197話 ジェームズ・マクギャレット拉致+日本人
漸く砦(ブレイブ基地)が見えて来た。
「皆、Landing(着陸)するからBeltを締めてくれたまえ」
シノブの言葉に全員が着席してシートベルトを締めた。
砦(ブレイブ基地)の水の滑走路こと水路にはすでに水が張られていて、水路に
沿ってパイロットランプが水路脇に並べられている。
アルバトロスは一旦、旋回して水路へと降り立つ。
”シャー”
水路(滑走路)の水をかき分け、着水した。
しばらく、ゆっくりと水路を進み、水路から滑走路状に整備された元砦の大通り
を中心部へと静かに進み、砦中心の丘の上にある3階建ての塔の手前で、アルバト
ロスを運ぶリフトの上に乗ると同時に、リフトにある留め金が”カチッ”とアルバ
トロスのフロートに取りつけてある車輪にハマると、そのまま塔の1階部分まで丘
を登り始めた。
アルバトロスが、塔の1階部分まで上がると、丸い塔の壁がスライドし、そのま
まアルバトロスを塔の中に引きこむ。
「OK」
シノブの合図と共に、全員がシートベルトを外し、手荷物を持って機外に出た所で
「坊ちゃま!」
と時田さんが悲壮感溢れる顔で、シノブに駆け寄り言った。
「どうした!時田」
「坊ちゃま大変でごさいます!ボスが……いや、社長が!」
「Daddyがどうした!」
「奴ら(マジュド)に捕らえられました!」
その言葉を聞いて
「No way!(絶対にない!)」
と即座に否定するシノブ。
俺達も全員驚き声を上げた。
「「「「「「「「「「「えっ、え――――――!!!」」」」」」」」」」」
◇◇◇◇◇
荷物をProxy Automaton達に預け、中央コントロール室へ時田
さんと一緒に向かい、そこで詳しい話を聞くことにした。
俺達は、コントロール室のV字型のテーブルの席に着き、時田さんの話を聞く
……傍らで、りゅうじーちゃんと櫻ばーちゃんが時田さんに代わり,俺達に
飲み物を配ってくれた。
「申し訳ありません、大鷲様、下峠様」
と、話の途中で、飲み物を配る、りゅうじーちゃんと櫻ばーちゃんに頭を下げる
時田さん。
「そんなことより話の続きじゃて」
と櫻ばーちゃんに急かされ、
「あ、はいでは、どこまでお話ししましたか……」
と言いながら話を続ける時田さんだった。
時田さんの話によると、北アフリカの砂漠地帯某国。
長い間内戦状態だったが、その内戦も終わりを告げる。
しかし、内戦が終了したとはいえ、長く続いた内戦のお陰で、国は荒廃し、治安
が悪化していた。
治安悪化の理由としては、それまでの独裁政権が倒れ、やっと人々が平和に自由
になったはずだったが、いかんせん独裁政権がそれまで力で抑えていた国内の部族
間闘争が激化し、部族間の争いや、略奪などが横行していた。
国連の各国の支援を受けて復興する中、国際医療ボランテアが、内戦で傷ついた
人々の治療のため某国入りすることになった。
そこで、シノブのお父さんの会社、ワールドディフェンサー社がその医師団の護
衛の依頼を受け、医師団と共に某国入りした。
医師の不足する某国の各村々を周り、順調に医療活動を行っていたある日、事件
は起きる。
砂漠地帯に面する人口200人ほどの村に訪れた時だったそうだ。
突然、村に現れた武装する兵に村は襲われた。
戦車5両、ピックアップトラックの荷台に機関銃やロケット砲、迫撃砲、無反動
砲、対空機関砲を載せた所謂”テクニカル“と呼ばれる車両8台、それに加えて、
武装ヘリ6機、トラックに3台に銃で武装した兵が60人ほど乗っていたそうだ。
対する医療団を護衛するワールドディフェンサー社は、シノブの父ジェームズ・
マクギャレット率いるワールドディフェンサー社きってのエースが揃う”α(アル
ファ)チーム”9人だけ。
あっという間に占領された。
「No way!(馬鹿な!)あのα(アルファ)チームだぞ!時田」
時田さんの説明に席を立ちそう激昂するシノブ。
「落ち着け!メイトリックス」
激昂するシノブにゲキがそう声を掛けると、シノブは”ああ”って感じで席に座
った。
「圧倒的戦力……と言うより不意を突かれたのと、女子供を人質に取られたの
が大きかったと……」
「ああ、なら」
時田さんに理由を聞かされ納得のしたのか、シノブは大人しくなった。
「じゃ、シノブのお父さんがそこに居るのが分かているなら!……」
とミオンが言いかけると、時田さんは首を横に振り、
「それが、人質をとりどこかに消えました……」
「消えた!?」
と思わず俺が声を上げる。
「しかし、奴らの正体がわかっておりますので、現在、他国との連携を取りながら
全力で捜索しております。」
「じゃ、早くしないとシノブのお父さんの命が危ないんじゃ……」
と俺が言うと、時田さんは何とも言えない顔をして
「すぐに……とは行かないでしょう、あちら側もボス(社長)や我が社には積年
の恨みがありましょうから……拷問を加えたのちに殺す……かもしれませんが」
「What did you say!?(なんだって)」
と立ち上がるシノブを見て、
「これ、時田はん、その言いぐさはいかんじゃろ」
と りゅう じいちゃんが時田さんを諫める。
「あっ、そうでした」
「すいません坊ちゃま……」
とシノブに頭をさげ
「まぁ、うちのボス(社長)は伝説の兵士ジェームズ・マクギャレットですから、
自分一人なら、いとも簡単に脱出するでしょう……しかし、3日経っても音信不
通だと言うことは……」
「と言うとは?……」
と りゅう じいちゃんが時田さん聞くと
「奴らの常道手段であります、人質に時限爆弾を巻いて、ボス(社長)が逃げたら
爆発させるとでも言って、脅しているからでしょう……でなければ、3日もボス
(社長)と連絡取れないのは腑に落ちません」
「なるほど……」
と りゅう じいちゃんが時田さんの説明に納得する。
その時、”はぁ、はぁ、”と息を切らせながら、細身で眼鏡を掛けた見るからにオ
タクって感じの白人の男性が、俺達の居るコントロール室に駆け込んできた。
(あれ……どこかで見たことがあるような)
俺がそう思っていると、
「どうしたパーマー君」
(あっ!ブライアン・パーマーさん……シノブとシュイ救出の時に居た、ハッカ
ーの人!)
「ボス、奴らが声明動画をアップしたみたいです。」
「なに!」
驚く時田さんに、もってきたノートPCを開き、動画を生成しようとするのを見て
「待て、こっちのスクリーンにつなげ!」
「あっ、はい」
時田さんにそう言われたパーマーさんは、慌ててノートパソコンをこちらのメイン
スクリーンに投影できるようにした。
「出します!」
そうパーマーさんが言いながら、パソコンのエンターボタンを押すと、動画が映し
出された。
スクリーンに映し出された映像は、何やら後ろに鉄格子のある部屋がいくつもあ
る前に、お腹に爆弾らしきものを巻かれた20代くらいの女性6人と、6、7歳く
らいの女の子3人……シノブのお父さんは映っていないらしいが、1人どう見ても
外国人って言うか、……ん?日本人。
その映像を見て、りゅう じいちゃんがぽつりと言った。
「ありゃ……譲二じゃないか……」
「ん!?譲二……って、あのジョー叔父さん!?まさか……」
って俺が言いかけたら、
「ちーとあそこの日本人をアップにしてくれんか」
「あっ、はい」
りゅう じいちゃんに言われ、パーマーさんが動画に映る日本人をズームすると……。
「ほれ、セイアあれはどう見ても譲二じゃろうて」
そう言われ俺が目を凝らしその映像ををよく見て見ると……。
(頬はコケ、髭もぼうぼうだけど……あの鋭い目つきは確かにジョー叔父さんだわ)
「って……何で!?」
って俺が思わずじいちゃんに尋ねると、尋ねられた じいちゃんも少し困ったよう
な顔をして、
「そりゃ~あいつ……戦場なんちゃらだったからじゃないか?セイア」
「えっ、セイアの叔父さんって戦場カメラマンなの!」
りゅう じいちゃんの言葉を聞いて、驚き.俺に尋ねてくるミオン。
「ああ、殆どこっち(日本)帰ってこないからな……ミオンやゲキが知らないのは
当たり前だけど、確かに叔父さんは戦場カメラマンだよ、ミオン」
「えっ、じゃ、シノブのお父さんだけでなく、セイアの叔父さんもってことになる
と、尚更、探さなきゃ……って言うより私達で救出しなきゃ」
と言うミオンの言葉を受け、
「当然ですわ~」
「わたくしも参ります」
と急に鼻息が荒くなるソフィーとシュイ
(うちの叔父さんが居なくても当然助けに行くつもりだが……なんでよりによって
ジョー叔父さんがいるんだよ~!あの人おしゃべりだから、俺がGUYBRAVA
(ガイブレイブ)に変身できるの知られると、うちの とうさん、かあさんにベラ
ベラ喋りそうで……何か怖いんですけど)
一瞬、躊躇する俺であった。
大変遅くなってごめんなさい。
シノブの父 ジェームズ・マクギャレットとセイアの父方の叔父大鷲譲二が
この後登場します。
どんな人かはこの後のお話で……。




