140話 ダンジョン・フルーフパラスト
次の日、朝食を済ませ、2日酔いのミオンを部屋に残して、時田さんとニールさ
んは、王城へアンテナの取り付けに……って言っても、既にアンテナはこの王都
があるバル山頂上付近に、ゾメルさんとこの鍛冶ギルドの人達の協力の元、設置
は済んでいるが、細かな配線とか後、使い方の説明に行くそうだ。
ゲキとクレアさんにエドナさんは、クレアさんの武具作成の為、ユリウスさんの
工房へ向かった。
ゲキとエドナさんがクレアさんに付き添うのは、クレアさんの今回の鎧について
は、以前以上に動きやすくってリクエストの為、かなり細かい採寸って言うか……
服の上どころか下着も脱いでの採寸が要求されるが、いかんせん、ユリウスさんの
工房には男性しかいない為、ユリウスさんのスタッフに代わり、エドナさんが採寸
すると言うことと、剣の作成に当たってはその道に詳しいゲキにアドバイスが欲し
いとクレアさんの達ての願いだそうで、ゲキもそちらに向かうんだけどね。
で、残りの俺、ソフィー、シノブ、アーシャーさんそれに……ローゼ。
「では、Missゾメル、君の腕前を見るためにダンジョンでも行かないかい?」
と笑顔でローゼに言うシノブ。
「えっ、今からダンジョンに!……いいけど、ダンジョンって最低でも6人で入る
もんだよ~今の私達5人しかいないんだけど……。」
「No problem」
と言いながら、右手の人差し指を立て左右にするシノブ。
「なぜなら!夢のお告げの勇者Mr.オオワシとその親友の僕か居るのだから!」
と胸を叩き、満面の笑みで言うシノブの態度にローゼは、口をアングリ開けて固ま
っている。
そんなローゼに更に畳みかける様にシノブが言った。
「それに僕達はあの電風の丘ダンジョンをクリアーしたしね」
「えっ、あ・あの危険すぎる為封印されたって言うあのダンジョンを!」
シノブの言葉に驚き思わず大声で叫ぶローゼ。
「Of course~ねMr.オオワシ、Missラグナヴェール、Missア
イーシャ」
とこっちにシノブが振って来たので、
「あっ……うん」
「はい」
「はいですにゃ」
その返事を聞いたローゼは、しばらく俺達を”ジー”と見つめたかと思ったら、
「うん、わかった、じゃ行きましょう」
◇◇◇◇◇
俺が、魔法馬車を出した。
「出でよ!馬車」
そう言って、俺は、地面に”ポ~イ”ってジッポライター型のカプセルを投げる。
”ボ~ワン”と煙と共に馬車が現れた。
続いて、俺は一旦変身してユニコーンを召喚することにした。
「 チェインジング!(Changing)」
の掛け声と共に俺の体が光だし変身する。
変身後、ユニコーンを召喚し、そのユニコーンを馬車に繋ぎ、シノブはバイクに
跨り、馬車の御者を俺が勤め、それにソフィーとアイーシャさんに加え、ローゼが
乗ると、早速出発した。
今、ローゼは馬車の中で固まっている(笑)
それは、突然出て来た魔法馬車、そして俺の変身した姿……それにユニコーンに
シノブが乗るバイク。
今まで見たことのないものを立て続けに見て、思考回路が止まったようだ。
地下都市から地上に延びる緩やかなスロープを登り、そしてそこから地上に出る
トンネルを抜け、出口で門番に冒険者証を提示して、俺達は無事地上へと出た。
地上に出て、しばらく馬車を走らせていると、思考回路が復活したローゼに今か
ら向かうダンジョンの話を聞いた。
大きな森の真ん中を貫く大きな街道を抜け、俺達は目的地『フルーフパラスト(
呪われた宮殿)』にたどり着く。
「Wow!」
「なんじゃこれ!」
先に行くシノブの叫び声に続き、俺も思わず声をあげてしまう。
森を抜け、俺達の目の前に現れたのは、大きなすり鉢状の大地と、その中心にそ
びえ立つ岩?そしてその上にちょこんと乗った古ぼけたお城?宮殿?のような建物。
どう考えても、風化や大地の陥没などの自然現象で出来た地形とは思えない。
すり鉢の中心にそびえる岩の下には、それを囲むように雑多な建物が立っている。
これは、ここのダンジョンの魔物や宝物を目当てに集まった冒険者達の住まいの
ようだ。
ここのすり鉢状の急勾配を馬車で降りるのは……降りるのは……って降りてるよ!
ユニコーンが、器用に前足で踏ん張りながらこの急勾配をゆっくりと降りて行く。
(お前器用だな)
そんなことを思っている間に、すり鉢の底に到達した。
因みに、シノブは、
「ウワッフゥ~!」
と叫びながら、バイクで勢いよく斜面を下った。
◇◇◇◇◇
すり鉢の中心、高さ30mの細長い岩の根元に馬車とバイク止め、シノブと
アイーシャさんがマジックボックス小をそれぞれ取り背負った。
アイーシャさんがマジックボックス小を背負う前に、中から魔物除けのテント1
張りと、簡易転移装置の片方を出す。
その作業を不思議そうに見つめるローゼ。
そんなローゼにシノブがウインクして言った。
「これは、後でのお楽しみだよMissローゼ」
その言葉にキョトンとするローゼであった。
馬車も送還せずに、そのままにし、その横にバイクを止め、その陰に魔物除けの
テントを張り、中に簡易転移装置の片方を入れる。
そして、馬車から放したユニコーンに向かって俺は言った。
「じゃ、頼んだぞ」
その言葉を聞いて、ユニコーンは大きく頭を縦に振る。
(たぶん大丈夫だろう)
◇◇◇◇◇
高さ30mの細長い岩には、多くの冒険者達がロッククライミングのように岩を
よじ登っている中、俺は、まず、両腕をフレイムアームに変えてアイーシャさんに
合図を送ると、アイーシャさんは大きく頷き、俺の背中へと飛び乗った。
それを見て俺は、
「ファイヤーストーム!」
両掌から思い切り炎を出し、勢いよく上昇した。
それをまたもやアングリとした口で見つめるローゼに加え、一生懸命岩を昇って
る冒険者達も驚き、目を見開いて見つめていた。
あっと言う間に岩の頂上にたどり着くと、俺は背中のアイーシャさんを降ろし、
両腕をワイヤーアームに変えると下に居るシノブ達の居るところへと腕を飛ばす。
「Wブースドワイヤーナックル!」
まず、ソフィーとローゼを上に上げようとするが、ローゼはどうしたら良いかわか
らず戸惑っているようだ。
そんなローゼにソフィーが言う。
「さぁ、ローゼさん、わたくしのようにセイア様の腕を掴んでくださいな」
「えっ、でも……」
そうソフィーが呼びかけたにも関わらず、ローゼは今だ躊躇祖ているようだ。
そこへ、シノブがローゼに声を掛ける。
「ひょっとして、Missゾメルは怖いのかい?」
と、にこやかに声を掛けるシノブに、ちょっとムッとした表情で
「怖い……この私が……ふん、摑まればいいんでしょ!」
そう言いながら俺の降ろした手を右手でしっか掴んだ。
それを見て俺が腕のワイヤーを引き上げる。
”シュルシュルシュル~”
「キャッ!」
勢いよく引き上げられて、思わず小さく悲鳴を上げるローゼであったが、頂上に到
着と同時に何事もなかったような顔をして強がる。
(ローゼも可愛いところあるんだな)
そんなことを思いながらも、最後のシノブを引き上げるため、腕を降ろす俺であっ
た。
◇◇◇◇◇
俺達は、朽ち果てて門がなくなった入り口から宮殿へと入る。
そこには嘗て、宮殿の庭であったろう広場が広がっていた。
門をくぐるとすぐさま何かが俺達目掛けて飛んでくる。
”ピッ”
≪Enemy≫
≪名称 ロックアルマジロ≫
≪戦闘力 1,000≫
≪防御力 3,000≫
≪スピード 500≫
≪MP なし≫
≪特技 体当たり≫
×3
飛んでくる1体に向け、シノブが手に持っているジョン(Xm8)の下部に取り
つけていたショットガンを放つ。
”バシュン”
”バーン”
とドッチボール大の丸まって回転するロックアルマジロを粉々に砕いた。
次いでもう1体は、素早く如意棒を伸ばし地面に叩きつけるアイーシャさん。
”バキーン”
”シュルシュル”
アイーシャさんの如意棒に叩き落されたロックアルマジロは、アイーシャさん
の足元の地面で煙を拭きながら回転していた。
そこへシノブがすかさず、ジョン(Xm8)を連射する。
”タタタタタタ”
シノブに撃たれたロックアルマジロは、地面で粉々になった。
最後の1体は、俺が、
「ブースドワイヤーナックル!」
と叫び回転しながら、岩の塊のようなロックアルマジロを右腕のパンチを飛ばし、
これまた粉々に砕いてしまう。
それをあっけにとられて見つめるローゼ。
「い・一瞬にして3体のロックアルマジロを倒すって……あんた達何者よ!」
その言葉にシノブが答えた。
「Missゾメル!僕達は、只の通りすがりの勇者一行さ」
って決め顔で言うシノブ。
そのどや顔のシノブを見て、心で俺はこう呟くのであった。
(オイオイそれって、特撮の受け売りのセリフでないかい?シノブ君)
新メンバーのローゼの腕前は如何に(笑)




