198話 ンドワン国へ
助けに行くにしても、あまりに情報が少ない。
ワールドディフェンサー社の精鋭部隊であるα(アルファ)チームが、今必死に情
報収集してくれているし、更には、伝説の”ハッカー”パーマーさんも奴らの犯行
声明の動画の解析や、発信元の追跡を行ってくれている。
なので、俺達は、しばらくはここで待機って事になった。
◇◇◇◇◇
------第三者視点---
この世界の月の光に照らされ、ぼんやりと浮かび上がるブレイブ基地中心にそび
えるジグラット(塔)。
その北東側に、中型旅客機が格納できるくらい大きな格納庫がそびえていた。
この格納庫は、ブレイブ基地地下3階にある”次元転移魔法円”と同じ”次元
転移魔法円”が中にある。
セイア達の世界(日本)にあるンドワン国大使館と繋がっている”次元転移魔法
円”では、大型の兵器や、ミサイルなどの強力な兵器を持ってくるのに多少難があ
ったため……。
具体的に言うと、大型の兵器……アルバトロス(飛行艇)を持ち込む際、”次元
転移魔法円”があるンドワン国大使館地下室入口が、アルバトロス(飛行艇)を持ち
込むには、あまりに小さいため分解せざる負えなかった。
また、いくら大使館が治外法権とは言え、ミサイルなどの強力な兵器を港からン
ドワン国大使館に搬入する際、偽装などの手続きが、なかなか面倒だった……。
という理由から、大型兵器を初め強力な武器を、ストレートに搬入するべく、
ンドワン国のワールドディフェンサー社支部とダイレクトに結んだ”次元転移魔法
円”をここに構築したものだ。
その格納庫の前に男が1人立っていた。
男は格納庫のその大きな重い扉を開らく。
”ズゥッ、ズゥ————————ッ”
中は真っ暗だった。
徐にその男は持っていた暗視ゴーグルを装着しようとしたその時!
”パチッ”
格納庫内の照明が灯いた。
「Whoa!」
「し・の・ぶ―っ!あんた1人でどこ行くつもりよ!」
急についた照明の明かりで、目をシバシバさせながら男はその声の方を見ると……。
そこには、腰に手を当て仁王立ちのミオン。
その後ろには、セイア達仲間全員が立っていた。
「Oops!(あっ!)」
それを見て固まるシノブだった。
◇◇◇◇◇
「メイトリックス!お前、俺達を置いて、1人で助けに行くつもりだったのか」
「……」
ゲキの言葉に何も答えないシノブ。
「シノブ……俺の叔父さんも攫われるって言うのにか!?」
「……」
俺の問いかけにも黙ったまま。
「お坊ちゃまの事ですから、皆様に人殺しをしてほしくなかったのでしょう」
「あっ……」
時田さんの言葉に短く返事をするシノブ。
それを聞いてゲキが少し怒ったように言う。
「おいおい、メイトリックス……俺達は魔王を倒そうと集まっているんだぞ!なに
を今さら言うんだ」
「しかし……」
「しかし……なんだ」
ゲキがシノブに聞き返す。
「それとこれとは別……とおっしゃりたいのでしょう」
時田さんの言葉に黙って頷くシノブ。
「お言葉ですが……前回わたくしとシノブ様が誘拐された時、死人は出してません
わよ」
そこにシュイが割って入る。
「いや、前回とは規模も違うし、マジュドは卑劣なテロ集団、女子供を平気で
殺したり、人身売買で売り飛ばす……そんな奴らに……」
「そんな奴らって……ソフィーの命を狙ったり、この世界の人々を平気で殺す魔
王とそんなに変わるのかシノブ!?」
って少し怒り気味で俺が言うと、
「いや、……そう言う……」
と言いかけて少し言葉を探す様に考えるシノブ。
その時、時田さんが言い迷うシノブに代わり言う。
「坊ちゃまはこうおっしゃりたいのでは!?」
「うち(ワールドディフェンサー社)の精鋭部隊である”α(アルファ)チーム”
でも防げなかった相手に……」
と言葉を区切、
「こほん、失礼ですが、戦争の素人の皆さまを巻き込むことはできない……必ず
犠牲者が出る!」
とここで再び言葉を区切、
「とでも言いたいんでしょ」
それを聞いてミオンが吼える。
「あんたね、こっちには”魔法”があるのよ!」
「それに、私のブレイブロボやソフィーの電龍もいるんだよ!」
ミオンの言葉にさっきまで黙っていたソフィーがシノブに言う。
「GUY BRAVE……セイア様がおられるではありませんか」
「……うん」
ソフィーの言葉にうな垂れるシノブに追い打ちをかけるようにミオンが、
「それにね、こっちの”次元転移魔法円”にはまだ魔力を充填してないから、魔力
のないあんたではどうしようもないのよねぇ~」
とあきれ顔で言う。
「Really!? 」
ミオンの言葉に目を向き驚いたシノブが叫んだ。
その言葉を聞いて俺達全員、笑顔で頷くのであった。
◇◇◇◇◇
ここで一旦お開き……にしたいところだが、逸るシノブの気持ちも分かるし、
何よりシノブが単独で行動されないよう、この場でソフィーが”次元転移魔法円
”に魔力充填を開始する。
その間に、地下7階にある”ブレイブトレーラー”をニールさんが、転移魔法
で地上に上げる。
準備が整ったのは午前3時ごろ。
俺達は取りあえず、元の世界のアフリカ大陸にあるンドワン国に”次元転移”
する。
「それじゃ、セイア譲二のこと頼んだでぇ~」
と言いながら俺の手をぎゅっと掴むりゅう じーちゃんに俺は笑顔で頷くと、
「いってきます」
そう言って、皆の待つトレーラに乗り込んだ。
俺がトレーラに乗ったのを確認したニールさんは、
「Paralleltransfer【異世界転移】!!」
トレーラー内で、杖をかざしそう叫ぶと、俺達の乗るのトレーラー周りに、
例の雲のモヤモヤが現れ、トレーラーを包み込んだと思うと次の瞬間!俺達
を載せたトレーラーは、暗いトンネルを猛スピードで進んでいた。
◇◇◇◇◇
10階建てのホテルのような建物。
それをぐるりと囲む塀。
南側の正面玄関前のゲートには屈強な男が2人立っている。
建物東側には兵舎があり、西側には戦車が6両。
北側の格納庫には戦闘ヘリが6機格納されているそうだ。
俺達のトレーラーは、東側兵舎前のグランドに到着していた。
「早かったな時田!」
トレーラを降りた俺達にそう声を掛けるのは、身長168Cmの40代後半の
黒人男性。
右手を負傷したのか、腕釣り用サポーターを付けていた。
「生きておったかヴァンス!」
「ああ、俺は少々の事ではボス同様死ねないようだ」
そう言って笑った。
「そうだな」
お互い笑いながら握手をする時田さんとヴァンスさん。
時田さんの説明によるとこの人は、パンテル・ヴァンス、元ンドワン国陸軍
少尉で狙撃の名手。
時田さんに狙撃の腕を見込まれ、ワールドディフェンサー社に入社。
その後、時田さん引退に伴い、ワールドディフェンサー社の精鋭部隊のα
(アルファ)チームのリーダーを務めている人らしい。
時田さんとヴァンスさんが、談笑しているのをしばらく見ていたら、俺の
?いや俺達の……いや違うシノブの後ろから声を掛けられた。
「よぅ~Jr」
俺も含めてシノブが振り返るとそこには、 30代後半、身長175Cmの
いかにも、イタリア人って感じの人が笑顔で立っていた。
「あっ、Mr.ディノッゾ!久しぶり~」
「ひさしぶり~じゃないぞJr……ここは遊園地じゃないんだ
、こんなに沢山のガールフレンド連れて来て……どう言うつもりだい?」
少しおどけてるが……目が笑っていないディノッゾさん
「Nope (違うよ)、彼ら彼女らは、友人であり、今回の作戦の重要な
戦力なんだよ~」
「No way~」
シノブの言葉に鼻で笑うディノッゾさんに、時田さんと談笑中のヴァンス
さんが言った。
「それは本当だ!ディノッゾ、たぶんお前より役に立つはずだ」
と言われムッとするディノッゾさんだった。
(”ムッ”としてる割に……さっきからクレアさんのビキニアーマーを
チラチラ見てるのは何なんだろう?)
イタリア人って本当、女性に目がないですよね(笑)




