161話 むぎゅって何よ!
8月の終わりごろと言っても、俺達の世界同様、この異世界でもまだまだ外の気
温は高い……が、砦(ブレイブ基地内)は温度が一定に保たれているので快適だ。
(まぁ、りゅうじいちゃんの趣味に付き合うとするか)
”ピン”
エレベーターの扉が開き、俺は目の前にある建物を見て、驚きの声をあげた。
「なんじゃこれ!」
「なんじゃって、セイアあれは闘技場やないか」
と平然と言う りゅうじいちゃん
「でっ……デカイ!」
と俺がじいちゃんに言うと、
「そらなんじゃ、お前の武器を放っても耐えれるように……とかいっとたでぇ」
と言う りゅうじいちゃん。
(ハハハぁ~確かに俺が暴れても大丈夫そうだわ)
と心で引きつる俺であった。
見た目、おおよそ東京ドームの1.5倍はあろうか……。
金属製のドームに覆われ……って、これ完全にドーム球場だよなぁ。
りゅうじいちゃんの話だと、既に、ゲキ、クレアさん、エドナさんの3人は
、朝早くからここで模擬戦をしてるらしい。
(真面目だねぇ~3人とも)
で、
じいちゃんのお目当ての建物はその横にある……。
(ってさ、これ、まんまなんすけどぉ~)
大浴場ならぬ……昭和の銭湯!
って感じの建物が立っていた。
巨大ドーム球場横に昭和の銭湯……。
(違和感って言うか……ここまで来たら逆にシュールだね)
◇◇◇◇◇
銭湯の のれんをくぐり、下駄箱に靴を預け、そして、木造の引き戸を開け誰もい
ない番台の横を通り抜け脱衣所で服を脱ぐ。
”ガラガラガラ”
脱衣所から引き戸を開け、風呂場に入ると……。
大きな湯船の上の壁にはお決まりの富士山の絵が書いてあった。
(やっぱここ殆ど、じいちゃんの趣味で作ったしょ)
洗い場には10人が一度に体が洗えるようになっていて、その奥に10人が一度
に浸かれる湯船と、その左右には3人ぐらい浸かれる電気風呂とジャグジーがあっ
た。
早速洗い場で、じいちゃんと2人並んで体を洗った。
「しっかり耳の裏も洗うやでぇ~」
と体を洗う俺に声を掛ける じいちゃん。
(わかってるって……もう俺、子供じゃないんだからねぇ)
と心で思いつつも笑顔で
「はぁ~い」
といい孫を演じる俺であった。
◇◇◇◇◇
”ザブ~ン”
「あぁ~ええ湯やな~」
と湯船につかり言うじいちゃん。
「そうだね」
俺も久しぶりに大きな湯船につかりリラックスする。
「ふぅ~」
自然と声が漏れる。
しばらくすると風呂場の引き戸が
”ガラガラ~”
って開いて……。
(誰だろう?……湯気でよく見えない)
と思いながら目を凝らすと、
「勇者様……セイア様~」
と声がして、チャイナドレスを着た……シュイ!?が入って来た。
俺は思わず持っていたタオルで股間を隠す。
「なっ何なんだよ!どうしたんだよシュイ!」
俺が少し顔を赤らめながらシュイに言うと、
「わたくしもご一緒しても?」
って言ってきたので、俺は即座に
「駄目ダメだめ!シュイは女の子なんだから隣の女湯に入れよ!」
と俺が強めに言うと……シュイは少し困ったような顔をして、
「でも……」
そんなシュイに俺は半ば怒ったように
「でも……とかじゃなくて!」
って言いかけたら、横で一緒に湯船に浸かっていた りゅうじいちゃんが急に声を
上げた。
「あっ!そうじゃ、忘れとったわぁ~」
俺はその様子に驚きじいちゃんに聞く。
「何を忘れてたの?りゅうじいちゃん!」
「いや何、お前達がここに帰ってくるまで、わしゃぁ1人だったんで、もったいな
いから女湯のお湯止めとったわ~」
その言葉を聞いて俺は絶句して思わず
「はいぃ~?!」
って聞き返すのだった。
◇◇◇◇◇
「じゃぁさ、もう俺達はあがるから、その後シュイが入ればいい」
と俺がシュイに言うと、
「いっしょがいいです……」
とジト目で俺を見つめてくる。
(そんな目をしても……ダ~メェ~)
って思っていたら、シュイも俺に通用しないと思ったのか、今度は、りゅうじい
ちゃんに目を潤ませながら見つめた。
(そんな目しても、じいちゃんには効かないよ~)
と思ってたら、シュイの訴えるようなウルウル目付きに見つめられた りゅうじ
いちゃんが、
「ほな、はいったらええがな」
(えっ!元教師とも思えない発言!)
りゅうじいちゃんの言葉に絶句する俺。
「うわぁ~うれしい~ありがとうございますおじい様~♪」
はしゃぐシュイ。
(いやいや……いかんでしょ)
そう俺が思った時、りゅうじいちゃんがシュイに一言付け加える。
「但し!脱衣所に備えてあるバスタオルを体に巻いて入りなさい!」
「かしこまりましたぁ~ですわ♪」
◇◇◇◇◇
”ガラガラ~”
ルンルンでシュイは風呂場に入って来て、そのまま俺と りゅうじいちゃんが
入っている湯船にそのまま浸かろうとして、 りゅうじいちゃんに咎められた。
「いかん!ちゃんと体洗ってから浸からなあかん!」
と洗い場を指差した。
「はぁ~い♪」
りゅうじいちゃんに言われ湯船の前でターンをして洗い場に向かった。
俺が腰にタオルを巻いて、洗い場の使い方を教えている間に、りゅうじいちゃ
んは電気風呂へと移動していた。
(電気風呂苦手なんだよねぇ~)
ってことで、シュイに洗い場の説明をしてから、俺は隣のジャグジーに入った。
「ふぅ~」
心地よい泡の刺激に浸っていると……。
「うんもっ~洗いにくいですわ~」
ってシュイの声が洗い場から聞こえて来た。
俺が何気に洗い場のシュイの方を見ると……。
体を洗うのに、体に巻き付けたバスタオルが、体を洗うのに邪魔だったみた
いで、シュイは体に巻き付けたバスタオルを剥がし、洗いだしたんだ。
残念ながら、洗い場は脱衣所側に向いているので、ここからはシュイの露わな
姿は拝めないが、見えないからこそエロイ。
前回、夜の奇襲の時はシュイの行動を予測し構えた居たので、シュイの裸を見て
も反応はしなかった……が、今回はお風呂に浸かりリラックスモード。
しかも、心地よい泡の刺激を受け……。
(あっ!ヤバイヤバイ)
そう思い自身の気をそらし、事なきを得る。
◇◇◇◇◇
体を洗い終わったシュイがバスタオルを体にまき直し、俺達の所にやって来た。
「セアイ様、おじい様これでよろしい?」
と明るく聞いてくるので、俺とじいちゃんは笑顔で頷く。
そして、三人で!?
(なんで真ん中にシュイを挟むのじいちゃん?)
一番大きな浴槽に浸かる。
心なしか、りゅうじいちゃんの鼻の下が伸びているように思えるのは気のせいか
な?
「セイア様ぁ~」
って甘い声を出しながら後ろから俺に抱き付くシュイ。
当然俺の背中には……その大きい……胸が当たる。
”むぎゅ”
(あぁ~柔らかい~……って、いかんいかん!)
俺の体に変化が現れそうになり、慌ててシュイから離れる。
「シュイ、少し離れてくれない?」
「どうしてですか?」
シュイから離れた俺にそう聞き返す。
「いや、その”お”……」
と俺が言いかけるとシュイはわざとらしい笑顔で聞き返す。
「お?なんです?」
(こいつ……確信犯だな)
そう思っていると、りゅうじいちゃんがシュイに言う。
「セイアは照れとるんやぁ~……何なら代わりにわしがモミモミしたろかぁ~」
と冗談ぽく言ったんだけどね。
(たぶん本気で言って無いと俺は信じる(きっぱり))
「はい、どうぞ、おじい様!」
って言いながら りゅうじいちゃんの方に胸を突き出すシュイ。
その堂々たる態度に りゅうじいちゃんは固まった。
そして、
「わしゃぁ~もう上がるわ」
って言って一直線に脱衣所に向かうのだった。
◇◇◇◇◇
”グビグビ”
「「ぷはぁ~」」
「ぷ……はぁ~あ?」
腰に手を当て、りゅうじいちゃんは『牛乳』俺は『コーヒー牛乳』を飲み息を吐
く俺達を見て、シュイも真似る。
因みにシュイは俺と同じ『コーヒー牛乳』を飲んでいる。
何処から持ってきたのか分からないが、昭和の銭湯によくあった引き戸式の冷蔵
庫の中にあったのを飲んでるわけだが、冷蔵庫の中には、『牛乳』『コーヒー
牛乳』の他に『フルーツ牛乳』ってのもあった。
「風呂上がりの牛乳は、最高やなぁ~」
と言う りゅうじいちゃんに俺は、
「いや、コーヒー牛乳もいけるよ じいちゃん」
と言い返した。
その会話にシュイが口を挿む。
「コーヒーと言うのはもっと苦いものだと思ってましたわ」
その言葉を聞いた りゅうじいちゃんは、こうシュイに言う。
「あ~ん、コーヒーとコーヒー牛乳は別もんやでぇ~シュイちゃん」
その言葉を聞いてシュイが首を傾げ聞く。
「別物……ですか?」
「ああ、せやで、コーヒー牛乳ってのはコーヒー風味の牛乳……って、せやな……
言わば、おこちゃま用のコーヒーとでも言うのかのぉ~」
と笑いながらシュイにウインクした。
シュイは、りゅうじいちゃんにそう言われ俺を見てこう言った。
「セイア様は、おこちゃまですか?」
その言葉に飲んでいたコーヒー牛乳を吹き出しそうになった俺。
「んっいや……っ」
俺がそう言いかけた時、
”ガラガラガラ”
って銭湯(一応大浴場)の入り口の扉が開き……。
「あ――――っ!シュイこんなところに居た!!」
とミオンの声がした。
俺が入り口の方を見ると、そこにはミオンとソフィーが鬼のような形相で立
っている。
「探しましたよカカさん!」
そうソフィーが言うとシュイはプイっと横を向き、
「何も、あなたに探してもらう筋合いはございませんことよ」
とソフィーに言い放つシュイ。
「私はあるよねぇ~シュイ!」
と横からミオンが言う。
「あっ、その、散歩いたしておりまして……その、セイア様をお見かけしたも
のですから……」
(要するに俺とじいちゃんの後をつけて来たって事か)
「見かけて……ふん、で、何で一緒にお風呂場に居るのよ~しかも、ここ男風
呂だよぉ~シュイ」
そう怒りながらシュイを攻めるミオンに
「いや、今女風呂お湯……抜いとるさかいな」
と、りゅうじいちゃんが口走ったら、
「あ~ん、何、女風呂お湯が抜いてあるからって……まさか、シュイ、セイア
達と一緒にお風呂入ったんじゃないよねぇ」
と言うミオンに笑顔で即答するシュイ。
「はい♪ご一緒しましたのわたくし」
「「えっ!!」」
そう言いて一瞬、絶句するミオンとソフィー。
その2人にさらにシュイが言う。
「ちゃんと許可をいただいて入っておりますのよミオン様~♪」
「「許可ぁ―――!!」」
更に驚くミオンとソフィーにシュイが俺の方を向いて
「ねぇ~セイア様~♪」
って言ってやんの。
(やめてくれ、そんな言い方したら、まるで俺がOKしたみたいに聞こえるじ
ゃないかシュイ)
案の定、ミオンが俺の方を向いて言う。
「どう言うことかなセ・イ・アさん!」
俺を睨むミオンに慌てて、
「いや!俺じゃないよ、りゅうじいちゃんだよ!」
「なぁ~じいちゃん!」
って俺が振り返ると、すでに りゅうじいちゃんの姿はなかった。
(あっ、くそっ、バックレやがったな)
そして、言い訳しようとミオンの方に振り返ったら、俺の顔の目の前にミオン
の顔があった。
「あっ、いや、その」
俺が必死で事情を説明しようとすると、俺の目の前に顔を近づけてるミオンが、
「まさか、裸で入っったんじゃ……」
「いや、違う違う!ちゃんとバスタオル巻いてたよ!」
と言うと、かなり疑い深い顔でミオンが言う。
「ほんとぉ~?かしら」
その言葉に俺が小刻みに頷くと、
「なら、いいんだけど……」
と俺から顔を離しかけた。
(ふぅ~危ねぇ、あぶねぇ~)
が、フェイントでまた顔を近づけ、
「オッパイ触った?」
と聞く。
俺は首を横に振りながら思わず口走る。
「いや、”むぎゅ”だけ……」
「あぁ~ん!セイア君それどう言うことかなぁ」
(しまった!)
銭湯……と言うかお風呂上りに飲むものは小さいときは森永マミーでした。
小学校に上がるころにはコーヒー牛乳でたまにフルーツ牛乳を飲んだりしてました。
良くお風呂上りには『コーヒー牛乳』派と『フルーツ牛乳』の論争が昔ありましたが
豆ごはんはどちらでもOKです。




