143話 ダブルトマホーク~ブーメラン!
解毒草を刈り取り集め、根を切り離した物をアイーシャさんが背負っているマジ
ックボックスに仕舞う。
「じゃ~引き返そうか」
そう俺達にローゼが声を掛けると、シノブが右手の人差し指を左右に振りながら言
った。
「折角ここまで来たんだ!最後まで進まないかい?Missローゼ」
「えっ!なに言ってんの?」
シノブの言葉に驚くローゼ。
「?何か問題でもあるのかいMissローゼ」
とローゼの言葉にあどけなく返すシノブ。
「問題もなにも、この先に進んで帰って来た冒険者は居ないんだよ!あまり欲をか
くと命がいくつあっても足りないんだから~」
とシノブに言い返すローゼにシノブは、お手上げポーズを取り、そしてローゼに代
わり俺に聞いてきた。
「当然行くだろう~Mr.オオワシ」
「ああ、当然だ!」
シノブの言葉に俺が大きく頷きそう言うと、それを見たローゼは、俺に食って掛か
って来た。
「あんたバカ!?」
そんなローゼに俺は静かに言った。
「ローゼ……普通の冒険者はここまで来るのにどれくらいかかるんだ?」
「えっなに?……うーん手慣れた冒険者で2日くらいかな?」
一瞬、俺に何言ってんのって顔をしたローゼだったが、素直に俺の問い掛けに答える。
「俺達は1日……いや数時間でここに居るじゃないか?」
「えっ……ああ、そうだけど……そうだけど!」
俺の言葉にたじろぐローゼ。
それでも何か俺に言い返そうと頭を巡らせ、
「だって、断崖をずるして上ったじゃない!」
と俺に言い返すが、それを聞いたシノブが口を挿む。
「ずる?ってあれはMr.オオワシの能力じゃないか?Missローゼ」
「え……うん……そうだけど……」
シノブの言葉に言い返せなくなったローゼに俺は更にこう言った。
「いやなら、君1人で引き返してくれローゼ」
「えっ……いや、いやよ!折角ここまで来たんだもん!」
ローゼのその言葉にシノブがニッコリ笑ってすかさず言った。
「なら、このまま進もうMissローゼ!」
「えっ、うん……そうね」
ローゼのその言葉にニヤリと笑い、したり顔のシノブであった。
◇◇◇◇◇
解毒草が生い茂った部屋を後にした俺達は、更に階段を降りた。
階段を降りた先にあったのは、通路を挟んで2つの部屋だった。
「こう言うのって、どっちかが、はずれの部屋だったりして」
と少し笑いながら言うシノブ。
「まさか……ゲームでもあるまいし」
と俺も冗談ぽくシノブに言う。
そして徐に通路右側の部屋の扉を開け、部屋に入ってみると……。
何もない?何もない石材で囲まれた学校の教室3つ分位の部屋。
俺の後からシノブ達も部屋に入って来て、
「はずれ!の部屋だねMr.オオワシ~」
と俺ににっこり笑ってシノブが言った時だった。
”シュー””シュー”
と空気が抜ける音がしたかと思うと、部屋の隅から体長6mのオオトカゲが現れた。
”ピッ”
≪Enemy≫
≪名称 ヴァラヌス≫
≪戦闘力 20,000≫
≪防御力 20,000≫
≪スピード 600≫
≪MP なし≫
≪特技 噛みつきによる毒攻撃≫
×3
地球で言う”コモドオオトカゲ”通称コモドドラゴン。
それを一回り大きくした感じのオオトカゲ。
身体をくねくね、尻尾をくねくね、舌をぺっぺろ出し入れしながら、例の独特の
歩き方で俺達に近寄ってくる。
シノブが、すぐさま手に持つアサルトライフルを、3匹ヴァラヌスにフルオート
で発砲するが……。
”タタタタタ”
シノブの撃った弾丸を、ヴァラヌス3匹はその硬い表皮が跳ね返す。
”カーン”
”カキーン”
”カーン”
それを見て、俺が両腕をマシンガンアームに変えようとしたその時だった。
急にヴァラヌス3匹が走り出した。
(ヤバイ……間に合わない!)
俺がそう思った瞬間。
ローゼは俺達の前に立ち、迫り来るヴァラヌス3匹の方に向かい両手を床につけ、短い詠唱の後、こう叫んだ。
「グランドスパイク!」
掛け声と共に、ローゼが触れていた床の部分が一瞬光ったかと思うと、その光は見る見るヴァラヌス3匹の方に走り、光に覆われた床部分から細長い棘のようなものがムクムクと無数に生えだし、走り寄るヴァラヌス3匹を床側から刺し、体を貫いた。
”グエッ~”
舌を出し、目を向いたヴァラヌス達は、床から生えた棘に体を貫かれ絶命した。
「ふぅ~」
と大きく息を吐いたローゼは、その場に膝をついた。
◇◇◇◇◇
膝をついて座り込むローゼに、アイーシャさんが、自分の背をっていたマジックボックス小を降ろすと、中から”魔力の実”を出し手渡す。
「これ、どうぞ、ですにゃ」
「ふん?なにこれ」
アイーシャさんに”魔力の実”を渡されたものの、何のことかわからず聞き返すローゼ。
そんなローゼに、にこやかにアイーシャさんが言った。
「魔力の実ですにゃ、1口かじると魔力が半分くらい戻りますにゃ」
「えっ、そうなの?」
「はいですにゃ」
アシーシャさんの言葉を聞いて、半信半疑でローゼは一口”魔力の実”をかじると……。
ローゼが、かじると同時に”魔力の実”がスーと消え、同時にローゼの体にムクムクと気力が漲る感覚を感じる。
「あら、ホント体が楽になった。」
「はいですにゃ」
ローゼの言葉に、アイーシャさんが笑顔で答えるのであった。
◇◇◇◇◇
あれから、10分ほどローゼに俺とシノブは”ガミガミ”説教を受けた。
(こう言うところ、ミオンにそっくりだ)
説教の後、俺達は通路反対側の部屋へと入る。
今度は慎重にセンサーをフル活用して……。
この部屋には、ウンゴリアントが居る。
”ピッ”
≪名称 ウンゴリアント≫
≪戦闘力 10,000≫
≪防御力 8,000≫
≪スピード 600≫
≪MP 2,000≫
≪特技 毒霧、噛みつき≫
×1
こいつは、光る物に反応するらしい。
貴金属、宝石は元より、鏡や金属の武器、鎧など……。
大きさは3.5mの大きな土蜘蛛……結構動きが素早いみたいだ。
部屋は、ドーム球場……ほどではないが、そうだなソフトボールくらいはできそうなドームって大きさ。
高さは……おおよそ20mと言った処か。
まず、ローゼが腰の左右に刺したトマホークを抜くと、それを両手に持ち、体をのけぞるようにして、全身を使って投げた。
「ダブルトマホーク~ブーメラン!」
ローゼが力いっぱい投げたトマホークは、クルクル回転しながら、ウンゴリアントの真上を旋回しながら飛んだ。
「Oh!まるでトールのミョルニルのようだね」
と回転しながら弧を描き飛ぶトマホークを見てシノブが叫ぶ。
(いや、ミョルニルは槌だろう……あれはどう見てもアニメ”ガッターロボ”の技、トマホークブーメランと同じ……じゃないかな?シノブ)
なんて心で、シノブに突っ込みを入れながら、ウンゴリアントの後ろに回り込み、右腕をブレードアームに変え、腕のスリットからプログレッシブ ブレードを展開し、そーっと近づいた。
”プルプルプル~シュバン”
戻って来たトマホークを受け、ポーズのようなものを取るローゼ。
(本人にしたら”決まった”って感じだろうねぇ)
因みにこのローゼのトマホークは、兄であるユリウスさんが、妹の為に制作した
もので、投げると目標を切り裂き切り裂かないにかかわらず、投げた手元に戻って
くる魔法が付与されているそうで、この技はローゼの能力ではなく、武器の能力っ
て事らしい。
トマホークを手に持ち、ポーズを決めてるローゼに気を取られているウンゴリア
ントを見て俺は、
「今だ!」
走り、そしてすれ違いざま、展開したプログレッシブ ブレードで、ウンゴリアン
トに切りつける。
”シュッパ~ン”
”ジャラジャラジャラ”
縦に切り裂いたウンゴリアントのお尻(腹)の部分から、出るわ出るわ。
”金銀財宝”が!
「Wow!」
「おお!」
「ニャニャ」
「何ということでしょう~」
「す・すご~い!」
シノブ、俺、アイーシャさんにソフィーそして、ローゼがウンゴリアントのお尻(
腹)から出て来たお宝を見て、口々に声をあげるのであった。
◇◇◇◇◇
シノブとアイーシャさんが背負っているマジックボックス小に、入るだけお宝を詰める。
それでも、入りきらないものは、ローゼが背負っている所謂リックサックのような鞄に詰め込んだ。
もうローゼの鞄は、パンパンだった。
「もうこれ以上は無理だな……残りは諦めよう」
「そうね、無理しても持って帰れないんだから、仕方ないわね」
俺の言葉にローゼも同調した。
俺達が、そろそろここを立ち去ろうとした時、床の一部が”ズズズーzzッ”て開き、中から階段が現れた。
「あれ、ここが最下層のはずなんだけどな」
と首を傾げながらローゼが言う。
「階段があるってことは、最下層はもう一つ下ってことではないかい?Missゾメル」
と言い返すシノブに、少し怒った感じでローゼは言う。
「そんなことは、見ればわかるわよ!」
かの有名なアニメゲッ〇ーロボでゲッ〇ー1もしくはゲッ〇ードラゴンが使う
技を出してみました。




