219話 魔法円修復
「「「「「いただきますw」」」」」
「「「「「……」」」」」
手を合わせ俺達が、合掌するのを不思議そうに見るリザードマン達をよそ
に、さっそくいただくことにする。
今回、箸が使えないリザードマン達に合わせ、俺達も手づかみで食べる
ことにした。
まずは、手元にあるフンガーボールで手を洗い、目の前の直径25cm
の桶から一つ、つまみ醤油皿に”ちょん”と付けて”パクリ”。
「うぅ~んw」
マグロの握りを口に入れ、後から来るワサビの”ツーン”とくる感覚に、
思わず呟く俺。
俺、同様にミオ、シュイ、シノブも同じリアクションを取る。
しかも、俺のそばで、俺の寿司桶に入ったエビのにぎりだけをすべて魔
法で自分サイズに縮め、それを一度に頬張り、中に入ったワサビの辛さに
悶絶するソアラねぇーちゃんを見たリザードマン達はみな固まり、お寿司
を食べようとしなかった。
不安げな様子リザードマン達。
一瞬、変な空気が場を包んだが、意を決したハーン王が、おそるおそる
握り寿司を3~4つ手でわしづかみするとそのまま口に……。
(醤油付けないんだね)
”ゴクリ”
(本当に丸呑みなんだなぁ……)
と寿司を飲み込むハーン王を見ていると、次の瞬間。
「うっ、うまいw」
目を見開き言うハーン王。
その様子を見ていた他のリザードマン達は
「「「「「おお!」」」」」
と声を上げ、我先にと王同様に3~4つ手でわしづかみし、
”ゴクリ”
と飲み込んだ。
「「「「「うっ、うまいw」」」」」
安心したのか、パクパク食べる……ってか、飲み込む!?リザードマン達。
因みに、リザードマン達の寿司にはワサビを抜いてある。
今回のお寿司は、マグロ、ハマチ、イカ、タコ、エビ、サーモン、タマゴ、
にイクラ。
(トロやウニは用意できなかったんだけどね)
リザードマン達の寿司桶は直径50cmってことで、だいたい、4~5人前。
俺達のは直径25cmで3人前くらいなんだけどね。
(まぁ、大食漢のシノブはリザードマン達と同じ大きさだけど)
これは、急遽ダエンさんにお願いし、木材を用意してもらって、アイーシ
ャさんが即席で作った桶って訳。
リザードマン達は飲み込むだけなので、食べるのが早い早い。
あっという間に桶が空になった。
それを見て、時田さんが言う。
「おかわりもございますよ」
「もし、お好きなネタがお有りでしたら、言ってくださいませ」
時田さんの言葉に”それじゃー”って感じで好きなネタを次々に注文するリザ
ードマン達。
(意外とリザードマン達には好評なんだね)
因みに、リザードマン達が好むお寿司のネタベスト3(スリー)は、
1位は卵
2位はいくら
3位はサーモン
だった。
(リザードマンって意外とタマゴ系が好きなのか?)
◇◇◇◇◇
時田さんを初めゲキ、エドナさん3人で用意したとは言え、さすがに量が多すぎ
る。
けど、そこは秘密兵器のおかげで対応できる訳。
秘密兵器とは、回転寿司屋さんが使ってる”自動シャリ玉機”『にぎにぎ君』。
業界最速!! 毎時最大4800カンのシャリ玉を生産!!。
シャリを傷めない独自計量製法で、シャリ玉を固めず、ふんわりと美味しく
仕上げます。……と言う代物だ。
(今回役に立た……とは言え、りゅう じーちゃん何がしたかったんだろう?)
とは言え、ネタは切らねばならず、只今現在も轟雷号の厨房では、ゲキと
エドナさんが奮闘中と言うわけだが……。
早々に食べ終わったクレアさんが、おもむろに席を立ち、俺に向かって
「あの~私もお手伝いしてきます」
と言ってきたので、
「ああ、はい、ではお願いします」
と返すとそそくさと"どこでもミラー"へと消えていった。
(まぁ~気になるわな……)
クレアさんの気持ちを知ってる俺としては、心でそう呟くのだった。
◇◇◇◇◇
食事が終わり、食後のコーヒーを全員でいただく。
こっちの世界にコーヒーがあるのには驚いたが……。
ただ、ミルクはないし、砂糖でなく塩……って言っても岩塩を入れてリザード
マン達は飲むそうなので、俺達はそのままブラックで飲む。
いつしか、シュイの周りにはハーン王の家族達が集まり、ローゼやニールさん
の周りには、大臣のボトフさんを初め族長のホロヨン、グワン、ドロヲン、
タワン、ズラカーンさん達が集まり昔話に花を咲かせてるようだ。
俺は暇だな~って思ったので、何気に"どこでもミラー"で轟雷号の厨房に行
ってみると……。
そこでは、余ったシャリとネタでチラシ寿司を作り仲良く食べてる時田さん、
ゲキ、エドナさん……に!?クレアさん。
(あれ、クレアさん……さっき俺達とお寿司を食べてたんじゃ……)
って思っていたら、俺に気づいた時田さんが声を掛けてきた。
「どうされました大鷲様」
と同時に一切に俺を見るゲキ、エドナさんにクレアさん。
「いえ、何でもないですぅ~」
と言いながら俺はその場から去ったのだった。
(クレアさん、好きな人と食べるのは……別腹ってことねw)
◇◇◇◇◇
翌朝……。
「いててててっ」
って、案の定二日酔いのミオン。
ニールさんに、解毒魔法を掛けてもらって、二日酔いを治してもらう。
(お前いつもそれだよね……いい加減、学習しろよな!)
と思いつつ我が姉を見てみると……。
「キャホーw、みんな朝だよ~」
って言いながら、俺達の周りを飛び回るソアラねぇーちゃん。
(相変わらず元気だねぇ~っていうか、ねぇーちゃんあれだけお酒飲んでなんで
平気なのさぁ~)
そう思いつつ、俺達だけで朝食を取った。
リザードマン達は朝食を取らないから……と言うより、彼らは1日1食しか食
べないからなんだけどね。
朝食は、オーソドックスにベーグルとハムエッグにコーヒーで済ませ、いざ、
目的地に向かうことにする。
案内役のリーザードマンに引率してもらい洞窟の外へと出た。
洞窟の外には、ダエンさんはじめ、10人のリーザードマン騎士達が待ったいた。
ダエンさん率いる第一騎士団の中でも、精鋭中の精鋭の10人を選抜しての人選ら
しい。
ダエンさん含む核騎士達の傍らには、それぞれ……デカイ、ダチョウ!?。
これは、リーザードマン達が、主に騎乗用に家畜として育てている”モア”と
言う飛べない鳥だそうだ。
体長5.4m、体重700kg
主に騎乗用……たまに食べるそうだが……。
俺はダエンさんの後ろに乗り、各人リーザードマン騎士達の後ろに乗って出発。
驚いたのは、俺達が乗る際、俺達が乗りやすいよう、足を折りたたんで、ちゃ
んと座ってくれる”モア”。
「しゅっぱーつw」
俺の胸ポケットの中に納まってるソアラねぇーちゃんの掛け声で、”モア”達は
走り出す。
……んー、時速にして10kmぐらいかな?
普通なら早いとは思わないんだが……。
木々をすり抜け進むため、体感ではもっとスピードが出てる感じ。
かなりスリルがある。
「キャホーw」
俺の胸ポケットで気勢を上げるソアラねぇーちゃんだった。
◇◇◇◇◇
”モア”の背中で揺られること約4時間余り、森の中の少し開けた場所に着いた。
先頭を進むダエンさんが、騎乗する”モア”を停止させ、手を上げみんなに合図
すると、それに続くリーザードマン騎士達も騎乗の”モア”の足を止めさせた。
「キャホーw、着いたついた」
と、勢いよく俺の胸ポケットから飛び出したソアラねぇーちゃんが言う。
ねぇーちゃんは、俺の頭上で嬉しそうに飛び回っていた。
俺達が”モア”から降りると、
「ご苦労様でした」
と時田さんが、ダエンさんに近づき言う。
「はっ、では我々はこれで」
時田さんの言葉に一礼して、部下たちに手を上げ、引き上げの合図を送り、再び
”モア”に騎乗すると踵を返した。
去り際に、俺達の方に振り向き、
「ご武運を」
と再び一礼して言うダエンさんに俺、ミオンが
「「ありがとうございました」」
と頭を下げ、ゲキはその場で一礼し、他のメンバーも同じく頭を軽く下げた。
シノブは、
「Good luck~Mr.ダエン」
と言いながら、人差し指と中指の2本を立て、中指を人差し指の後ろに交差さ
せてかけ、それをこめかみに当てるしぐさを見せる。
次いで、ニールさんとシュイが
「ありがとうございました」
「お世話様でした、ハーン王によろしくお伝えくださいませ」
とお礼の言葉を掛ける。
「バイバーイw」
そして、無邪気に元気よく、手を振るソアラねぇーちゃんだった。
◇◇◇◇◇
俺達が現在いる場所は、ノウンの森の外側で、あと数十キロ森を抜けると、
通称 ”白の地帯”リザードマン達が言う”ダウス砂漠”に出れる場所。
王都”バヤル”から言うと、約40km離れた森の中かな。
その森の中に少し開けた場所……に、それはあった。
地面に円形に敷き詰められた石……。
古びた魔法円があった。
魔法円をよく見ると、所々石板が欠けている。
ソアラねぇーちゃんは、この魔法円を封印したっていてたけど、単に使えない
ように”壊した”ってのが正解のようだ。
「えーっと、ローゼ、ここの魔法円の抜けてる部分に、はまる様に石板作れる~」
と、ソアラねぇーちゃんに、突然聞かれた聞かれたローゼが、
「えっ、うん……」
魔法円上に立ち、魔法円の抜けている部分を見て、
「できるよw」
と笑顔で返事をする。
「じゃ、お願いねぇ~」
と、ソアラねぇーちゃんは、ローゼに抜けた石板作成を依頼すると、今度はニール
さんの方を見て声を掛けた。
「ニールw、この抜けた部分の魔法文字わかるよねぇ~」
「あ、……はい」
ソアラねぇーちゃん言われ魔法円をしばらく眺めてから返事をするニールさん。
そして、今度は、俺やゲキ、シノブに声を掛ける。
「じゃ、ローゼが石板作ったら、セイア、ゲキ、シノブで石板をはめてくれるかな」
「うん、わかった」
「おっ……、はい」
「Roger((ラジャー)!、Missオオワシw」
シノブの返事が気に食わなかったのか、ソアラねぇーちゃんはシノブの顔の前まで
飛んでいき、人差し指を左右に振りながら、
「ノンノン、私はソアラでいいよ、オオワシは2人いるんだから、紛らわしいで
しょ」
と言うソアラねぇーちゃんにシノブは”何を言ってんだろう”って顔をしながらも、
押しの強いソアラねぇーちゃんの態度に、小刻みに頷くのであった。
(ん……Missオオワシは、あ・な・た だけだと思うよ、ねぇーちゃん)
次回、殴り込みの予定です。




