199話 「ピーちゃんって何!?」
ソフィーに”テレパス”の魔法をかけてもらう。
(これで、ヴァンスさん始め、ワールドディフェンサー社の人にも異世界の言葉が
理解できるはず)
ンドワン国は、アフリカ大陸の中央部に位置する国……。
アフリカ大陸と聞いて、俺はサバンナや砂漠をが多い所だと思っていた。
なので、昼夜間の寒暖の差が激しく、また、今は11月なのでかなり冷えるだろ
うと思い、誕生日に とうさんにもらったアニメ『宇宙戦艦ムサシ』に出て来るスペ
ースファルコン隊が来ている革ジャンを着て来たのだが……。
(……まだ、日が昇ってないと言うのに少々暑い)
ここ、ンドワン国の南側国境は赤道に接しており、砂漠やサバンナは全くなく、
熱帯雨林に覆われた森に囲まれた所……。
(暑いはずだよね)
とは言え、これから向かうのは、ここから北に1,000Kmほど北上した砂漠
地帯なので、あながち間違いではないんだけどね。
「ブレイブトレーラーの改装に少々お時間を取りますので、その間に朝食を取りな
がら、今までの経緯をヴァンスから説明いたします」
トレーラーの改装って言うのは、あっちの世界では必要なかった衛星とのリンク
を出来るように少し装置を付け加えるだけなので、そんなに時間は掛からないそう
だが……。
時田さんに案内され、ヴァンスさん始め、ワールドディフェンサー社の精鋭部隊の
α(アルファ)チームのメンバーと共に支部の中央にあるビルへと向かった。
◇◇◇◇◇
真ん中が開いた大きな円卓のテーブルがある会議室のような部屋には、既に朝
ごはんがならべられており、ヴァンスさんに即され、適当に俺達がテーブルに着
いた。
俺達が適当に席に着くと、ヴァンスさんを初め、α(アルファ)チームの
ディノッゾさんマクギーさんは俺達の向かいに座った。
今回の朝食は……と言うと、
主に芋類を臼で破砕して湯で練った『フフ』と言う物が10個ぐらいと、青菜の
炒め物に……。
日本のイワシくらいの大きさの魚のソテーが2尾。
ヴァンスさん曰く、今回の『フフ』は通常キャッサバ(芋類)ではなく、調理
用バナナを使ってるそうだ。
(って言われてもな……俺達にはピンとこないわ)
「「「「「「「「「「「いただきま~す」」」」」」」」」」」
俺達が両手を合わせて言うと、ヴァンスさんを初め、α(アルファ)チームが不思
議そうに俺達を見る。
それを見て、俺達の給仕をしていた時田さんが笑いながら、ヴァンスさんに言う。
「これは、日本の習慣だよ」
その言葉に納得した3人は自分達も食事に箸を付けた。
「う~ん、もちもちとしておいすぅ~い……これw」
「はい、かわった食感ですね」
『フフ』を食べて言うミオンとソフィーに
「我が国の伝統の主食だからねぇ~」
と少し嬉しそうに言うヴァンスさんだった。
(……俺的には微妙だけど)
俺と同じ意見なのか、シュイも微妙な顔をして食べていたので、一応余計なこと
言わないようにシュイを目で殺しといた。
◇◇◇◇◇
朝食を食べながら、お互いの自己紹介をする。
シノブと時田さん以外はねw。
(元々身内なんだから要らないよね)
まずはα(アルファ)チームから。
リーダー(チーフ)のパンテル・ヴァンスさん47歳 アフリカ系黒人。
この人の経歴は前回話した通り。
続いて、イタリヤ系の”ちょい悪親父”は……言い過ぎか。
”ちょい悪お兄さんの”リッカルド・ディノッゾさん35歳 イタリア
系アメリカ人。
彼は、元海兵隊曹長で、あらゆる乗り物を乗りこなす。
例えば、戦車やヘリコプターは言うに及ばず、戦闘機や戦艦……果ては潜水艦ま
でって感じ。
イタリア人特有の女好きで、普段軽口(冗談)やいたずらをしたりしていて、
少々軽めに見られがちだが、一旦作戦に入ると豹変する人らしい。
(本当かな?)
お次は、ショーン・マクギーさん27歳 アイルランド系アメリカ人。
元海兵隊伍長で、爆弾のプロ。
休みの日は自宅に籠ってネットゲームをしている少々オタクっぽいが、爆弾に関
してはプロ。
以上の3人に加え、今ここにはいないが、サポートチーム6人がα(アルファ)チーム。
だ……そうだ。
続いて、俺達側の自己紹介に入る。
俺、ミオン、ゲキに続き異世界組のニールさん、ソフィー、シュイ、クレアさん
、エドナさん、アイーシャさん、ローゼが自己紹介をする。
俺、ミオン、ゲキの自己紹介から始まり、異世界組のソフィーやシュイが言う
『第4皇女』『第二姫』と言う言葉までは笑顔でさらっと聞いていた
α(アルファ)チームの面々が、』ニールさんの『魔法省顧問』だの、クレア
さんエドナさん、アイーシャさん達が言う『上級騎士』と言う言葉を聞いて、
顔が引きつりだした。
信じられないって感じのα(アルファ)チームの面々にシュイは、
「では、お見せいたしますわ」
と言って、腰のスカーフのようなものを解き、瓢箪を取り出すと、瓢箪の栓を抜く。
”ポン”
そして短い詠唱を唱え、言った。
「出でよ!青龍~」
すると、瓢箪から勢いよく水が噴き出し、空中で見る見る龍の形に変わる……。
体長およそ25cm……の龍をみて、
「「「How cute!(かわいい)」」」
と、目を見張り言うα(アルファ)チームの3人の驚く顔を見て、ご満悦に胸をは
るシュイだった。
◇◇◇◇◇
自己紹介も食事も終わったので、ここでヴァンスさんから、シノブのお父さん
(ジェームズ・マクギャレット)の拉致について経緯を聞く。
某国の砂漠地帯に面する人口200人ほどの村”ビダーヤ”に訪れた時だったそ
うだ。
到着後、国際医療ボランテアの医師達が、村人の病気を治療を開始して2日目の
朝。
それは起こった。
大きな地響きと共に、村に武装する集団が現れた。
戦車5両、ピックアップトラックの荷台に機関銃やロケット砲、迫撃砲、無反動
砲、対空機関砲を載せた所謂”テクニカル“と呼ばれる車両8台、それに加えて、
武装ヘリ6機、トラックに3台に銃で武装した兵が60人ほど乗っていたそうだ。
それを見たシノブの父ジェームズ・マクギャレットは、自ら対物ライフルを持っ
て応戦すると共にすぐさま”α(アルファ)チームに指示を飛ばした。
銃弾や砲弾が飛び交う中、重い対物ライフルを持ち、ジェームズさんは
α(アルファ)チームのマクギーさんを連れて応戦。
また、患者を都会の病院へ緊急搬送するため持ってきたヘリ、”MD エクス
プローラー”をディノッゾさんが操縦し、それに対物ライフルを持ったヴァン
スさんが搭乗。
応戦するも敵の戦闘ヘリ6機に対しこちらは民間ヘリ1機……。
しかも、武装は対物ライフルのみ、あっという間に撃墜された。
とは言え、撃墜される前に敵の戦闘ヘリ2機を撃墜したのはすごいと思う。
その間にサポートチーム6人は手分けして、殆どの村人を含む国際医療ボラン
テアの医師達を逃がしたのだが……。
敵の戦車5両のうち1両を破壊。
また、”テクニカル“と言われる、ピックアップトラックの荷台に武器を積んだ
車両を2台破壊したものの、その間に村に侵入した歩兵部隊に逃げ遅れた村人が捉
えられ、それを盾に降伏を迫られた。
ジェームズさんは機転を利かせ、自ら投降しつつ、マクギーさんを村から脱出さ
せた。
村を出たマクギーさんは、撃墜されたディノッゾさんとヴァンスさんを救出し、
サポートチーム6人と共に、逃がした村人を含む国際医療ボランテアの医師達を護
衛し、国連軍が常駐する街まで何とかたどり着いたそうだ。
「Daddyらしいよ」
ヴァンスさんの説明にシノブがぽつりとつぶやくのだった。
◇◇◇◇◇
結局、いまだに居場所は分からないまま。
パーマーさんが必死に奴らのUPした動画の配信元を探ったが、いくつものサー
バーを経由していて、居所がつかめなかったそうだ。
ただ、映像に映っていた牢屋のような部屋から、どこかの使用していない刑務所
ではないかと調べたが、襲われた村”ビダーヤ”の半径30km圏内には刑務所ら
しき建物……と言うより砂漠が広がるだけなので、そもそもアジトに出来る建物が
見当たらないそうだ。
◇◇◇◇◇
何も分からないまま、一縷の望みをかけ、奴らに襲われた村”ビダーヤ”に
向かうことになった。
俺達の”ブレイブトレーラーの後ろには、ハンヴィー(高機動多用途装輪車両)
が2台と、燃料や水を積んだトラックが1台が連なり、途中何度か給油や給電の
為立ち止まるものの、そのほとんどを移動に費やし、移動後2日目の朝にはビダ
ーヤ村に到着することが出来た。
到着したビダーヤ村には、当然だが誰もいない……。
が、
シノブは、それでも何か手掛かりがないか必死で村の中を探し回るのに付き合う
俺達。
シノブが村の中の建物を物色している中、俺は建物の外で、何気なく空を見上げ
ていたら……。
俺の頭の上を鳥が円を描くように飛んでいる。
(トビ……かな?)
そう思った瞬間その鳥は、”ピー”って鳴いたかと思うと、急に俺目掛けて急降下
しだした。
「うわっ!」
俺は思わず大きな声を上げるが……。
次の瞬間その鳥は俺の肩に泊まり、”ピー”と鳴いた。
(ん……!?ひょっとして)
「ピーちゃん!?」
と俺が肩に泊まった鳥にそう言うと、”ピー”とより一層その鳥は鳴いたのだった。
それをまじかで見ていたミオンが言う。
「ピーちゃんって何!?」
今回の朝食は、アフリカ中央部大西洋側の国。
カメルーンの朝ごはんですw




