204話 非常ベル
「It’s a magic(魔法さ)」
笑顔でナセルに銃を向けるシノブに、室内運動に居たマジュド(テロ組織)の兵
達が、一斉に銃を向ける。
”ガッシャーン”
”ジャラジャラジャラ”
”ドスン”
大きな金属音に続き、両手を拘束され、鎖で天井から吊るされていた、シノブの
お父さん(マクギャレット)が床に”ドスン”と落ちた。
「「ん!?」」
マジュドのリーダーのカリールと、ナンバー2のナセルが同時に声を上げ、マクギ
ャレットさんを吊るしていた天井の留め金のあった所を見上げる。
他の兵士も同時に天井を見上げると……。
そこには、手に斧を持つ、天井から逆さまに立ったローゼの姿があった。
マジュド(テロ組織)の兵達が、一斉に銃を天井のローゼに向ける。
「何だあれは!」
リーダーのカリールが言った。
その時、シノブの左側に延びる影から2つの物体が飛び出し、床に倒れこんだマ
クギャレットさんを引きずり、シノブの影の中に沈めた。
「な・なんなんだ!」
驚くナンバー2のナセル。
周りに居た兵達が慌てて、2つの物体……。
つまり、ゲキとアイーシャさんに銃を向けるが……。
その時、天井からローゼが落ちてくる。
ローゼは器用にも、床に落ちる寸前に1回転し、床に膝をついて着地し、ゲキ達
と反対側のシノブの右後ろに隠れた。
ぽか~んとするマジュドの兵達。
それを見ていたナセルが、一瞬の間が空いてから叫ぶ。
「何をしている、奴らを撃て!」
その声を聞いて、”ハッ”としたマジュドの兵達が、一斉にシノブ達に銃を撃つ。
”バン”
”バン”
”バン”
”カン”
”カン”
”カン”
だが、そのすべての弾丸がシノブ達には届かず、全て手前で跳ね返される。
「馬鹿な!」
リーダーのカリールが驚き声を上げる。
「えぇっ~い!、もっと撃て、撃て、撃て!」
興奮するナセル。
再びマジュドの兵達が一斉に今度は銃をフルオートで撃つ……。
”バリバリバリ”
”カン”
”カン”
”カン”
結果は先ほどと同じ、すべての弾丸がシノブ達には届かず、全て手前で跳ね返さ
れていた。
それを見て驚愕のマジュド(テロ組織)の面々……。
そんなマジュド(テロ組織)の面々を見て、にやけながらシノブが言った。
「言っただろうIt’s a magicって」
「んっ……」
「んっ……」
シノブの言葉に、押し黙るリーダーのカリールと、ナンバー2のナセル。
「では、種明かしと行こうかな」
押し黙る2人に、シノブはお道化て言う。
「では、ご紹介しましょうw」
俺はシノブのその言葉を聞いて、両手に展開したバリアーを解除して、着ていた透
明マントを脱ぎ言った。
”バッサー”
「只今、ご紹介いただきましたGUY BRAVAです」
と、俺もお道化ながら言い、ぺこりとお辞儀をした。
それを見たマジュド(テロ組織)の面々は全員”ぽか~ん”とするが……。
一瞬、間が空いてから、思い出したようにナセルが叫ぶ。
「何をしている!撃たんか、撃てぇ~!!!」
が、……一向に銃声がしないので、ナセルが自分の後ろを振り向き、部下達を
見ると……部下たちは、まさに銃のマガジン交換の真っ最中だった。
(さっき、フルオート射撃するからだよ)
と俺は心で思っていると、その隙を見て、ゲキが右の掌を突き出し叫ぶ。
「秘儀!金縛りの術!」
マジュド(テロ組織)の面々は全員その場で固まった。
怒鳴ろうとして、大きな口を開けたままのナンバー2のナセル。
何か支持を出しているのか、人差し指で何かを指しているリーダーのカリ
ール。
(結構楽勝wだったな……)
と俺が思った時、不意に、”ジリジリジリジリ~ン”
と非常ベルが鳴りだす。
よく見ると、マジュド(テロ組織)の兵士の1人が、壁にある非常ベルのスイッ
チを押したまま固まっていた。
(あっちゃ~)
「兎に角逃げるぞ!」
ゲキの言葉に”ハッ”とし、俺、シノブ、アイーシャさんにローゼは頷く。
俺達は慌てて、この場を去り、先程人質達を逃がした地下4階の雑居房の方へと
降りるのだった。
◇◇◇◇◇
「ちょっと待って!」
地下4階の雑居房へと戻った俺達だったが、ここでローゼがそう言うと雑居房外の
通路……つまり、通路中央の監視台のあるフロアーに戻ると、短く呪文を唱え、
両手を床につけ、こう叫んだ。
「グランドスパイク!」
掛け声と共に、ローゼが触れていた床の部分が一瞬光ったかと思うと、その光は見
る見る床全体に広がり、光に覆われた床部分から細長い棘のようなものがムクムク
と無数に生えだした。
「これで少しは時間が稼げるっしょ」
そう言うと、ローゼは俺達の居る雑居房へと戻って来た。
アイーシャさんが、背負っていたマジックボックス小を降ろし、中から簡易転移
装置を出す。
その間に、俺がシノブの影に沈んでいた、マクギャレットさんを引き上げる。
引き上げたマクギャレットさんを、シノブとゲキに渡し、受け取った2人は、
マクギャレットさんの両脇を自分達の肩で支え、そのまま簡易転移装置に載っ
た。
忽ち、光に包まれ消えて行った。
「次!ローゼ」
「わかった~」
俺の呼びかけに元気よく返事をし、簡易転移装置へ飛び載るローゼ。
ローゼも忽ち、光に包まれ消えて行く。
残るは、俺とアイーシャさんだが……。
俺達が簡易転移装置には載らない。
だって、俺達まで使ったら簡易転移装置を回収できなくなるし、第一これがマジ
ュドにでも利用されたら大変だ。
(まぁ、奴らには扱えないとは思うけど)
そこで一旦、簡易転移装置をマジックボックス小へと仕舞う。
で、仕舞ったマジックボックス小を、再びアイーシャさんが背負い準備完了。
そこへ、”ドヤドヤ”と南北の階段から大勢の人が降りてくる音がした。
って、思ったら次の瞬間!。
「「「「ぐわぁ~」」」」」
「「「「「あぎゃぁ~」」」」」
と悲鳴ともとれる叫び声が聞こえて来た。
(まんまとローゼの罠にかかったな)
俺は、急いでアイーシャさんと手を繋ぐ。
アイーシャさんが服のポケットから、万年筆くらいの長さのスティックを出し、
それを高くかざして叫んだ。
「Transition!!」
俺とアイーシャさんは光に包まれ、ここを脱出した。
◇◇◇◇◇
俺とアイーシャさんはジャンナ(奴らのアジト)から1km離れた場所に転移した。
ニールさんが作ってくれた緊急転移装置(万年筆くらいの長さのスティック)は
、本当に緊急の脱出用なので俺達がダンジョンで手に入れた簡易転移装置程、遠く
へも行けないし、一度に移動できるのは2人が限界なんだよ。
それに、俺(GUY BRAVA)のエネルギーはソフィーの魔力だから、理論上は俺も魔法を行使できるはずなんだけどね……。
俺、いまだに”魔法”……使えないんだよ。
そんな俺の為にアイーシャさんが一緒に最後まで残ってくれて、”緊急転移”の
魔法を行使してくれたって訳。
(まぁ、実際、魔法の行使は、例の万年筆型ステックなんだけどね)
俺達の近くには、ハンヴィー(高機動多用途装輪車両)が止まっており、俺とア
イーシャさんの姿を見て、中から、エドナさん、クレアさんにミオンが出て来た。
ミオンの肩には25cm電龍が乗っている。
まず、ハンヴィーに積んであるマジックボックス中を俺とクレアさんで降ろす。
その間に、ミオンがハンヴィーに積んである装置で、救難信号を送る。
これは、本当に救難してほしいからじゃなく、ここから十数キロ離れた所にある
トレーラーの場所を隠す為……と言うより、はっきり言って奴らをおびき寄せるた
めの餌なんだけどね。
で、ミオンがマジックボックス中から……。
「ブレイブGO!]
ブレイブロボ・Gを出した。
しばらくすると、奴らのアジト(刑務所ジャンナ)の正門の金属で出来た大きな
門が開き、そこからテクニカと呼ばれる、ピックアップトラックの荷台に武器を積
んだ車両が6台に兵士を乗せたトラックが3台、そして遅れて、戦闘ヘリ4機がア
ジト(刑務所ジャンナ)の敷地から飛び立った。
それを見たミオンが皆に元気よく声を掛けた。
「それじゃ~お仕置きタイムと行くよ~みんな~w」
「シャー!」
ミオンの言葉に電龍が吼え。
それ以外の俺を含むメンバーは、黙って頷き、所定の位置へと散らばって行く
のだった。
昨日夜に、母親から電話があり
「クーラーが壊れた」
って言われ行ってみると……確かにクーラーのスイッチが入らなかったり、
切れなかったり……だったんですが、色々見る……までもなく
原因はリモコンの電池切れ!
簡単にクーラーは治ったって言うか壊れてなかったんですよ。
本当、お騒がせの豆ごはん母であります。




