126話 VSクラーケン(前編)
ミオンに言われ、皆に説明している間、上空で旋回しながら待機しているフェニックスを呼び、すでにスカイダイビング用のタンデムジャンプ(体験スカイダイビング)でインストラクターでない人が付けるパッセンジャーハーネス呼ばれるパラシュートが装着しいていないハーネスを装着したエドナさんが、ミオンの合図と共に冒険者ギルド支部屋上から……なんの躊躇もなく飛び降りた。
(ゲ!エドナさんって、見かけによらず度胸あるんだ~)
屋上を飛び降りたエドナさんの背中のハーネス部分をフェニックスが両足でキャ
ッチして、エドナさんはそのまま空へと舞い上がる。
「わぁ~すごいですぅ~」
と歓声を上げるエドナさん。
その後、俺達は冒険者ギルド支部の1階まで降りて、シノブは止めてあった電動
バイクに跨り、アイーシャーさんを後ろに載せ。
「じゃ、僕たちは先に行くよ」
と皆に声を掛け、南側のクラーケン退治に向かう……もちろんシノブ達の上空には
、エドナさんを掴んだフェニックスを従えて……。
それを見送った後、今度は俺はユニーコーンを召喚して、そのユニコーンに鞍を
付け跨るゲキ。
そして、ユニコーンに跨るゲキの後ろにはクレアさんが乗り、シノブと同じく電
動バイクに跨ったミオンの後ろには、ソフィーが乗った。
「んじゃ、行ってくるねぇ~セイアも頑張ってねぇ~」
と言うミオンに
「ご武運を」
と俺に声を掛けてくれるミオンとソフィーに俺は、
「うん、そっちも気をつけるんだよ」
と声を掛けると、
「うん」
「はい」
と元気よく返事をするミオンに俺を心配そうに見つめるソフィー。
そして、ユニコーンに跨るゲキとクレアさんに俺が、
「2人を頼んだぞゲキ!」
「クレアさんも頼みましたよ」
と声を掛けるとゲキとクレアさんも頷き、
「ああ、任された」
「はい、全力でお守りします」
と言葉を返してくれた。
シノブ達に続いて、北側のクラーケンに向かうゲキ達を見送った後、
「さぁ~てと、俺もそろそろ怪獣退治に行きますか」
そう1人ごちりながら、街の中央で暴れるクラーケンへと向かうのであった。
◇◇◇◇◇
俺は、GUY BRAVEでいる時……ってか、GUY BRAVEに変身して
いないと、支援機であるユニコーンやフェニックスは呼び出せないんだけどね。
その支援機とは潜在意識で繋がっているんだ。
なので、先に出発したシノブ達が、南側のクラーケンに接触したのを感じ取る。
(始まったようだ)
◇◇◇◇◇
街の北側で暴れるクラーケンを見つけるも、シノブはしばらくバイクを走らせる
と、ある場所でバイクを止めた。
「Missアイーシャ、準備をしようか」
そう言ってバイクを降りながら、アイーシャさんに声を掛ける。
「はいですにゃ」
そうアイーシャさんが、シノブに返事をすると同じくバイクを降りた。
そして、背中に背負っていたマジックボックス小を降ろすと、中からカールグス
タフ84mm無反動砲を2つを取り出し、1つをアイーシャさんに渡すと、扱い方
を説明する。
アイシャーさんに使い方を説明する傍ら、同じくマジックボックス小から出した
と思われるシノブ専用の特大バーガーを食べていた。
そして、特大バーガーを食べ終わると、耳につけた無線機で空中で待機するエド
ナさんへと支持をだした。
「Missエリス……そろそろ始めてくれたまえ」
「わかりましたぁ~」
そう無線でシノブに返事をしたエドナさんは、自分を掴んで飛んでいるフェニック
スに向け言った。
「おねがいしまぁ~すぅ」
エドナさんの言葉にフェニックスは、すぐさま降下を初めた。
フェニックスが降下を始める中、エドナさんが背中ら矢を取り、弓を構えた。
降下するフェニックスがクラーケン正面に到達するとエドナさんは、
「ライトニングアロー!ディバイダー」
と叫び、矢を放った。
電気を帯びた放たれた矢は、クラーケンに向かう途中、6つに別れ、クラーケン
に向かうが、放たれた矢の内2つの矢は、クラーケンの触手に阻まれるも、残りの
4本の矢はクラーケンの頭(本来の胴体)に命中。
だが、硬い殻に阻まれ弾かれてしまった。
しかし、先に触手に弾かれた矢に付加された”雷”の電気にやられたのか、2本
の触手が思うように動かせないようで、もたもたしだした。
思うようにいかない体に業を煮やしたのか、クラーケンは自分を攻撃し、自分の
周りを旋回するフェニックスに向け炭を吐き飛ばす。
それをいとも簡単に、右に左に避けるフェニックス。
挙句、フェニックスはあたかもクラーケンを挑発するように炭を吐く、クラーケ
ンの正面迄降下し、それに怒ったクラーケンが炭を吐こうとした時、徐に急上昇
した。
そのフェニックスを目で追い体を上に向けたまま、炭を吐いてしまったクラーケ
ン。
当然、フェニックスはそのまま上昇し、炭を避けると……クラーケンの吐いた炭
はそのままクラーケンの顔に落ちて来た。
”ベシャ”
自分の炭を顔に浴びたクラーケンは、目が見えないのか、触手を辺り一面に振り
回しながら、街に張り巡らされた運河から出て、陸地に上がり、次々と建物を破壊
して行く。
それを見て上空に居たエドナさんを掴んだまま飛んでいるフェニックスが、建物
を破壊しまくるクラーケンの触手を次々に目からレーザー光線を出して、焼き切っ
て行った。
5本の内、3本の触手をフェニックスに焼き切られたクラーケンは、思うように
体が動かせず、その場でもがきだした。
「今だMissアイーシャ!」
「はいですにゃ」
「Fire!」
シノブの掛け声と共にアイーシャさんとシノブは、同時に無反動砲のトリガーを引
いた。
”ズドーン””ズドーン”
2人の放つ84mmの弾が白い煙と炎を出し、クラーケンの頭(本来の胴体)目掛
け、一直線に向かって行き、
”スバババァーン”
って命中して黒煙と炎を舞い上げた。
しかし、クラーケンの殻は固く、ヒビが入って真ん中に小さな穴が開いたかに見
えるが、致命傷とはいかなかった。
それをみたシノブは、マジックボックス小から、バレットM82A1(対物狙撃
銃)を取り出し、構えた。
そして、クラーケンの頭部にヒビが入り小く開いた穴目掛け、12.7mmの弾
丸を次々に発射した。
”ズドーン”
”ガシャ”
”ズドーン”
”ガシャ”
”ズドーン”
シノブの放った弾丸は寸分たがわず、そのクラーケンの硬い殻に開いた小さな穴
へと吸い込まれていった。
3発目の弾がその穴に吸い込まれた瞬間、一瞬クラーケンが”ピクッ”と動いた
かと思うと、その後力尽きたのか、ぐったりして動かなくなった。
それをスコープから見ていたシノブは、銃を降ろし、
「Yes!」
そして、思わずガッツポーズを取り、側に居たアイーシャさんとハイタッチをして
喜んだ。
「yeeeeeah!」
「やったですにゃ~」
◇◇◇◇◇
(どうやらシノブ達は倒せたようだ)
俺はそう思い、目の前で街の運河沿いに建物を破壊し続けるクラーケンを見つめて
いた。
するとクラーケンは俺に気づいたのか、5本ある触手の内左右の外側の触手を俺
に向けた。
そのクラーケンの2本の触手の先は、小判型の形になっていて、そこには8個ず
つ吸盤のような穴があった。
これは吸盤ではなく……毒針を飛ばす穴だった。
その左右合計16個の穴から俺に向けクラーケンは毒針を飛ばした。
”シュッ””シュッ””シュッ””シュッ”
そのクラーケンが飛ばす、毒針を右に左に除け尚且つ体に当たりそうな毒針は、
手刀で跳ね返す俺。
「わり~それは俺には効かないんだな」
そうクラーケンに言うと、側にそびえる10階建ての建物の屋上にある鉄柵を見つけ、そこに右腕を飛ばした。
「ブースドワイヤーナックル」
前もって、ワイヤーアームに変えてあった右腕を、その10階建てのビルの屋上
の鉄柵に飛ばし、掴むと同時にワイヤーを巻き上げ、一気に10階建ての建物の屋
上へと降り立った。
”シュルシュルシュル”
そしてすぐさま右腕をマシンガンアームに変え、すでにエレクトリーアームに変
えてあった左手で、右腕を掴み鋼弾を放った。
「エレクトリックマシンガン」
”バリバリバリ~”
高圧の電気の帯を従え、次々にクラーケン目掛け飛んで行く鋼弾だったが、それ
を先ほどの毒針を放った左右の触手で弾いて行くクラーケン。
俺の放つ鋼弾はエドナさんが放つ矢同様クラーケンの触手には弾かれるが……。
エドナさんの時と同じく、付加された高圧電流にしびれたようで、2本の触手は
ピクピクとしながら、クラーケンが思うように動かせないようだった。
すると怒ったのか、クラーケンは自分の居る街に張り巡らされた運河から出て、
上陸すると、俺の居る建物目掛けてその頭の硬い殻を向けて突進してきた。
しかも、その頭のドリルのような形状の殻を物凄い速さで回転させながら……。
”バリバリバリ~”
”バキバキバキ”
”ズズズズズーン”
そのクラーケンのドリルのような攻撃を受け、俺がいる建物が崩れて行った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
とっさに、俺は右腕をワイヤーアームに変えると、すぐさま近くの建物の屋上の
鉄柵に飛ばした。
「ブースドワイヤーナックル」
”ガチ”
と鉄柵を掴むとすぐさまワイヤーを巻き上げる。
”シュルシュルシュル”
”ズズズズズーン”
”ドンガラガッシャン”
「ふぅ~間一髪」
俺はそう呟いた。
そして、クラーケンを睨みつけ、
「そろそろ本気で行くとするか」
そうクラーケンに向かって言う俺であった。
クラーケンの触手は再生できるのですが、熱で焼き切られた場合、
再生できません。あしからず……(笑)




