215話 轟雷号発進!
着替えなどの準備をして、ブレイブ基地の作戦室兼コントロールルームへと向か
った。
「きーつけてな」
「気を付けていくのじゃぞ」
りゅう じーちゃんと櫻ばーちゃんの声に皆黙って頷き、 ナ国にある轟雷号へ
とつながる”どこでもミラー”をセットして、皆で鏡の中に入った。
◇◇◇◇◇
反対側の鏡を出ると、そこは下部格納庫、あのバルタンク擬きが置いてある
場所。
(ここはそんなにかわってないんだな)
全長:150メートル
重量:8千トン
空中速度:マッハ1.2
水上速度:60ノット
水中速度:40ノット
限界深度:1,000m
【武装】
艦首ドリル:対消滅弾
主砲1門 :ショックカノン砲(衝撃波砲)
副砲2門 :ショックカノン砲(衝撃波砲)
艦首魚雷 :4門
【その他装備】
・下部格納庫
バルタンク(7人乗りローバー)
・上部格納庫
バルキキュン(4人乗り偵察用気球)
基本性能は、俺達が見つけた時と変わっていない。
ってか、変えてない。
ただ、俺達が使いやすいように内装を少々いじっただけだ。
下部格納庫から階段で上に登る。
下部格納庫直ぐ上の艦尾には、機関室があったのだが、艦首側の空きスペースに
……。
「大浴場!?」
って……。
(恐らく、りゅう じーちゃんが勝手にリクエストしたんだろう)
20人は一度に入れる大浴場……。
(まぁ、あっても……いいんだけどね)
その上の階層は、艦首の方に嘗て食堂兼ダイニングと寝室があった所だが
、食堂兼ダイニングはそのままに、寝室部分はブリーフィングルームへと改装して
ある。
そして、同じ階層の艦尾部分には、俺達の寝室ってか部屋!?。
所謂、ひと昔前のカプセルホテルで使われているカプセルと言うか、寝室を通
路の左右の壁に埋め込んである。
最大、30名が就寝できるように作られているとか。
(俺達、30人もいないけどね)
ここで、ゲギ、エドナさん、クレアさんにはこの階層にあるブリーフィン
グルームで、待機してもらうことになっている。
なんせブリッヂは狭いので、操縦などに関係しないゲキ達はここで待機ってこと。
「じゃ、」
と俺がゲキに声を掛け、黙って頷くゲキ達と別れ、それ以外のメンバーは更に上へ
と登って行く。
ゲキ達と別れ、4階層分ぐらい上がり、重い扉をシノブが開けて、俺達はブリッ
ヂの中へと入った。
「わりとすっきりしたね」
「ああ」
ミオンの言葉に俺がそう答えると、各自席に着く。
ブリッヂ正面には席が2つ。
右側はこの船の操縦ってか、操舵席。
その隣の左の席は副操縦席と言うか、操舵補助兼武器の操作席。
ここに、時田さん(右操縦席)とシノブ(左武器の操作席)が着く。
そしてその後方、左右の壁側にあるパネル側の席に着くのは、アイーシャさん
と俺。
右側の操作パネル席は、レーダー及び魔力感知レーダーそれにソナーに加え通
信担当席、ここにアイーシャさんが座り、その反対側、俺が座る席は、コンピュ
ータで解析を行う席。
本来、ここには時田さんの部下で、伝説のハッカーのパーマーさんが、座る予定
だったんだけど、彼を呼んでいる時間がないので、取りあえず俺が座った。
ブリッヂ後方部の真ん中に一段高くなった席があり、そこがこの艦の所謂艦長席。
当然のようにそこにミオンが座り、その左右の席……副官席と言うのかな?には、
左にニールさん、右に今回はシュイが座る。
本来であらば、シュイの席に俺が座る予定だったんだが、今回、この轟雷号の
ドックが、どこまで続いているのか調査しておらず、ここから発進後、何処に出
るかわからない。
ってことで、ナ国の地形に詳しいシュイが、所謂道先案内人的存在としてここに座
ってもらった訳。
そして、その前にある操作パネル付きの席が2つ。
その一つの席には(左側)はローゼが座り、その横の席は今回は空席にしてある。
この2つの席は今回新たに設けた席。
元々この轟雷号、エンジンの出力調整やエネルギー充填は、機関室で行っていた
んだけどね、それは不便だな~ってことでここのブリッヂからできるように改造し
てもらった訳。
今、ローゼが座った左側の席はエンジン出力の調整をする席で、その隣の空席は
本来ソフィーが座り、席の前にある大きく突き出た魔水晶に触れることでエネルギ
ーを充填できるって代物。
前回、この船を調査した時に、前もってソフィーに機関室へ行ってもらってエ
ネルギーは充填してあるので、今は空席でも問題はない。
もし、エネルギーが枯渇するようなら、ソアラねーちゃんに頼めば何とかなるっ
しょ。
で、そのソアラねーちゃんはと言うと、ちゃっかり艦長席に座るミオンの肩の上
にちょこんと座り奇声をあげている。
(ねーちゃん落ち着こうよ初めての遠足じゃないいんだから)
◇◇◇◇◇
「轟雷号発進!」
ミオンが立ち上がり指を指し叫ぶ。
「アイアイサー、轟雷号発進シーケンスに入ります」
と時田さんの復唱にローゼが、
「魔動エンジン起動!」
ローゼの席の前のパネルのランプが順番に右から左に点灯し、
「ベント開け~」
「ベントアケマース」
時田さんの指示に、シノブが答え操作する。
「続いて、セイルを格納します」
と言いながら時田さんが操作すると、俺達がいるブリッヂがゆっくりと沈んでいき
、本体に格納された。
と同時に、操舵席前の窓にモニターパネルが降りて来て、すぐさま外部カメラから
の映像が映し出される。
「水流エンジン始動!」
”水流エンジン”ってのは、アニメ宇宙戦艦ムサシの補助エンジンのようにメ
インエンジン下部に二つあるロケットノズルがあり、轟雷号の場合、ここから
水流を出して航行するんだ。
「微速前進ヨーソロー」
時田さんの声と共に、水にゆっくり沈んだ轟雷号が、海底洞窟のような所を、ゆ
っくりと進んで行く。
しばらく進んでいると、薄暗い海底洞窟を抜け、急に目の前が開ける。
「メインタンクブロー」
「メインタンクブロー」
時田さんの合図でシノブが操作し、轟雷号はゆっくりと浮上し始めると同時に
「水流エンジン最大戦速、続いてメインエンジン点火用意!」
「点火用意……」
と時田さんの合図にローゼが答えながら操作し、
「できました」
と答える。
それを聞いた時田さんが、操縦桿を握りながら言った。
「浮上と同時に空中へジャンプいたしますので、皆様くれぐれもシートベルトをお
忘れなく」
それを聞いたソアラねーちゃんは、ミオンの肩から飛び降りて、俺の方まで飛んで
きて、俺のシャツのポケットに潜り込んだ。
(ん……っまぁ、その方が安全だな、ねーちゃんの場合)
◇◇◇◇◇
"バッシャーン”
って音は俺達には、聞こえていないけど。
海面に浮上と同時に……。
「メインエンジン点火!」
と言う時田さんの叫びと同時に、”キュルキュルキュルゴー”
って言う爆音も俺達には聞こえていないが、我らの轟雷号は大空に舞った。
しばらくして水平飛行に入ると、
「ベルトをお外しください」
と時田さんは操縦を自動に切り替え、席を立ち俺達の方に振り返りながら言った。
その言葉に、俺達全員シートベルトを外した。
「シュイ、今どのあたりに居るのかな?」
と艦長席に座るミオンに言われたシュイが、席を離れ、操舵席の窓から景色を見よ
うとするのを見たシノブが言う。
「Just a momentMissカカ」
シノブがそう言うと手元のスイッチを入れてる。
すると天井からスクリーンが降りて来て、外の景色を映し出した。
「右(right)が前方の景色で左(left)が後方の景色だよMissカカ」
ってシュイに言うシノブ。
その映像を自分の席でしばらく眺めていたシュイが言う。
「ん……っこの左側の景色の真ん中あたりにある山のような部分をアップで映して
いただけますか?」
「OK、Missカカ」
と言いながら左の映像に映るシュイが言う山の部分をアップにするシノブ。
「これでどうだい!?」
「あっ、はい、ありがとうございます」
とシノブにお礼を言いながらしばらく見つめるシュイ。
「あっ、うんやっぱりあれは蓬莱山だから……」
「シュイ、モニターに地図を出すから場所分かる?」
と言うミオンの言葉に
「はい、わかると思います」
と頷くシュイを見たミオンがシノブに言う。
「じゃ、シノブモニターの右半分をナ国周辺の地図に変えて」
「Aye, aye, sir! (アイアイサー)」
と返事をしてモニター右をナ国周辺地図に切り替えると、シュイがその地図を見て指差し言う。
「このあたりだと思います」
その、シュイが指差す場所に俺がパネル操作して言う。
「このあたりかい?」
「いえ、もう少し右です」
「ここらへん?」
「はい」
「じゃ、ここをマーク!」
って言いながら地図に印を打った。
「現在地はこれで分かったわねぇ……」
地図のマークを見ながら言うミオン。
「ここからだと、目的地まで6,000Kmちょっとと言う所でしょうか」
と同じく地図を見て言う時田さん。
その言葉を聞いて、俺が、
「で、これからどうするのソアラねーちゃん!?」
俺のシャツのポケットに潜り込んでいるソアラねーちゃんに言うと。
”ゴソゴソ”
って感じで俺のポケットから出たソアラねーちゃんが、
「目的地は例の所だよねぇ~」
と言う言葉に、俺を初めミオン、時田さん、ニールさんが頷くと、
俺達の周りを飛びながら嬉しそうに言う。
「じゃ、こうするの~」
って何やら窓の外に指を指す……。
「「「「「「「???????」」」」」」」
一同、頭にはてなが浮かぶが……。
モニター越しに外の景色を見ると、轟雷号前方に大きなブラックホールのような
黒い大きな渦が発生している。
それを指差し、ソアラねーちゃんは元気に言う。
「あの中に、全速前進よーそろー!」
やっと、発進できました。




