15話 Charge up !
「やばい!やばいぞ俺!」
俺は意を決し、Unicornに向かってこう言った。
「こうなれば聖獣合体だ!こいUnicorn!」
≪Charge up Kentauros≫
頭の中のカーソルを選択する。
すると俺は、自分の意思とは関係なくUnicornに向かって走りだしていた。
Unicornも俺の方に向かって走って来る。
そして、俺とUnicornがお互い迫る中、俺は自動でジャンプする。Unicornは空中にジャンプした俺目掛け額の角を飛ばす。
Unicornの角はみるみるでかくなり、騎士が使うランス(細長い円錐の形にヴァンプレイトと呼ばれる大きな笠状の鍔がついた形状のもの)に変わる。俺はそれを受け取ると、また自動で空中で体をひねり、向きを変えそのままUnicornの方に落下していく。
Unicornと落下する俺が交錯する寸善、Unicornの頭が胴体に収納され、俺の下半身が首のなくなったUnicornの胴体と合体する。
「完成!Kentauros!」
と俺の意思に反し自動的にこの恥ずかしいセリフを叫んでいた。
(シ……シノブの野郎……こんな設定にしてたのか)
俺はすぐさまソフィーの居る魔法円の側に陣取る。
「照準セット!」
俺がそう叫ぶと、視界にある6つのカーソルが、迫り来るダイヤウルフとトロールのうち、一番俺の近くにいる5体のダイヤウルフと1体のトロールに合わさり色が赤くなる。それと同時に、Kentaurosの背中(Unicornの背中、丁度馬の鞍を載せるあたり)の両サイドがスライドして、左右それぞれ3つづつ空いた穴が露わになる。
「ミサイル発射!」
”ボシュ!ボシュ!”と音を上げ、煙をまきちらしながら、6つの穴から次々とミサイルが、上空に目掛け発射されて行く。
上空に上がったミサイルは向きを変え、俺がロックオンした目標に次々と向かって行った。
「「「「「ギャイン!」」」」」
「キュオーン!」
5体のダイヤウルフと1体のトロールは頭をふっ飛ばされ、その場に崩れ落ちる。
「なっ、なんだと!」
一瞬の事に何が起こったか理解できない様子のデロベ将軍。
しかし、頭を撃ち抜かれたはずのトロールはみるみる頭を再生し立ちあがった。
立ちあがったのだが……トロールの様子が少し妙だ。
周りをキョロキョロ見渡したかと思うと、デロベ将軍を見付け、踵をかえすと猛然とデロベ将軍に向かって持っていた大きなハンマーを振り上げ、迫って行った。
「キュオーン!」
「しまった!コントロールが解けたか!」
そうデロベ将軍が言うと、背中の剣を抜き、迫って来るトロールを一刀両断に真っ二つにした。そしてすぐさま、切断面に額の蛇から火を噴き焼いて行く。
「ふん!役立たずめ」
デロベ将軍は、倒れて動かなくなったトロールの死体にそう言葉を吐いた。
「へぇ~、そうやって倒すんだ」
その様子を見ていた俺がそう言うと、
「ゲっ!」
驚き、うろたえるデロベ将軍。
俺はすぐさま左腕を”フレイムアーム”に変え、右手のランスを1体のトロールに向けた。
そして、ランス用の照準カーソルをトロールに合わせ、ロックオン。と同時に、ミサイルのカーソルをその周りにいるダイヤウルフに合わせこれもロックオンにして
「ブースドワイヤーナックル!ミサイル発射!」
ミサイルとランスを同時に飛ばした。
”ボシュ、ボシュ”と音を上げながらミサイルが舞い上がり同時に”バシュ”っとランスを握った右手がトロール目掛けて飛んで行った。ミサイルが迫ってきて逃げ惑うダイヤンウルフ。
中には、点在する丸い岩に身を隠す者もいたが……
ミサイルには追尾装置が付いているので、隠れたり、逃げ惑ったりしてるダイヤウルフに、次々に着弾する。
「「「「「「ギャイン!」」」」」」
その間に俺の放った右手が握っているランスが、巨大なハンマーを振り上げ構えているトロールの頭を打ちぬいた。
”バッキーン”と大きい音と共にトロールの頭が吹っ飛んだ。
俺はすぐさま、左腕を頭を撃ち抜かれたトロールに向け火炎を放つ。傷口を焼かれたトロールは、再生が出来ずにそのまま倒れてしまった。
「なるほど、傷口を焼かれると再生できないんだ~」
俺は関心にながらそう言う。
「おにょれ、オニョレ!!」
地団太を踏みながら悔しがるデロベ将軍。
俺はすぐさま左腕をエレクトリーアームに変え、右手に持ったランスをデロベ将軍に向け照準をロックオンする。
そして、左腕で右腕を掴み電撃を流すと同時に、ランスを握っている右手を飛ばした。
「エレクロリック ブースド!ワイヤーナックル!」
稲妻を引きずりながら、ランスを握った右手がデロベ将軍に向かって行く。それを見たデロベ将軍が剣でランスを弾こうとして、デロベ将軍の剣がランスに接触した瞬間!。デロベ将軍の体に電流が流れる。
”ビリビリビリ”
「ぎょぇ~!!!痺れるるるる~」
大量の電気を浴びてデロベ将軍の体が硬直して、やがてその場に崩れた。
が、その時!俺の体にも異変が……
≪Empty≫
頭に文字が赤く点滅したかと思うと、体の力が急に入らなくなり、俺はその場に倒れる。そしていつの間にか、俺はGUY BRAVEの姿ではなく、もとの大鷲青空になっていた。
俺は自分の姿を確認して、
「こんな時に……エネルギー切れ!」
俺はどうしていいかわからず混乱していると、デロベ将軍がニヤリと笑いながら、自分の持ってる剣を杖代わりにゆっくりと立ち上がり、俺の方に近づいてきた。
「小僧!手こずらせよって……」
俺の前まで来たデロベ将軍は、俺を見降ろし、
「死ねや~!」
と言いながら持っていた剣を大きく振りかぶり俺の頭めがけて降り下ろそうとした。
「だめか!ここまでか」
◇◇◇◇◇
その時、俺の後ろにあった魔法円が強い光を上空に放った。
「なっなに!」
デロベ将軍は驚き振り返って、上空を見上げる。俺もつられて顔を上げ、上空を見上げると、上空には以前見たことがある例の雲のようなモヤモヤが現れていた。
そのモヤモヤから突然大きな物体が落下してくる。
”ドスン!”
「キャイン!!」
その大きな物体は、良く見ると軍用トラックのようだ。トラックはモヤモヤから落下し、真下にいたダイヤウルフの上に”ドスン”と落ち、ダイヤウルフを下敷きにしたかと思うとそのままの勢いで砂煙を上げながら、俺に剣を振るおうとしていたデロベ将軍を跳ね飛ばし、俺の前で止まった。
「ぎょえ~!」
デロベ将軍は数メートル飛ばされ、地面に叩きつけられた。トラックの下敷きになったダイヤウルフも骨を砕かれたのか、ピクリとも動かない。俺の前に止まったトラックの荷台の後ろから女が勢いよく飛び出してきた。
「白鳥美音 参上!」
高らかにそう叫び、赤い革のビキニに金属の装飾が付いて、薄い透けるマントをはおったミオンが胸の前で腕を組んでいた。
「ミっ……ミオン!」
と思わず俺が口にするとミオンは俺の方に振り返り、
「あら、セイア……なんで変身解いてるの?」
と聞いてきた。
「いや……エネルギー切れかと……」
そう小さな声で俺が答えると、ミオンは少し呆れ顔で、
「はぁっ!エネルギー切れって……もう!肝心な時に!!」
俺がミオンに怒られてると、心配そうな目つきでソフィーが俺を見つめ、
「あの~……セイア様……こちらは……」
と恐る恐る聞いてきた。
「いや、こいつは……同じ、まん研の……まぁ幼馴染の白鳥美音だ。」
と紹介すると、ソフィーは改まってお辞儀をして、
「はじめまして、イーシャイナ王国第4皇女ソフィー=ラグナヴェールと申します。この度はセイア様に助けていただきまして……」
丁寧にソフィーが自己紹介している時に、先ほどトラックに跳ね飛ばされたデロベ将軍が剣を杖代わりにようやっと立ちあがり、
「お前ら、なんなんだ!!」
と俺達に向かって言ってきた。
「だから、さっき言ったでしょ。」
ミオンは胸を張り再び胸の前で腕を組んで、
「正義の味方、白鳥美音参上!」
と、どや顔でデロベ将軍に言い放つ。
「えぇ~いい、どうせ勇者は使いもんにならんのだ!一気に片付けろ!」
とデロベ将軍は、残りのダイヤウルフとトロールに言い放った。
一斉にこちらに迫って来るダイヤウルフ17匹とトロール1体。
その時、またやもやトラックの荷台の後ろから、素早く飛び出す人影が……飛び出した人影は、一番近くに迫ったダイヤウルフに背中の長い刀を抜いて……
いや、抜くと言うより、背中の刀の鞘を割って出てきたってほうが正しいかも。
「秘儀!一刀両断!」
そう叫ぶと飛びかかってきたダイヤウルフを真っ二つに切断した。
「ギャイン!」
その様子を見ていた残りのダイヤウルフとトロールの足がピタリと止まった。
「なっなんだと、生身の人間ふぜいが……」
驚愕するデロベ将軍。
黒ずくめで頭巾と腕、そして胸元は黒いチェーンメイルの出で立ちで、2m位の大きな刀を手に持ち、腰の左右に小太刀を二本差して、まるで武士と言うより忍者。その男は、刀を水平に構えデロベ将軍に向かってこう言った。
「下峠 撃!推参」
「えぇ~ぃ!怯むなぁ~!たかが人間1匹!やってしまえぇ!」
激怒したデロベ将軍は、ダイヤウルフやトロールに嗾ける。
嗾けられたトロールとダイヤウルフのうち2匹のダイヤウルフがゲキを襲おうと、身構えた時、またもやトラックの荷台後ろ部分から地面へと飛びおりる男がいた。男は、トラックから飛び降りると、持っていたライフルでその2匹のダイヤウルフ目掛けて射撃した。
”ダダダダダッ”
連続で撃たれた弾丸はその2匹のダイヤウルフの頭を射ぬいていた。ガクっと声も上げずに崩れ落ちるダイヤウルフ2匹。
男はデロベ将軍の方に向き、
「シノブ・メイトリックス、kenzan~!(見参)」
全身迷彩の軍服に身を包み、背中にはハードケースのような鞄を背負って、手には少し変わったライフルを持っている。
「あれ?だれ」
仲間の救援です。




