127話 VSクラーケン(後編)
俺がクラーケンを睨みつけ、
「そろそろ本気で行くとするか」
とクラーケンに向かって言ったころ。
ミオン達も北側のクラーケンと戦っていた。
「ふん!秘儀!一刀両断!」
ユニコーンを単独で騎乗したゲキは、運河沿いに街を破壊するクラーケンに対し
、その運河を並行して続く道を、ひたすら並走しながら、時折、自分の行く手を
阻もうとするクラーケンの触手を、ユニコーンのスピードを落とすことなく騎乗
から斬馬刀を振るい切り飛ばした。
しかし、ゲキが切断したクラーケンの触手は、すぐさま再生する。
魔法による治癒なのかそれともクラーケンの生物的再生によるものかはわからな
いが……。
”ピッ”
≪名称 クラーケン ≫
≪戦闘力 80,000≫
≪防御力 70,000≫
≪スピード 6,000(100)≫
【MP 800/1,000】
≪特技 触手、タールの炭、毒の爪、スクリュー攻撃 ≫
(あっ、MPが減ってる!ってことは魔法による治癒なのね)
念話でソフィーにそのことを告げる。
≪奴の再生は魔力で再生してるから、いつまでも再生しないよ≫
≪はいわかりましたミオン様にお伝えします≫
俺の念話にソフィーがそう答え、そのことをミオンに告げると、
『ゲキ、バンバン触手切り落として~その内再生できないから~』
と無線でゲキに伝えると、
『相、分かった』
とミオンの無線にそう答えるゲキ。
「ふん!秘儀!一刀両断!」
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
バサバサと触手を切り落とすゲキに、業を煮やしたクラーケンが運河から上陸し
、自らの体でゲキの行く手を阻むと、左右外側にある先端が小判型になっている2
本の触手の毒針を出す左右合計16個の穴から一斉にゲキに向け僕針を発射する。
”シュッ””シュッ””シュッ””シュッ”
それを見たゲキは、ユニコーンの手綱を左手で引き、ユニコーンを急停車させる
と、持っていた斬馬刀を回転させ。
「撃心流奥義の1つ 旋風返し!」
刀を回転させ風を起こすと、飛んでくる16本の毒針すべてを跳ね返した。
そして、徐に手綱を操り、ユニコーンの方向を変えると、クラーケンに背を向け
走り出して行く。
その様子を近くの建物から見ていたミオンが、同じく建物に隠れているソフィー
に向かい言った。
「今よ!ソフィー」
「はい」
ミオンの言葉に返事をしたソフィーは、すぐさまコンパクト(モンスターカプセル
)を開け電龍を召喚した。
「出でよ!電龍!」
そうソフィーが叫ぶと、コンパクトから光の玉が現れ、それがみるみる大きくな
り、体長25mの電龍が姿を現した。
「ズバッと参上、ズバッと解決。人呼んでさすらいのドラゴン!その名も快傑電
龍!参上」
と意味不明の言葉を吐いて電龍が現れると、
「電ちゃんさんお願いします」
とソフィーの言葉に電龍は
「はい、任された~」
と軽快に返事をし、ゲキを必死に追いかけるクラーケンを見つけると、空中からク
ラーケンの所に降りて、クラーケンの頭(殻)に巻き付き放電した。
"ビリビリビリビリ~”
するとクラーケンが口から泡を吹き出し、体が揺れ出した。
「へっへ~どんなもんだい!」
とクラーケンに巻き付きながら自慢げに言う電龍。
しかし、その時であった!。
体をふらつかせながらも、クラーケンは最後の力を振り絞り……。
頭の殻を回転させた。
”ウィーン”
「グゲッ、うわぁ~目が回るぅ~」
クラーケンの頭に巻き付いていた電龍が、クラーケンの頭の殻の回転と共にクル
クル回りだし、そのまま空中へ投げ出された。
「あれぇ~ぇぇ~!」
そして空高く回転しながら、飛ばされた電龍はそのまま……。
”ドスーン”
”バリバリバリ~”
街を覆う隔壁にぶつかり、隔壁にヒビを入れ……そして地上に落ちて行く。
”ドスーン”
”メキメキメキ”
建物を破壊しながら、地上に落ちた電龍は、気を失ったようだ。
(あっ電龍がやられた!、ソフィー達が危ない!)
◇◇◇◇◇
(あっ電龍がやられた!、ソフィー達が危ない!)
と思った瞬間、俺はクラーケンの触手に捕らえられた。
「うっ、しまった!」
ユニコーンから入ってくるソフィー達の戦闘の模様に気をとられていた俺は、自
分が戦闘中にも関わらず、そちらに気を取られ過ぎていた。
俺を捕らえたクラーケンの触手は、両腕事、体に巻き付いているため、武器であ
る腕が使えず、いくらもがいても触手から逃れることが出来ない。
「っくぅ~このー!」
”ズンズンズン”
俺を掴んだまま奴は、そのまま街に張りめぐらせた運河へと入って行く。
”ズボズボズボ”
”ブクブクブク”
俺は運河の底にクラーケンと共に沈む。
その時あることに気づく……。
「そうだ!左腕はまだエレクトリーアームだった」
俺はすぐさま、左腕から片腕で出せる最大の電気を流した。
"ビリビリビリビリ~”
左腕から流した電流は、俺の体にも流れ込んで、体全体に電気が流れる。
視界にノイズが走るが、それ以外痛みや痺れは俺自身感じないが……。
俺を掴んでいたクラーケンは違ったようで、俺が流す電流が、俺を掴んでいる触
手から体全体に伝わり、体が硬直し始めていた。
身体が硬直し始めたクラーケンの俺を掴んでいる触手が、更に俺を締め上げ始め
た。
「やばい、逆効果だ!」
俺が左腕から電流を流すのを止めると……しばらく”ギュッ”と締め付けていた
触手が少し緩んだ。
「よし!」
俺はすぐさまクラーケンの触手を振りほどき、その場から離れる。
「さーて、どうしようか」
運河の底で俺の電撃により、しびれて硬直しているクラーケンを見つめ言う。
◇◇◇◇◇
「あぁ~ん、もー役立たず!」
地面で気を失う電龍に大声で文句を言うミオン。
「クレアさん!ソフィーをお願い!」
そしてミオンはそうクレアさんに叫ぶと、1人電動バイクに跨り、電龍を倒し再び
ゲキを追いかけるクラーケンに向かいバイクを走らせた。
バイクを走らせながら、ミオンは左腕の電空ブーメランに触れ、
「電空ぅ~ブーメラン!」
電空ブーメランをクラーケンの触手へと飛ばす。
”ブシュ””ブシュ””ブシュ”
ミオンが飛ばしたブーメランは触手を切り飛ばしはできないが、次々と軌道を変え
ながら触手に切りつける。
ミオンのブーメランに切りつけられたクラーケンの触手の傷は、見る見る治って行くが……しかし、ブーメランに付加された電気の影響で、しびれだして動きが鈍りだした。
異変に気付いたクラーケンは、ゲキを追いかけるのを止め、くるりと後ろを向くと、今度は自分に迫ってくるバイクに乗ったミオンを追いかけまわしだした。
「うゎ~やばい―――、やばいじゃないの!」
それを見たミオンは、すぐさまバイクの方向を変え、クラーケンから逃げる。
「いっやぁ―――――きも――い!」
猛スピードで逃げるミオン……それを追いかけるエロい触手……ん?もとい!クラ
ーケン。
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
ミオンを追いかけるクラーケンの後ろから、ゲキの刀がクラーケンの触手を切り
飛ばす。
「ふん!お前の相手は俺だ!」
「秘儀!一刀両断!」
そして、続けて触手をゲキが切り飛ばした時だった。
今まですぐさま再生していたクラーケンの触手が、急に再生しなくなった。
「おう、魔力が切れたか!」
ゲキはそう言いながら、大技を使うため気を溜めだした。
しかし、そんなゲキを何故か相手にせず、ひたすらミオンのバイクを追いかける
クラーケン。
「ぎゃ―――――何とかしてぇ―――!!!」
ミオンがそう叫びながら、猛スピードで、ソフィーとクレアさんの前を通りすぎて行った。
それを見たクレアさんは、ミオンを追いかけるクラーケンの前に立ちはだかると
、魔法の呪文を唱えだした。
しかし、どんどんクレアさんに迫ってくるクラーケン。
(間に合って……お願い!)
クレアさんは、自分に迫るクラーケンを見ながら心でそう叫び、必死で魔法の詠唱
を唱え続けた。
クラーケンの触手がどんどんとクレアさんに迫ったその時であった。
「撃心流奥義の1つ 斬馬刀大車輪!」
とゲキの声が聞こえたかと思うと、ゲキは走るユニコーンから、空中高く飛び上が
り回転しながら斬馬刀を投げつけた。
ゲキが投げつけた斬馬刀は、回転しながらクラーケンの5本の触手の内、3本を
切り飛ばした。
クラーケンはバランスを崩すと共に後ろにひっくり返り、仰向けで倒れた。
その時、魔法の詠唱が終わったクレアさんが、”カッ”と目を見開き、仰向けに
倒れたクラーケン目掛けジャンすると、
「ファイヤースピンシールド!」
クレアさんが盾に魔力を込めて、仰向けに倒れているクラーケンの大きな口目掛け
て持っていた盾を投げつけた。
すると、クレアさんが投げた盾は回転しながら炎に包まれクラーケンの口へと、
吸い込まれるように入った瞬間、着地したクレアさんがクラーケンに背を向け数歩
歩いた後言った。
「エクスプロージョン!」
すると、クラーケンの口の中で爆発が起こり、一瞬クラーケンの体が膨らみ……縮
んだ。
そこにゲキが駆け寄りクレアさんに言った。
「お見事!」
そのゲキの言葉にクレアさんはニッコリ笑うも、そのまま”ガック”と倒れそうに
なり、それを慌てて腕で受け止めるゲキ。
ゲキの腕の中で、幸せそうに笑いながら眠るクレアさんであった。
◇◇◇◇◇
「さーて、どうしようか」
運河の底で俺の電撃により、しびれて硬直しているクラーケンを見つめ言う。
水中でのGUY BRAVEの武器は、かなり限られている。
本来、そのために水中戦闘用の支援機を考えてあるんだが、今はレベルの関係で
オミットされていて使えない。
例えば、プラズマボールなんてのは、火球を高温にしている段階で、手元で水蒸
気爆発を起こしてしまうため、危なくて使えない。
マシンガンアームにしても水中では威力が半減ってことは、ワイヤーアームもしかりだし、フリーザーアームで冷凍ガス出した途端に周りの水が凍ってしまい奴まで届かないし……。
恐らく、まともに威力が期待できるのは、エレクトリーアームとブレードアーム……。ん?あぁ、あれがあるじゃないか。
俺はそう思い、すぐさま両腕をブレードアームに変え、プログレッシブ ブレードを展開する。
そして、必死でクラーケンの近くまで泳ぐと、クラーケンの顔の前で、展開したプログレッシブ ブレードをクロスさせる。
「必殺!クロスエンド」
するとクロスしたプログレッシブ ブレードから衝撃破が起こり、クラーケンの顔に命中すると、クラーケンの顔は一瞬にして爆発四散した。
「ふぅ~、かなり、てこずったけど何とか倒したな」
劇中電龍登場時の「ズバッと参上、ズバッと解決。人呼んでさすらいのドラゴン!
その名も快傑電龍!参上」は、特撮ヒーロ快傑ズバッ〇のセリフです。
「ズバッと参上、ズバッと解決。人呼んでさすらいのヒーロー!快傑ズバッ〇!!」




