177話 男って浅ましい(文化祭)
「これは……」
「なっ……んっじゃこれ!」
絶句するゲキと俺。
しかし、異世界組のソフィー、シュイ、クレアさんは俺とゲキが何で驚いている
のかわかないって感じだった。
「これがショーギーですか?」
「ショウギーはもっと小さいものでは?セイア様」
「なんだか奇妙な鎧ですねぇ~あれでは動きずらいと思いますが……」
俺とゲキは、"人間将棋"と聞いて、武将などのコスプレをした人を将棋の駒の
ように動かすものだと思っていたんだけど、目の前にあるのは運動場に白線を引
き、将棋盤に見立てた所に、将棋の駒(ダンボールで作った)を着た人が立って
いる。
(確かに、歩は歩兵、桂馬は騎馬武者、王将は将軍(大将)と考えられるが、香車
、飛車、角行は何で表現したらいいかわからないし……それに、”成る”ってのを
どう表現するか……わからないけど……。)
「ん!?裏表同じだぞ、これでは”成れない”じゃないか?」
ゲキの言葉に俺もよく見て見ると、表裏同じ、桂馬の裏も桂馬となっているし、何
より上から見た将棋盤を模しているのではなく、でっかい将棋の駒を着た人が立っ
ているだけだよな。
(わかりにくいな)
そう思いながら、ソフィー、シュイ、クレアさんに俺とゲキが簡単な将棋の駒の動
きと、ルールーを説明しながら見ていると、後手の桂馬が敵陣に入り……。
「「え――――――っ!!」」
桂馬になった人が、自分で桂馬の駒の両端を左右に引っ張ると、”金”って書かれた
文字が現れた。
(なるほど……よく考えたね)
「後、5手で先手が勝つ」
しばらく将棋を見ていたゲキが言う。
「えっそうなんですか?」
思わずソフィーが聞き返すが、ゲキは黙って頷いた。
ゲキが言う通り、5手後には先手の勝利となってこの勝負は決した。
まだ、試合は何回かあるようだが、俺自身飽きて来たし、異世界組は恐らく見て
いてもわからないだろうから、ここを切り上げて場所を移す。
「少し、早いけどお昼にするか?!ゲキ」
「んっ、そうだな」
俺の問いかけにゲキが答え、美術室の方に歩こうとするゲキを俺は制して行った。
「うちのかあさんが作ったおにぎりだけでは、足らないだろう~ゲキ」
「いっ、やそんなことはない!」
と遠慮するゲキに、俺はにっこり笑ってこう言った。
「大丈夫!ブレイブ商会の経費で落としてもらうからw」
「ああ、そうか、なら」
◇◇◇◇◇
運動場にある屋台テントに寄り、焼きそば、フランクフルト、から揚げをメンバ
ー分買い、美術室に向かう。
俺のクラスもそうだが、ミオンやゲキのクラスのように教室で展示を行ている
クラスは、展示物がある為、教室でお昼を食べるわけには行かない。
(受付してる人は例外だけどね)
空きスペースって言うか、運動場などで食べる人が多いが、中には食堂でお昼を
取る人もいる訳だが、限られた時間(お昼休み)なので人が殺到する。
ただ、今回俺達”マン研”は部室である美術室で展示を行っていないので、空い
ている。
そこで、マン研ではないが、ゲキ達や、ローゼも合流して、ここでお昼を皆で食
べようと言う話になっていたからだ。
そのため、うちの かあさんが、メンバー全員のおにぎりを朝から作ってくれて
いた。
”ガラガラガラ~”
俺とゲキは、買い出した焼きそばなどを持っているため、クレアさんに美術室の
戸を開けてもらう。
美術室にある机に買ってきた、焼きそばやフランクフルト、から揚げを並べ、
ソフィー、シュイも手伝ってくれて、俺、ミオン、ソフィー、シュイのリュッ
クから、おにぎりが入ったタッパーなどをだす。
”ガラガラガラ~”
そこにタイミングよくミオンが現れる。
「おっ!私ナイスタイミングだね」
「ああ、そうだなミオン」
笑いながらミオンにそう言うと、
「手伝おうかセイア~」
と言うのでサラダが入ったタッパを指差し、
「かあさんが作ったコールスローサラダ出して、各自分の紙皿に入れてくれないか
?」
「わかったw」
ミオンが機嫌よく返事をし、タッパからコールスローサラダをとりわけ出している
と。
”ガラガラガラ~”
今度は、シノブとアイーシャさんが入って来た。
「美味しそうな匂いですにゃw」
「そうだねぇ~Missアイーシャ」
シノブとアイーシャさんの会話を聞いていたミオンが、シノブに言う。
「シノブ~、ローゼとエドナさんは?」
「ああ、MissエリスとMissゾメルには、ここに来る途中声を掛けたから、
もうすぐ来るんじゃないかい?」
とシノブが言い終わるタイミングで、
”ガラガラガラ~”
ローゼとエドナさんが入って来た。
「あぁ~ヤキソバン~w」
「おっ、ソーセージだw」
入ってくるなり、エドナさんは焼きそばに、ローゼはフランクフルトに釘付けのよ
うだった。
◇◇◇◇◇
「「「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」」」」
「ふぅ~お腹いっぱいw」
ミオンは、お腹をさすりながら言う。
かあさんが用意した、おにぎり30個はきれいになくなった。
と言っても、だいたい1人2個づつしか食べてなかったので、余った8個のおにぎ
りは、ゲキとシノブが平らげたんだけどね。
前もって、異世界組が梅干しが苦手だろうからと、かあさんが用意したおにぎり
の具は、焼き鮭、昆布、鰹節、焼きたらこ、高菜なんだけど、アイーシャさんは、
シャケと鰹節を好むようで、エドナさんは高菜を好むようだった。
「じゃ、腹ごなしにソフィー、シュイ振り付けのおさらいをするよ~w」
「「は~いw」」
3人が振り付けの練習をするのを横目で見ながら、他の皆と後片付けをし、エドナ
さんとローゼを見送ってから、残ったメンバーに手伝ってもらて、体育館前の特設
テントで販売するグッツを運ぶことにした。
「じゃ、俺達は先に行ってるからなぁ~」
「うん、わかった」
ミオンの返事を聞き、俺と残りのメンバーは美術室を後にした。
◇◇◇◇◇
俺とゲキ、シノブはフィギュアの入った重い大きな箱を持ち、その他軽めの荷物
を、クレアさん、アイーシャさんに持ってもらってテントに向かう……と。
体育館の前に設けたマン研の特別ブース前には、既に長蛇の列ができていた。
「なっ……」
それを見て絶句する俺に、列に並ぶ男達から、
「はやくしてくれよ~大鷲!」
「おい、押すなよ!」
「はやく、はやく」
と声が飛ぶ。
俺達は、慌てて、テント内の机にグッツを並べるが、並べる間にもテントに押し寄
せる男達。
「これくれ!」
「はやく、はやく」
「いくらだ!大鷲」
叫び、迫る男達。
「うわぁ~、これじゃ並べられないよ」
困る俺を見て、グッツを並べる手を止めたゲキが、テントに群がる男達の所に向か
い、思い切り気を放ってこう言った。
『整列!』
ゲキが渾身の気を放ちながら叫ぶ声に、”ビック”とした男達は、慌てて奇麗に1
列に並んだ。
(サンキュ、ゲキ)
◇◇◇◇◇
売れる売れる。
用意したソフィー、ミオン、シュイの団扇(表に3人の写真入りで裏がそれぞれ
3人の似顔絵付き)。
やはりダントツでソフィーの団扇がよく売れるが、他の2人のもそれに遅れるこ
と数分で完売する。
次に完売したのは、3人それぞれの顔写真入付き、ミニペンライトだった。
そして、ブレイブ商会でネット販売しているソフィーのフィギュアの半分サイ
ズのフィギュア。
アイーシャさんが木彫りで作り、俺、ミオン、ソフィー、シュイが色付けしたも
の。
値段を半分以下の3,000円にはしたものの、それでも高価なフィギュア……。
が!、
あっという間に売れた。
ただ、ついでに作った俺のフィギュアって言うかGUY BRAVのフィギュア
は、まるで売れなかった。
(こっちでは、まるで人気のないGUY BRAV トホホ)
そこに、 もえいろクローバーAに扮んしたソフィー、ミオン、シュイ
が現れると、グッツを買った男達が色めきだした。
「「「「「「「「「「ウオー!!!!!!!」」」」」」」」」」
色めき立つ、男達を一列に並ばせ、男達のスマホを預かり、順番に3人と写真撮
影をするゲキとシノブ。
「はい、1人一枚だぞ!」
「Mr.笑顔だ!撮るよ~チーズ」
「そこ、肩は組まない!」
「Goddam!手離さないと写真消去するよMr.」
隙あらば、ソフィー、シュイ、ミオンの手や肩、腰を触ろうとする男どもに注意を
促すゲキとシノブ。
(男ってホント浅ましいよな)
豆ごはんの高校は男子校。
なので皆女性に飢えていた……。
文化祭で女装してミスNo1を決める催しがあったんですが、
それの出場者の女装姿を見て、皆が思わず振り返ります。
かくいう私も反射的に見てしまいました。(汗)
中身男なのにねぇ……。




