181話 やはり気が付いていた!?
「お客さんだ」
そう言いながら、部屋に入って来た櫻ばーちゃんの後ろに居たのは時田さんだっ
た。
「お寛ぎの所、申し訳ございませんが、少々急ぎの案件がございまして……」
と頭を下げ言う時田さん。
俺は、”ピン”ときてこういった。
「じゃ、これからみんなで大使館に伺います」
と言いながら、皆で部屋を片付けだそうとすると、それを制して櫻ばーちゃんは言
った。
「いや、ここで話せばええ」
その言葉に俺が、
「いや、色々と込み入った話なんで……」
と言いかけると、
「また、界移転するんじゃろ」
と突然言い出すばーちゃん。
「「「「「「「「「「え――――――――――っ!」」」」」」」」」」
俺達全員が、ばーちゃんの言葉に声を上げる。
◇◇◇◇◇
「そっちの娘は耳が長いわ、こっちの娘は猫耳
それにあっちの娘は(ローゼ)は髭を生やしとるではないか……」
(えっ”偽装”の魔法掛かってるはずなのに……)
櫻ばーちゃんの話によると、初めてクレアさん、エドナさんがゲキの家に来た時
、エドナさんの耳を見たのと、その時すでに”界移転”したものの独特の”気”をエ
ドナさんクレアさんから感じていただけでなく、ゲキからも感じていたが、孫の
ゲキが真剣に頼むので、しばらくはそれには触れずに知らん顔していたんだってさ。
「そのうち、話すじゃろうと思うておったが……。」
そう言って、番茶を一口すすり、
「で、今日来た、猫耳に髭の娘をに加え、ゲキの幼馴染のお前さん(俺)やお前さ
ん(ミオン)からも、”界移転”の”気”を感じたので確信したわ」
(なるほど……恐れ入りました)
「まずは、正直に話してみぃー」
と眼光鋭く言う櫻ばーちゃんに俺が思わず、唾をごくりと飲み。
「えぇっ……」
と言いかけた時、それを制するようにソフィーが言った。
「いえ、セイア様やゲキさんを巻き込んだのは、わたくしです」
ソフィーの訴えるような言葉に櫻ばーちゃんは”チラ”とソフィーを見て言った。
「ほう、そこの姫が話してくれるというのか」
(あれれ、なんでソフィーがお姫様だとわかるの?)
「はい!」
と櫻ばーちゃんの問いに、ソフィーは力強く返事をするのであった。
◇◇◇◇◇
「なるほどの~、相分かった」
ポンと膝を叩き言う櫻ばーちゃんに俺達は”ほっ”と胸を撫で下ろしていたのだ
が、次の瞬間、
「わかったが……」
と言いかけるばーちゃん。
「「「がっ!」」」」
思わす俺と、ゲキ、ミオンが聞き返す。
「わしも連れていけ!」
「「「「「「「「「「え――――――――――っ!」」」」」」」」」」
御年78歳の櫻ばーちゃんの言葉に全員声を上げた。
俺達皆の反応に、櫻ばーちゃんはムッとして言う。
「歳は取っても、妖や鬼の1匹や2匹、なますにしてくれるわ~」
「でも……ばぁ……」
「でも、何じゃゲキ!」
ゲキが、櫻ばあちゃんを諫めようとするもそれを睨め付け言う。
「戯け(たわけ)!、何もわしが最前線で戦うとは言とらんわ」
「えっ」
櫻ばあちゃんの言葉に絶句するゲキ。
「ゲキ、お前の為に行くと言うとるんじゃ!」
「どういうことです?」
櫻ばあちゃんの言葉に俺が恐る恐る聞くと、
「あっちで、どういう戦い方をしたのか知らんがゲキの”気”の格はかなり高い」
「なら……」
と口を挿もうとするミオンを目で殺し、
「しかし、荒いんじゃ」
「荒い……」
櫻ばーちやんの言葉に俯き考えこむゲキ。
「このままのゲキじゃと、高め過ぎた”気”にいずれ飲み込まれ……」
「「「「「飲み込まれ?……」」」」」
ばーちゃんの言葉に俺、ゲキ、ミオン、クレアさん、エドナさんが声をそろえ聞く。
「死ぬ!」
「「「「「「「「「「え――――――――――っ!」」」」」」」」」」
櫻ばあちゃんの言葉に、その場に居た全員が声を上げた。
◇◇◇◇◇
櫻ばーちやんは、テーブルに座る時田さんにお茶を入れる。
「恐れ入ります」
時田さんは、お茶を入れてくれた櫻ばーちやんに一礼し、お茶を一口飲んで。
「えー、ブレイブ基地のニール様より、先程連絡がありまして……」
「なんて、なんて?」
時田さんの話の腰を折り、身を乗り出して言うミオンを櫻ばーちやんは、”チラッ”
と見て目で殺す。
「……」
黙るミオン。
「300年前の前勇者が使っていた船のありかが分かったそうです」
「あっ!あの波〇砲撃ったやつw」
とミオンがまたもや口を出すと、櫻ばーちやんは、また、”チラッ”と見て目で再
びミオンを殺す。
「……」
再び黙るミオン。
(ん~ミオンしばらく黙っていようか)
「ただ、ニール様の言うには、かなり前に封印されておりますので、果たして
今使えるかどうかわかりませんし……」
「そっ……モグモグ……」
3度、口を挿もうとするミオンの口を俺が手で防ぎ黙らせた。
それを”チラッ”と見て櫻ばーちやんは、俺に微笑んだ。
「何より封印されている所には、”ハニワ小人”や”八ツ俣の龍”が守っているそ
うで……」
と言いかけた時、ミオンではなくシュイが口を挿む。
「何ですか、私のセイア様が、そんなん者に遅れをとるとでもおっしゃるつもり?」
と横やりを入れたが、それには櫻ばーちやんは、何の反応も示さずスル
ーする。
その態度に、ミオンが櫻ばーちやんに抗議しようと声を上げる……。
「何でっ!モグモグ……」
前に俺が両手で口を塞いだ。
「いえいえ、セイア様が戦いに加われば……問題ありませんよカカ様」
「加われば……?っておっしゃいますと」
そこに今度はソフィーが口を挿む。
「はい、ラグナヴェール様……セイア様がその船の封印場所でっと申しますか、地
上で戦う……と言うよりも、変身されるのが少々問題でして……」
「セイアの変身が問題?」
今度はゲキが時田さんに聞いた。
「はい」
そのゲキに時田さんは軽く返事をし、話を続けた。
「前回ブレイブ基地で、オブリヴィオン(魔王軍)のお話をしていた時、奴らはラグ
ナヴェール様の体から漏れ出る魔力を探知して我々の前に現れるのではないかと言
うお話になったと思いますが……」
その時田さんの言葉に、櫻ばーちやん以外の俺達メンバーは頷いた。
「で、その対策をニール様がお考えになっている時、ふと、気づかれたのです」
その言葉に再び頷く俺達。
「奴らが探知しているのは、当初はラグナヴェール様の魔力かもしれませんが、
恐らく今はそれより強力で発見しやすいセイア様……と言うよりガイブレイブ
だと……」
「確かにガイブレイブは、ソフィーさんの魔力がエネルギーだが……」
と時田さんの言葉に、顎に手を当てながら言うゲキ。
「BUT、それなら電龍も同じではないか?Mr.シモトウゲ」
それに異議を唱えるシノブにゲキが言う。
「いや、電龍は……食事……ってあ、エネルギーをソフィーさんからもらっている
にすぎんだろう?それに比べガイブレイブ(セイア)は体もソフィーさんの魔力で
出来ているからではないのか?」
「その通りでございます下峠様」
ゲキの推論に時田さんが肯定する。
「なるほど……」
納得する俺。
「セイアが戦力から外れるとイタイわ、痛いけど……んっ?」
俺の手を払いのけミオンが口を出すが……。
今度は、櫻ばーちやんは睨まない。
(あれれ、これは良いんだぁ~)
「さっき時田さん地上ではって言わなかった?」
「はい申しました」
ミオンの問いに少し首を傾げ答える時田さん。
「なら、地下……例えばダンジョンの中とかは?」
「今までの事を考えますれば、それは大丈夫らしいです……ニール様のお話では」
「なら、まったく変身できないわけじゃないじゃない」
そう言うミオンにまだ、キョトンとして、
「はい、さようですな」
「なら!何とかなるわよ」
胸を張り言うミオン。
「そうだな、ミオンの言う通りだな、例えば奴等の探知能力にもよるが、短時間な
ら探知されないかもしれんしな」
とミオンに賛同するゲキ。
「いずれにしても、あちらに行ってMr.ラーキンに詳しい状況を聞いた方がよさ
そうだ」
シノブの言葉に、俺、ゲキ、ミオンが頷く。
「では、参ろうかの」
と突然、櫻ばーちやんは席を立ち出て行こうとするので、ゲキが慌てて
止めようとすると。
「ん?今、話まとまったんじゃろ?」
平然と言う櫻ばーちやんに、俺達は一瞬唖然とした。
(ばーちゃん……行先分かってるぅ?)
櫻ばーちゃんは一見不愛想ですが、結構好奇心旺盛のおばあちゃんです。
豆ごはんは、こう見えてもおばあちゃん子。
子供と、お年寄りには人気者でした。
でも……。
肝心のお年頃の女性には、からきしモテたためしがありません(悲)




