124話 クラーケン襲来
俺達が部屋で、ゲキが下の受付で聞いてきた話を聞いて、
「なるほど……」
と俺が言うと横にいたミオンがゲキに言った。
「んじゃ、もう安心かな」
「ああ、まぁ、受付のおねえさんの話ではそうだが……」
とミオンに言われ少し困ったように言うゲキ。
「んじゃ、晩御飯食べに行こうよぉ~」
と屈託のない笑顔で言うミオン。
「しかし……」
と言いかけたゲキのお腹がタイミングよく”ぐぅ~”っとなった。
「ほらほら、ゲキちゃんお腹空いてんじゃん」
「うん……まぁ」
とミオンに言われ、俯き言うゲキ。
「しかし、警報が止んだとはいえ、まだ戒厳令は引かれたままなんだろう?ゲキ」
と俺の問いに頷くゲキ。
「なら、お店開いてないだろう~ミオン」
と言う俺の言葉に、ミオンがかなり残念そうな顔でふてくされ言う。
「え―――っ、折角、異世界版のパエリアが食べれるって思ったのにぃ~!」
そのミオンをなだめる様にシノブが言う。
「まぁまぁ、Missシラトリ~、この様子だと船は直ぐでないかもわからないん
だから、当分ここに居ることになるんだし、食べる機会はあるんではないかい?」
「ん……まぁ……そうだけど……」
と不満ながらもシノブの言葉に同意するミオンだった。
◇◇◇◇◇
部屋にBBQ用の折り畳みテーブルを2個だし部屋に置く。(部屋のテーブルが
小さいため)
そして、主に食料が入っているマジックボックス小から今夜の晩御飯をだした。
今夜のご飯は……。
マグロ&モッツァレラチーズ丼
モッツァレラチーズをサイコロサイズに切り、そこにマグロの角切りにしたもの
と小葱を小口切にし、そこに刻みのりを載せ少々のわさびも載せ、そこに……食べ
るときに各自適量の醤油をたらし、食べる。
それと、キャベツ、レッドオニオン、人参を小さく切ってマヨネーズであえ、お
酢ケチャップ砂糖コンソメ顆粒で味を調えたコールスローサラダ。
(野菜は取らないとね)
「「「「「「「「いただきます~」」」」」」」」
皆で手を合わせいただく。
「んーっ、キターにゃ~」
「き・きました」
とアイーシャさんとソフィーが鼻を抑えながら言う。
エドナさん、とクレアさんはもう大分わさびに慣れたようで鼻を抑えることは……
ないけど、少々涙目のようだ。
(わさびがアクセントになってて、なかなかおいしいな)
って思っていたら、再び警報が鳴り響いた。
≪トゥルントゥルン!トゥルントゥルン! ≫
「うへっ!」
「えっ!」
「◎ΨЖ×◇□!」
「Whoa!」
「え――なになになに」
「なにごと!」
「わー何でしょう」
「ニャに~?」
俺は食べた物を吐き出しそうになり、ソフィー、ゲキ、シノブ、ミオン、クレアさ
ん、エドナさん、アイーシャさんも驚き声をあげた。
(ゲキは口いっぱいにものが入っているので何言ってるかわかなんけど)
そんな、ゲキを差し置いて、シノブが俺に言った。
「Mr.オオワシ、何があったか今度は僕が下の受付に聞いてこようか?」
「ああ、頼む」
俺がシノブにそう言うとそれを見たゲキが、慌ててお茶お飲み、噎せながらも胸を
叩き、シノブについて行こうとするのを俺が止めて言った。
「ゲキ、場合によっては俺達の出撃もありうるんだから、今のうちに食べてしまっ
てくれ!」
俺の言葉に頷き、残りのマグロ&モッツァレラチーズ丼をかきこみ食べるゲキであ
った。
◇◇◇◇◇
------異世界某所地下室---第三者視点
金属の壁に囲まれ、壁側に様々な機械装置が並ぶ一室。
広さは、おおよそ学校の教室2つ分はあろうか……部屋にある機械装置や操作パネ
ルを忙しく操作するアントマン達。(オブリヴィオン雑兵)その部屋中央部には、
縦3m横5mの大型モニターがあり、そこには、ソンブル翁とインヴィクタ大将軍が居た。
「翁……仰せの通りいたしました」
と頭を下げ言った。
「インヴィクタ……ご苦労じゃったの」
と頭を下げるインヴィクタ大将軍に労いの言葉を掛けるソンブル翁。
そのソンブル翁の言葉に頭を上げ言うインヴィクタ大将軍。
「しかし、幾ら巨大で強力な魔物3体とは言え……1つの都市を落とせるとは思え
ませんが……」
と疑問を口にすると
「ん?……落とせんよインヴィクタ」
とさも当たり前のように返事をするソンブル翁。
「えっ、……では、何のために!?」
と驚き顔を上げ言うインヴィクタ大将軍。
「実験じゃよ……実験」
そうさらっと言うソンブル翁に、困惑し意味が分からないと言う顔をして、見つめ
るインヴィクタ大将軍に、ニヤリと笑って言う。
「我らは当初、この世界を支配するのに圧倒的な戦力で制圧できると考えた」
ソンブル翁の言葉に、黙って頷くインヴィクタ大将軍。
「しかし、それを阻んだのはなんじゃ?」
ソンブル翁の言葉に
「それは……それは」
と言い淀むインヴィクタ大将軍。
それを見てソンブル翁は言葉を続ける。
「それは、2つある。」
と一旦言葉を区切って、
「一つは魔法」
とまた言葉を区切
「しかし、それはこの世界の魔物を操ることで何とかなるが……」
そのソンブル翁の言葉に
「はぁ……」
と力なく言うインヴィクタ大将軍。
「しかし!じゃ、もう一つの方が問題じゃ」
その言葉を聞いて、インヴィクタ大将軍は、ハッと顔を上げ言った。
「勇者!」
そのインヴィクタ大将軍の言葉に、満足げな笑みを浮かべ頷いたソンブル翁は言っ
た。
「そうじゃ、勇者じゃ」
「しかし、勇者は1人……もっと強力で大量のモンスターを送り込めば……」
とインヴィクタ大将軍が言いかけて、黙ってしまった。
「で……、強力で大量のモンスターを送り込み倒そうとしたデロべやサディコは倒
された……」
と冷たく言い切るソンブル翁。
その言葉にインヴィクタ大将軍は頭をうな垂れる。
「確かに戦争は物量じゃ……また、ここの兵器の性能の差があればあるだけ勝利す
るのは簡単じゃ……と言うのが、わし達の常識じゃ」
と言ったん言葉を区切って、
「じゃが……そのわしらの常識が通用せぬのが、この世界の魔法と勇者じゃ」
と話すと
「はぁ~」
とインヴィクタ大将軍は、ソンブル翁の話を聞き顔を見つめて返事をする。
「魔法……についてはある程度仕組みが分かって来たんでな、まぁ問題ないが……」
ソンブル翁の言葉にインヴィクタ大将軍が頷くのを見て更に話を続ける。
「しかし、じゃ、勇者については分かっておることは少ない」
とソンブル翁が言うと、インヴィクタ大将軍が勇者について自分が知りうることを
考え口にした。
「この世界ではない世界の人間で、仲間を含めこの世界にない武器や能力を持って
いる……」
インヴィクタ大将軍の言葉に黙って頷き聞く、ソンブル翁。
そして、急に眼を見開き言葉を付け加える。
「それに、勇者は普段は普通の人間じゃが、変態すると体が機械に代わる……これ
はこないだの砦で判明した……そうじゃのインヴィクタ」
ソンブル翁に急に話を振られ、
「ああ、はい……」
その言葉を聞いて、ソンブル翁は頷き言った。
「うん、じゃから、キャツのことを調べるためには実験が必要なんじゃよ」
その言葉にインヴィクタ大将軍は合点がいったのか、ソンブル翁の顔を見つめ微笑
んだ。
◇◇◇◇◇
------第三者視点---
デスロ同盟国は4つの都市の共同体である。
テネア、パルタス、ケナイ、トンリコ各都市は、それぞれ特化したものがあり、4
つの都市はそれぞれその特化したものでお互い助け合っている。
簡単に説明すると、テネアは海運と言うか海上貿易で財をなし、トリンコは馬車
などで各地に物資を届け商いをして財を成した都市であり、その二つの都市の防衛
や護衛で主な生計を立てているのがパルタスでありトリンコである。
前者は陸上を後者は海上を警備防衛する。
テネア守備隊には、海上はケナイから派遣された4隻の戦艦が、陸上部の都市防
衛にはパルタスから200人の騎士が派遣されている。
ケナイの戦艦4隻を倒したクラーケン3体は、都市テネアのシェルターで戦艦4
隻が出て行くため、防御壁を閉めていなかった2本の運河から侵入し、都市の入り
口である湾に出ると水面からその巨体をのぞかせ街へと上陸しようとしていた。
そこに、テネア行政府から連絡を受けたパルタスから派遣された騎士200名と
、テネア行政府が直接雇った傭兵100名が湾の上陸桟橋が並ぶこのテネアの入り
口と言われる所に集結し、突然現れたクラーケンに向け今まさに攻撃を開始しよう
としていた。
弓を持った弓隊が100人ずらりと横に並び弓矢に火をつけ構えている。
その後ろには魔法士20人が杖を構え呪文を唱えだした。
「放てー!」
指揮官の合図で一斉に弓隊の100本の火矢と、魔法士20人が放つ炎が3体のク
ラーケン目掛け飛んで行く。
しかし、その100本の火矢と20本の炎の筋は、ケナイ戦艦4隻同様、クラー
ケン3体が口から吐く炭により阻まれただけでなく、火矢と炎を
包み込み、弓や杖を構える兵と魔法士に襲い掛かった。
魔法士20人の方は、とっさに障壁を張り、クラーケンのコールタールを防げた
が、弓隊を含むその後方に居た指揮官や騎士並びに傭兵を飲み込んだ。
「ひえぇ~」
クラーケンの攻撃で、辺り一面真っ黒になり、自分達の前方や後方の騎士傭兵が、
コールタールで固まり黒い人形化したのを目の当たりにした魔法士20人は、恐怖
のあまり声をあげ、慌ててその場を逃げて行ってしまった。
ここにテネア守備隊は全滅した。
いよいよセイア達の出番……か?




