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141話 お金にならない



「Missゾメル!僕達は、只の通りすがりの勇者一行さ」


って決め顔で言うシノブ。


 そのシノブに向かって呆れ顔のローゼが言った。


「あんた達……素人!?」


腰に手を当て言うローゼの言葉に俺とシノブが絶句ぎみに言った。


「えっ」


「What are you saying?」


その言葉にローゼは、


「あのロックアルマジロはお金にならないのよ!」


その言葉に、俺とシノブが顔を見合わせた。





◇◇◇◇◇





 ローゼが言うのには、プロの冒険者はお金にならない戦闘は行わないそうだ。


 と言っても生命の危機に直面すれば別な話だが……。


 ロックアルマジロは、戦闘力防御力共にこの世界の魔物の中でも、非力ではない

……。むしろ強い方だろう。


 しかし、お金にはならない……。それにロックアルマジロの攻撃は強力だが、直

線的で単調なため避けやすい。


 故にプロの冒険者は、基本奴らの攻撃を避け、そこをやり過ごす。


 どうしても殺したいときは、壁や地面に突き刺さった奴らが元に戻ろうとお腹を

出したところを剣や槍で突き、仕留めるそうだ。


 固い岩のような強度を持つ、背中の表皮をまともに切りつければ、刀剣が中心の

この世界の武器の刃を痛めてしまうし、貴重な魔力を使ってまで倒しはしないそ

うなんだ。


(そういや、俺達はこの世界の人達に比べ圧倒的な戦力を有していたので、今まで

力業ばかりで対処してきたもんな)


と少し反省した。



 と言うことで、俺達は今そのロックアルマジロの攻撃を回避しつつ、宮殿を目指

した。





◇◇◇◇◇





 宮殿は、俺の感覚では国会議事堂?のような感じ、正面に大きな入口があり、左

右に建物が広がっているって感じ。


 宮殿入口から、中に入ると、いきなりエントランスにしては、広すぎる大きな広場的な場所だった。


「これはどっちに進めばいいにゃん?」


と左右に首を振りながらアイーシャさんが、ローゼに尋ねる。


「そうね、地下に行くには右の方ね」


 本来宮殿は、王侯貴族の私的な家の役目と、政治的に使う執務室、謁見の間や会

議場などに分れるらしいが、地下に続く階段と言うのはどうやら、王侯貴族の私的

エリアにあるようだ。


 と言うことで、俺達は入口を入ってその大広間のような所から、右側のエリアへ

と足を向けた……。


ら、現れましたよ3~4体。


”ピッ”

≪Enemy≫


≪名称      ストーンスタチュー≫

≪戦闘力          2,000≫

≪防御力         3,000≫

≪スピード           50≫

≪MP            500≫

≪特技            剣、槍≫


×2


≪名称        アーマーナイト≫

≪戦闘力          2,500≫

≪防御力         4,000≫

≪スピード           80≫

≪MP            500≫

≪特技            剣、槍≫


×2


(えー石像に鎧騎士?)


って俺が考えていると、ローゼが俺達に叫んだ。


「奴らの本体でなく、手に持っている武器を破壊して!」


「「?了解」」


「はい」


「はいですにゃ」


ローゼの言葉に、俺とシノブは半ば頭に?を浮かべながら返事をする。


 まず、背の低いローゼが、更に前傾姿勢を取ってかなり低い位置から、ストーン

スタチューの1体へと突進しそた。


 そのストーンスタチューは、迫りくるローゼに対し手に持っている槍で突こうと

するが、それを交わしたローゼは両手に持っているトマホークで、その自分に突き出された槍を真っ二つにした。


”バキーン”


 すると、ローゼに槍を真っ二つにされたストーンスタチューは急に動きが止まり

、停止する。


(?……動きが止まったよ)


次にシノブが、背中に背負ったマジックボックスを降ろして、中からバレットM

82A1を取り出し、プローン(伏射)で、アーマーナイトの1体が持つ剣目掛け

て発砲した。


”ズキューン”


”バキーン”


 見事命中し、アーマーナイトが手に持った剣を根元から折ると、先程同様に鎧騎

士は動きを止める。


(なるほど……)


 そこで、俺は両腕をマシンガンアームに変え、残りのストーンスタチューとアー

マーナイトが手に持つ槍と剣に向け発砲した。


”バリバリバリ”


”バキーン”


”バキーン”


 ローゼやシノブの時と同じく、剣と槍を折られたストーンスタチューとアーマ

ーナイトが動きを止めた。


 これはローゼの話によると、ここのダンジョンフルーフパラスト(呪われた宮殿

)はその名の通り宮殿全体に呪いが掛かっている。


 その呪いと、剣や槍に着いた呪い(持ち主の怨念やら、切られた人の怨念)が合

わさり、且つ宮殿全体の呪いのお陰かここの宮殿には膨大な魔力が流れ込んでおり

、剣や槍自体が自分を使う身体として、ストーンスタチューとアーマーナイトを魔力で動かしているそうだ。


「しかし、それならこのダンジョンに沢山の冒険者が訪れ、この方法で退治してい

るのであれば、ストーンスタチューとアーマーナイトが出現できなくなるんではな

いのかい?Missゾメル?」


との問いかけに右手の人差し指を左右に振り、ローゼがシノブに言った。


「違うよ~って言うか反対だよ」


「反対?」


「そう、沢山の冒険者がここを訪れるってことは、当然、冒険者なんだから武器を

持っているでしょう~」


「確かにそうだが……Missゾメルそれが?」


「ってことは、ここで多くないかもしれないけど、このダンジョンで魔物と戦っ

て亡くなる冒険者も居るわけで……」


「ああ、なるほど……つまり、それらがまた、呪いと魔力を受けてストーンスタチ

ューとアーマーナイトを動かすんだねMissゾメル」


「そう、正解!」


とローゼとシノブのやり取りにアイーシャさんが口を挿んだ。


「でもにゃ、それにゃら、ストーンスタチューとアーマーナイトの本体を粉々に砕

けば良くないかにゃ?」


その言葉にまたもやローゼは右手の人差し指を左右に振り、アイーシャさんに言う。


「チッチッチ……呪いと魔力を待った剣や槍などの武器たちは、その魔力で、自分

の体となるストーンスタチューとアーマーナイトを例え粉々に砕いても、元の姿に

すぐに再生させてしまうのよ」


「そうにゃのか」


「だから、さっき本体ではなく武器を攻撃してって私皆に言ったでしょ」


「ああ、確かに」


ローゼの言葉に俺がそう頷きながら言う。





◇◇◇◇◇





 王侯貴族の私的エリアを俺達は進んでいた。


 大小いろいろな部屋があるようだが、そのほとんどの扉や内装品は崩れており、元は何の部屋だったか想像もできない。


 そんなことを考えていたら、俺のセンサーに反応があった。


”ピッ”

≪Enemy≫


≪名称         キラーラット≫

≪戦闘力            800≫

≪防御力           300≫

≪スピード          200≫

≪MP             ― ≫

≪特技           噛みつき≫


×20


 今居る俺達の位置からは数m離れた隣の部屋に反応があった。


「皆!キラーラットが次の部屋のエリアに20匹居るぞ!」


皆の先頭を行く俺が、振り返って叫ぶ。


(キーラーラットって言えば皆と合流して、アルブ王国に向かう途中見かけた奴だ

ったよな……。確か中には菌に侵された個体もあるとか……)


 恐らく、個々の個体はその可能性が大きいだろう、本来は他の動物や稀に、人間

が飼う家畜を襲うらしいが、ここにはそんなもの存在しない。


 と言うことは、奴らの主な主食は、ここに来る冒険者……しかも、その死肉だろ

うことは想像できる。


 俺は、シノブに合図を送ると、シノブが、自分の背中に背負ったマジックボック

スを降ろして、中から火炎放射器を取り出し、ボンベを背中に背負った。


 その間に俺は両腕をフレイムアームに変え、キラーラット達が群がる部屋へと俺

が先ず入った。


 俺が部屋に入ると、案の定そこには3人の死体が転がっており、それを20匹の

キラーラット達が群がり、死肉を漁っていた。


 その光景に俺は思わず声をあげる。


「うっわぁ!」


その声に反応したのか、一瞬、死肉を漁るキラーラットの動きが止まった。


 が、その後何事もなかったようにキラーラット達は再び死肉を漁りだした。


 しかし、俺の後方から部屋にシノブが入ってくると、奴らの目つきが急に変わ

った。


(そうだろうよ。どうせ、俺は食べれないもんな)


 そう俺が心で思っている間に、キラーラット達はシノブを襲おうと臨戦態勢を取

った。


 俺とシノブはお互いアイコンタクトを取り、今にもシノブに襲い掛かろうとする

キラーラット達に向け、


「Wファイヤーストーム!」


「Fire~!」


俺の両手と、シノブの持つ火炎放射器のノズルから3本の炎がキラーラット達に襲

い掛かる。


「「「「「「「「「「キチュー!」」」」」」」」」」


 突然の炎の攻撃を受け、キラーラット達は、もう大パニック状態で部屋中を炎避

けようと走り回る。


 そのキラーラット達が俺達の炎攻撃から逃げるには、唯一、一か所……。


 つまり、部屋の俺達が塞ぐように立っているドア側でなく、その反対の窓側であ

る。


”パリ~ン”


 古びて所々ひび割れている窓を突き破り、20匹のキラーラットの内8匹のキラ

ーラットが逃げた。


 運悪く、残りの12匹のキラーラットは、俺達の炎の攻撃を受け黒焦げになって

いた。


 逃げたキラーラットを俺とシノブは追いかけない……なぜなら、奴らもまた、”

お金にならない”からだ。


(本当、ここのダンジョンって、お金にならない魔物ばっかだよな)


そう思いながら、俺とシノブは、キラーラットが居た部屋を後にして、皆と合流

し、この宮殿の地下を目指すのであった。






このダンジョンに来る冒険者はいったい何を目当てで群がるんでしょうね(笑)

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