174話 修学旅行(救出裏編・解決)
------第三者視点---
シノブが牢の扉の鍵穴に愛用のライフル(XM8)の銃口を向けるが、それをシ
ュイが止めて言う。
「ここはわたくしが」
「Oh!そうだった大きな音がしたら奴らに気づかれるねぇ」
とシュイに言い、その場をシュイに譲った。
シュイは、腰のスカーフのようなものを解き、瓢箪を取り出すと、瓢箪の栓を抜く。
”ポン”
そして、言った。
「出でよ!青龍~」
すると、瓢箪から勢いよく水が噴き出し、空中で見る見る龍の形に変わる……が。
体長およそ25cm……青龍と言うか、かわいらしい小型の龍が出現した。
「コホン、水の量が水の量ですので……」
とシノブに照れながら言い訳するシュイ。
「……」
それを見て、無言で顔を引きつらせるシノブ。
2人の間に気まずい雰囲気が漂うが……。
シュイは気を取り直して命令する。
「鍵を開けなさい!」
すると小型の青龍は、そのまま牢の鉄格子をすり抜け鍵穴の前に浮遊すると、頭部
が鍵の形に変形し、その頭をそのまま鍵穴に突っ込むと右に回転した。
”カチ”
「開きましたわよ~メイトリックス様」
とニッコリ笑うシュイに
「Wow~!すごいね!Missカカ」
と子供のように喜ぶシノブ。
「えへへ、いや~それほどですぅ~」
喜ぶシノブを見て、少し照れながらも、胸を張るシュイだった。
◇◇◇◇◇
シノブはライフル(XM8)を床に置き、背中に背負っているマジックボック
スも床に降ろすと、マジックボックスから、拳銃用のサイレンサーを出し、腰の
カバメントを抜いて、銃口に付けた。
「どうしますぅ~メイトリックス様」
と言うシュイの問いかけに、サイレンサーを付け終わったシノブが、
「そうだね、あちらの様子が分かればいいんだけどねぇ~」
とドアの隙間を除きながら言った。
「それならw」
「何かいい手でもあるのかい?Missカカ」
「まぁ~見ててくださいw」
そう言うと、25cmの青龍に命令する。
「隣の部屋の様子を見てきなさい」
シュイの命令に小さな青龍が頷くと、一旦龍の形状を解き、水の塊となって、床を
這いながら、ドアと床の隙間から隣の部屋に向かった。
しばらくすると、ドアと床の間から水の塊が戻って来た。
水の塊はすぐさま龍の形に戻り、空中に舞い上がると、シュイの顔の前で制止した。
水の龍とシュイがお互い顔を合わし見つめ合う。
「……」
「そう、わかった」
シノブには分からなかったが、どうやら見つめ合うだけで意志の疎通は出来るよ
うだった。
「どうだった?Missカカ」
「えぇ、このドアの向こうにテーブルを挟んで座る2人の男と、この建物の出入り
口付近に男が3人いるようですメイトリックス様」
「……!?5人か……1人足りないようだが……出て行ったってことかな?」
顎に手を当て考えこむシノブに、
「それはわかりませんが……」
とボソッと言うシュイ。
「それに、外にも見張りが居るだろうし……」
とシノブが言った時、シュイが急に頭の上に飛ぶ蠅を追い払うようなしぐさをし、
「んぅ!もう!こんな時にあの忌々しいラグナヴェール声が、頭の中で聞こえるな
んて!」
と言うシュイにシノブがハッとしてシュイに言った。
「度々それを言うけど……それひょっとして、Missラグナヴェールからの念話
ではないのかい?」
「えっ、ああ!」
「確か、君のBirthdayにMissラグナヴェールから、念話が出来るアイ
テムをプレゼントされたんじゃなかったかい?」
「あっ!そうでした」
シノブの問いかけに、誕生日にソフィーからもらった、念話のブローチの事を思い
出したシュイ。
「ピエンフア!」
左の二の腕にあるリングを触り、叫ぶシュイ。
見る見る元のセーラー服に戻ったシュイは、胸のブローチに触れながら念話をし
た。
どうやら念話のブローチは、持っているだけで受信は出来るが、ブローチに触れ
ないと送信は出来ないようだった。
≪何です!ラグナヴェール、今わたくしは忙しいのです≫
≪あっ繋がった!シュイさん、すぐに助けが……セイア様達がそちらの建物に
向かった処です≫
「えっ!セイアw様が♪~」
念話でソフィーに”セイア”と聞いて有頂天になるシュイ。
シュイの言葉を聞きシノブがシュイに問う。
「Mr.オオワシが!?」
「……あっはい……もうすぐこちらに来るそうですぅ~♪」
そう嬉しそうに言うシュイにシノブが言った。
「ならば、表の警備の連中はMr.オオワシに任せるとして、中の連中はさっさと
倒すとしようか……Missカカ」
「はい♪」
シノブの言葉に笑顔で返事をするシュイであった。
◇◇◇◇◇
「ジダン……手が空いてるなら小僧たちの様子を見てくれないか」
「ん?なせだ」
「いや、捕らえられてからやけに大人しい……と思ってな」
「ん!?……そういやそうだな」
ファハドに言われ、ジダンがシノブ達が捕らわれている部屋のドアに近づこうとし
た時だった。
「んっぐわぁ!……」
言葉にならない声を上げその場に崩れ去るジダン。
「どうした!ジダン」
その様子に慌ててジダンに駆け寄ろうとするファハドに、頭上から水の塊が襲って
きて、ファハドの鼻と口にまとわりついた。
「ぐっ!……」
自身の鼻と口の周りにまとわりつく、水の塊を必死で剥がそうとしてもがくが、
水の塊を剥がせなくて、体をジタバタさせるファハド。
”ドサッ”
やがて力尽きて、その場に倒れた。
その異変に入口シャッター付近を固めていたジャバ、ザヒール、ナミルの3人
が気づき、ファハド、ジダンの元に駆け寄って来た。
「ジダン様~!ファハド様~!」
真っ先に駆け付けたジャバが、そう言ってファハドに駆け寄り、倒れているファ
ハドを抱き起そうとした時だった。
”バッキーン”
シノブ達が捕らわれていた部屋のドアが蹴破られ、そこからシノブが転がり入って
来ると、
”ボシュ”
”ボシュ”
”ボシュ”
閃光が3つ光ったと思ったら、
「アガッ!」
「グァッ!」
「グァァァッ!」
いずれも右足大腿部を撃たれ、その場に転がるように倒れるジャバ、ザヒール、ナ
ミルの3人。
シノブは用心深く、転がる5人に銃構えながらゆっくりと立ち
上がり言った。
「Curia!Missカカ~もう大丈夫だよ」
その言葉を聞いてゆっくりと部屋を出て来たシュイ。
そこに!
「秘儀!一刀両断!」
”シュパッ”
シャッターを切り裂きセイア達が入って来た。
「あっ、ん?どう言うこと」
すでに、敵の殲滅が済み、銃を構えるシノブとその後ろに笑顔のシュイが立って
いるのを見て、セイア、ゲキ、アイーシャは呆然として立ち尽くのだった。
◇◇◇◇◇
「セイア様~♪」
笑顔でセイアに駆け寄るシュイ。
セイアに抱き付き嬉しそうに
「助けにきてくれたんですねぇ~嬉しいですぅ~」
「あっ、まぁ」
シュイにそう言われ、ばつの悪いセイア。
その傍らで、シノブに駆け寄るアイーシャとゲキ。
「大丈夫かメイトリックス」
「シノブにゃん、大丈夫にゃん?」
「ああ、この通り僕はぴんぴんしてるよ」
お互い笑顔を交わすシノブ、ゲキ、アイーシャだった。
その時だった!
「そうはいくかよ!」
と大声がして、セイアはじめ全員がその声の方に顔を向けると……。
そこには右足を引きずりながらも、爆弾のリモートスイッチのようなものを握り
、立つジャバの姿があった。
「「「なっ!……」」」
セイア、シノブ、ゲキがそう声を上げる中ジャバが言った。
「一緒に地獄へ行こうぜ!」
そう言って爆弾のスイッチに手を掛けるた瞬間。
”ボシュ”
シノブが、咄嗟にジャバが爆弾のスイッチを持つ右手を撃ち抜く……が、
「グァッ!」
”コロン”
撃たれた反動で、ジャバが握っていたスイッチが床に落ちて、そのショックで
爆弾が起動する。
”ピッ”『10』
”ピッ”『9』
”ピッ”『8』
「ヤバイ!」
そう叫んだセイアが、両手をシールドアームに変え、両掌に円形シールドを展開
しそのままテーブルにあった爆弾を両掌で挟み込むと、シールドは球形に代わり
、爆弾全体を包み込んだ。
「皆、ここは俺に任せてここから離れろ!」
セイアがそう叫ぶと、全員セイアを心配しつつも、廃工場の外へ避難した。
”ピッ”『2』
”ピッ”『1』
”ピッ”『0』
”ボン”
一瞬シールドが小さく膨らみ、シールド内は黒い煙で覆われ何も見えない状態にな
った。
「ふ~っ、間一髪」
思わず声が漏れるセイアであった。




