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128話 クラーケン料理



------異世界某所地下室(オブリヴィオン)---第三者視点



 金属の壁に囲まれ、壁側に様々な機械装置が並ぶ一室。

広さは、おおよそ学校の教室2つ分はあろうか……部屋にある機械装置や操作パネ

ルを忙しく操作するアントマン達。(オブリヴィオン雑兵)その部屋中央部には、

縦3m横5mの大型モニターがあり、そこには、ソンブルおうとインヴィクタ大将軍が居た。



「実験は成功じゃな」


とほくそ笑みながら言うソンブルおう


「えっ、3体とも簡単に倒されましたが……」


と首を傾げて言うインヴィクタ大将軍に、”まだ、わかっておらんな”と言う顔で

、ソンブルおうは言った。


「実験は大成功じゃ……現に2つのことが分かじゃろうが……」


「2つのこと……?と言いますと」


インヴィクタ大将軍の問いに、ソンブルおうは、”はぁ”とため息を付き言

った。


「一つは、勇者は水に弱い」


「……み・水ですか?」


と意味が分からないと言う顔でインヴィクタ大将軍が質問すると、


「あっ、そうじゃな、正確には、キャツは水中では、その武器もその行動も制限さ

れると言うことじゃ、先程、そちも見たであろう」


「あ……はい」


ソンブルおうの言葉に、少し納得顔で言うインヴィクタ大将軍。


それを見て頷くとソンブルおうは更に話を続けた。


「2つ目に、キャツの戦闘力はその殆どが、両腕に集中しておる」


その言葉に、インヴィクタ大将軍が、なるほどと言う顔をして頷くのを見て、


「これで奴の弱点が分かったじゃろう」


「あっ、はい」


ソンブルおうの言葉に、素直な子供のように頷き言うインヴィクタ大将軍。


 その将軍に対し、更に、おうは話をつづけた。


「そして、前回の知恵の実同様、今回使った”狂乱の実”……。」


ソンブルおうは、右手に載せた、現代で言う所の芥子の花のようなものをインヴィクタ大将軍に見せながらこう続ける。


「この2つの実を活性化させれば……賢く狂暴で強力なモンスターを作り出せるやもしれんの~」


と言いながら”狂乱の実”を見つめ、笑みをこぼし、やがて高らかに笑い出した。


「ウワァハハハハ~」


ソンブルおうの笑い声が、建物中に響くのであった。





◇◇◇◇◇






 クラーケンを倒し、俺は冒険者支部に戻ると、既にそこには、シノブとアイーシ

ャさんそれにエドナさんが居て、上空にはフェニックスが旋回していた。


「そっちも倒せたかい?Mr.オオワシ~」


とニコニコ顔で言うシノブ。


「ああ、何とかな」


そう俺がシノブに言うと、シノブが手を上げハイタッチを求めて来たので、その手

にハイタッチをして、アーシャーさん、エドナさんとも笑顔でハイタッチを交わし

た。


 そして、上空を旋回するフェニックスを送還し、しばらく冒険者支部前で待って

いると、ミオンがバイクを押しながら、その横にはソフィーが居て、ゲキがクレア

さんを……クレアさんを”お姫様抱っこ!”して歩き、その後からユニコーンが単

独で歩き戻って来た。


「クレアさんは大丈夫か?」


との俺の問いかけに、ゲキは抱きかかえるクレアさんの顔を見て、


「ああ、ただの魔力切れだと思う」


と言った。


それを俺の後ろから、うらやましそうに見つめるエドナさん。


 それは置いといて……俺を見るなりミオンが大声でソフィーの胸を指差し言った。


「セイア~聞いてよ~、ホントこいつ使えない!」


ソフィーの方を指すので一瞬、ソフィーのことかと思ったがミオンの指の先をよく

見て納得した。


 ソフィーの胸元にはぐったりした電龍が居た。


「ああ、見てたよ」


と俺がミオンに言うと、ミオンが”へっ”って驚いた顔をするので、俺は言葉を足

した。


「ほら、俺と支援機ユニコーンは意識が繋がってるから」


「ああ、そうだったわね」


と納得したが……すぐさま不甲斐ない電龍のことを思い出したのか、しばらく”ワ

ー””キャー”うるさかった。


 そんなミオンをほっといて、まずは、フェニックスとユニコーンを送還して、

変身も解いた。


 その間俺に相手されないと分かるや、ミオンは、事情を知らないシノブ達に電龍

の不甲斐ない戦い方を力説していた。


 俺はそっとソフィーの側に近寄り、胸元でじっとしている電龍に対し、頭をそっ

と撫でながら言った。


「ごくろうさん……電龍」


その言葉を聞いて電龍は、”はっ”と頭を持ち上げ俺の方を向くと。


「僕、僕、頑張ったよ~でも、でも……」


と言いながら涙ぐむ電龍に、頭を再度撫でながら言った。


「ああ、分かってる」





◇◇◇◇◇






 俺達が、自室で休息を取っていると、冒険者ギルドテネア支部の支部長ジェンマ

さんと、2人のギルド職員が部屋を訪ねて来た。


ジェンマさんの後ろに居るギルド職員は何やら大きな魔動機を抱えて。


 ジェンマさんと2人の職員を部屋のソファーに座ってもらい話を聞く。


「おかげさまで、街は救われました。ありがとうございます」


そう言って、深々と頭を下げるジェンマさんと2人の職員。


「いえ、ああ、はい」


深々と頭を下げる、ジェンマさんと2人の職員に何と言ったら良いかわからず、そ

んな言葉を俺は返した。


 ジェンマさんの話によると、避難していた市民が今続々と街に戻って来ていると

のことだった。


 そしてすぐさま街の復旧に当たっているらしい。


(なんと!たくましいこと)


それを聞いて、この世界の人達のたくましさに感心していると……。


「クラーケンの死骸ですが……」


とジェンマさんが言いにくそうに切り出す。


「あっ、そのままは、やっぱまずいですよねぇ~」


と俺が申し訳なさそうにジェンマさんに言った。


 本来、あれの後始末を電龍にさせよう(食べさせて分別)と思っていたが、現在

、電龍は引きこもり真っ只中。


 一応、この世界では最強と言われる生物の”ドラゴン”である電龍は、巨大生物

だったとは言え、”通常の魔物に負けた”ってことがかなりショックだったみたい

で、あの後コンパクト(モンスターカプセル)の中に引きこもり、出てこない。


 俺がそう言おうとしたら、ジェンマさんが


「いえいえ、申し訳ないんですが、市民があれを分けてくれって言うもので……」


「へっ」


ジェンマさんのあまりにも意外な言葉に変な声を出すと、


「いえね、あれの体は一応、食用になるのですが、あまりにも足が速いため、元々

このテネアとケナイでしか出回らず、ギルドでは買い上げの値段はつかないんです

よ」


と言うのだ。


 どう言うことかと言うと、ギルドでは、あの硬い殻は素材として買い取れるが、

体は値段が付かないそいで、あの死体をギルドで解体した場合、殻の引き取り価

格を大幅に越え、赤字になるんだとか……。


 そこで、クラーケンの体……って言うか身を市民に解体させ、その身を無償で譲

ることにすれば、殻だけ回収でき、報酬が支払えると言う話だった。


「ああ、ならそれでいいですよ」


と俺が承諾すると、


「ありがとうございます」


と頭を下げ、早速報酬を受け取ることになった。


「えー退治の報酬は1億ドルマ……ですので1割の手数料を引いて、9000万ド

ルマと殻が1つ300万ドルマですので、3つで900万ドルマになりますので、

合計9,900万ドルマになります。」


「あ、はい」


「ただ、金額が金額ですので現金で今すぐお支払いするのが困難なので、”預かり”のほうで処理させていただきたいのです」


「はぁ」


「”預かり”から2日経てば引き出せますので、そのあたりよろしくお願いたします」


「ええ」


俺は、心で何でもいいんだけどと、思いながらもそう返事すると、


「では、冒険者証をお願いたします」


と言われ冒険者証をジェンマさんに渡すと、それを職員に渡すジェンマさん。


 そして、その職員は、先程持ってきた魔動機にその冒険者証をかざすと、何やら

光……ってかフラッシュが何回か光った後、俺に冒険者証と同時に、魔動機から出

て来たメモ用紙のような物を渡す。


 冒険者証と一緒に渡されたメモのようなものを見ると、以前預けた1千6百万ド

ルマの下に今日の日付と9,900万ドルマの数字と共に更にその下に合計金額の

1億1,500万ドルマの数字が見て取れた、それを確認して俺は、


「はい、確かに」





◇◇◇◇◇






 その後、テネア市民から……と言うか商業ギルドから夕食の招待を受ける。


 クラーケンのお礼と言うことで、俺達にそのクラーケン料理を振る舞ってくれる

そうだが……。


 市民あげての歓迎って言うかお礼だと言われ、俺は半分いやいやなんだけど、シ

ノブとゲキはワクワクした感じで招待を受け入れた。







◇◇◇◇◇






 指定されたレストラン ジョーヤ。(喜びって意味らしい)


 通常営業で使っているテーブルや椅子を突破らい、部屋の真ん中に大きなテーブルが”ドン”と置かれ、絵画で見た”最後の晩餐”のように俺を中心に横並びに座らされた。


 俺の右がミオン、ゲキ、シノブで、俺の左にソフィー、クレアさん、エドナさん

、アイーシャさんが座った。


 俺達が席に着くと、テネア行政府長のジョルジョさんからお礼の言葉を言われ、

続いて交易ギルドテネア支部長ミケーレさんが続き、その下部組織の商業ギルドテ

ネア支部長ピエトロさんが、俺達にお礼の言葉を述べた。


 そして、傭兵ギルドテネア支部長のステファノさん、冒険者ギルドテネア支部

ジェンマさんと続き、最後にこの店のピエールさんから今回のお礼と感謝の言葉

を受けた。


 ここまで、かかった時間40分……すでにゲキやシノブでなくとも俺自身かな

りお腹が減っている。


(この分だと、少々の物でも食べれそうだ)


 そして店のオーナー以外の5人も俺達の向かい側に座り、まずはテーブルにあっ

たグラスに葡萄酒が注がれたが……。


 俺のグラスには注がれず……変わってあの緑色のシュワシュワが入ったグラスが

置かれた。


「ベンバー」


と俺がそれを見て声を出すと、店員さんはにっこり笑って視線をシノブに向けた。


(ああなるほど、シノブが気を利かせてくれたのか)


 他のメンバーは葡萄酒で、俺だけは異世界版”コーラ”のベンバーの入ったグラ

スを持って乾杯する。


 因みに、皆が飲んでいる葡萄酒は、シャトーテネアの10年物で、そこそこ高価

なものらしい。


 料理が運ばれてきた……。


・『クラーケンのトマトスープ』


 トマトをベースにクラーケンの殻の中にある内臓を包んでいる膜を入れ、後は他の魚介類を入れたスープ。


 味は……イカ入りミネストローネスープって感じで、クラーケンの殻の内側の膜ってイカのような触感だった。


(これなら食べれるな)


 次に出てきたのが、


・『クラーケンのマリネ風?』


 クラーケンの触手の内側の部分(外側はゴムのように固いらしい)を薄切りにスライスして白の葡萄酒やレモンなどで漬け込んだ一品。


(なんかこれ、食べたことあるような触感)


って思っていたら、ゲキが、ピエールさんに


「ちょっと失礼するよ」


と声を掛け、主に食料を入れてあるマジックボックス小から、醤油の小瓶と練りわさびのチューブを出し小皿に醤油とわさびを入れ、それに浸して食べてから……。


「やはりな」


そう言ってその小皿を俺に勧める。


「?ん……」


そう言って、俺もわさび醤油が入った小皿にクラーケンの触手の切れ端を付けて食

べてみると……。


「ん?これ」


「そうだ」


「アワビか!」


その会話を聞いて、ミオンやシノブも同じように小皿へとその身を着けて食べると、


「あっ、本当アワビだわ」


「Oh!確かに」


と驚きの様子を見せた。


 それを異世界組や前に居たジョルジョさん、ミケーレさん、ピエトロさん、ステ

ファノさん、ジェンマさん、果ては立って料理を給仕していた店主のピエールさん

までが、同じように醤油につけ食べて、目をむき……次の瞬間鼻をつまんだ。


「ん―――!このツーンは何だ!」


「しかし、なかなかの美味ではないか!」


「ん、このソースは何ですか」


ジョルジョさん、ミケーレさんが言い、店主のピエールさんはわさび醤油の質問を

してきた。


 ゲキが、わさびと醤油の説明を店主のピエールさんに一生懸命していたんだけど。


(ん――どうだろう、この世界で醤油やわさびは再現できるのか?)


次が、


・『クラーケンのサクサクフリッター』


 泡立てた卵白にクラーケンを通して、サクッと揚がっていて、冷めてもふわふわ

で美味しかった。


その次メインが、


・『クラーケンのステーキ』


 白葡萄酒やバターを使いクラーケンの触手の内側の身を焼いたステーキ。


 俺は食べたことなかったけど、ミオン曰くアワビのステーキに似てるそうだ。


そして〆は、


・『クラーケンのパエリア』


 クラーケンの殻の内部の膜に沢山の魚介類をふんだんに使った一品。


 底に出来たおこげが絶品で美味しかった。



 たらふく頂いて、招待してくれたジョルジョさん始め、招待してくれた人達にお

礼を言って、ギルド支部の部屋に俺達は帰った。



 意外と魔物って美味しいんだな~


クラーケンを今回食してみました(笑)

実際はどうなんでしょうかね。

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