16話 ミオンスペシャル!?
「あれ?だれ」
と思わず口にした俺にミオンが、
「シノブよ♪」
と笑いながら俺に言う。
「へっ!シノブって……あの忍・メイトリックス?」
キョト~ンとする俺にミオンは笑いながら、
「後で説明するけど、あのこアメリカの民間軍事会社の御曹司だって」
「おっ御曹司!」
(シノブ……お前いったい何者なんだよ!)
と心で俺は叫んだ。
◇◇◇◇◇
シノブとゲキがお互いの背中を預け、魔物たちと対峙している。ゲキが、なにやら呼吸を整え精神統一をしてるようだ。小さい時い1度見たことがある。たぶん、あれは気を練ってるのだろう。
ゲキの体から陽炎のような物がユラユラ出ている。そして、目を見開いたと思うと刀にその陽炎が移っていく。
次の瞬間!、刀に陽炎が写ったのを確認するとゲキは、
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
叫ぶやいなや、刀を大きく斜めに振りかぶったかと思うと、刀を素早く振り下ろした。
すると刀から見えない何かが打ち出され、ダイヤウルフの1匹に当たったかと思うと、
「ギャ~イン」
とダイヤンウルフが声を上げた。
見るとダイヤンウルフの顔が斜めに切断され、その場にダイヤンウルフは倒れていた。
その時、ライフルのマガジンを交換していたシノブに、別の一匹のダイヤウルフが、迫って来る。シノブは焦ることもなく、素早くライフルの下に着けてあるグレネードランチャーを、口を開け迫って来るダイヤウルフの口目掛けて、発射した。
”ボシュ”と音を立てながら、打ち出されたグレネードランチャーがダイヤウルフの口の中に入と同時に爆発する。
”バ~ン”
グラネードランチャーを叩きこまれた、ダイヤウルフは顔を吹き飛ばされ、その場に崩れ落ちた。その様子を見ていた他のダイヤウルフがたじろぐ中、トロールがその巨体を揺らしながら、ゲキとシノブの方に巨大なハンマーを振り上げながら迫って来る。
「キュオーン!」
迫りくるトロールをしり目に、シノブはグラネードランチャーを素早く再装填し、ゲキはゆっくりと気を練り始めた。
「Go to hell!!]
「真空切り!」
シノブとゲキが、同時に気とグラネードランチャーを放つ。
”シュッパ””ボシュ”
放たれた、ゲキの気の刃はトロールが巨大なハンマーを持つ右手を切り落とし、シノブのグラネードランチャーは、トロールの胸を貫き爆発した。
「キュオーン!」
トロールはそう叫ぶと、少し苦し表情を浮かべたが……直ぐに、風穴の空いた胸と千切れた右腕を再生していく。
「God damn it!」
「何だと……」
シノブとゲキが再生するトロールを見て驚き呟く。
”ガハハ”と大声で高笑いし、
「へん!人間風情が……驚いたか!」
と自慢げに言うデロベ将軍。
トロールはあっという間に再生し、切り落とされた右手が握っていた巨大なハンマーを拾い上げると、乱暴にゲキとシノブに向けて何度も振り回した。
トロールの巨大なハンマーの攻撃を右や左にかわすゲキとシノブ。ゲキ達がトロールの攻撃をかわしてる隙を見て、丸い岩陰から1匹のダイヤウルフが飛び出し、俺達の方に迫って来る。
「やばい!」
と俺が叫んだとき、ミオンがそれに気付き、腰のレイピアを引きぬく。
が、かなりへっぴり腰だ。
「わんこう!来るなら来なさい、このミオン様が切り刻んであげるわ!」
威勢よく口では言っているが、その腰付はかなり、おっかなびっくりで、剣を出鱈目に振り回しているだけである。ダイヤウルフは、ミオンの手前で止まり、ミオンが振り回すレイピアの剣先を目で追っているようだ。
(ミオンが振り回すより、俺があのレイピアで闘った方が……)
と思い、俺が見かねてミオンに……
「その剣……」
と言いかけた時。”バキーン バリバリバリ”と音がして、ミオンが振り回すレイピアの剣先をダイヤウルフが銜えると、そのまま剣を噛み切り砕いてしまった。
「ぐるるるるるルルル~」
唸り声を上げるダイヤウルフ。
「ひゃ~!どうしよう」
折れた剣を見てうろたえるミオン。その時、トラックの運転席から、50絡みの紳士が降りてきて、いきなり、手に持っている狙撃用ライフルを構えたかと思うと、発砲し、
”バーン”
「キャイ~ン」
ミオンの前で唸り声を上げてるダイヤウルフの額を打ちぬいた。
そして俺とソフィーの方に近寄り、深部下と頭を下げて、
「申し遅れました。私はシノブおぼっちゃまのバトラーを務めさせて頂いております。時田と申します。どうぞ、お見知りおきを」
と丁寧に俺とソフィーに挨拶をして来た。
呆気に取られながらも、俺とソフィーは時田と名乗る紳士にに頭をさげ、
「どうも……はじめまして」
「はじめまして、この度は皆様には、お世話になっております。わたくしは、イーシャイナ王国第4皇女ソフィー=ラグナヴェールと申します……」
と言いかけたところで、ミオンが会話に割って入ってきた。
「はいはい、挨拶は後、あと」
お互い頭を下げている俺やソフィーと時田さんに手を叩きながら言う。
そう言うミオンに時田さんが近付き、なにかスプレー缶のような物を手渡し、
「これを下峠さまが、白鳥様に渡すように……と」
「えっ!……」
驚くミオンに時田さんは、深部下と一礼して、
「それでは、ここは白鳥様にお願いするとして、わたくしはおぼっちゃまと、下峠様を援護に参りますので、失礼いたします。」
と言って俺達の居る場所からシノブとゲキの居る方へ向かって行った。
「へっへぇ~ん」
とスプレー缶見つめ、ほくそ笑んでるミオン。
俺は、ミオンが手に取っているスプレー缶を見て直ぐに気が付いた。
(なるほど、いつも使い慣れてるものが一番だよね)
◇◇◇◇◇
ゲキとシノブ、それに時田さんが加わり、トロールと対峙してる中、またもや、別の丸い岩陰に隠れていた一匹のダイヤウルフが間隙をついて、大きく口を開け、こちらに迫って来る。
迫って来るダイヤウルフにミオンは、
「私の怖さを思い知らせてあげる。」
そう言って、構えるミオンの付き出したお尻が俺とぶつかってしまう。
「あっ!」
「わぁ~」
俺は不意にミオンのお尻で背中を押されたため、バランスを崩し、側にいたソフィーに勢いよく抱きついてしまった。
「きゃっ」
「わぁー」
そして、急に抱きつかれたソフィーが、俺を支えきれず俺とソフィーは抱きついたまま、その場に倒れると同時に俺とソフィーの顔が近付き……
”チュ”
俺とソフィーはお互い目を見開いたまま……キスをした。
(これが俺のファーストキス?)
「なっ、なにやってんのセイア」
驚き、ミオンが目を見開いて俺達言う。
しかし、ダイヤウルフが迫って来るので、ミオンはすぐさまダイヤウルフの方に向き直り、そして、ダイヤウルフの鼻っ面にスプレーを噴射した。
”シュー”
「キャン、キャン」
鼻っ面にスプレーを噴射されたダイヤウルフが、前足を鼻に当て、地面に転がりながら苦しんでいる。
ミオンは、苦しむダイヤウルフを見下げながら、
「どう、私特製の催涙スプレーは♪唐辛子の代わりにハバネロを使ってあるからね~威力は100倍よ。」
と胸を張り、満足げに言うミオン。
ダイヤウルフの苦しむ鳴き声を聞いて、時田さんはこちらを振り返り、苦しむダイヤウルフの額を狙撃用ライフルで狙い撃つ。
”バーン”
がっくり倒れるダイヤウルフを確認して、
「白鳥様お見事でございます。」
と親指を立て、ミオンに声を掛ける時田さん。
「えっへん!」
自慢げに胸を張るミオン。
◇◇◇◇◇
みんなが激闘をしている時、俺とソフィーは……不意にミオンに押され、バランスを崩しソフィーに抱きついた挙句、そのまま、キスをしてしまった。
「ごめん、ごめん……わざとじゃないんだ……」
顔を赤らめ、必死でソフィーに訴える俺。
「……」
ソフィーは何も言わず、顔を俺と同じく赤らめたまま、俯いている。
(えっ~怒ってるのかな?)
「本当!事故なんだよ!ミオン……ミオンが押したから……ミオンが悪いんだよ!ミオンが……」
俺はミオンの方を指で指し、必死でソフィーに訴える。
俺の言い訳に自分の名前が出て、ミオンが反応し俺達の方に振り、
こっちにつかつかっと来て、
「なんで、私のせいなのよ!だいたい、セイアがポケ~としてるからでしょ。悪いのはセイアなんだから!!」
と憤慨して俺に喰ってかかるミオン。
俺に激しく噛みつくミオンの言葉を聞いている時、ふと、俺の頭に文字が浮かぶ。
≪Energize completion≫
俺はその言葉に?マークを浮かべ、しばらくポカ~ンとしたが、
(ひょっとして……変身出来るかも)
と思い、ガミガミ俺に文句を言うミオンを手で制して、
「俺、変身出来るようになった……かも」
「?」
俺の言葉にさっきまでガミガミ言っていたミオンがポカ~ンとする。
黙ったまま、顔を赤らめ俯くソフィーとポカ~ンとするミオンに構わず、俺はすくっとその場を立ちあがり、声高らかに叫ぶ。
『GUY BRAVE!!』
すると俺の体は眩い光に包まれ……やがて光が消えると。
俺は、GUY BRAVEとなっていた。
「さぁ!反撃だ!」
ここから、反撃開始です。




