171話 修学旅行(誘拐編)
バリーボッタのアトラクションエリアで、アトラクションを楽しむ前に、ここ
で、昼食を取ることにした。
バリーボッタのアトラクションエリアにある『三本のハタキ』ってレストランで
この店一押しの『バリーボッタフィースト』って料理を皆で頼んだ。
・ガーディアンサラダ
・ローストチキン
・チポラタソーセージ
・ローストポテト
・グリーンピース、 ニンジン、芽キャベツetc
もちろん、映画でおなじみの、ホットバタービール (ノンアルコール)も一緒
に注文した。
「「「「「「「「「プハー」」」」」」」」」
って、ビールを飲み、お互いの口の周りに着いた泡を見て、”ケラケラ”笑っていた
ら、ローゼ1人が、ビールを一口飲んでは、首を傾げていた。
(ああ、そっちの世界には、ノンアルコールビールって、なかったよなぁ~)
◇◇◇◇◇
俺、ソフィー、ミオンにシュイ、それにシノブは、ここのアトラクション用に自
分の専用の”魔法のスティック”を購入し、それぞれのブースで明かりをつけた
り、雪を降らしたりして楽しんだ。
中でも、ソフィーとシュイは”魔法”(疑似だけどね)が使える自分に感動して
いたが……。
それを見ていたローゼが、徐に、
「そんな枝使わなくても!」
って言ったかと思うと右手を地面に付け呪文を唱えだしたので、慌てて俺とゲキで
、それを止めた。
(まぁ、そうしたいのは分かるけど……お遊びなんだからさ~ローゼ、それはここ
ではやめとこうよ)
ここのアトラクションで、はしゃぐ、俺、ミオン、シノブにソフィー、シュイを
他所に、ゲキ並びに他の異世界メンバーは、かなり冷めた様子でそれを眺めていた。
ようだ。
(そりゃ~、そっちの世界が本物なんだから、仕方ないのかもしれないねぇ)
◇◇◇◇◇
ソフィーとシュイ以外の異世界メンバーが冷めているので、ここのアトラクショ
ンは早々に切り上げ……。
「じゃ~あれに乗ろうよ~♪」
と言いながら、ミオンが指差す方を見ると……。
「キャ―――――ッ!!」
”ゴー―――”
ジェットコースターだった。
これには異世界組の面々も目を輝かせた……が、
約2名がその場で固まる。
1人はソフィー……。
もう一人は……ゲキ!
「わ、わたくしはここでお留守番しています」
「……」
とソフィーは震え、ゲキは、無言で両手を握り締め固まっていた。
仕方ないので、2人にはここでお留守番してもらうことにして、残りのメンバー
で”ジェットコースターに乗り込む。
俺の横にはシュイが座り、その後ろに、ミオンとローゼ、その後ろがシノブとア
イーシャさんでその後ろが、クレアさんとエドナさん。
”ゴトゴトゴトゴト”
”カタカタカタ”
ジェットコースターが昇り始また。
俺の隣に座ったシュイがご機嫌である。
(まぁ、ソフィーに邪魔されず、俺といちゃつけると思ったるんだろうけど……。
”カチャン”
”ゴー―――――”
「「「「「キャー!」」」」」
「ニャー!」
「お――――!」
そう叫びながらも、笑顔の俺達……だったが、高速で落ちるジェットコーシターが
、そのままの勢いで、てっぺんまで来た時だった。
”シュ――――”
一旦、てっぺんで止まったコースターが今度は、
”カチャン”
”ゴー―――――”
とバックで落ちだした。
「「「「キャー!」」」」
「ニャー!」
「お――――!」
「ギャァ~――――!」
(ん?1人質の違う悲鳴が……)
俺は落ちるジェットコースターの中で、その質の違う悲鳴の主である隣のシュイ
を覗くと……。
顔は青ざめ、硬直していた。
どうやら、シュイはこのコースターが、後ろ向きに落ちるのを想定してなかっ
たようだった。
(いやぁ~、さっき乗る前に、このコースターが、後ろ向きに落ちてるの見てなか
ったのかい?)
◇◇◇◇◇
ジェットコースターを降りる際、顔が青ざめ、放心状態のシュイを俺は抱きか
かえたまま、ソフィーとゲキの待つところまで戻ってくると、それを見たソフィ
ーがすごく怒っていたのには困った。
(だって……それが嫌ならソフィーも乗ればよかったのに)
って思ったが、それは口にしないのがセイア君の良いところ……。(笑)
シュイをベンチに寝かせ、怒っているソフィーを宥める。
その間に、アイーシャさんが濡れたハンカチをシュイの頭に載せ、エドナさんが
”風魔法”で風を起こして、シュイの額に置いた濡れたハンカチを冷やし続けた。
(ありがとうね2人とも)
シュイをこのままほっといて、アトラクションに向かう訳にもいかず、どうしよ
うかって考えていたら、
「じゃ、トイレ休憩にしない?」
「ソフィー、ローゼ、クレアさん達も一緒に行かない?」
「えっ、はい」
「うん」
「はいですにゃ」
ミオンがそう言いだし、女子メンバーに声を掛けると、ソフィーとローゼ、それに
アイーシャさんは、素直に返事をしたが……、クレアさん、エドナさんが少し戸惑
い言う。
「しかし……シュイさんが……」
「しばらく風を起こしていた方がぁ~」
その言葉にシノブが笑顔で言う。
「じゃ、僕がしばらくここで彼女を見ているから、Missリード、とMiss
エリスはトイレに行ってくるといいよ」
「でもぉ~風……」
とシノブに言いかけたエドナさんの言葉を遮って、鞄から扇子を出して満面の笑
みを浮かべシノブが言う。
「風ならこれで♪」
自慢げに扇子を広げ、それでベンチに横たわるシュイを仰いだ。
(あっそれ、木刀と一緒に京都で買ったお土産だよなシノブ)
「なら、行かせてもらいますねぇ」
それを見たエドナさんがそう言い、エドナさんクレアさんもミオン達とトイレに向かった。
「じゃ、俺とゲキも、ちょいトイレに行ってきていいかシノブ」
と俺がシノブに聞くとシノブは笑顔で、
「Yes offcourse ♪」
と右手で扇子を使いシュイを仰ぎながら、左手で親指を立て言う。
俺がゲキとトイレに向かおうとして、ハタと思いつきシノブの方に振り返り、
「あっ、ついでに皆の飲み物を買ってこようと思うが、シノブはないがいい?」
と俺の言葉にシノブが少し考えて、
「Mr.オオワシと同じコークでいいよ」
と答えた。
「うん、分かった」
俺はそう、答えてゲキと一緒にトイレに向かった。
◇◇◇◇◇
トイレを出た俺とゲキは、近くの売店(屋台?)皆の分の飲み物とついでにチュ
ロス(小麦粉に水や砂糖、塩を加え、オリーブオイルで揚げたシンプルな菓子)を
買ってシノブとシュイが待つベンチに戻ったが……。
2人の荷物(鞄)はそのままベンチの片隅に置いてあるが、そこに2人の姿はな
かった。
「あれ?」
取りあえず、買ったジュース、チュロスをベンチに置き、辺りを見回すが、2人
の姿は見当たらない。
俺は鞄から、スマホを取り出し、シノブに電話してみるが……。
”ツュルルルル、ツュルルルル、ツュルルルル……”
”ガチャ”
「あっ、もしもし……」
『お客様のおかけになった番号は、電波の届かない所に……』
「ん?」
仕方ないので、今度はシュイに電話してみる。
因みに、今回から『ブレイブカンパニー』名義で購入登録したスマホを異世界組
にも、持たせてあるんだ。
”ツュルルルル、ツュルルルル、ツュルルルル……”
”ガチャ”
『お客様のおかけになった番号は、電波の届かない所に……』
「ん!シュイもか……」
その時、ミオン達がトイレから戻って来た。
「セイア~!どうしたの?」
「あれ?シノブとシュイは?」
そう問うミオンに
「荷物はあるが、2人の姿が見当たらん」
と俺の代わりにゲキが答えた。
「もしかして誘拐では……」
とクレアさんが真面目な顔で言う。
「まさか~!異世界で幾らシュイがお姫様とは言え、こっちでは……」
と俺が言いかけた時、その言葉に”ハッ”として、
「「シノブの方か!」」
思わずゲキと言葉がはハモった。
「セイア電話してみれば?」
とミオンが、冷静な顔で俺に言うが、
「いや、さっき電話かけたが、2人共でないんだ」
「なら、あのアプリ使ってみればぁ?」
と焦る俺にミオンが言う。
「ああ、そうだな」
俺はミオンに言われ、アプリを起動し、GPSで2人の現在位置を見て見ると…
…」
現在地はここだった。
「アプリでは……」
と俺が言いかけた時、
「あっ!こんにゃ所に~」
ベンチ付近に壊されて捨てられた2人のスマホをアイーシャさ
んが見つけた。
「……ってことは……」
「「「誘拐!?」」」
と俺とミオン、ゲキが、お互いの顔を見合わせ、奇麗にハモった。
「兎に角、時田さんに連絡しなさいよ!」
とミオンに促され、俺は時田さんに電話しようとしたら、
「わたくしなら、ここにおりますよ大鷲様!」
「うっわぁ~!」
急に後ろから声を掛けられ、驚く俺に時田さんが冷静に言う。
「今、うちのパーマー君に、ここの施設のセキュリティーをハッキングさせて、防
犯カメラの映像をチェックさせております」
(元スナイパーだけあって、ホント気配消すの美味いよなこの人……)
シノブとシュイは誘拐されたんだろうか……。
もし、そうなら、一刻も早く助けなくちゃ。




