222話 ソフィーの大泣きに困るセイア
「なぜ、我らの考えが……」
その言葉を聞いたソアラねぇーちゃんは、ソンブル翁を指差し、きめのポーズで言う。
「私は聖霊wこの世界のことは、全部まるっとお見通しだぃ!」
そんなきめのポーズで言うソアラねぇーちゃんに、
「では、どうやって大災害(魔人やドラゴンの攻撃)を止めるおつもりか!?」
と俺達の頭の上から声がした。
その声に、ねぇーちゃんを初め俺達が振り返り、頭を上げてみると、そこには巨
大ロボット……もとい、 オブリヴィオン達はこれを巨神器って呼んでたか……。
巨神器インヴィクタ……身長18m。
あの伝説のアニメ”ガンボーイ”に出てくる人型機動兵器”モビリティースーツ”
の様な出で立ち。
”ガンボーイ”よりは少し細身って感じで、顔はどちらかと言えば、のちのシリ
ーズに出てくる。”Zガンボーイ”ぽいか……。
ただ、いずれにしてもアニメと違うのは、盾や銃を持たないってのと……。
≪≪顔!≫≫
そう、顔が人間そのまま。
以前、カカ帝国で戦った時と同じだった。
ただ、これは平時で、戦闘に入ると口元の左右から装甲板が出てきて、口元を
マスクのように覆うそうだが……。
(それって、別のアニメだよな……)
◇◇◇◇◇
インヴィクタの問いかけに、
「あっ、あ……それなんだけどねぇ~」
とインヴィクタの方を見上げ言うソアラねぇーちゃん。
「ギガ・ブレイブと轟雷号があれば大丈夫……」
と自分の胸をたたいた後、
「と言いたいところだけどねぇ~」
と猫背ぎみな姿勢で言う。
「では、それに我らが加われば……」
とソンブル翁が言いかけると……。
「まぁ、それはそうなんだけど……いまいち、たんないかな」
その言葉にインヴィクタが、首を傾げ聞く。
「たんない?……」
その言葉に俺がソアラねぇーちゃんに代わって答えた。
「ああ、”たんない”とは”足らない”ってこと」
「ああ、なるほど……!?」
俺の言葉に、一旦納得しかけたインヴィクタが、慌てて言う。
「それでは、ダメではないですか!」
の言葉に、うんうんと頷いたソアラねぇーちゃんが
「そーなんだよねぇ……」
と言いながら考え込む。
のを見て、今度はソンブル翁が反論する。
「しかし、前回あの爆弾で……」
とそこまでソンブル翁が言いかけた時、ソンブル翁の方に右手のひらをか
ざし、発言を止め、
「いや、前回と条件が違うと言うか、あいつらパワーアップしたっつーか、
まあ、爆弾のせいなんだけどねぇ……」
と顎に手を当て、考え込みながら言うソアラねぇーちゃんに俺がおもわず
言った。
「ねぇーちゃん!ちゃんと説明してよ、俺達にもわかるように」
その言葉に、顎に当てた手を放し、
「ああ、それもそうね」
と手をたたき言った。
(リアクションが”昭和”なんだよねぇ、我が姉は)
◇◇◇◇◇
「……っとその前に、ソフィーじゃない?セイア」
「あっ、そうだった」
ソフィーのことを忘れていた訳ではないが……。
(いろいろ、驚くこと満載過ぎて……)
ソアラねぇーちゃんは俺にそう言うと、俺たちの乗る光る魔法円をソンブル翁が
立つ通路に付け、
「みんな、ここで降りて」
その言葉に、俺達全員が光る魔法円から通路の手すりを乗り越え、ソンブル翁
の立つ通路へと移った。
俺達全員が、通路へ移ったのを確認したソアラねぇーちゃんは、光る魔法円を
消して、
「セイアと、クレア、それにエドナはソフィーを」
「ゲキは私と一緒に来て」
と言う。
その言葉に、俺とクレアさん、エドナさんが頷くが、ゲキは1人首を傾げ、
「んっと、俺は何をすれば……」
その言葉に、
「あの馬鹿を探しに……連れ戻すの手伝って」
「んっ?」
ソアラねぇーちゃんの言葉に微妙な顔をして言うゲキに、
「あれでも、私が手を加えれば、ギガ・ブレイブに準じる戦力になるから
ねぇ」
と両手を広げ言う。
「ああ、わかった」
◇◇◇◇◇
ゲキとソアラねぇーちゃんはアロガンを探しに、俺とクレアさん、エドナさん
は、アントマン(オブリヴィオンの下級兵士)に案内されソフィーの元に向かう。
残ったミオン達は、ソンブル翁に案内され、会議室へと向かうのであった。
(これからのこと、話し合わないとね)
アントマンに案内され、通路を進むこと1分弱、エレベーターの前に着く。
これに乗ったんだけどね。
エレベーターの扉が閉まったとたん……。
上下ではなく右……ってか横に動き出すエレベーター!?
(なんじゃこれ!)
俺がエレベーターだと思って乗ったのは、”ハイスピード・リフト”と呼ばれ
るのもで、人が乗る籠に動力があり、上下左右縦横無尽にこのオブリヴィオンの
基地内を移動する装置なんだと。
俺達が乗った”ハイスピード・リフト”は、しばらく横方向に動いてから、急
に下降し始めた。
(うっ……気持ち悪い……)
って、俺が思った瞬間。
”チン”
って鳴って”ハイスピード・リフト”は停止し、扉が開いた。
(音は、昭和のエレベーターと同じなんだ)
”ハイスピード・リフト”の扉が開いて、俺の目に飛び込んできた光景は、
金属の壁に囲まれ、様々な機械装置や円柱型の水槽などが並ぶでっかい部屋
……。
(ホント、昭和のころの悪のアジト……にしては大きいか)
その部屋の左端に置いてあるベットにソフィーは寝かされたいた。
「ソフィー!」
それをいち早く見つけた俺は、部屋の左端のベットへと駆け寄る。
それを見たクレアさん、エドナさんも、
「「姫!!」」
俺の後を追って、ソフィーの寝かされているベットへと駆け寄った。
◇◇◇◇◇
「ソフィー大丈夫か!?」
と少し大きい声で言ってみたが……。
「うっう……」
少し反応するが、目を開ける様子はない。
「魔力切れぇ~?」
その様子を、俺のそばで見ていたエドナさんがそう呟く。
「信じられません、姫が魔力切れを起こすなんて!」
驚き、動揺するクレアさん。
「クレアさん、エドナさん、ちょっと外してくれないか」
俺は俺の側に立つ2人にそう言った。
「えぇ~……」
「あっ、……はい」
俺の突然の申し入れに戸惑う2人だったが、クレアさんが気を利かせて、エドナ
さんに目くばせし、2人はソフィーのベットから離れた。
俺は、あらかじめソアラねぇーちゃんに言われていたことを実行する。
寝ているソフィーの顔に自分の顔をそっと、近づけ……。
そして、”kiss”をした。
「うっう……」
少し苦しむような仕草をするソフィー。
それでも、俺は”kiss”をつづける。
実際の時間にして、たぶん2~3分ぐらいだろうけど。
俺自身の体感では、10分は続けたて感じ。
すると……突然!
「はっ!」
と声を出して、両目を見開いき、俺を見つめるソフィー。
そっと、俺の顔に両手を添えて、自身の唇から俺の唇を放すと、
「セイア様w、来てくださったんですねぇ~w」
そう言って、目に涙を浮かべながら、ベットから起き上がり、改めて俺に抱き着
き、今度は自分から俺に”kiss”をするソフィー。
「ああ、ごめんな怖い思いさせて」
ソフィーの”kiss”を受け入れながら俺はそう呟いた。
ソフィーが、俺の”kiss”で目覚めた訳は……。
以前、聖霊であるソアラねぇーちゃんと合体しギガ・ブレイブになった俺。
聖霊のねぇーちゃんと合体した俺の体には、わずかながらだが、そのエネルギ
ーである”聖霊力”が、残っているそうで、それをソフィーに”kiss”する
ことで注入できるという訳。
このわずかながらに残った”聖霊力”が、魔力切れを起こしたと言っても、
これもまた、わずかながらに体内に残っている魔力を活性化させ、ある程度の
魔力回復を促進するんだと。
(ゼロからいきなり満タンにはならないけど)
俺は単に姉の言う通りそれを実行したって訳さ。
「いつもと、逆……ですねぇw」
と”kiss”を終えたソフィーが俺の髪の毛を撫でながら、呟きほほ笑んだ。
「そうだな」
俺もそう言ってほほ笑んだ。
◇◇◇◇◇
よろけるソフィーに肩を貸し、通路を歩く俺。
俺とソフィーの後ろを、心配そうに見守り歩くクレアさんにエドナさん。
俺達は再び、アントマンの案内で、ソンブル翁やミオンが待つ会議室へ
と向かう。
(ねぇーちゃんとゲキは無事アロガンを連れてこれるだろうか)
道すがら、俺は今までの経緯をソフィーに話した。
俺に姉が居たこと、
「まぁ、セイア様に姉上がw」
その姉が、あの妖精のチャームさんだったこと……しかも、それは妖精
でなく、聖霊だったこと。
「あら、あのチャームさんが、セイア様の姉上様で、聖霊w」
そして、その聖霊の姉と合体し、新たな力ギガ・ブレイブになれたこと
……。
「……」
それを聞いて急に落ち込むソフィー。
「んっ?、ソフィーどうしたの急に……」
俺が心配して尋ねると……。
急に泣き崩れ、ワンワン泣き出すソフィー。
「どうしたんだよソフィー!?」
泣き崩れるソフィの顔をしゃがみ込んで、のぞき込み言う俺に、
「……っひっく、もう私は……セイア様のお役に立てないんですねぇ!」
と言うなりまた、”ワンワン”泣き出してしまった。
後ろを歩く、クレアさんにエドナさんも困り顔でその様子を見つめる。
そして、俺はもっと困り顔で、
「いや、そんなことはない!……そんなことはないし……もし、そうだと
しても」
「へぇっ、そうだとしても……」
と俺の言葉に、一瞬泣き止んだソフィーは、
「……そうだとしてもって、やはり、わたくしは、セイア様の中では何の
役にも立たないってことですよねぇ」
と大きな声で叫び、再び顔をくしゃくしゃにして泣き出すソフィー。
(……どうしよう、この状況……ソアラねぇーちゃん助けてよ――っ)
って心で叫ぶ俺だった。
劇中の”ハイスピード・リフト”は、アメリカのSFドラマ『スター〇レック』
に出てくる宇宙船内を移動できる”ターボリフト”のことです。




