13話 救援準備!?
------激視点---
俺達が居る16畳くらいの客間の壁にある、暖炉の横に立っている女神像の向きをメイトリックスが、横に捻ると暖炉の横の壁が左右に分かれた。そのまま、メイトリックスに続いて、俺とミオンも壁の奥にある部屋へと入って行った。
そこには、銃器類はもちろんのこと、中世の武器もいろいろ飾ってあった。それらを、見ながらさらに奥に進む。
「なんか博物館みたい。」
と言うミオンに俺も頷き、それらを見ながら先へと進んだ。
「この辺が、日本の武器だが、Mr.シモトウゲ何か気に居ったのがあれば言ってくれたまえ。」
そうメイトリックスに言われ、俺は、丹念に飾られている刀剣類を見て回った。そこで、飾られているひと振りの刀の前で俺の目線が止まったのを見て、いつのまにか、俺の横に立っていた時田氏が俺に声を掛けてきた。
「ほぉ~その刀……、撃心流の方が使うものでしたか……。」
横でそう言う時田氏に俺は、
(俺に気づかれずに近付くとは……かなりの手足れと見た。)
そう思っていると、時田さんが、
「それを収集した我が社の社長……つまりおぼっちゃまの父上様も、使い方がよくわからないとおっしゃられておりましたので、出来れば後学の為、使い方を見せていただけないでしょうか。」
と頭を下げ、俺に言ってきたので俺は黙って頷いた。
その刀を壁から外し手に取る。全長5尺(約2m6cm)の化け物じみたその刀を背中に斜めに背負い、鞘についている紐で結び体に固定した。
(うちの家にあるのは4尺(全長約1m81cm)5尺は開祖一刀斎が使っていたものと同じだ。開祖が使っていた5尺は、いつの間にか行方不明になったと聞いていたが、ここにあったとはな。)
「少し離れて!」
とその場にいた全員に言うと、俺は呼吸を整え気を練りだした。メイトリックスと時田氏は、興味心神っで俺を見ている。
「では、参る!」
と叫び、俺は両手で刀の柄を掴み、背中の刀の刃の部分が上になるように刀を捻り、思い切り前傾姿勢で、丁度柔道の一本背負いのようなホームで刀を上に抜いた。刀の鞘は刀の刃の部分がスリットになっており、刀は抜くと言うより鞘を割って飛び出したように見える。そのまま刀を背負い投げのように上から地面に向かって上段から切りつける形になる。勢いよく部屋の床に向かって切りつける刀を床に当たる寸前で俺はをピタリと止めた。
「「OH!」」
メイトリックスと時田さんが声を上げた。ミオンは驚きのあまり目を向いて固まっている。
「なるほど、鞘のスリットはこういう意味だったのですね。」
そう言う時田さんに俺は頷きそして、
「元々鞘は2つに割れていてそれ板バネを仕込んで鞘で刀を挟み込み止めてる仕組みだ。」
と俺が説明すると。
「早抜き用の銃のホルスターと同じ原理なんだな……」
と言うメイトリックスの言葉の意味は俺には理解できないが、時田氏が頷いているので、そうなのだろうと思い話を続ける。
「この刀は斬馬刀村金、村金は撃心流開祖の下峠一刀斎の刀匠としての名前だ。」
と俺が言うと。
「しかし、刀の何処にも名は入ってないですが……。」
と時田さんが質問して来たので、俺はそれに頷き話を続けた。
「一刀斎は、自分や自分の弟子が使う武器しか作らない。頼まれても弟子や自分以外の武器は作らなかった人だから、刀匠としての自覚もなかったらしい、ただ、技にあった武器を作っていただけだから、名を入れなかったと聞いている。」
と俺の説明に、
「ほう、しかし下峠様はどうしてこれがその斬馬刀村金だとお解りになるので?」
と疑問を口にする時田さんに俺はこう答えた。
「村金が作る武器には気を流しやすいからわかるのですよ。」
「気……ですか……。」
「はい気です。」
気と言うものに半信半疑の時田さんに俺はそう言った。
「撃心流は気を使う武術なのです、だから例え木刀でも武器になる。」
と言う俺の言葉に、時田氏が感心するようにこう言った。
「なるほど、それで、撃心流の方は武器を選ばないと言う訳ですか?」
その言葉に少し頷きかけて、
「まぁ、それだけではないですが……」
とだけ、俺は時田氏に言った。
そして、壁にあった小太刀類を指さし、
「後、ここの小太刀(脇差)を2本と小柄を12本ほどいいか?」
そう言う俺に時田さんではなく、メイトリックスが、
「Of course♪それだけでいいのかい?」
と笑顔で言うので、俺は黙って頷いた。
「防具は家に取りに帰っていいか?」
と言う俺の言葉に、ミオンが割って入った。
「その前にゲキ!私用の武器を見てよ。」
「ミオン用の武器?ってお前、闘えんだろ?」
と俺が言い返すが、
「そーだけど、私だけ丸腰ってのもねぇ。」
と言うミオンに、確かにそうだ思い。
「まぁ、そうだな。」
と頷くと、ミオンは、
「その前に着替えて来る♪」
と言いながら部屋を出て行った。
なにやら楽しそうに言うミオンの言葉に俺は……。
(なんか……いやな予感がする。)
◇◇◇◇◇
ミオンの着替えを、その場でメイトリックス達と待つこと10分。着替えを終えたミオンが俺達の前に現れた。
「じゃ~ん!かっこ良いでしょう~♪」
と俺達の前で、嬉しそうに一回転して見せた。
(ふんっ!やっぱりな……。)
と思っている俺の横で、メイトリックスが興奮気味に言う。
「It’s Great!」
目を見開き一個の雄と化したメイトリックスの目は、ミオンに釘づけだった。俺が予想した通り、ミオンはファンタジー系ゲームによくあるビキニアーマーに身を包んでいた。ミオンの大きな胸が、より強調される赤い革のビキニに金属の装飾が付いている。それに、同じ色の革であろうブーツを履き、薄い透けるマントもどきを羽織って、俺達の前に出てきたのだった。
「へへ~ん、♪、これ、セイアにデザインしてもらったんだ。さっき、ゲキが来る前に家に取りに帰ってたの。」
嬉しそうに言うミオンに俺は、
「おまえな!……。」
と言い掛けたが、その言葉を遮ってミオンが、壁にあった中世の大剣を見て、
「これなんか、かっこいいかも。」
と壁から大剣を外し、持とうとしてその重さで前のめりになりながら、
「おっも!……これ、持てないや……。」
剣が床に落ちそうになり、俺は慌ててミオンから大剣を受取り、元の壁に戻した。
ミオンは昔からコスプレが好きだった、よくセイアにねだって自分用の服のデザインをしてもらっていたのだ。俺は、呆れ気味に壁に掛けてある短剣を手に取るとそれをミオンに手渡し、
「これなら、持てるだろう。」
と言うとミオンはその短剣を一目みて不貞腐れ、
「えぇ~~~!短すぎるじゃん、もっとかっこいいのが良い。」
すねるので短剣を元に戻し、代わりにレイピアと呼ばれる細身の剣を渡してやると、少し重そうにはしていたが、それを受けとり、嬉しそうにレイピアを抜いて見せた。
「It's cool」
ミオンの姿に、そう叫び喜ぶメイトリックッスを見て俺は思う。
(まぁ、いつも見慣れている俺やセイアと違い、初めて見たんならその反応は男として自然……なのかもな。)
確かに、ミオンのスタイルは男にとって魅力的なスタイルだとは思う。ボリュウムのある胸に括れた腰回り、はりのあるお尻、普通の男なら釘付けだろうよ。
唯、俺やセイアはミオンとは子供のころからの知り合いで、あいつのコスプレには、いつも付き合わされてきたし、昔から見慣れている以上に、何よりミオンはその性格に難がある。
はしゃぐメイトリックスとミオンをしり目に、俺は時田氏の耳元で有るものを用意してもらうようお願いした。俺のお願いを聞いた時田氏は、小声で俺に「承知いたしました。」と答えその場を離れて行った。
俺は、今だはしゃいでいるメイトリックスとミオンに声を掛けた。
「ちょっと家に防具を取りに帰って来るから。」
「はい、はぁ~~~い♪」
明るく言うミオン。
そのミオン達に、ため息をついてから、俺は踵を返して部屋を出て行った。
次回からも8時更新予定です。




