14話 デロベ将軍再び
ゴブリンやワームを倒してから、浸走り45分くらいでUnicornとソフィーに合流できた。
ここは、嘗て大きな川が流れていたようで、その川は今は干上がっていて、地面は砂や粘土質の土が露になっている。所々に、水で削られたであろう丸い岩が点在していた。
しかし、ここで問題が……戦闘に巻き込まれないようUnicornが馬車を引いて、自身のレーダーで魔物のいないところを縫うように しかも、かなりのスピードで草原を走ったため、馬車の車軸が歪んでしまったようだ。
ソフィーからその話を聞きUnicornを俺がチラッと見るとすまなさそうに俯くUnicorn。……ゴブリン達と戦闘が無ければ問題はなかったが、あの戦闘した地帯を避けて、アルブ王国にここから向かうとなると、この車軸が傷ついた馬車を引いて行くのに後2~3日、掛かるようだ。
ここからゴブリンと戦闘したところまで戻り、そのままアルブ王国を目指せば、無理をすれば、後1日くらいで付くのだが、ゴブリンは兎も角、ワームが厄介だ。ワームに手間取っている間に魔王配下の奴らに襲われたら、いかにGUY BRAVEと言えどもソフィーを守りきることなど到底できない。
最終手段として、全ての荷物を諦め、俺がUnicornと合体Kentauros形態になり、ソフィーを乗せて駆け抜ければ、あっと言う間に到着する。
Kentauros形態でのGUY BRAVEの地上での最高速度はM0.9(マッハ0・9)そこまでは出さないまでも、時速60kmくらいで巡航して、夜昼休みなく走れば……丸1日も走れば着きそうだが、ただ、その速度で移動した時、俺はいいが、後ろのソフィーの体力から行って、そんな強硬に耐えれるはずもなく……
(困ったな……)
と俺が思っていたら、突然ソフィーの胸元にあるネックレスの真ん中にある水晶が光り出したかと思ったら、なにやらソフィーが独り言始めた。
「えっ!ニール様……ニール様なのですか?」
「はい、はいわたくしも無事でございます。今、勇者様……
オオワシ様と……」
(なんだ……ニール様って……あぁ!これって通信してるのか?)
◇
ソフィーの話だと、アルブ王国からの救援は早くても3日後……それを待ってる間に例のオブリヴィオンの連中が現れないとは保証できないし、戦闘に不慣れなソフィーを連れて、この世界に不慣れな俺が闇雲に動くのもまた危険なことだ。
唯、今、あっちの世界にいるニールさんが、俺たちの救援のため、異次元転移ができる装置を作ってるらしい。それが叶えば、こちらに助けに来てくれる手はずになっているんだけど……
その異次元転移の装置には、ソフィーの魔力が必要だということで、今ソフィーはニールさんの指示のもと地面に魔法円を描いているところだ。これはあくまで簡易的な者らしいが……
◇
ソフィーが粘土質の地面に魔法円を描きだして、かれこれ1時間弱がたっただろうか、俺は、地面にへたり込むソフィーに馬車にあった水の樽からコップで水を汲んでソフィーに手渡して、
「もう作業は終わったのかい?」
と尋ねる俺に、コップの水を受取り、コクコクと頷きながら、
「ありがとうございます。」
そう言うとコップの水を一気に飲み干し、
「っ……なんとか出来ました。」
と言いながら、持っていたハンカチで顔の汗を拭うソフィー。
そんなソフィーの顔を俺が微笑ましく見ていた時だった。急に俺の視界に≪Enemy Approaching≫の文字が浮かび上がる。
俺は慌てて顔を上げると、前方100m位の所に、虹色の光の粒が沢山集まっているのが見えた。
その光の粒は次第に30体位の何かの形になって行く。
「げへへっ、やっと見つけたぞ」
聞き覚えのある下品な声が聞こえた。
≪One’s Name De´rober General≫
≪Height 2Meter≫
≪Combat Power 30,000≫
≪Energy 2000≫
≪Weapon Power 20,000≫
≪Signature Move Flame≫
(ゼネラル(将軍)って名前かよ~!)
って心で突っ込みながら、
(でも、一度闘うと色々データーが出るんだな)
などと感心しながら、デロベ将軍に向かってこう言った。
「また、あんたか……いい加減にしてくれないかな」
するとデロベ将軍は不敵な笑みを浮かべながら、
「悪いな小僧! 俺はオブリヴィオンでも、しつこいので有名だからな~」
と言いながら”ガハハ”と大笑いするデロベ将軍。
それを見て俺が一歩前に出ると、Unicornがスーッとソフィーの前に来る。
(わかってるな、Unicorn)
Unicornの様子を横目で確認し、右腕を高く上げマシンガンアームに変え、そして右腕の変形後、左腕をブレードアームに変形させた。
「ダイヤウルフとトロールです。セイア様」
ソフィーが指さす方を見ると、ヨダレを垂らし目つきの鋭いおおよそ2.5m位の大きな狼が30数体と、黒っぽい毛に覆われた黒い雪男って感じで、おおよそ5m~7mと言った巨人が3体いた。
「ダイヤウルフにトロールね……」
と俺が口にしたところ俺の頭にデーターが浮かんだ。
≪Species Name Dire Wolf ≫
≪Height 2.5Meter≫
≪Combat Power 4,000≫
×32
≪Species Name Troll≫
≪Height 6.5Meter≫
≪Combat Power 4,000≫
×3
(なんなんだろう、ソフィーから名前聞いただけなのに……これはレベルが上がったからだろうか?)
と思いながら、まずは先制攻撃”先手必勝”ってことで、デロベ将軍に右腕を向けてマシンガンで撃ちまくった。
”バリバリバリ~”
右手の4本の指から、閃光と共に轟音が当たりに響き渡り、鋼弾が次々とデロベ将軍目掛けて飛んでいく。
すると、デロベ将軍の前にトロール3匹がスーッと庇うように立ち、代わりに俺の放った鋼弾を受けた。と同時に周りにいたダイヤウルフ達はサーっと散会した。
真ん中のトロールが俺の放った鋼弾を受け穴だらけになる。
しかし、穴だらけになったトロールの傷口がみるみる塞がり、トロールに鞠こんだはずの鋼弾の弾が、傷跡からポロポロと地面に落ちる。
「なにっ!」
驚きながらそう叫ぶ俺に、デロベ将軍は”ガハハ~”と笑いながら、俺を見てこう言った。
「ふんっ!こいつには強力な再生能力があるんだよ~小僧!」
「ちぃっ!」
俺は、不敵に笑うデロベ将軍の顔を睨みながらそう言葉を吐いた。
デロベ将軍は、近くにいたダイヤウルフに合図を送ると、3匹のダイヤウルフが俺の方に駆け出して来た。
俺はその3匹のダイヤウルフに右手を向けマシンガンで迎撃する。
”バリバリバリ”
「キャイ~ン」
鋼弾は3匹のダイヤウルフのうち1匹に命中するも、他の2匹は素早く鋼弾を避け、こちらに迫ってきた。
「プログレッシブ ブレード!」
左腕のガントレットのような部分のスリットから剣を出し、俺に飛びかかろうとしている、1匹のダイヤウルフの頭に切りつけた。
俺に剣を切りつけられたダイヤウルフは、”ズシン”と大きな音と共に、声も出さずにその場に倒れた。
しかし、それに気を取られていた一瞬の隙に、俺の右手にもう1匹のダイヤウルフが噛みついた。
”グシャ!メリメリメリ”
”バキバキ”、”グシャーン”
「うっ!」
ダイヤウルフに、俺の右腕は食いちぎられてしまった。痛みはない、腕を食いちぎられた時の感覚は有るが、痛みと言うのはない……
しかしだ、片手でこれだけの魔物を相手にするのは……
「”ゲキ”なら倒せるだろうが……俺には……」
「ガルルルルルゥ~」
俺の腕を食いちぎり、睨見つけながら唸る、ダイヤウルフの眉間に左手の剣で切りつける。
「キャイン、キャイン」
ダイヤウルフは、俺に眉間を切りつけられ、思わず口を開け銜える俺の右腕を落とす。
怯むダイヤウルフに俺は、再度切りつけた。
「ギャッン!」
と鳴いたかと思うと、俺に首筋を切られ首筋から血を噴き出しながら、”ドスン”とその場に倒れた。砂地にダイヤウルフの血が滲み込んで行く。
「ほう~……片手で、どこまでもつかな」
少し離れた場所から、腕を組んでニヤニヤ笑いながら言うデロベ将軍。
「セイア様!大丈夫ですか」
と俺に駆け寄ろうとするソフィーにダイヤウルフが襲いかかる。
「キャ~ァ!!」
ソフィーに襲いかかろうとするダイヤウルフに、Unicornが後ろ脚で蹴りをみまう。
「キャン!」
と声を上げ砂煙と共に、Unicornに蹴られたダイヤウルフが一回転して、地面に叩きつけられた。
「ソフィー!俺の事は良いから、それより、魔法円の方を頼む。」
「しかし、……」
と俺の言葉に反論しようとしてソフィーは押し黙った。
「いずれにしても、援軍なしでは……兎に角!ニールさんに連絡を~!」
俺の言葉にソフィーが黙って頷いた。
(どうする……俺。)
その時、先ほどソフィーを襲おうとして、Unicornに蹴られたダイヤウルフが、Unicorn目掛けて飛びついて来た。
Unicornは、それを冷静に見ていて自分の頭を少し下げ、額の角を飛びかかるダイヤウルフののど元に突き立てる。
”グサ”、”ドサ”
のど元を突かれ、声も出さずにその場に崩れるダイヤウルフ。
(このままでは……Unicornと合体して闘わないと…… しかし、それをするとソフィーへの守りが……)
そう心で呟いて、違和感が……
(待てよ……GUY BRAVEの腕って、武器の選択により変形するんだっけ?……)
(いや、確かUnicornなどの支援機は直接GUY BRAVEの秘密基地から発進。……で、腕は……確か……GUY BRAVEに随伴している戦闘機、もしくは戦闘車両から射出し、GUY BRAVEの腕に装着されるって、……設定じゃなかったかな?)
(そう!その設定聞いた時、俺がまるで昭和のアニメの鋼鉄の人みたいだなって、シノブに突っ込み入れたはず。)
「ならば!」
と俺は声を上げ、高らかに叫ぶ!
「ワイヤーアーム!」
すると俺のない右腕が光に包まれ腕が現れた。
「なっ!にっ……再生能力があるのか!」
俺の再生された右腕を見て、デロベ将軍が叫ぶ。
俺はデロベ将軍の言葉を無視して、右腕を一番近くにいたダイヤウルフに向けて、
「ブースド!ワイヤーナックル!」
と叫んだ。
俺の右拳が轟音とともに煙を噴きながら、ダイヤウルフに向かって飛んで行く。
”シュルシュルシュル~”
発射された拳と、右腕根元を繋げているワーヤーが、勢いよく伸びて行く。
しかし、ダイヤウルフは飛んできた拳を”ひょい”と避けたため、俺の拳はダイヤウルフの左側を通り、”外れた!!”かに見えた。
外れたかに見えた俺の拳が、ダイヤウルフの左後ろ脚をしっかり掴んでいた。
「キャン、キャン」
と泣き叫ぶダイヤウルフ。
俺はすぐさま腕のワイヤーを引きもどす。
”ギュン~シュルシュルシュル”
何が起こったのか理解できず、後ろに引きずられるダイヤウルフは、後ろを何度も振り向き、踏ん張ろうとするが、砂地に踏ん張れないのか、ズルズル引きずられて行く。
そして、俺の手元まで来たダイヤウルフの体の真ん中を切りつけた。
「ギャ!~イン」
3度切りつけて、やっとダイヤウルフを真っ二つに出来た。
※この”ワイヤーアーム”って言うか”ブースドワイアーナックル”は、ただ拳を飛ばして敵を殴りつけるだけでなく、手を俺が自由にコントロールできる。つまり、掴んだりできるってことだ。
「ふぅ~……やっと5体か」
俺はため息をつき、そう呟いた。
その時、ソフィーの声が聞こえる。
「はい……こう握れば良いですか?」
俺はソフィーの方に振り返ると、ソフィーは魔法円の真ん中にしゃがみこみ魔法円の中心から、光りながら付き出して来た水晶を握りながらそう呟いた。
すると、魔法円が光りだす。
「うう……おにょれー!!何かの魔法を発動するつもりか!そうはさせんぞ!」
デロベ将軍はそう言うと、ダイヤウルフとトロールに、
「一斉に飛びかかれ!」
と命令した。
命令を受けたダイヤウルフとトロールは砂煙を上げながら、一斉にこちらに迫って来る。
「うっ……もう少しなのに」
俺はそう呟く。
「やばい!やばいぞ俺!」
しばらく朝8時のUPが続くと思います。




