、人の大きさのただの木人形だが、本人の体の一部……つまりは髪の毛や爪ひいては血液などを人形の頭にセットすると、本物そっくりに変身?
……変わるそうだ。
で、今、俺やミオン、シノブ、ゲキ、のプロキシ オートマトンが俺達の代わりにあっちで生活しているらしい……
(まぁ、便利っちゃ便利だけど……まるで○ーマンの身代わりロボットの
ようだ。)
通常のオートマトンは、1日1回魔力を充填し、4~5時間稼働するらしいが、プロキシ オートマトンは10日間連続稼働出来るらしい。なので、しばらくはこっちに居ても問題ない……ってことだが……
◇◇◇◇◇
ニールさんの説明を聞き、しばらくこちらに居ることを了承した。
さっそく、各人に割り当てられた部屋へと案内された。各自1人部屋、12畳位はあろうか……部屋の端には大きめのクインサイズと思われるベットが一つと、部屋の入り口付近ににはテーブルと3人掛けのソファーが2つ。その側には大きな暖炉もある。壁には、エルフがモデルの絵画が掛けてあり、その反対の壁側には大きな窓がある。
部屋に入ると、メイドさんが部屋の明かりを付けてくれた。
現代の俺達の部屋の明かりのようにスイッチ一つで……当然、この明かりは俺達の世界のように電気で点いている訳ではなく、”魔光”魔水晶に貯めた魔力を光の魔法に変換している魔動機の一種。
シャンデリアのような器具にロウソクのような棒状のものがいくつもあり、その棒状のものから直接丸い淡い光が出ている。電球のようなものが光ってる訳ではないようだ……
試しにベットところにある燭台のような魔動機のスイッチを入れてみる。部屋の明かりと同じ三本ある棒状のようなものから直接丸い淡い光が灯る。
触って見ると……
(熱くない……)
熱もなく、何かが吹き出ているような圧力もなく、またその光は掴むこともできない。
(なるほど……俺たちの世界よりエコだな……こっちの世界は)
などと思いながら、俺は荷物らしき物も殆ど持っていないので、部屋のベットに寝転び、しばらくボーっとしていたら、ふとベットの反対側にあるシャワーが目に入った。
(そーいや、この3日ほどお風呂入ってなかったな……)
徐にベットから起きあがると、俺はシャワーらしき所に向かった。
そこには、小さめのバスタブのような物が置いてあり、そのバスタブの側から細い支柱が伸びており、支柱の上部がバスタブ側に曲がっていて、先にはシャワーヘッドのようになっている。
しかし、水道の蛇口のようにカランやレバーらしきものが見当たらない。
(これシャワーだよな…… どうやって使う?)
と俺が思っていたら、”トントン”と部屋のドアをノックする音が聞こえる。
俺は、
「はい、どうぞ」
と答えると、
「失礼いたします。」
と声がして、ドアを開けて入って来るメイドさん。
手には、服らしきものが……
「勇者様のお着替えをお届けするようにと……え~……シラ・トり様より預かってまいりました。」
「あっ、では……そこに置いておいてください。」
とソファーを指さし俺は言った。
「かしこまりました。」
と服をおいて下がろうとするメイドさんを俺は呼びとめた。
「あの~……これってシャワーですよね」
と言う俺にメイドさんが、
「はい、さようでございます。」
と言った。
「使い方教えていただけます?」
と言う俺に、
「はい、かしこまりました。」
と言いながら俺の側までやってきて、
シャワーのパイプ状になっている真ん中くらいにある箱のような物を指さし、
「ここのスイッチを入れていただいて、その横のレバーを上下しますと、お湯の温度が調整できますよ。」
と笑顔で言うメイドさん。俺は言われた通りやってみると……
”シャー”と勢い良くシャワーの水がでた。
「おっ!でたでた」
それを見てメイドさんがレバーを少し上げてくれて
「これくらいのお湯加減でどうでしょう」
と言ってくれた。
俺は右手の指でシャワーの水に触れ、
「あっこれくらいが丁度いいです。ありがとうございます。」
と御礼を言うと、メイドさんはニッコリ笑って、
「どういたしまして~タオルはお着替えの所に置いておきますので。」
と言いながら部屋を出て行った。
(水道管とか引かなくても水がでるし、ガスがなくてもお湯にできるのか……魔動機って便利だな~)
◇◇◇◇◇
シャワーを浴び終わり、メイドさんが、持ってきてくれた着替え……
「えっ……これって学校の体操服!」
着替えを手にして思わず叫んでしまう俺。
「まぁ……ないよりはいいか……」
と、そのジャージに着換えた俺は、部屋をでて、先ほどの客間へと向かった。
◇◇◇◇◇
客間には、すでにミオンやシノブ、ゲキ、が揃っており、客間のテーブルの席についていた。ミオン、シノブ、ゲキの3人とも、ジーパンにティーシャツというラフな格好。
(おいおい、俺だけジャージかよ)
と思いつつソフィーの方を見ると、ソフィーもワンピースのような物に着換えていた。ソフィーの座る後ろには、3人の女騎士風の人達が立っており、そのうちの1人は、俺がこの屋敷の入り口で目を見開いた猫人の騎士だ。
俺が、自分の席に着くと、メイドさんが”さっと”紅茶が入ったティーカップを置く。みんなが席に付き、お茶が配られるのを待ってジョセフさんが徐に、
「では、改めて紹介をさせていただきます。」
と言い、まずは自分の紹介をした後、ソフィーの後ろに立っている女騎士さん達を順番に紹介した。
「まず、左手に控えておりますのが、クレア・リード。人族の騎士でございます。その隣……真ん中に控えますのが、エドナ・エリス。エルフ族の騎士でございます。そして最後はアイーシャ。猫人族の騎士……と言いますか姫専属の忍びでございます。」
3人は自分を紹介された時、臣下礼の姿勢を取り、胸に手を当て、しゃがんで頭をさげる。
最後紹介された猫人のアイーシャさんが紹介された時、俺が彼女だけ名字がないのに?と思っていたら、側にいたニールさんがそっと俺に耳打ちしてくれた。
「猫人には名字はないんです。」
(なるほど……)
3人の騎士達の紹介が終わったところで、こちら側を俺が紹介する。
一通りお互い紹介が終わったところで、ジョセフさんが”ポンポン”と手を叩くと、メイド達が来て、ティーカップを片付けると、料理が乗ったワゴンが運び込まれ、遅めの昼食となるようだ。
だされたのは、マーリンシューと言うイモのような物を薄くスライスして、ベーコンやチーズ……を乗せて焼いたものに暖かいポタージュスープのようなスープ。このマーリンシュー、一口食べて正体が分かった判った。
(ジャガイモだわ……)
それに……ワイン。でも、俺達は未成年だから……と言ってもこっちの人には通じないだろうから
……、こっちの世界では15歳で成人だからな……って言うことで、宗教上の理由でワインはお断りした。
ミオンは少々不満のようだったが……
みんなが食事が終わった頃、シノブとゲキはメイドさんにお願いして、ポットにお湯を入れてもらったようだ。それを持って、2人はシノブの部屋にそそくさと向かう。
(たぶん、食べたりないから、シノブの部屋でカップ麺でも食べるのだろう。)
俺達も夕方まで少し休もうと考え席を立つ時、ふと思いミオンに訪ねた。
「なぁ、ミオン、たぶん時間がなかったから俺の着替えは学校の体操服なのは仕方ないけど……明日、王様の謁見どうしよう……なんかお前他に服持ってきてないか?」
って聞いたら、ミオンはニヤニヤ笑いながら、
「あっ、そうね……じゃ私のビキニアーマー貸してあげる♪」
と嬉しそうに言うミオンを俺は”ギョ”っとした顔で睨んでいると。
それを聞いた時田さんが俺に、
「もしよろしければ、サイズが少々大きいかもしれませんが……ぼっちゃまの予備服がございますが……」
と俺に申し出てくれた。
「あっ、はい助かります。」
と俺は時田さんに礼を言う。
ミオンは少し残念そうな顔で俺を見ていたがね。
(死んでも、俺がビキニアーマー着るわきゃねぇーだろ!!)




