189話 前方後円墳攻防その3
「リリース!(Release)」
俺は変身を解いて小屋の中に入る。
セーフテーゾーンと書かれた小屋は見た目と違い中が広い。
入口付近は土間になっており、簡単な調理ができる台所もある。
奥には畳が引き詰めた6畳程度の部屋があり、その奥には何と!トイレと2人用
シャワールームまで完備されている。
交代でシャワーやトイレを使い、皆でお茶とお菓子でコーヒータイム。
って言っても、異世界組は紅茶だし、櫻ばーちゃんとゲキは番茶だけどね。
お菓子は、エドナさんが焼いたクッキーをいただいた。
「んじゃ、そろそろ行きますか」
ミオンのその言葉に皆は準備をし、俺は再び変身する。
「 チェインジング!(Changing)」
◇◇◇◇◇
番屋を出て、奥にある大きな引き戸を、ブレイブロボ
が、先ほどの観音開きの扉同様に力業で開ける。
”ズルズル~”
「あっ!」
「Woah」
ブレイブロボに続いて、入り口を入ったミオンとシノブが口々に言った。
俺も皆に続いて中を見て見ると……。
”ピッ”
≪Enemy≫
≪名称 ハニワ大人≫
≪戦闘力 30,000≫
≪防御力 60,000≫
≪スピード 100≫
≪MP 1,000≫
≪特技 剣 ≫
×1
身長25mの大きなハニワ兵がそこに居た。
ハニワ大人が、佇むその部屋は大きなドーム球場って感じの所で、俺達が部屋に
入ると同時に魔光の装置が働き一気に明るくなる。
「うわぁ眩しい~」
ミオンがそんな言葉を発した時だった。
ハニワ大人の目が光ったと思ったら、見る見る顔が緑色に代わり、次いで温和
な顔のハニワが鬼のような顔に変化する。
(あっあ!あれって……あれだよな)
俺が心でそんなことを思っていると、ハニワ大人が腰の刀を抜いて、俺達の方
に”のっし、のっし”と近づいてきた。
「ロボ・ストロングバズーカ!!」
『マッシ!』
ミオンの命令に、ロボが返事をすると、背中にあるカールグスタフ84mm無反動
砲×2が肩までせり上がり、肩の上で水平にセットされると、
”ズドーン””ズドーン”
ロボの放つ84mmの弾が白い煙と炎を出し、ハニワ大人の腹部鎧部分に命中する。
”スババーン”
無反動砲の勢いで、少し後ろにのけ反るハニワ大人。
84mmの弾2発が命中したハニワ大人の腹部鎧の装甲には、少しヒビが入って
いる様に見える。
それを見たシノブが、背負っていたマジックボックス小から、カールグスタフ
84mm無反動砲をを取り出し、同じ個所に向け発射する。
”ズドーン”
”スババーン”
”ピキピキピキ”
ハニワ大人の腹部鎧の装甲に小さな穴が開き、ヒビが更に広がる。
ハニワ大人は、そこを左手で庇いながら、右手の剣を振り上げ、再び俺達の方
に向かってきた。
「散開!」
ミオンの言葉に、俺達全員が左右へと散らばる。
と同時に、
「皆~一斉射撃!」
走りながら、ミオンがそう指示を飛ばす。
「ファイヤースピンシールド!」
「ライトニングアロー!ディバイダー」
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
「撃心流気功手裏剣!」
ハニワ大人の右側に回り込んだ、クレアさん、エドナさん、ゲキ、櫻ばーちゃんが技を放つ。
が!
”カキーン”
”カン””カン””カン””カン””カン””カン”
”カキーン”
”カン””カン””カン”
クレアさんが放つ、スピンシールドに炎の魔法を付加した”ファイヤースピンシ
ールド”を初め、エドナさんの放つ”雷”の魔法を流す6つに別れた矢も、ゲキが
放つ”気”の刃も、ばーちゃんの”気”の手裏剣もことごとく跳ね返された。
(表に居たハニワ達とは違うって事か!)
◇◇◇◇◇
「ラグナヴェール!」
ゲキ達と反対側に回り込むシュイがソフィーに声を掛ける。
「はい!」
ソフィーは、シュイの意図するところに気づいたのか、シュイに頷きながら、右
手に持ったステックをかざし、ステックの青いボタンを押した。
ソフィーの持つステックから、大量の水が噴き出すと同時に、呪文を唱え終え
たシュイが叫んだ。
「出でよ青龍!」
その言葉と同時に、ステックから出た水は、大きな水の龍となって、天井付近
に浮かんだ。
「青龍!スピンドリル」
シュイの命令に水の龍はゆっくり回転しだし、徐々に回転速度を上げて、やがて
ドリルのようになり、ハニワ大人を襲うが、ハニワ大人は、持っていた剣を振るっ
てそれを弾き返した。
”バキーン”
青龍は、ハニワ大人の剣に弾かれ壁に激突し、四散する。
「えっ、そんなぁ~」
驚くシュイ。
そこに間髪入れず、
「ロボ・速射破壊銃!」
『マッシ!』
走りながら……と言うよりロボに合わせているので、歩きながらロボに命令するミ
オン。
ミオンの命令に返事をしたブレイブロボ・Gは、左腕に装備された『GAU-
19』12.7mm口径のガトリング式重機関銃をぶっ放した。
”バリバリバリ”
しかし、先程負わせた腹部鎧装甲部分を左手でカバーしているので、左手の装
甲を少し削るも、たいして効果はないようだ。
その横で、バレットM82A1を構え、狙いをつけるシノブが言う。
「左手が邪魔だなMissシラトリ~」
「そうね」
シノブとミオンがお互いそう言葉を交わすと、ハニワ大人の正面で待機していた俺
にミオンが叫ぶ。
「セイア!」
その言葉に俺は黙って頷き、右手をワイヤーアームに変えてから、頭の中のカーソ
ルを選択する。
≪Charge up Kentauros≫
いつもの合体シークエンスでケンタウロス体型になった。
「完成!ケンタウロス!」
俺は、右手にユニコーンの角が変化したスピアーを持ち、徐に、ハニワ大人目掛
け走り出す。
それに気付いたハニワ大人は、俺を剣で切り裂こうと剣を振り下ろすが……。
(遅い!おそいよ~だ)
俺は、あっという間にハニワ大人の股間をすり抜け反対側にでUターンし、
再びハニワ大人に向かって走り出した。
それに気が付き、ゆっくりと振り向くハニワ大人。
右手の剣を振り下ろし、俺を襲うとするが……。
”バッキ――――ン”
寸前のところで俺はジャンプし、ハニワ大人の剣は空を切り、地面に突き刺さっ
た。
ジャンプした俺は、丁度、前かがみで剣を抜こうとするハニワ大人の額に向け、
「ブーストスピアー!」
スピアーを握っている右腕を飛ばした。
”ズブッ”
鈍い音と共にハニワ大人の額にスピアーが突き刺さった。
驚き、もがくハニワ大人。
思わず、腹部を庇っていた左手でそのスピアーを抜こうとした……。
その時だった。
”ズキューン”
”ズキューン”
物凄いマズルフラッシュと共に、12.7x99mm NATO弾が、ガラ空き
となった腹部の傷に命中する。
そして!
「ファイヤースピンシールド!」
「ライトニングアロー!ディバイダー」
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
「撃心流気功手裏剣!」
「ダブルトマホーク~ブーメラン!」
「ストーンアロー!」
クレアさん、エドナさん、ゲキ、櫻ばーちゃん、ローゼにニールさんまでも
が、攻撃に参加して、ハニワ大人の腹部を攻撃する。
「ぐわぁ~!」
声なのか、言葉なのか、わからない悲鳴めいた声を上げたハニワ大人が、いたたま
れなくなり急に立ち上がった。
それを見てミオンが叫ぶ。
「ソフィー!」
「はい!」
ミオンの言葉に即座に反応したソフィーが、コンパクトを取り出し叫ぶ。
「出でよ電龍!」
ソフィーの掛け声と共にコンパクトから光の玉が飛び出し、見る見る大きくなると、
「お待たせしました電龍ちゃん登場!」
(お待たせとか言ってないで早く戦え!)
そう俺が心に思ったことを察したのか、電龍は素早く、ハニワ大人に絡みつくと
そこで、
「これでも食らいやがれ!シャー」
って言いながら、高圧電流をハニワ大人に流した。
”ビリビリビリ~”
すると、電龍に巻き付かれ、もがいていたハニワ大人の動きが止まる。
「今よローゼ!」
「OKwミオン」
ミオンの言葉にローゼがそう返事をすると手鏡を出して叫ぶ。
「いでよバール!」
すると、ローゼの持った手鏡から光の塊が飛び出し、大きなBull(牡牛)が飛
び出す。
「電龍そこどいて!」
ローゼが、ハニワ大人に巻き付く電龍にそう言うと、
「あいよwローゼっち」
そう言って電龍は、ハニワ大人から離れた。
ローゼは電龍が離れたのを確認すると、バールにローゼはに命令する。
「バール超振動ホーン!」
「グッモー!!」
すると、角が小刻みに振動し、”ミヨ~ン”って感じで音がして、ハニワ大人の足元
に突進した。
そして、ハニワ大人の右足に角を突き立てると、
”グルグルグル”
金属が震える音がしだして、やがて……。
”ガラガラガラ~”
崩れて行くハニワ大人の体。
「倒したみたいねぇ~」
とにっこり笑って言うミオンだった。
◇◇◇◇◇
ハニワ大人の残骸をかき分け、奥に進む俺達。
ドーム奥にある扉を見つけた。
(この扉は、上にあげるタイプだろうか……)
またしてもブレイブロボが力業で扉を押し開けた。
”ギリギリギリ~”
扉を開けそこに見えた物は……。
またしても、セーフティーゾーン。
ってか、さっきのより一回り大きな”番屋”だった。
しかも、そこには立て看板が立てかけてあり、日本語でこう書かれたいた。
『お疲れでしょうから、今日はここでお泊り下さい』
と、
(まぁ、少々疲れたけどね)
「リリース!(Release)」
取りあえず、俺は変身を解いて小屋の中に入ってみる。
ハニワ大人……そう、あの大●神です。




