186話 教科書に出てくるあれ!
朝7時に起床して、夕食を食べた部屋に皆そろって行ってみると。
「おはようございま~すw」
と笑顔のレイに迎えられた。
彼女は普段、朝8時起床して食事を取っているらしいが、今回俺達に合わせ
て起きて来た。
普段は1人で食事をしているので、こうして大勢で食事を取るのが楽しいらしい。
「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」
朝食のメニューは……。
何かわからない焼き魚に味噌汁、山盛ご飯に……。
目玉焼き。
ご丁寧に ご飯の横には”たくあん”も添えてあった。
(何~か……異世界感全然ないね)
◇◇◇◇◇
食事が終わり、俺達が自分達の部屋で出発の準備を整えていると。
「セイア……これ」
とレイが俺達の部屋に入って来て、一枚の地図のようなものを俺に手渡してきた。
「これ、レイ……セイア様を呼び捨てにするなんて」
とシュイがレイに注意する。
「だって、セイアがそう呼んでって」
「いくらセイア様が良いと仰せられても……このわたくしでも呼べないのにこの
子は!」
と少し声を荒げ、それに怯えるレイを見て俺がシュイを制して言った。
「シュイ良いんだよホントに」
「だって~」
と少し拗ねたように言うシュイに俺が、
「なんなら、シュイもそう呼んでくれてかまわないんだよ」
と言うと、何故か顔を”ぽ~っと”赤らめ体をくねらせるシュイ。
(いや~そう言う意味ではなんだけどね)
◇◇◇◇◇
都のアスカの街近くの北東に流れる大きな川。
トヤマ川から船で川を下り”アサカ”と言う村を目指す。
大きな屋形船のような船に俺達は乗り込んだ。
「じゃ、シュイ頼んだわよ」
「はーいwミオン様」
そうミオンに明るく返事をしたシュイは船の後部へと移動し、何やら呪文を唱え、
徐に両腕を川に入れて叫んだ。
「リオ!」
するとたちまち水流が起こり船が進みだす。
船の速度は約10ノットくらいだろうか。
川を下るので単に流れに任せて進んだ場合、約5ノットくらいで船は進むが、シ
ュイの能力を使ってスピードを上げ少しでも時間短縮を図る。
シュイのお陰で快適な船旅をすること約3時間弱。
”アサカ”と言う村の船着き場に到着した。
◇◇◇◇◇
アサカの村に上陸した俺達は、お付きの兵士達の案内で村の集会場へ向かう。
アサカの村はアスカの街と違って、殆どが”竪穴式住居”と言って、地面を円形
や方形に掘り窪め、その中に複数の柱を建て、梁や垂木をつなぎあわせて家の骨組
みを作り、その上から土、葦などの植物で屋根を葺いた建物。
(よく教科書に載ってたやつね)
その中でも通常の3倍くらいの”竪穴式住居”ってのが、ここの集会場みたいだ。
ここで、魔力を使ったシュイの回復の為、しばし休憩を取るついでに、早めのお
昼にするため場所を借りた。
まず、魔力回復の為、魔力の実をシュイに食べさせ。
ついで、アイーシャさんが背負っている”マジックボックス小”から、朝、アス
カの給仕係の人達が、俺達の為に用意してくれたお弁当を出す。
お重のような入れ物が……15個!?
3個多いような……。
(ああ!大食漢3人は2つ食べるのね)
作ってもらって、すぐにマジックボックスに入れたので、まだお重が温かい。
そして、独特の香ばしい匂いがする。
「この匂いは……」
そう思いお重を開けてみると……。
「「「うな重!!!」」」
思わず俺とミオン、ゲキが叫ぶ。
櫻ばーちゃんは少し笑顔を見せる。
脂ののったウナギに例の甘辛い垂れがたっぷりかかったうな重。
おそらく、俺達の世界で食べたら数千円はするだろう。
これも前の勇者が作ったそうだ。
(恐るべし山田太郎)
「「「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」」」
(うまい……ものすごく美味い)
◇◇◇◇◇
昼ご飯を食べいよいよ出発!
まず、船で運んできた”マジックボックス中”から、ミオンがブレイブロボG(
アイアンゴーレム)を出す。
続いて新兵器……ってほどのものではないが……。
出した物は、所謂、サイドカー2台と、原付バイク。
いずれも、電動式なんだけどね。
そして、そして、続いて俺がポケットからジッポライター型のカプセルを地面
に”ポ~イ”って投げて、
「出でよ!馬車」
そう叫ぶと、”ボ~ワン”と煙と共に馬車が現れた。
それを見ていた俺達のお付きの兵士や、アサカの村人は驚いた。
(何故かブレイブロボGを見た時は、そんなに驚かなかったのに)
まず1台目のサイドカーのバイクには俺が乗り、後部にはシュイが乗る。
そして、サイドカーの側車部分にはソフィーが乗った。
2台目のサイドカーには、バイクにはシノブが乗り、後部にはアイーシャさん
が乗り……。
「ありゃりゃ」
サイドカーの側車部分にはゲキが乗るはずだったのだが……。
ゲキが乗り込む前に、櫻ばーちゃんがすでに乗り込んでいた。
「あの……」
と俺が”そこはゲキが乗るんだよ”と言おうとしたら、
「わしが乗ったらいかんのか」
って言われてしまった。
(まぁ、別に良いんだけどね)
仕方ないので、ゲキは馬車に乗ってもらう。
そして、電動の原付には当然ローゼ。
俺が言わなくてもすでに乗っている。
本来、馬車を使う場合、馬の扱いが上手い、ゲキかクレアさん、エドナさんにア
イーシャさんが交代で御者の席についてもらうのだが、今回はミオンが御者の席に
座る。
今回はユニコーンが出せないので、ブレイブロボ・Gがユニコーンに代わり馬車
を引くからだ。
「ロボ!出発~っ」
『マッシ!』
馬車に繋いだロープを右手一本で引くブレイブロボ・G。
(なかなかシュールだな……この光景)
◇◇◇◇◇
アサカの村を出て、約30分弱。
俺達は、お目当ての場所に到着した。
「うわ~すごいw」
「圧巻だな」
「本物みたいだねぇ~」
とミオンゲキ、シノブが言うが、シノブの言葉に俺は、
(本物ってことはないだろう……ここ異世界だから)
と心で一応突っ込んどいた。
(確かにすごいけどね……。)
三重の濠に丸と四角が合体した……所謂『前方後円墳』。
・古墳最大長 :840メートル
・古墳最大幅 :654メートル
・墳丘長 :486メートル
・墳丘基底部の面積 :103,410平方メートル
・後円部 - 3段築成。
・直径 :249メートル
・高さ :35.8メートル
・前方部 - 3段築成。
・幅 :307メートル
・長さ :237メートル
・高さ :33.9メートル
学校の教科書に出て来る大仙陵古墳(仁徳天皇陵)がそこにあった。
(これも、前の勇者が!……。重ね重ね恐るべし山田太郎)
馬車とサイドカー、それにバイクを止め、アイーシャさんの背負うマジックボッ
クス小から、対になっている”簡易転移装置”の片方を出しバイクと馬車を止めて
いる付近にセットしておく。
(帰りの為にね)
そうしておいてから、俺達は目の前の前方後円墳に近づいて行った。
「ねぇねぇ、大仙陵古墳って、濠(堀)は2重じゃなかった?」
と歩きながら聞くミオン。
「そうだな~確か2重だったような……」
と俺が教科書に出て来る大仙陵古墳(仁徳天皇陵)を頭に浮かべながら言うと、
俺の後ろに居た櫻ばーちゃんが唐突に言った。
「出来た時は、三重の濠だったんじゃよ」
「ええっ!?」
「ああ」
ミオンと俺の話に櫻ばーちゃんが入って来るとは思っていなかったので、少し驚い
たが、固まるミオンに代わり俺が、
「ああ、そーなんだ」
とだけ答えておいた。
◇◇◇◇◇
「手はずどうり……皆用意はいい?」
ミオンの言葉に俺達全員が頷いた。
俺達は、前方後円墳の方墳の正面……つまり鍵穴上の古墳の底辺部に立っている。
そこから、まず一つ目の濠(堀)を渡る為、まずシュイがこう叫んだ。
「ジエリュー!」
すると濠(堀)の水が左右に堰き止められ、そこにローゼが叫ぶ。
「アップリフト!」
すると水の無くなった濠(堀)の部分が隆起し、そこを渡って2番目の濠(堀)の
堤に渡る俺達。
これをもう一度繰り返し、2番目の濠(堀)を渡り3番目の濠(堀)の堤にたど
り着いた。
「青龍!」
古墳の水を使いシュイが青龍を呼び出したその時だった。
「わー出てきて出て来た」
「ん!?本当に教科書の写真と同じだな」
「そうだな」
青龍の出現に古墳本体のあちらこちらから現れる……。
身長約1.6mのハニワ達。
”ピッ”
≪Enemy≫
≪名称 ハニワ小人歩兵≫
≪戦闘力 300≫
≪防御力 300≫
≪スピード 100≫
≪MP なし≫
≪特技 剣 ≫
×50
≪名称 ハニワ小人弓兵≫
≪戦闘力 400≫
≪防御力 300≫
≪スピード 100≫
≪MP なし≫
≪特技 弓矢 ≫
×120
≪名称 ハニワ小人騎馬兵≫
≪戦闘力 500≫
≪防御力 300≫
≪スピード 100≫
≪MP なし≫
≪特技 騎馬による水上移動及び槍≫
×50
俺は変身していないが、俺の頭の中に敵データーが映し出された。
「IT’S SHOWTIME♪」
ミオンの合図に各自皆、親指を立てて、了解の意志を現す……。
(あらまぁ!びっくり)
櫻ばーちゃんまで、親指立てたよ~!。
(ばーちゃん……意味わかってんのかな?)
小学5年生の時マイブームで、ハニワのレプリカを購入したことがあります。
それを、中学1年生の時おばあちゃんが亡くなり”豆ごはん家のお墓に納骨する際、
おばあちゃんが寂しいといけないからって、そのハニワのレプリカを一緒にお墓に
入れました。
ハニワの使い道としては間違ってなかったと思っています。




