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149話 どこでもミラー

 


 早めに起床して、部屋で朝食をとることにした。


 理由は、この世界ではあまり朝ごはんの習慣が根付いておらず、朝からやってい

るレストランや喫茶店もないので、部屋で食べることにした。


 今朝の朝ごはんは、ベーグルにハムとチーズと葉物野菜が少々。


 何時ものように、マジックボックスから、出来立てのベーグルを出し、コーヒー

と一緒に頂いた。


 それから出発の用意をして、朝8時にはギルド支部を出発し、途中、飛行艇を止

めてある港町のガーヴァニを通り越して、一路、アイーシャさんの実家へと向かっ

た。


「着きましたにゃ」


アイーシャさんがブレイブ・ロボゴーレムの肩から飛び降り言た。


 森の入り口にその建物はあった。


 小さな2階建てのロッジとそれに隣接した、平屋の木造の建物……。


 うちの、とうさんがまだ小さいころ見たことがあると言う、昭和の佇まいがあり

そうな木造の平屋建ての教室風の建物。


(たぶん小さな2階建ての方が住まいで、大きい平屋の方が工房何だろうな)


 そう思いながら、俺達はその小さな2階建てのロッジ風の建物の前で、それぞれ

乗るバイクや馬車それにブレイブ・ロボゴーレムを停めた。


 その間に家の玄関の前に立ったアイーシャさんが、


「にゃ~」


と突然玄関ドアの前で鳴くと、


「にゃ~」


と部屋の中から鳴き声が聞こえたと同時にドアが開いた。


 因みに、これは、猫人族の独特の家族の判別法らしい。


 一見、同じ鳴き声に俺達は感じるが、猫人族にはこの鳴き声で、他人と家族を判

別できるらしい。


「あら、お帰り~ってどうしたのアイーシャ?こないだ上級騎士になったんじゃな

かったのかい?」


「うん、なったよお母さん」


突然のアイーシャさんの帰省に驚き聞く、アイーシャさんのお母さんのエカテリー

ナさん。


「今日はお父さんにお仕事の依頼をしたい人を連れて来たにゃ」


「あら、そうなの」


と少し驚いた表情のエカテリーナさん。


「てっきり、アイーシャの事だから、何かやらかして、騎士を首になったかと思っ

たわ」


「何もやらかしてないですにゃ!ねぇ~姫様♪」


とソフィーの方を向き、にっこい笑って言うアイーシャさんに、ソフィーも微笑み

ながら、玄関にいるエカテリーナさんに近寄り言った。


「ええ、アイーシャはよくやってくれてますよ」


その言葉を聞いて、エカテリーナさんは腰を抜かす様に驚き、


「えっ~!?ひ・ひ・姫様~!」


そしていきなり床に座っ下げる。


「いえいえ、エカテリーナさん今は私は姫の身分でなく、冒険者と言うか勇者様の

お供で参っておりますので、お顔を上げてください。」


と言ったのだが、ソフィーの”勇者様のお供”と言う言葉を聞き、


「ゆ・ゆ勇者様~!?」


驚き声を上げるエカテリーナさん。


「姫様にあ・あら在らせられましてはいつもアイーシャがお世話になってお・お

り……」


ひたすら、恐縮し顔を上げないエカテリーナさん。


「お顔をお上げください」


とソフィーがエカテリーナさんの前にしゃがみ込み言う。


「いいえ、ご・ごもったいない」


の繰り返し、


 この後、10分ぐらいこの状態が続いた。





◇◇◇◇◇





 ようやく、時田さんやニールさんが説得して、家の中に入れてもらった。


 人数が多いので、食卓テーブルとキッチンと一つながりになった居間のソファ

ーに分れ、エカテリーナさんが入れてくれたお茶を飲みながら、工房にアイーシ

ャさんのお父さんと、アシーシャさんの弟を呼びに行ったエカテリーナさんを待

った。


 エカテリーナさんが工房に行って5分くらいだろうか、アイーシャさんのお父

さんであり、工房”プロトニーク”の親方のヤーコフさんと工房の見習いをして

いる弟のイワンさんを連れてエカテリーナさんが戻って来た。


が……、中々部屋の中に入ってこない。


「中へお入りください」


とソフィーが促すが、


「いえいえ、ごもったいない」


「そうおっしゃらずに」


「私どものような者が……」


「何をおっしゃいます、ここはヤーコフさんのお家ではないですか」


「はっ、そうですが……」


これを繰り返すこと約20分。


 業を煮やした、時田さんとニールさんが再び説得し、ようやく部屋の中には入っ

たのだが、俺達の方には近寄らず、入口で立ったままのヤーコフさんにエカテリー

ナさんそれを見て息子のイワンさんも親の顔色をチラチラ見ながら同じように立っ

たままである。


(あ~めんどくせ~!)





◇◇◇◇◇




 更に更に、時田さんとニールさんの説得により、ようやく俺達の所に来て時田さ

んの話を聞いてくれた。


「なるほど……しかし、私どもが姫様の像を作るのは……」


「いえ、別にこちらで販売するわけではありませんから」


と渋るヤーコフさんに時田さんが思わず口を滑らした。


「?こちらでは販売しない……と言いますと」


時田さんの言葉にヤーコフさんが聞き直す。


 その言葉に時田さんが一瞬黙っていると、


「わたくしからお話いたしましょう」


とニールさんが横から助け舟を出した。


 ニールさんは、ソフィーが魔王に襲われ、異世界に(俺達の世界)に飛ばされた

こと、そして、その世界で俺に出会い、俺がソフィーが幼き頃、お告げの夢で見た

勇者だったこと、更に今までの俺達の活動を全て包み隠さずヤーコフさんに話した。


「そうですか……信じがたいことですが……姫様や魔法省の大臣であらせられるニ

ール様がおっしゃるのですから事実なんでしょうが……」


 と少し考え込んでから、


「しかし、勇者様の活動資金は、イーシャイナ王国はじめ各国で負担してると、聞

ておりますが?」


と疑問をニールさんに言うと、横から時田さんが口を挿んだ。


「はい確かに、頂戴しておりますが、それでは賄いきれないと言いますか……」


と言いかけ、少し迷ったように考えた後、


「正直申し上げまして、勇者様を支える我々が使う兵器や支援物資には大量の費用が伴いますもので……こちらの世界の方々にこれ以上ご負担をかけるのは……勇者様がねぇ~気が引けるとおっしゃいましてねぇ」


と俺の顔をチラっと見た。


(え~!俺かよぉ~)


そう俺が思ったら、ソフィーがいきなり、ヤーコフさんの手を取り言った。


「わたくしは勇者様のお手伝いをしたいのです、どうかわたくしの願いを聞いてい

ただけませんか」


と懇願した。


 するとソフィーの懇願する顔を見て、


「分りました、娘がお世話になっているお国のお姫様に頼まれては嫌とは言えませんからねぇ~」


叩きながらヤーコフさんは言った。


「それではお引き受けいただけると言うことで……」


と笑顔で言う時田さんに黙ってヤーコフさんは頷いた。


「ありがとうございます」


と嬉しそうにヤーコフさん頭を下げるソフィー……に、


「ごもったいないお言葉」


と床にひれ伏しそうになるヤーコフさんを慌てて、俺とニールさんが止めた。


(この人結構めんどくさい)





◇◇◇◇◇




 時田さんとヤーコフさんで細かいお金のことを詰める。


 人形1体に付き、3,000ジェイド(日本円で3,000円)で3種類のソフ

ィー人形を10,000セットずつ合計30,000セットを制作してもらうよう

時田さんがヤーコフさん言うと、これをヤーコフさん快諾してくれた。


 俺は、時田さんにお金(勾玉)の入った袋を渡し、そこから時田さんが、9千万

ジェイド(日本円で9千万円)をヤーコフさんに渡す。


 そのお金に少々目を丸くして受け取るヤーコフさん。


 その間に、俺はソフィー人形の3パターンの絵を描く。


 1つは、お姫様バージョンのソフィー、2つ目は鎧姿のソフィー、最後の3つ目

はビキニ姿のソフィー。


 ソフィーを見ずに紙にサラサラっと描く俺の絵を覗き見たアイーシャさんの弟の

イワンさんが、


「へ~お上手ですね勇者様」


「えっあ!まぁ絵を描くの好きですから」


「姫様を見てないのに、そっくりにお描きになるとは……」


そのイワンさんの言葉に俺は一瞬、絵を描く手が止まり、


(そりゃ~何度もソフィーの裸見てますから……)


とは、言えず、


「はい、普段から姫様を見てますので」


と答えるのであった。


 その様子を少し離れた所から見ていたミオンが、何か言いたげに俺を見てニヤ

ニヤする。


 その傍らで、ソフィーは何故か顔を赤らめていた。





◇◇◇◇◇




 交渉も終わり、俺の絵も完成した。


 ってことで、丁度お昼時になったので、エカテリーナさんの勧めもあり、お昼を

ご馳走になることにした。


「こんなものしかありませんが……」


と言いながら、エカテリーナさんがお昼を作って俺達の前に持ってきた。


”クラスノセルスキー”


 エカテリーナさん持って来てくれたのは、ここでよく食べられるパン。


 時田さん曰く、ロシアの田舎で食べられている黒パンの一種に似ているそうだ。


 見た目は黒と言うより赤み掛かったパンで皮が薄く、柔らかい。


 心持か、ほのかになんとも言えない香りがする。


 これに、炙ってトロ~りと熔けたチーズを掛けて食べる。


「「う・美味い!」」


思わず、俺とゲキが声を上げると、エカテリーナさんは嬉しそうに笑っていた。


 その横で、口いっぱいにパンを穂奪ったシノブが、


「で△〇%θ※」


何を言ったかわからない。


(恐らく、デリ~シャスと、言ったんだろうな)





◇◇◇◇◇




 食事が終わり、ニールさんが何やら工房に設置したいものがあると言うので、皆

でついて行くと、そこは細長い体育館って感じで、扉付近に木工品を作る木材が無

造作に積まれていた。


 中に入ると、机で何やら彫り物をする人や、はたまた床で出来上がった部品を組

み立て、家具のような物を作っている人など、20人くらいの所謂職人さん達が働

いていた。


 その奥の少し開いたスペースに


「ここを少しお借りしてもいいですか?」


とニールさんがヤーコフさんに聞くと、


「はい、お使いください」


とヤーコフさんが頷いた。


 それを見て、ニールさんがアイーシャさんを手招きして、背負っていたマジックボックス小を降ろさせると、ボックスの中から大きな幅の広い姿見(鏡)を出してきた。


「これは、なぁに?ニールさん」


とミオンがニールさんに聞くと、


「これは、父がダンジョンで手に入れた魔法アイテムの”どこでもミラー”です。


と笑顔で答える。


「「「「どこでもミラー!?」」」」


その言葉に俺、ミオン、シノブ、ゲキが驚き声を上げると、ニールさんは少し得意げにこう言った。


「はい、これは対になる鏡でして、これをそれぞれの場所に置きますと、鏡の中を通って、もう一つの鏡が置かれた場所に移動できのですよ」


「それって……」


とミオンが言いかけると、ニールさんは頷いて


「簡易転移装置と同じですよ……あらかじめ移動先に設置しなければならないのは同じですが、これは距離の制限がないんですよ」


「へぇ~」


ニールさんの言葉に感心するミオン。


「でも、それで何をするんですか?」


ゲキがニールさんに聞くと、横から時田さんが口を挿み言った。


「ソフィー様の人形をブレイブ基地に運ぶためですよ下峠様」


その言葉を聞いて、ミオンが”ポン”と手を叩いて言った。


「輸送の時間と費用を節約!」


「「その通り!」」


ミオンの言葉に、ニールさんと時田さんが声をそろえてまるで某クイズ番組の司会

者ように言う。


(なるほど……って、最近ニールさんと時田さんキャラ変わってないですか?)



どこでもミラー……ってご察しの通りあの扉と同じです。

それと、前回だたか、前々回だったか、劇中に出て来たセイア達が夕食を取ったお店

”パルナス”は、関西のある一定の年齢層に有名なケーキ屋さんと言うかロシア料理

のお店の名前を取りました最も、劇中の料理の殆どはモンゴル料理ですが……。


それと、アシーシャさんの実家がある森の名前の”緑が森”は、これもまたある一定

の年齢層の方ならご存じのアニメ。

”ロ〇キーチャック”に出て来る森の名前です。

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