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165話 オブリヴィオンの情勢と新装備(後編)



「あくまでも現時点では、私の推測に過ぎませんが……」


と前置きをして、話を続けるニールさん。



「太古の昔にヘルゲート(地獄門)を開発した魔導士の名前が、ソンブル……ど

こかで聞き覚えがあるでしょう~」


「ん……あっ、あの時の!」


俺がニールさんの言葉に思わず声を上げると、ニールさんは黙って頷いた。


「そうです、例のドラキュラ屋敷で、セイア殿にオブリヴィオンのソンブル翁と名

乗った、人物と同じ名前です」


「しかし、俺が見たソンブルってのは確かに老人だったけど……どう見ても、エル

フ族のような長寿命な種族には、見えなかったかったけどな……」


と俺が言うとニールさんは少し笑って、


「いえいえ、我らエルフ族の寿命が長いと言えども、平均で300年……長生きし

てもせいぜい500年足らずですよ」


「じゃ、不老不死の秘薬でも飲んだんじゃない」


ニールさんの話にミオンが言った。


「はい、私が先ほどヘルゲート(地獄門)を開発した魔導士と言いましたが、精霊

のトレント達の中には、そのソンブルは錬金術にも長けていて、ホムンクルスを作

っていたと言う者もおりますから、ひょっとしたら、不老不死の秘薬も完成させて

いたのかもしれませんねぇ」


とミオンの疑問に答えるニールさん。


「……そんなら、何かその大昔の魔導士ちゅう奴が、前の(300年前)魔王と勇

者の戦いのとき、魔王に付いたっちゅう訳かいな」


ニールさんの話を聞いていた りゅうじいちゃんが、不意に言い出すと、ニールさ

んは少し苦笑いしながら首を横に振り、


「いえいえ、ソンブルが裏切ったと言うより……」


と言いかけて、何やら言葉を探し、考えたのちに、


「実は、ソンブルだけでなく……太古の昔に現れた勇者の名前が、”アロガント”

そして、300年前の魔王の名前が、”アロガン”……似ていると思いませんか?」


と言う。


「ほんに、同じようにわしには聞こえるが……」


(おんなじではないけどね……確かに似てるよね)


じいちゃんの言葉に俺が心でそう呟いていると、横からミオンが言う。


「ん?ってことは初代勇者→魔王……にしてもそのアロガンも不老不死!?」


「ん――Mr.ラーキンの言い方ではそうなるねぇ」


ミオンの言葉にシノブがそう答えた。


「あくまでも、精霊のトレント達の伝承ですし、記憶もトレントによってまちまち

ですから、はっきり断定はできませんが……」


そう付け加えるニールさんに、不意にミオンが思いついたように聞いた。


「ねぇ、ところで2番目の勇者(300年前)……って何て名前だったのニールさ

ん?」


「えっ、あ……」


不意に聞かれたのでニールさんは、しばらく考えて


「ジョージ=ラグナヴェールです」


「えっ、ソフィーのご先祖様!?」


ニールさんの答えに驚き言う俺。


「確か第一夫人の籍に入ってその名前になったと思います」


そう付け加えるニールさんに、またもやミオンが質問する。


「その名前になったってことは……元々の名前は?。」


「え……」


と考えこむニールさんに変わってソフィーが答えた。


「タロウ・ヤマダです」


「「「「え――――!!山田太郎!!」」」」


即答するソフィーに俺とミオン、ゲキ、シノブが驚きそう叫んだ。


(滅茶苦茶、ジャパニーズな名前じゃん!)




◇◇◇◇◇





 オブリヴィオンの正体については、推測の域を越えない……が、一応筋は通る。


 しかし、奴らの居場所は依然わからないまま……。


 そこで、これまで俺達が奴らに遭遇ってか襲われた場所を考えてみた。


「一番最初は、俺がこの世界に召喚された場所だが……アルブ王国とイーシャイナ

王国の間の街道……このあたりかな?」


モニターに映るこの世界の地図を、レーザーポインターで指示しながら俺が言うと、


「ちょっと待ってマークする」


ミオンがパソコンを操作して、俺がレーザーポインターで示した場所に×を付けた。


「次がワームとゴブリンの戦闘後のここ……って、ここの基地から近いよな」


と言いながらレーザーポインターで指示すと、先程と同じようにミオンが地図に×

を付ける。


「その次が……イーシャイナ王国内のここに……電風の丘ダンジョン手前のここ

か……」


そう言いながら次々に奴らとの遭遇地点に×を付けて行くと……。


「なんだか地上を移動中に襲われてないか!」


とゲキが言い出した。


「ノンノン……Mr.シモトウゲ」


と人差し指を立ててそれを横に振りながら言うシノブ。


「海底で一度、襲われているぞ」


そのシノブに対してゲキは首を振り答える。


「しかし、ミスリルロード、その後テネアでクラーケン、そして、俺達が乗る船を

襲いった後のハーフェン港の街での事件を含めて考えると、奴らはその時点で俺達

の足取りを掴んでいたと、考えられないか?」


「ふむ……」


ゲキ言葉にシノブが顎に手をあってて考え込んだ。


「そうねゲキが言う通り、その後ウクラハンバ王国の地下都市では襲われなかった

し……」


そうミオンがゲキの意見に同調するとシノブは少し不服そうに言い返した。


「But!地上に居る時襲われると言うのなら、アルブ王国やデンスアーラ共和国

で襲われないのはどういうことだい?Missシラトリ」


「それは……」


とシノブの言葉にミオンが言い淀んでいると、


「それは、恐らく木……森が原因だと思います」


とニールさんが代わりに答えた。


「Forest!?……いったいどういうことだいMr.ラーキン」


とシノブがニールさんに聞き返すと、


「木には元々魔力を溜める性質があります……当然、木の集合体の森なら尚更で、

魔力を外に出しません」


「ほう、なるほど……と言うことはやはりラーキン様は、奴らは……ラグナヴェー

ル様の魔力を感知して、我々の居場所を見つけでしているとお考えですか?」


と先ほどから、静観していた時田さんがニールさんに言う。


「はい……」


そう言って頷くニールさんが更に言葉を続ける。


「ですから、その対策を講じるために、姫……いえ皆さんには、しばらくセイア様

達の世界で待機して、いただきたいのですが……」


(元の世界に戻るのはいいけど……シュイやローゼはどうしよう)


ニールさんの言葉に俺は頭を悩ませるのであった。




◇◇◇◇◇





 シュイはいいんだけど……ローズが俺達の世界に行くのに難色を示す。


 彼女曰く、「行くのは良いんだけど、魔法や武器が禁止と言われると……」って

言いだした。


(確かに、この世界で丸腰で街中を歩くのは自殺行為だもんね)


 そこで、ローゼの不安を取り除く良い物があるとニールさんが言いだして、俺

、ソフィー、ミオン3人を除くメンバーにある物を配りだした。


 ニールさんが、マジックボックスの原理を応用して制作した”クロウズの腕輪”。


 左の二の腕に取りつける腕輪で、戦闘用の装備を装着したまま、自分で決めた

”言葉”を登録すると現在纏っている装備品すべて(剣や弓矢など含む)が腕輪

の中に吸い込まれる。そして再び自分の決めた”言葉”を言いながら腕輪に触れる

と、再び腕輪からその装備品が出て来て装着されると言う代物。


 ただ、今ここで着ている装備品を登録してしまうと……全てが腕輪の中に……

に入ってしまう……つまり真っ裸になるので、コントロールルーム奥の男女に分

れたロッカーで登録してもらっている。


 一旦、登録をしてしまえば、普段何を着ていようが、装着の時点でその服と装

備品が入れ変わるだけなので、普段着ている服は登録の必要はないんだって。


 俺、ミオン、ソフィーが外されたのは、俺は変身できるし、ミオンの電空ブーメ

ランも実体化したり消したりできるので、今回の装備の対象から外され、ソフィー

は元々スティックのみだから、俺達の世界で武器を持っているとは思われない……

のが理由なんだ。



これがあれば、俺達の世界でいざ何かあった時も、瞬時に自分の獲物を出せる訳

で、それを聞いたローゼは、俺達の世界に行くことに賛成してくれた。


(それは良いとして……学校や下宿先はどうしようか)




◇◇◇◇◇





 学校については、時田さんがすでにローゼとシュイがメンバーに加わった時点で

手を打っていたって事だった。


(流石、腕利きの執事だよねぇ)


 シュイの下宿先は、ミオンの家に決まったが、ローゼの下宿先は……どうしよう

……うちはソフィーで手一杯だし……やはりシノブかゲキの所に……って考えてい

たら、ミオンが徐に自信たっぷりで、「大丈夫任せておいて」胸を叩いて俺に言う。


(うん……任せるしかないんだけどね……でもミオンのその自信に満ちた顔を見る

と……何か不安)


そう思う俺であった。



ここで第3章は終了です。

次回幕間2を挟んで第4章突入です。

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