184話 王都アスカ
夜の9時過ぎにカカ帝国のカカ広場到着した。
前回同様、シュウさんが出迎えてくれて、そのまま皇帝家族と遅めの夕食を取っ
た。
皇帝家族と食事をしている時、修学旅行や運動会に文化祭などの俺達の世界の話
を父であるカカ・フォ皇帝に一生懸命話すシュイ。
皇帝は、修学旅行でシノブとシュイがさらわれた話に、一瞬眉を顰めるが……。
その後の娘の武勇伝や文化祭で、ミオンやソフィーと踊った『もえいろクロ
ーバーA』の話をニコニコしながら聞いていた。
(こういうところ。子供っぽくてかわいいんだけど……)
◇◇◇◇◇
翌朝7時に、カカ広場から俺達は飛び立った。
目指すナ国は後少し。
アルバトロスで飛ぶこと4~5時間弱、細長~い島……。
ナ国が見えて来た。
細長いナ国のだいたい真ん中あたりを目指し、飛行を続けるアルバトロス。
しばらくすると、
≪Woah, that’s cool(うわぁ、スッゲー!)≫
と操縦するシノブが機内無線で叫ぶので、俺達は急いでアルバトロス窓に駆け寄
り眼下に見える街並みを見て、
「うわぁ~きれいですねぇ~」
と窓の外を見て言うソフィーにシュイが自慢げに言う。
「そら、そうでしょ、前勇者様がお造りになった街ですもの」
碁盤の目に区切られた都市、王都アスカ。
「まるで、ショギー盤のようですぅ~」
と言うエドナさんにゲキがさりげなく言った。
「それを言うなら碁盤の目だよエドナ」
(あれあれあれ~今、ゲキ君”エドナさん”じゃなくて”エドナ”って言った?)
俺はそう思いゲキの顔を見ると……。
ゲキが俺から目を外した。
なんか言ってやろうと思った時だった。
「あの大きな建物は?なんでしょう」
と疑問を口にするソフィーにすかさずシュイが言う。
「あれはダイゴクデンよ」
その言葉に俺もソフィーとシュイが指差す方を見て見ると、
「なんだあれ!?」
思わず大きな声で言ってしまった。
王都アスカの北側にある……。
高さ、約100m弱の……確か歴史で習った高床式住居の建物ぽい建物で
、その建物に地上から伸びた100mの階段が付いた建造物。
ダイゴクデンは、俺達の世界……日本の平城京や平安京で言う天皇が、儀式や政
務を行う所と同じ意義らしいが……。
「いえ、あれがダイゴクデンですわよセイア様」
「ええーあ・あれが……!!」
驚く俺の横で、窓から見えるその巨大建造物のダイゴクデンを見た櫻ばーちゃんが
ボソリと言った。
「出雲大社の伝承にある本殿に似とるのー」
「えー出雲大社ってそんなに大きかったの!?」
と驚き聞くミオンに、櫻ばーちゃんはそっけなく言う。
「そうらしいの」
ばーちゃんの態度に固まるミオン。
その時、シュイが鞄から直径10cmの金属製の鏡……。
歴史の教科書で見た銅鏡のような物を取り出し、
「レイ……レイ」
と鏡を見ながら言うと、しばらくして昔のテレビのように横縞模様が現れ、それ
が少し歪んだように見えた後、そこに幼い少女の顔が映し出された。
「あっ、おねぇ様……」
「ああ、レイ、わたくし達はアスカに到着いたしましたよ、準備の方をよろしく
頼みます」
「かしこまりました」
そう言って、幼い少女の映像は消えた。
この小型の銅鏡(銅で出来てるわけではないが)は、カカ帝国の王族や貴族が
使う通信機らしい。
ソフィーの使うネックレス型の念話の魔動機と違い、音声と映像を送れるが、距
離が短いらしい。
大体……、都市内でしか使えないんだと。
シュイは妹のレイと連絡を取り終えると、すぐさまコックピットに居るシノ
ブの元へと向かった。
◇◇◇◇◇
「あれです、あそこに着陸してください」
「ん!?OK。Missカカ」
シュイが指差す所見て頷き、シノブは機体を左旋回してから、着陸態勢に入る。
”ブ――――ン”
今、俺達が乗るアルバトロスが着陸しようとしている所は、街の中心部を南北
に通るメインストリート、スザクオオジ。
幅74m、長さ約3・6Km。
道路と言うより広場って感じの通りなんだが……。
今回そこに降りるみたい。
(大丈夫かな?)
◇◇◇◇◇
大通り……スザクオオジには大勢の兵士が現れ、通り約3・6Kmの通行を
遮断した。
≪只今より当機は着陸態勢に入る。
皆、席に着きシートベルトを締めてくれたまえ≫
と機内無線でシノブが俺達に伝えた来た。
それを聞いて俺達は慌てて席に着きシートベルトを付けた。
≪OK、シノブ≫
ミオンが全員がベルトを締めたのを確認して機内無線でシノブに言うと
≪Roger!≫
シノブはミオンの言葉にそう短く返事をすると、隣の副操縦席に座るローゼに
「では着陸態勢に入るよMissゾメル」
と声を掛けるとシノブの隣に座るローゼは、ただ前を見て、短く
「いつでもどうぞw」
って返事をした。
”ブ――――ン”
”ドスン”
下から突き上げる衝撃。
「「「「「キャ!」」」」」
と櫻ばーちゃん以外の女性陣皆が声を上げ、
「「どぉ~わ!」」
俺とゲキ、も声を上げる。
”キュキュッ””キュルキュルキュル”
とタイヤが唸りを上げながら、音をたてたかと思うと、前からのGを受け俺達は少
しつんのめりそうになりながらも踏ん張る。
やがて飛行艇は停止した。
操縦席のシノブと副操縦席のローゼがハイタッチをし、
「お見事シノブ」
「ありがとうMissゾメル」
と声を掛け合った。
◇◇◇◇◇
俺達がアルバトロスを降りるとそこに一人の男の人が迎えに来てくれた。
「遠路遥々ご苦労様です勇者様」
と俺に頭を下げるのは、頭に冠をかぶり、冠と同じ紫の詰衿式の長い袍を着て、袴
をはいた男性。
俺の感覚だと神主さんの格好に近いかな……。
「久しいですねクジラ」
俺が何か言う前に、シュイがその男の人に声を掛ける。
「おお、天子様……あっ、シュイ様……懐かしゅうございます」
「シュイ……どちら様?」
俺が聞く前にミオンがシュイに尋ねると。
「あっ、はい、ミオン様、この者は、スガのクジラ……確か左大臣をしておったに
思うが……今もそうなのかクジラ?」
因みに、このナ国では、苗字ではなく、氏。
同じ祖先をもつ家族の集団、つまり擬制的なものも含めて血のつながりによっ
て、成り立つ同族の集団名とでも言うのかな?
簡単に言うと、スガのクジラさんの場合。
スガの一族であるクジラさんって事らしい。
「あっはい、シュイ様……今も左大臣を務めさせて頂いております」
シュイの問いに答えるクジラさん。
「左大臣?って」
「ええ、実質のこの国の政治のトップ……って申したらよいでしょうか」
「つまり、総理大臣?」
「ソウリ……?」
とミオンの言う総理大臣が解らず首を傾げるシュイに
「ああ、たぶん確か日本の昔にも左大臣と右大臣が居て、左大臣の方が上だったん
じゃないか?」
と言うゲキの言葉に、シュイが頷き
「はい、ソーリーダイジンのようなものです」
「ヘー」
シュイの言葉にミオンが感心したように言う。
「ここで立ち話もなんですし、天子様もお待ちかねです、ささ、ダイゴクデンの方
にお越しくだされませ」
クジラさんはそう言うと、後ろに控えている女官たちに合図を送り、俺達をダイ
ゴクデンに案内させた。
◇◇◇◇◇
ひざ下までと長く、袖幅もゆったりしていて、肩にはスカーフのようなものをか
けていた女官2人に案内されてスザク門を潜り、ダイゴクデンの入り口に上る階段
の前まで来た。
地上から伸びた100mの階段を見て、
「えぇ~これ上るの~」
と嫌そうに言うミオン。
(確かに、大変そうだわ)
するとシュイが
「いえいえ、こちらに」
とその階段の裏付近に手招きをする。
(ん?なんだろう)
と思いつつも俺達はシュイの後に続き階段の裏へと回ってみると……。
「ああ、転移魔法円ですね」
とそれをそれを見てニッコリ笑い言うニールさん。
「はいw」
シュイもニッコリ笑い言う。
◇◇◇◇◇
全員が魔法円の上に乗ったのを確認したシュイが、円の中心にある水晶の柱に
触れ魔力を注ぎ込むと……。
次の瞬間、俺達は高さ100mのダイゴクデンの入り口前に居た。
すると、ダイゴクデンの観音開きの扉が開いたかと思うと、そこから可愛らし
1人の女の子が飛び出してきた。
十二単……というか、お雛様って格好の。
「お姉さまぁ~」
と言いながらその女の子はシュイに抱き付き言う。
自分に抱き付いた女の子に向かってシュイが背中をポンポンと叩きながら、笑
顔で言う。
「元気にしてましたかレイ」
「はいw」
その光景にミオンがシュイに聞く。
「この子は?……」
その言葉にシュイは自分に抱き付いている女の子の手を取り皆の方に向きなおし
て言う。
「はい、妹のレイですw……さぁ、レイ皆さんに挨拶して~」
シュイに促されその少女は俺達に向かって
「カカ帝国第3姫でぇ~、今この、ナ国の天子を務めておりますカカ・レイです
、どうぞよろしくですぅw」
可愛らしくぺこりと頭を下げるレイ。
(天子って……何だろう?)
昔の出雲大社って伝説通りだとかなり大きかったらしいですが、
どうやって建てたんだろうね。




